2019.08.07

食マンガとビジネス〜「うまそう!」の訴求力は強い │ 南信長さんが語る食マンガと企業コラボ

オールタイムで愛され、ドラマ化、アニメ化作品も膨大。ベストセラーを供給し続けている食マンガは、どのようにして生まれ、これからどこに行くのか。『マンガの食卓』(NTT出版)著者であり、朝日新聞読書面コミック欄ほか各紙誌でマンガ関連記事を企画執筆、2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務めるマンガ解説者・南信長さんにお話をうかがう企画。最終回の今回は、インスタント食品とのコラボメニューから、調理家電のイメージアップまで。食マンガの訴求力を生かしたビジネスやマーケティングについて、南信長さんがポイントを語ります。

食マンガはコラボ事例の宝庫

食マンガの企業とのコラボ事例は、それこそたくさんあります。例えば『孤独のグルメ』はNEXCO東日本、つまり高速道路とコラボして、「孤独のドラめし」というガイド冊子を配布していました。

最近はサービスエリアもグルメを押し出しているところが多いじゃないですか。いろんなサービスエリアを井之頭五郎が食べ歩くというコラボです。

『クッキングパパ』は日清食品とコラボしていましたし(「日清のごんぶと×クッキングパパ 荒岩流鶏だしカレーうどん」「日清Spa王×クッキングパパ 荒岩流イカスミブラック」)、クックパッドとコラボして本編と再現レシピの配信も行っていました。

『おとりよせ王子 飯田好実』はもともと実在の商品を登場させている作品ですが、国分の「缶つま」とマンガ×ウェブ×実店舗でのコラボを行ったほか、ユニーのお中元カタログのキャラクターにも起用されました。

チェーン店はマンガに積極的にアプローチすべき

いまは食マンガに限らず、リアルさが求められています。デニーズをもじって「デリーズ」みたいな名前のファミレスを登場させるよりも、そのままデニーズにして実際のメニューが出てきたほうがリアルだし、作品側にとっても企業側にとっても相乗効果がある。

だから、ファミレスや飲食チェーン店などは、申請すればOKとかライトなスタンスで、むしろ積極的に作中に登場させてくれぐらいの勢いで、マンガにアプローチしても良いかもしれません。

例えば舞台になったチェーン店があれば、その店舗限定でコラボメニューを作るとか。そういうのがあると、期間限定とか店舗限定とかはみんな好きなので、聖地巡礼感覚で訪れてくれるファンはけっこういると思います。

あの料理の再現や小道具とのコラボ

また、企業側がマンガのインパクトのある料理を再現する方向性もありでしょう。昔、サークルKサンクスが『おそ松くん』のチビ太のおでんをずっと売り出していましたし、『ギャートルズ』のあの肉を商品化する企業もありました。『包丁人味平』のブラックカレーの商品化とか、絶対ウケると思うんですよね。

また、これはうちの嫁の話なんですが、『きのう何食べた?』のドラマを熱心に観ていて。提供がパナソニックなので、出てくる調理家電も全部パナソニックらしいんですよ。嫁はそのドラマが好きすぎて、「パナソニックの調理家電を買わなければ」とまで言い出すほどでした。

それはドラマの話ですが、マンガでも作画素材として自社の家電の3Dデータを提供するというのもアリではないかと。そこまでじゃなくてもいろんな角度からの写真があれば漫画家は助かりますよね。そういうふうに、料理はもちろんですが中に出てくる家電や小道具とかとのコラボも可能性を感じます。

中に入っていくパターンと外に出ていくパターン

食マンガの中に実在のお店やメニュー、商品などが入っていくパターンと、作品内のメニューなどが商品化で外に出ていくパターン。両方あると思いますが、「うまそう!」の訴求力は強いので、今後さらに強力なコラボが生まれていくことを期待したいです。

>「プロの料理」から「素人の料理」へ │ 南信長さんから学ぶ食マンガの歴史①
>「作る」→「食べる」→「語る」→「めでる」 │ 南信長さんから学ぶ食マンガの歴史②
>料理ジャンルの細分化&複合化 │ 南信長さんから学ぶ食マンガの歴史③
>情報性を加えた「使える」食マンガ │ 南信長さんから学ぶ食マンガの歴史④

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