2019.07.25

情報性を加えた「使える」食マンガ │ 南信長さんから学ぶ食マンガの歴史④

オールタイムで愛され、ドラマ化、アニメ化作品も膨大。ベストセラーを供給し続けている食マンガは、どのようにして生まれ、これからどこに行くのか。『マンガの食卓』(NTT出版)著者であり、朝日新聞読書面コミック欄ほか各紙誌でマンガ関連記事を企画執筆、2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務めるマンガ解説者・南信長さんにお話をうかがいました。

ポイント④情報性を加えた「使える」食マンガ
グルメガイド化・料理本化する作品たち

食マンガの進化でもうひとつ見逃せないのが、「使える」作品が増えてきたということです。実在のお店を舞台にしたり、レシピを載せたりして、グルメガイドや料理本のような情報性・実用性を持たせた作品が目につくようになりました。

『孤独のグルメ』がある意味草分けで、ドラマと違ってマンガではお店自体の情報は明確には出していなかったものの推測はできるので、マニアックなファンによる聖地巡礼が自然発生しました。

はっきりと実在のお店を出しているマンガも、よしながふみさんの『愛がなくても喰ってゆけます。』やマキヒロチさんの『いつかティファニーで朝食を』をはじめ、『三十路飯』『みつめさんは今日も完食』『ごほうびおひとり鮨』など、たくさんあります。『三十路飯』『ごほうびおひとり鮨』は女性の一人飯であり、女性版『孤独のグルメ』的要素もありますね。逆に男性が一人でスイーツを食べ歩く『さぼリーマン 飴谷甘太朗』なんて作品もあります。

これらは完全にグルメガイド的機能を担っています。マンガを読んでおいしそうと思ったら、やっぱり実際に行ってみたくなりますから。

実用性にも影響する料理描写の的確さ

行ってみたいなと思うお店がいくつかあった最近の作品を挙げると、婚活と食を掛け合わせた複合ものでもありますが、『めし婚』です。婚活をやっているお姉さんが、結婚相談所や合コンで知り合った人と毎回いろんなお店で食事をするという作品。実名は出していないものの、場所などで調べればわかるヒントがあり、おいしそうなお店が出てきます。

グルメガイドという観点からは、『おとりよせ王子 飯田好実』も外せません。タイトル通り、全国各地のおいしいおとりよせを楽しむ主人公の話ですが、キャラクターの芝居だけでなく料理描写もうまい。

写実的に描けばおいしそうに見えるかというとそうとは限らないのが食マンガの難しいところで、この作品の場合も写真を取り込んで加工しているのですが、その加工の具合がすごく的確。マンガとしてのストーリーの面白さに加えて情報性と料理描写も申し分ないので、総合力が高いです。

レシピ付きマンガも簡単料理が主流

レシピ付きマンガでは『クッキングパパ』が先駆けですが、いまの傾向は本格的な料理よりも簡単料理ですね。例えば『じったんの時短レシピ』は文字通り時短レシピを実際に載せていますし、ヒット作では『花のズボラ飯』もそう。何でもめんつゆで作っちゃう『めんつゆひとり飯』は、レシピの簡単さに加えて、キャラたちの会話も最高に面白い。


『じったんの時短レシピ』3巻より

ちなみに、簡単料理が支持されているのは食マンガに限ったことではありません。雑誌の「レタスクラブ」も、それまでのちゃんとした料理から「手抜きでも大丈夫!」的な方向にリニューアルしたところ、大幅に部数が伸びたそうです。

今日も新たな食マンガが生み出されている

このように進化してきた食マンガですが、何でもありのジャンルですので、何でもありな作品が今後もさらに出てくると思います。

例えば、料理ジャンルや食材ではなく場所を限定した『新大久保で会いましょう』というグルメマンガがありますが、別の街を舞台にするならあそこも面白いなとか、いくらでもアイデアは生まれてきますし、まだまだ空いている隙間はあるでしょう。進化を続ける食マンガに、これからも注目してほしいです。

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