2019.12.19

<第7回>令和時代のマーケティングを考える4つのキーワード|新時代のマーケティング戦略論

令和時代のマーケティングを考える4つのキーワード

連載コラム「新時代のマーケティング戦略論」では、新時代のマーケティングトレンドをテーマに冠しつつ、6つの切り口から現状課題と今後の取り組み方について触れてきました。
技術やツール、ユーザーの嗜好、それを取り巻く環境。マーケティング領域はそれらの目まぐるしい変化を受け、根本的な考え方そのものを変える必要性に迫られています。
これまで一つひとつのトレンドについて語ってきた令和時代のマーケティングについて、今回はその様相を総括するとともに、それを象徴するキーワードを掲げ、取り組むべき方針を考えます。

キーワード① サステナブル

持続可能な社会のための取り組みは、世界共通の課題であり、一過性のムーブメントとは一線を画した一大プロジェクトとして進められています。その課題にどのように関与するかは、いずれの領域の企業も一度は再考すべき点でしょう。

その指針を定めやすいのが、SDGsと照らし合わせたマーケティングです。本連載の第2回でもSDGsをテーマにその可能性を説きましたが、今世界が注目する課題のいずれかに企業が取り組むという姿勢を持つこと、そしてそれを発信することが、今後のマーケティングが担う重要な役割と言えます。

マーケティングが販売戦略を指し、自社の商品やサービスを起点に紡がれるものであるという前提はもちろん変わりません。ただ、その基盤を支える社会に迫る課題が明確にある以上、その課題意識の共有と前向きな姿勢が、より大きな市場への訴求につながる一面もあります。実際にSDGsのパワーを活用し、新規事業やマーケティングに成功している事例も存在します。

新時代のマーケティング戦略論 <第2回>SDGsとマーケティング(後編)

日本ではCSRとしてSDGsに取り組む企業が目立ちますが、社会と企業双方により多くの効果をもたらすのはマーケティング領域です。販売を通じたメッセージの発信はターゲットの共感を強め、長期的な関係性を築くためのきっかけになるでしょう。
持続可能な社会のための取り組みを、同様に持続可能なマーケティング戦略によって打ち出すことは、戦略のひとつの大きな柱となるはずです。

キーワード② オンライン・ツー・オフライン(O2O)

デジタル広告運用やメディア開発、SNSなどのデジタルマーケティング領域は、マーケターが戦略を構築する中心軸となりつつあります。その影響力が強まる反面、再注目されているのはオフラインの持つパワーです。

オンラインは個々のユーザーが取得できる情報量が多い一方、エクスペリエンスとして感動を作ることは容易ではありません。ユーザーの平均アクセス数や滞在時間によって影響力を数値化できるものの、サービスや商品とユーザーの交点が重なる瞬間を可視化できないデメリットも挙げられます。

オンラインとオフライン、双方の持つ強みを柔軟に行き来するマーケティング戦略の構築は、今後あらゆる企業が必要性を感じるでしょう。これは、オフラインの接点となる店舗や商品を持たない企業も同様です。
これまではオフラインでしか接点のない販売戦略のデジタル化を迫られてきましたが、これからはオンラインに偏った、あるいはオンラインしか接点のない販売戦略をオフラインに落とし込む時代と捉えられるかもしれません。

そんな中で戦略の基軸として考えたいのは、ユーザー・コミュニティです。オンラインで関係性を育てたコミュニティにオフラインで感動体験を提供し、その感動を相互でシェアすることで関係性を深めるといった好循環を作り出すことができれば、そのコミュニティはマーケティングのひとつのツールとして自走してくれます。
こうした戦略の展開には、ユーザーによる発信力が強く、更新性の強いSNSが適しています。本連載第1回では、詳しくその理由を説明していますので、併せてご覧ください。

新時代のマーケティング戦略論 <第1回>SNSマーケティング(前編)

キーワード③ マイノリティ

マーケティングは、ターゲットへの適切な訴求を叶えるための飽くなき探求と言っても過言ではありません。市場調査や商品開発、広告などあらゆる行程は、ターゲットを根拠としてロジックが築かれます。
一方で、近年ユーザーの多様性の広がりはとどまるところを知らず、ターゲットの価値観を一元的に捉えることは難しくなっています。「ターゲティングすることが多様性を阻害する可能性を秘めている」と、無意識のうちに感じているマーケターも多いかもしれません。

