2020.06.30

データでわかった、キャラクターが提供する体験と効果の実像| マンガキャラクター 活用の極意と最新事情<第2回>

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルス感染予防のための自粛措置は徐々に緩和され、都道府県を跨いだ移動も原則OKになりました。テレビドラマやテレビアニメ、映画の製作・放送も再開されつつあります。キャラクターに関する最新定量調査を企画中の筆者としては、どの時点で調査実施すべきなのか、判断が悩ましいところです。

私たちにさまざまな体験を提供するキャラクター

第1回では、日本で"キャラクター好き" の人が約5割を占めており、キャラクターが空気や水のように当たり前に存在していること、そして様々な出自のキャラクターが支持され、男性はマンガ原作のキャラクターなど少年期に好きだったものへの思い出をいつまでも忘れないこと、女性は全般にファンシー系を支持するなかで学生層は「マンガ原作系」のシェアも高めなこと、などをご紹介しました。

今回は、キャラクターと生活者の関係について掘り下げてみます。
具体的には、キャラクターがどんな体験価値を提供しているのか? キャラクターを活用した商品やサービス、広告に触れることでどんな効果が期待できるのか? についてご紹介します。

図表1は、2018年3月に日本国内在住の男女3~74歳4,500名を対象として、楽天インサイトへの委託で実施したキャラクターパワーリサーチです。
「あなたは、『キャラクター』を通して『どんな気持ちになりたい』と思っていますか?」との質問に「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合で、「好きなキャラクターや気になるキャラクターを思い浮かべながらお知らせください」と注釈を付けたうえでの回答です。
計21の質問項目を多変量解析の一手法である因子分析を用いて5つに集約し、筆者が命名した因子名を、《癒し・安らぎ》のように《 》で表記しています。

図表1. 好きなキャラクターに接することで、どんな気持ちになりたいか



男女3-74歳全体の5割以上が「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答したのは、「楽しい気分になりたい(61.4%)」「癒されたい(57.9%)」「元気になりたい(55.0%)」「ほっとしたい(52.6%)」です。
これらの結果から、キャラクターが生活者に提供する体験価値で最も大きいのは《癒し・安らぎ》だとわかりました。

他にも、「身の回りにつけたり、飾っておきたい(33.8%)」など《収集・コミュニケーション》、「一緒に遊びたい(30.5%)」など《カタルシス・非日常感》、「懐かしい思い出にひたりたい(28.9%)」など《郷愁・幼年回帰》、「役に立つ知識を得たい(28.4%)」など《参加・注目・同一視》、といったさまざまな体験を提供していることがわかりました。

体験とその変化は、属性によってはっきり現れる

次に図表2で、キャラクター提供体験に関する主な項目の回答結果を、性と年代別に見てみました。

図表2. 性・年代別:主な提供体験項目の回答結果

《癒し・安らぎ》のうち「楽しい気分になりたい」は、キッズ(園児・小学生)が男女共通して7割以上と高く、中学生以上は女性で高くなっています。「癒されたい」は全般に女性で高く、特に20-34歳(F1)では7割以上に達しています。また男性でも、キッズから20-34歳(M1)の過半数がキャラクターによる癒しを求めています。
《収集・コミュニケーション》のうち「身の回りにつけたり、飾っておきたい」は、全般に女性で高く、特にキッズとティーンでは5割前後を占めます。この年代はバッグなどに好きなキャラクターのぬいぐるみやキーホルダーを付けていることが多く、大いに頷ける結果です。
《カタルシス・非日常感》のうち「一緒に遊びたい」は、圧倒的に男女キッズで高くなっています。また女子ティーンや男女20-34歳でも比較的高く、これらの年代の異性キャラクター攻略スマホアプリゲームに対する一部の熱いニーズを反映した結果では、と感じています。
《郷愁・幼年回帰》のうち「懐かしい思い出にひたりたい」は、男女とも20-34歳、次いで35-49歳で高く、特に男性で高くなっています。男が過去の思い出を忘れられない生き物であることをうかがわせる結果です。
《参加・注目・同一視》のうち「役に立つ知識を得たい」は、男20-34歳(M1)と男女キッズ・ティーンで高く、グルメ、歴史、特定職業などを題材にした蘊蓄系、実用系のマンガ・アニメがこれらの層に好評なことが頷けます。

これらキャラクターによる提供体験が性・年代でどう変わっていくのか、多変量解析の手法の一つであるコレスポンデンス分析を使って可視化してみましょう。
図表3の知覚マップでは、各々の性・年齢と関連が高い提供体験項目が近くにプロットされており、原点からの方向が同じ項目同士は関連が高いことを表しています。
縦軸は年代による嗜好の違いを表し、上に行くほどキッズが、下に行くほど中高年代が、キャラクターに接することで得たいと思っている体験になります。横軸は性別による嗜好の違いで、右は男性、左は女性が、キャラクターに接することで得たいと思っている体験です。

図表3. 好きなキャラクターに接することで、どんな気持ちになりたいか(コレスポンデンス分析)

