2021.07.20

接点別にみたマンガ活用プロモーション(コンビニ編) | マンガ・キャラクター 活用の極意と最新事情<第15回>

ついに東京オリンピックが開幕します。再度の緊急事態宣言でほとんどの競技が無観客になり、コロナ感染拡大防止のためチケット当選者も観戦を諦めざるを得ない状況です。これらの矛盾した事象によるモヤモヤ感は、飲食店のアルコール提供禁止を巡るゴタゴタについても言えることで、日本各地がまさにフェスティンガーが唱えた「認知的不協和理論」の場と化しているようです。
マーケティングコミュニケーションの現場で働いてきた身としては、いまこそ生活者が抱える不安や理不尽さを少しでも払拭する施策や心に響くメッセージを国や都のトップに期待したいところですが、ワクチン接種の遅れもあってかそんな余裕はなさそう。なんともやりきれないところです。

さて、先月はマンガを使ったプロモーションに際しての「クリエイティブ事例編」として、以下の内容をまとめました。

  • 耐久経験消費財としての性質を持つキャラクターグッズ
  • こだわり抜いたコラボグッズで、SNS拡散や店舗・ECサイト誘引につなげる(少年マンガ事例 :進撃の巨人、五等分の花嫁)
  • 原作マンガ独自の世界観をオリジナルコンテンツやイベントで増幅、自然な形で理解・啓発(青年マンガ事例:島耕作、はたらく細胞)
  • 共感できるナビゲーターとして、ターゲットの苦手意識を払拭することも可能(女子マンガ事例:東京タラレバ娘、美少女戦士セーラームーン)
  • 「アテンションゲッター」「ナビゲーター」「ソーシャルコミュニケーター」など、目的に応じた役割

今回からは、マンガを使ったプロモーションのポイントについて主要接点別に解説していきます。初回は、コンビニエンスストアに焦点を当てていきましょう。

コンビニのヘビーユーザーは20~50代男性

日本フランチャイズチェーン協会(JFA)のコンビニエンスストア統計調査月報によると、2021年5月のJFA正会員店舗数は日本全国で55,889店、来店客数は月間12億9784万人。もはや全国民の生活に欠かせないインフラです。食品・飲料、アルコール類やたばこの販売はもちろん、いまはコピー・プリントやイベントチケット発券、通販商品受け取りなどの各種サービスも充実しています。
一方で、食玩や低価格の菓子も豊富、キャラクターくじ販売の主要接点でもあり、キッズにとってはかつての駄菓子屋的な位置付けも担っています。

少し古いデータですが、2016年 4-6月に男女12-69才10,815名を対象として計7地区(東京50km圏+関西+名古屋+北部九州+札幌+仙台+広島)で実施したビデオリサーチ「生活者総合調査(ACR/ex)」によると、コンビニのヘビーユーザーは20~50代男性です。特に20代男性では「月31回以上」の超ヘビーユーザーが約10%と多く、単身者が多く含まれる若い男性の生命をつなぐライフラインとして機能していることがわかります。

また2017年2月にマクロミルが全国の15~59歳男女10,416人に対して実施した(財)流通経済研究所の調査(「インストア・マーチャンダイジング」に掲載)によると、コンビニでの非計画購買(衝動買い)が特に多いのは、総菜、アイス、スナック菓子、炭酸飲料です。コンビニでの購入機会が多いこれらのカテゴリーは、店舗に来てから初めて何を買うか決める人が多いため、店内プロモーションが特に有効というわけです。

コンビニでのキャンペーンやコラボグッズは、キッズや女性をコンビニに呼び込む

ここで、これまで幾度も用いた、2020年9月に日本全国の男女3-74才2,000名を対象に実施した「キャラクター定量調査2020」結果から、コンビニ廻りの接点でのキャラクター接触状況を紹介します(図表1)。

図表1.性・年齢別:コンビニ廻りでのキャラクター接触率

Q.次にあげるものの中で、あなたがふだん、お好きなキャラクターや気になるキャラクターと接することが多いのはどれですか?

