2019.07.18

料理ジャンルの細分化&複合化 │ 南信長さんから学ぶ食マンガの歴史③

オールタイムで愛され、ドラマ化、アニメ化作品も膨大。ベストセラーを供給し続けている食マンガは、どのようにして生まれ、これからどこに行くのか。『マンガの食卓』(NTT出版)著者であり、朝日新聞読書面コミック欄ほか各紙誌でマンガ関連記事を企画執筆、2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務めるマンガ解説者・南信長さんにお話をうかがいました。

ポイント③料理ジャンルの細分化&複合化
狭いジャンルを攻める専門・限定マンガ

「作る」→「食べる」→「語る」→「めでる」と進化してきた食マンガ。それとクロスオーバーする話ではあるのですが、当初は料理全般を扱う作品が基本だったところに、寿司専門の『将太の寿司』やラーメン専門の『ラーメン発見伝』、カレー専門の『華麗なる食卓』など、特定のジャンルを極めていくマンガが出始めました。

それがどんどん狭いところに入っていって、うなぎ専門マンガ『う』が読み切りではなく連載で登場した時は、どこまでネタがもつんだろうと心配しましたよね。寿司やラーメンやカレーならいろいろバリエーションありますが、うなぎは本当に、蒲焼き、白焼き、あとは串のほか何がありますかみたいな世界じゃないですか。

でも、そんな狭いところで始めた『う』が4巻まで続いて、これもありなんだとびっくりしました。それから燻製限定の『いぶり暮らし』、丼限定の『どんぶり委員長』、スープ限定の『オリオリスープ』など、ジャンルが細分化された作品が次々と出てきます。

限定することで生み出される多様な作品

例を挙げればキリがないですが、ハンバーガー限定の『本日のハンバーガー』、ゲテモノ限定の『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』、コンビニ限定の『コンビニお嬢さま』、ふりかけ限定の『ゆかりちゃん』、ひねり技では球場グルメ限定の『球場三食』、宇宙食限定の『宇宙めし!』など、何でもありな状況です。

吉田戦車さんの『おかゆネコ』は、おかゆに限定すること自体がギャグになっていますし、実在の「やまだ」と名のつくお店限定の『山田飯』も限定の仕方がすごい。どこまでニッチなところを掘っていくのかと。

掛け合わせで無数の作品が生まれる

ジャンルの細分化の一方で、複合化も目立つようになりました。00年代以降はそれが顕著で、ヒット作で言えば、『信長のシェフ』は歴史ものと食の掛け合わせですよね。『ダンジョン飯』はRPG的な世界と料理。『紺田照の合法レシピ』は極道ものと食の掛け合わせです。

ヤンキーが弁当で成り上がる『頂き!成り上がり飯』、山ガール×メシで『山と食欲と私』、漫画家マンガ×グルメで『めしにしましょう』『光れ!メシスタント』『漫画家接待ごはん』、ご当地グルメとエロを掛け合わせた『不倫食堂』、棋士の対局中の食事にスポットを当てた『将棋めし』、映画に出てくる料理をネタにした『シネマごはん』など、掛け合わせの幅は広がっていくばかりです。

ポイント②でも紹介した、逃亡犯となったお嬢様がご当地グルメを食べまくる『とんずらごはん』も掛け合わせですが、よく思いつくなという奇抜な発想が光ります。

食は自由度が高くマーケットが広い

とにかく人間はどんな場面でもメシを食わないと死んじゃうので、何にでも掛け合わせられます。テレビや雑誌のグルメ企画が定番として人気があることからもわかるように、食べることに興味がある人は割合としても多いから、マーケットも広いところを狙える。奇抜なものから王道の作品まで、どのマンガ雑誌を見ても最低1本は食マンガが載っているのは、そういった理由からでしょう。

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