まず男女とも園児・保育園児から小学校低学年は「服装や恰好、グッズやアイテムで、登場人物になりきりたい」「しぐさやポーズ、セリフを真似したい」「一緒に遊びたい」など、好きなキャラクターになりきる"ごっこ遊び"で友達とコミュニケーションをとっています。この年代は男女による違いが少なく、プリキュア好き男子や仮面ライダー好き女子に象徴されるように、キッズのジェンダーレス化をうかがわせる結果です。

小学校高学年になると男女の差は一気に拡大します。男子が小学校低学年の頃からあまり成長せず、なりきりでカードゲームなどに明け暮れているのに対し、女子は「みんなからオシャレだと思われたい」「同じキャラクターが好きな人同士で盛り上がりたい」「グッズやアイテムを集めてみたい」「身の回りにつけたり、飾っておきたい」と、他者の目を意識するようになって、玩具や文具、日用雑貨などのキャラクターグッズが自己表現や友達の証を表すコミュニケーションツールとして機能するようになります。この傾向は女子中高生や20代も同様です。

男子中高生は「別の世界に連れて行ってほしい」「勇気づけてほしい」「夢や希望がほしい」「元気になりたい」「気分転換したい」など、スクールカーストの息苦しさや受験勉強に追われる生活の息抜き、現実逃避手段として、マンガやアニメ、映画、ゲームなどキャラクターコンテンツの物語・ストーリーや世界観に没入するようになります。この傾向は大学生や20-30代も基本的に変わらず、「日常では味わえないスリルや冒険を感じたい」との思いが強まります。

男40代以上は「子どもの頃の自分に戻りたい」「懐かしい思い出にひたりたい」と、キャラクターが若かりし頃のノスタルジーの象徴になります。ヤマト、ガンダム、マジンガーZ、スターウォーズなど、以前ヒットしたアニメや映画のリメイク版に最も反応するのはこの年代ですが、残念なことに妻子には理解されず、思い出を噛みしめながら一人寂しく鑑賞している様子をよく見かけます(笑)。

女30代以上は「癒されたい」「楽しい気分になりたい」「ほっとしたい」など、家庭や職場、育児の疲れを癒してくれる存在として、キャラクターが存在意義を発揮します。キャラクターに限らず男性アイドルグループや、かつてヒットした「冬のソナタ」のヨン様は、まさにこの層の切実なニーズに見事に合致した理想の彼氏や息子として大ブームになったのでは、と感じています。

各々の性・年代がキャラクターに求めるものをまとめると、キッズは「コミュニケーション」、中高年は「パーソナル」、男性は「物語・ストーリー」、女性は「自己の分身」です。
男性は自分だけではどうにもならない社会の一員であることを自覚してか、登場キャラクターの誰かに感情移入し、物語やストーリーに没入していきます。
それに対して女性は、現実の生活をそのまま受け入れるよりも、友達や彼氏や息子、ペットの代わりに、自分の願望を受け止めてくれる分身としてキャラクターを配置してストレス発散、気の合う仲間と思いを共有します。
男性は地動説、自分が理不尽な世界に組み込まれた一構成員となることで、女性は天動説、自分にとって心地よい世界の中心になることで、キャラクターへの熱量が高まっていくのではないでしょうか。このあたりのメカニズムについては、引き続き検証していきます。

注目度だけでなく「活用企業・団体への興味や好感度」も高める効果

最後に、いよいよ「キャラクターがもたらす効果」について、見ていきましょう。
図表4は、同じくキャラクターパワーリサーチで、「『キャラクター』が、パッケージ・おまけなどで商品に付いたり、広告で使われることで、その商品や広告についてどのようにお感じになりますか?」との質問に「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合です。
こちらも「好きなキャラクターや気になるキャラクターを思い浮かべながらお知らせください」と注釈を付けた上での回答で、計26の質問項目を因子分析で4つに集約し、筆者が命名した因子名を《注目・好意・記憶》のように《 》で表記しています。

図表4.キャラクターが商品や広告に使われることで、どんな効果が見込めるか

男女3-74歳全体の5割以上が「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答したのは、「目にとまりやすくなる(63.6%)」「意識しなくても、つい視野に入ってくる(52.9%)」「キャラクターを見かけた時に、その企業や商品の広告が思い浮かびやすくなる(52.2%)」などの《注目・好意・記憶》です。
他にも、「家族や友人との共通の話題になる(40.1%)」など《話題共有・拡散》、「言っていることが、わかりやすくなる(38.4%)」など《安心感・信頼・評判》、「その企業の商品をほしくなる・サービスを利用したくなる(36.8%)」など《探索・書込み・購入喚起》、といった様々な活用効果が見込めることがわかります。
簡潔にまとめると、キャラクターを使うことで、注目が高まるだけでなく、活用企業・団体への興味や好感度も高まることを裏付ける結果だと言えるでしょう。

今回はここまでです。かなり多くのデータをご覧いただいて、お疲れかもしれませんね。
しかし、このような調査と分析によって、いままでぼんやりとしか掴めていなかったキャラクターの活用の効果を可視化していただけたのではないでしょうか。
来月の第3回では、キャラクター活用効果の続きと「マンガの種類とターゲット」について語ります。どうぞお楽しみに。

<バックナンバー>
第1回:調査データにみる日本人とマンガキャラクターの関係

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授として、現在は法政大学経営大学院で学びながら、駒澤大学や福井工業大学で講師も務める。

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