この質問に対し、コンビニ廻りと関わりのある接点である「コンビニ・スーパーのキャンペーン/飲料・食品のおまけ」と「食玩/コンビニくじなど」の回答結果をピックアップしました。

性・年齢別:コンビニ廻りでのキャラクター接触率

「コンビニ・スーパーのキャンペーン/飲料・食品のおまけ」でのキャラクター接触者は男女3-74才全体の36.5%です。女子キッズとF1(女20-34才)で最も多く、次いで男子キッズ、男女ティーン、M1(男20-34才)、F2(女35-49才)で多くなっています。

また「食玩/コンビニくじなど」でのキャラクター接触者は男女3-74才全体の36.0%で、コンビニキャンペーンでの接触者とほぼ同じです。男女キッズ(特に女子)で最も多く、男女ティーン、M1、F1が続きます。

性・年齢別:おまけのキャラクター目当てでの商品購入経験

同じ「キャラクター定量調査2020」から、コンビニに限らずおまけでついているキャラクターが目当てで商品を買うことが多い人は、男女3-74才全体の28.6%となっています。「食玩/コンビニくじ」と同じく、男女キッズ(特に女子)で多く、男女ティーン、M1、F1が続きます。

図表2.性・年齢別:おまけのキャラクター目当てでの商品購入経験

性・年齢別:おまけのキャラクター目当てでの商品購入経験

この結果から、「コンビニで指定の菓子・飲料を買うと、おまけでキャラクターのクリアファイルやアクリルキーホルダーなどオリジナルグッズがもらえるキャンペーン」や「キャラクターをモチーフにした菓子やスイーツ、飲料、パン、おにぎり、弁当、総菜品などのコラボグッズ」は、成人男性層と比べてコンビニのヘビーユーザーといえないキッズや40代以下女性を呼び込み、ついで買いを促進させるために有効であることがわかります。
いまも各店舗でこれらの施策が日常的に継続していることから、若干の当たり外れはあるにせよ、総じて計画以上の効果をあげているのでは、と推察できます。

特に、パン・弁当・おにぎりなど、ブランドとして差別化しにくい日配食品カテゴリーは、キャラクターを使うことで、味や価格とは別の強みを持つオリジナルメニューとしての展開が可能です。接触機会も多いことから、競合との差別化ポイントや、購入を後押しするきっかけになり得ます。

コンビニをキャラクターの接点として使う際に留意すべきポイント

店頭や店内での視認性アップを工夫する

一般的に、コンビニは必要なものだけを買いに立ち寄ることが多いため、スーパーマーケットなどと比べて滞在時間が短いと言われています。加えて、いまは同じ時期に同一店舗で、複数のキャンペーンやコラボグッズ、コンビニくじが展開されることも珍しくありません。
そんな状況下で注目を集めて、計画外のついで買いを促進するには、店頭や店内の目立つ場所に商品やPOPを配置し、わかりやすいメインビジュアルを用意すべきです。通行人の注意を惹くような、のぼりやデジタルサイネージも効果的でしょう。

作品の世界観やキャラクターの設定を十分に理解した内容にする

いま人気絶頂の作品キャラクターであれば、単に版権イラストをパッケージに記載するだけでも注目されて商品が売れるでしょうが、そうでない場合は、限定感やお値打ち感が創出されません。
たとえば、登場キャラクターが好物の食べ物や飲み物でコラボを行う、作品の名シーンを想起させるような複数キャラクターの組み合わせ、あまり他社では使われない三番手、四番手以降のキャラクターを敢えて前面に出す、などです。
ファンが納得したり、意外なギャップを楽しんだり、友達やファン仲間に発信したくなるようなビジュアルやストーリーを考えることが重要です。

購入したくなるきっかけや言い訳を用意する

指定の菓子や飲料の購入でオリジナルグッズがおまけでもらえる昔ながらの施策も、その作品のコアファンにとっては十分にお得感を打ち出せます。ただもう少しアレンジして、週替わりでオリジナルグッズの内容を変えるなどの施策によって消費を促進し、リピーターを増やすことができるでしょう。
そして、おまけは文房具やエコバッグ、ペットボトルカバー、ミニタオル、マスクなど、本人や家族にとって実用性のある品物であることが望ましいです。家族から「またムダなものをもらってきて」などと言われることなく、購入を一押しする大きな要因となります。

