2022.02.03

接点別にみたマンガ活用プロモーション(コスプレイヤー編) | マンガ・キャラクター 活用の極意と最新事情<第21回>

2022年も始まった早々、コロナ禍第6波によるまん延防止等重点措置が多くの地域で適応されました。今年も受験や卒業式で多くの学生たちと家族が苦労するのは、何ともやるせないです。マスメディアやSNSで様々な情報が飛び交う中、今は個々人が細心の注意を払うしかないですが、一刻も早く事態が落ち着いて、心穏やかに春を迎えられることを切に願うばかりです。

先月はマンガを使ったプロモーションの事例と展開上のポイントのうち、キャラクター関連の屋外広告や交通広告の活用事例について以下の内容をまとめました。

  • 屋外・交通広告は、顧客の生活動線上に配置された貴重な接触の場
  • マンガコアファンの注目度が高く、行動変化を促しやすい
  • 屋外・交通広告をキャラクターの接点として考える際に留意すべきこと
  • 講談社作品に関連する屋外・交通広告事例

今回は、アニメやマンガ、キャラクター関連のコスプレイヤー活用事例について解説します。

アニメブームとハロウィンを契機に、ファン主導で一般化したコスプレ

artscapeによると、「コスプレとはコスチューム・プレイの略で、狭義にはマンガやアニメ、ゲームなどのキャラクターと同一の服装、メイク、髪型にすること。日常的なファッションとは異なり、主にコミケ(コミックマーケット)やコスプレイヤー(コスチューム・プレイヤー)が企画したイベントなど限定された空間においてなされる」と定義されています。

諸説ありますが、世界SF大会の影響を受けた日本SF大会で1970年代から仮装コンテストが開催され、1980年代のアニメブームでは「機動戦士ガンダム」の主要キャラや「うる星やつら」のラムなどに扮する若者が各地で出現しました。和製英語の「コスプレ」という用語が、アニメ誌・サブカル誌にとどまらず一般マスメディアで紹介され始めたのは、この頃からです。

1990年代には「美少女戦士セーラームーン」や「新世紀エヴァンゲリオン」が国内外で人気を集め、東京ディズニーランドやカワサキハロウィンに代表されるハロウィン大規模仮装イベントの開催、「東京ゲームショウ」など大型展示会へのコスプレイヤー参加、コスパなどコスプレ衣装製造・販売業者の登場と店舗拡大などが重なって、普及に拍車がかかりました。

2000年代のインターネット普及、2010年代のスマホとSNSの普及によって、遊園地・公園・撮影スタジオなど各地のコスプレイベント開催情報が共有化されました。その後もコスプレイヤー自身による情報発信と、カメコ(カメラ小僧)と呼ばれるアマチュアカメラマンとの共生関係によるコミュニティ化・商業化が進み、今では日本が世界に誇る現代文化の一つになりました。2003年に名古屋で初開催された世界コスプレサミットには世界各国からコスプレイヤーが集結し、2019年には来場数30万1750人を記録しています。ちなみに、Googleトレンドで2004年以降の国内での「コスプレ」検索状況を調べたところ、2017年をピークとして毎年10月に検索数が増えており、関連キーワードでは「ハロウィン」がトップに挙げられています。これらの結果から、ハロウィンの仮装によってコスプレが一般化した様子が窺えます。

2020年以降のコロナ禍では、各種展示会やハロウィンなどのイベントが軒並み中止になりました。2021年12月30日・31日にはコミケ(C99)が2年ぶりに開催されましたが、感染防止対策のため、来場者が過去最大だった2019年(C96)の4日間73万人に遠く及ばない2日間11万人にとどまっています。なお、矢野経済研究所の「オタク」市場に関する調査によると、2020年度の国内コスプレ衣装市場規模は240億円で前年比68.6%でした。

推しキャラへの強いなりきり願望を具現化したコスプレイヤー

ここで、2020年9月に日本全国の男女3-74歳2,000名を対象に実施した「キャラクター定量調査2020」結果から、アニメ・マンガキャラクターのコスプレ経験を紹介します(図表1)。

図表1.性・年齢別:アニメ・マンガキャラクターのコスプレ経験
Q.  以下にあげる中で、あなたご自身の行動に当てはまるものがございますか。

アニメ・マンガキャラクターのコスプレ経験者は、男女3-74歳全体の7.5%です。男子ティーンと男性20-34歳で特に多く、「かなり当てはまる」と答えたコア層は女性20-34歳で多くなっています。一般的にマスメディアで紹介されるコスプレイヤーは女性が多い印象ですが、女性コア層が積極的にSNSで情報発信し、フォロワーを多く獲得していることを反映した結果だと推察されます。また、「まあ当てはまる」と答えたライト層には、ディスカウントストアなどで市販されている安価な衣装を購入して気軽にハロウィンのイベントに参加する人たちも多く含まれていると思われます。