コンビニヘビーユーザーやキャラコアファン以外への発信・共有を図る

コンビニキャンペーンやコラボグッズの情報は、ハッシュタグキャンペーンなど購入者のSNS掲載を促す仕掛けを用意することで拡散し、意外な広がりを見せます。
まだ一般の知名度が低くても熱量が高いファンが確実に存在するキャラクターの場合、オリジナルグッズが品切れとなって店頭からすぐに姿を消す事態が見受けられますが、これは決して機会損失ではありません。コアファンたちがグッズを懸命に探す一連のSNS書き込みを見た第三者が、このキャラクターは今そんなに人気なのか、と驚き、自分も読んでみよう、見てみよう、という気持ちを高める契機となります。

講談社の最近のコンビニキャンペーン事例

最後に具体例として、講談社の人気マンガキャラクターを使った最近のコンビニキャンペーンを紹介します。

ファミマの進撃 進撃の巨人キャンペーン

2021年6月22日~7月12日
菓子や加工食品などの対象商品3点購入でオリジナルグッズをプレゼント
第1弾 B5サイズ記憶の旅ノート・4種(6月22日~7月5日)
第2弾 調査兵団の調査報告付箋・4種(7月6日~7月12日)
対象商品1品以上を含む500円以上のレシートで応募可能、オリジナル賞品はA賞:オリジナルカードコレクションシリーズ、B賞:マイクロファイバービッグタオル
コミックス最終巻が発売され、秋のテレビアニメ開始を待つタイミングで、マンガ原作のコマを使った多くの登場キャラたちの名場面と名セリフを追体験できるグッズが用意されました。
ノートと付箋という実用性が高く、実際に使った際には友人からも注目されること確実なグッズである点がポイントです。
キャンペーンHP>>

セブンイレブン 東京リベンジャーズキャンペーン

2021年7月9日~7月22日まで
対象のソフトドリンク2本購入でアクリルキーホルダー(全7種)をプレゼント
テレビアニメが2クール目を迎え、旬の人気俳優が多数出演する劇場版実写映画の公開に合わせたタイミングで展開。テレビアニメや映画のオリジナルブロマイドやグッズを販売する施策に合わせたものです。
アクリルキーホルダーは瞬時に店頭から姿を消したようで、SNSでは「何軒も回ってようやくゲットした!」「結局ゲットできなかった...」など、女性と思われる書き込みが多数見られます。
キャンペーンHP>>

今回は以上です。前回もお知らせした通り、C-stationにはキャラクターコラボ事例が多数紹介されているので、是非ご覧ください。

次回は、マンガキャラクターを使ったプロモーションとして、最近増えているコラボカフェでの活用事例について語る予定です。どうぞお楽しみに。

<バックナンバー>
第1回:調査データにみる日本人とマンガ・キャラクターの関係
第2回:データでわかった、キャラクターが提供する体験と効果の実像
第3回:キャラクターが誰に、どのように効くのか可視化する
第4回:Twitterの書き込みからマンガの情報拡散を分析する
第5回:Googleトレンドから見えた、マンガ・キャラクターの人気傾向とクラスタリング
第6回:最新調査で探る各種マンガコンテンツの「広がり」と「熱さ」
第7回:DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むキャラクターとユーザーとの接点
第8回:ユーザーへの提供体験は、キャラクターによってどう異なるか
第9回:どんな体験提供がキャラクターの魅力を高めるのか
第10回:(続)どんな体験提供がキャラクターの魅力を高めるのか
第11回:マンガを使ったプロモーションに際して考えるべきこと(ターゲット編)
第12回:《番外編》「進撃の巨人」が読者に提供した体験とSNSでの反応
第13回:マンガを使ったプロモーションに際して考えるべきこと (コア体験の強化編)
第14回:マンガを使ったプロモーションに際して考えるべきこと (クリエイティブ事例編)

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務で活動中。

講談社が提供する各種プロモーションサービスのご利用に関するお問い合わせ・ご相談はこちら