キャラクターのコアファンとマンガのコアファン(それぞれ「キャラクターが好きなほうである」「マンガが好きなほうである」の質問に、「かなり当てはまる」と回答:男女3-74歳全体に占めるシェアはともに約15%)では、アニメ・マンガキャラクターのコスプレ経験が約2割で、ライトファン(同質問に「まあ当てはまる」と回答)以下の層を大きく引き離しています。これらの結果から、アニメ・マンガキャラクターのコスプレイヤーは、キャラクターやマンガのコアファンたちのコンテンツへの愛着が高じて、推しキャラになりきりたい、自分の姿を周囲にアピールしたい、という強い自己表現願望を具現化した存在であることがわかります(図表2)。

図表2.キャラクターファン・マンガファンタイプ別:アニメ・マンガキャラクターのコスプレ経験

コスプレイヤーをキャラクターの接点として考える際に留意すべきこと

インターネットやSNS、ハロウィンの普及で注目されるようになったコスプレですが、基本はファン主導型の文化であり、マスメディアや企業が容易にはコントロールしにくい現象です。そこで、どのようにすればプロモーションに活かせるのか、いくつかヒントを記してみました。

人気コスプレイヤーとの納得感のあるコラボを行う

えなこ(Twitter 142.4万フォロワー、Instagram 183.2万フォロワー)を筆頭として、世間に広く知られているコスプレイヤーは多数います。旬の存在として彼女たちが特撮ドラマや一般企業の広告に起用されるケースも増えています。アイドルやグラビアモデルとの境界も曖昧な今どきの「人気タレント」である彼女たちには、インフルエンサーとしての発信力が期待でき、少年マンガ誌や青年マンガ誌の表紙やグラビアページを飾った場合、雑誌の売上アップをもたらすことも可能です。

ただし、どんなにタレントとして一般層の人気を集めても、コスプレイヤーとしての基本である「作品ファンが納得するだけの見た目の再現度、キャラへのリスペクトや愛着・理解」が強く感じられない場合は、コア層への効果が半減します。また、これは人気の高いタレントやキャラクターと同様の現象ですが、あまりに多くのメディアに露出しているコスプレイヤーを起用した場合は、コスプレイヤーばかりが記憶に残る一方、コラボしたマンガコンテンツや企業商品への注目が疎かになる、「バンパイヤ効果」が起こるリスクにも注意すべきでしょう。

コラボカフェや展示会イベントとの効果的な連携を考える

マンガやアニメ作品とのコラボカフェや、東京ゲームショウ、アニメジャパンなど展示会イベントで、衣装や髪型などでスタッフに登場キャラのコスプレをさせることで、場が華やかになり、作品の世界観を伝えやすくなります。この場合、コストや時間の制約から、本物のコスプレイヤーでなくオーディションで選んだモデルやアルバイトを使うことも多くなりますが、目の肥えたファンを失望させないよう、事前レクチャーで作品やキャラの設定や性格などを伝えておくことが大切です。また、コスプレ姿で来場した一般参加者に限定特典を進呈するなどの施策を行うことで、熱心なファンの来場、会場の盛り上がりや一体感の醸成、SNSでの共有喚起などの効果が期待できます。

コスプレイヤー向けに撮影スポットや情報提供・発信の場を用意する

一般コスプレイヤー向けの施策として、コンテンツホルダーや地方自治体が、コスプレイヤーやアマチュアカメラマンを含むコアファン向けに、マンガやアニメの作品舞台となった聖地や人気撮影スポットを紹介し、時にはコンテストも行うことで、作品PRや街おこしに活かすことができます。その場合は、公園など公共施設の無料(もしくは低額での)開放や、コスプレイヤーたちが着替えてメイクできる場所の提供を行うなどホスピタリティに配慮するべきです。その一方、近隣住民とのトラブル回避のため、周辺の撮影OKスポットだけでなく、個人宅など撮影NGスポットを記した印刷物やWEB画面を用意しておくことも望まれます。

講談社作品に関連するコスプレイヤー活用事例

最後に、講談社の人気マンガキャラクターに関連するコスプレイヤー活用事例を紹介します。

「週刊少年マガジン」ラブコメ4作品×えなこ・コラボグラビア

2021年6月16日発売『週刊少年マガジン』29号の表紙とグラビアページにて、ラブコメ4作品『生徒会役員共』『カッコウの許嫁』『カノジョも彼女』『黒岩メダカに私の可愛いが通じない』とのコラボでコスプレ制服姿を披露。えなこが「週刊少年マガジンの表紙の衣装 みんなもうゲットした?」とコメントしたInstagram書き込みには、12.1万件の「いいね!」が付きました。その後も11月17日発売の『週刊少年マガジン』51号で、同号で完結した氏家ト全さんの4コママンガ「生徒会役員共」のコスプレ制服姿を披露しています。
>参考記事1
>参考記事2
>参考記事3

「週刊ヤングマガジン」異世界漫画×コスプレイヤー・2.5次元コラボグラビア

公式WebサイトのヤンマガWeb連動企画「ヤンマガ2.5次元グラビア!異世界系新連載4連発‼」として、4週にわたって異世界コスプレ企画を掲載。その出張版として、2021年11月8日発売『週刊ヤングマガジン』50号で、コスプレイヤーの未梨一花、ちょころいど、はたのゆうがグラビアに登場しました。未梨は『ハズレスキル「逃げる」で俺は極限低レベルのまま最強を目指す〜経験値抑制&レベル1でスキルポイントが死ぬほどインフレ、スキルが取り放題になった件〜』の朱野城芹香、『Sランクパーティから解雇された【呪具師】~「呪いのアイテム」しか作れませんが、その性能はアーティファクト級なり......!~』のモーラに、ちょころいどは『技巧貸与<スキル・レンダー>のとりかえし~トイチって最初に言ったよな?~』のコエ、はたのゆうは『美龍艶笑譚~自己肯定感が激低なドラゴン級美少女魔王を、勇者がイチャラブで退治するお話~』のイヴェールにそれぞれ扮しています。
>参考記事

「マガジンポケット」×伊織もえ・「東京卍リベンジャーズ」特攻服コスプレグラビア

「週刊少年マガジン」と「別冊少年マガジン」の人気漫画が読める無料マンガアプリ「マガジンポケット」で、『東京卍リベンジャーズ』特別企画として、コスプレイヤー伊織もえによるマイキーの特別コスプレグラビアを2017年9月27日から公開しました。
>参考記事

「別冊フレンド」×ゆうたろう・「王子様には毒がある。」SPコスプレ&インタビュー!

2017年11月の「王子様には毒がある。」第6巻発売を記念して、美少年モデルゆうたろうが登場キャラ颯太に扮して「別冊フレンド」11月号とWebサイトにコスプレショットとインタビューを掲載。期間限定で第1巻から第6巻に、ゆうたろうのコスプレポストカードを封入しました。

講談社「チャイコス」プロジェクト


中国の有名コスプレイヤーや注目の新人コスプレイヤーたちの情報を伝え、電子書籍「チャイニーズコスプレイヤーデジタルシリーズ」などを制作。講談社のマンガ、アニメや女性誌とコラボも進めています。

今回は以上です。
コスプレイヤーのマンガ誌表紙やグラビアページ掲載は今や当たり前のように各誌で展開されており、少年マンガや青年マンガだけでなく、女性マンガとも相性が良いことをあらためて実感します。2.5次元俳優との境界線も低くなっており、両者のコラボが増えそうです。著作者側でないコスプレイヤーや利用企業が商業活動をする際には、不正競争防止法を侵害しないよう節度を守ることが必要で、著作権ルール化の動きもありますが、マンガやアニメを世界展開する上で、国内外のコスプレイヤー活用には大きな可能性が感じられます。

なお、C-stationにはキャラクターコラボ事例が多数紹介されていますので、ぜひご覧ください。
次回は、マンガキャラクターを使ったプロモーションとして、動画配信サービスの活用事例について語る予定です。どうぞお楽しみに。

<バックナンバー>
第1回:調査データにみる日本人とマンガ・キャラクターの関係
第2回:データでわかった、キャラクターが提供する体験と効果の実像
第3回:キャラクターが誰に、どのように効くのか可視化する
第4回:Twitterの書き込みからマンガの情報拡散を分析する
第5回:Googleトレンドから見えた、マンガ・キャラクターの人気傾向とクラスタリング
第6回:最新調査で探る各種マンガコンテンツの「広がり」と「熱さ」
第7回:DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むキャラクターとユーザーとの接点
第8回:ユーザーへの提供体験は、キャラクターによってどう異なるか
第9回:どんな体験提供がキャラクターの魅力を高めるのか
第10回:(続)どんな体験提供がキャラクターの魅力を高めるのか
第11回:マンガを使ったプロモーションに際して考えるべきこと(ターゲット編)
第12回:《番外編》「進撃の巨人」が読者に提供した体験とSNSでの反応
第13回:マンガを使ったプロモーションに際して考えるべきこと (コア体験の強化編)
第14回:マンガを使ったプロモーションに際して考えるべきこと (クリエイティブ事例編)
第15回:接点別にみたマンガ活用プロモーション(コンビニ編)
第16回:接点別にみたマンガ活用プロモーション(コラボカフェ編)
第17回:接点別にみたマンガ活用プロモーション(2.5次元舞台編)
第18回:接点別にみたマンガ活用プロモーション(聖地巡礼編)
第19回:接点別にみたマンガ活用プロモーション(美術展・展示会編)
第20回:接点別にみたマンガ活用プロモーション(屋外・交通広告編)

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務で活動中。

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