マイノリティへの理解は、新時代のマーケティングを成功させるためには不可欠な要素です。これまでのマーケティングで除外されてきた人々を包括する情報や商品の提供は、ターゲットにも、それ以外の人々にも歓迎されるでしょう。
また、その理解が適切な形で表現されればされるほど、マーケティングの観点でのプラスも生み出します。本連載第5回では、インクルーシブ(包括・包摂)をテーマにしつつ、その事例紹介も行っておりますので、併せてご覧ください。

新時代のマーケティング戦略論 <第5回>インクルーシブ・マーケティングへの理解と挑戦(前編)

キーワード④ ストーリー

ストーリーを語ることの重要性は、すでに多くの成功事例が伝えてくれています。特に企業ブランディングの観点では、開発秘話や社長の半生などが紡ぎだすストーリーそのものがコンテンツとなり、ブランド力に直結する傾向があります。

新時代のマーケティング戦略論 <第3回>ブランディングが苦手な日本人へ(後編)

ストーリーの持つ力をより高めていくことが、今後のマーケティングでも引き続き求められるでしょう。その力の高め方には、いくつかの方法があります。

ひとつは、コンテクストに焦点をあてたストーリーの編集を行うことです。コンテクストとは「文脈」を指し、ストーリーの背景にある条件や前後関係などを表します。多くのストーリーは、強いメッセージ性を持たせるために、強いコンテクストを全面に押し出したものになる傾向があります。しかし、端的なわかりやすいストーリーは読者が考える余地を奪い、それについて語る行為を生み出しません。
ファン同士のコミュニケーションや、ユーザー自身による発信が影響力を高めている昨今、あえて弱いコンテクストを含むストーリーを提供することが将来的な訴求力や成果につながります。いわば余白を残したストーリー・マーケティングが、新時代の成功パターンのひとつとなり得るでしょう。

もうひとつの方法は、語り手を増やすことです。マーケターが提供するストーリーを伝えるだけでなく、ユーザーやクライアントみずからがストーリーを紡ぐことも、マーケティングの手法として役立てられます。

ストーリーの持つ性質を理解したうえで、適切なテーマや場を提供し、ストーリーテラーとなることを他者に求める。こうした巻き込み型の戦略は、SNSプラットフォームやメディアの普及、個々のストーリーテリングに対するスキルの向上が伴った今だからこそ生きてくるものでしょう。
すでにその将来を垣間見ることのできる事例もあります。第4回ターゲット・マーケティングの事例紹介にて扱った「キリンビール×note「#あの夏に乾杯」キャンペーン」はまさにそのパターンを成功させていますので、ご覧ください。

新時代のマーケティング戦略論 <第4回>ターゲット・マーケティングの行く末(後編)

社会やユーザーに寄り添った、中長期的な視野でとらえるマーケティングを

今回の連載で扱った事例及びテーマは、短期的なスパンで効果計測をした場合、成果の見えづらいものかもしれません。しかし、平成時代のマーケティングが短期的に大きなインパクトを生み出す手法に傾倒していたからこそ、令和時代はそこから生まれたさまざまな課題に向き合う、真摯なマーケティングが求められています。
こうしたマーケティングを実現させるためには、商品やサービスだけを基軸とせず、多様な個性を持つユーザーや、大きな課題と直面する社会にも向き合いながら、戦略を考える必要があります。

そのパズルは、おそらく従来のマーケティングよりも難易度を増しているでしょう。そのうえ、結果が出るまで時間がかかるというのだから、マーケターとしてはあまり取り組みたくないキーワードばかりかもしれません。
だからこそ、やる意味があると考えましょう。社会やユーザーのニーズをふまえた適切なマーケティングは、そのものが競合他社との差別化ポイントとなるだけでなく、持続可能なプランとなり得るからです。
令和代のマーケティングは、下記のキーワードを意識しながら取り組みましょう。

①サステナブル
②オンライン・ツー・オフライン(O2O)
③マイノリティ
④ストーリー

持続可能かつオンライン・オフラインの双方を扱い、マイノリティを意識した物語を紡ぐ。
このイメージを、ぜひ自社のマーケティングに役立ててみてください。

筆者プロフィール
宿木雪樹(やどりぎ ゆき)

広告代理店で企画・マーケティングについての視座を学んだ後、ライターとして独立、現在は企業の魅力を伝える記事執筆を中心に活動。大学にて文化研究を専攻したバックボーンを生かし、メディアのトレンドについてフレッシュな事例をもとに紹介する。2018年より東京と札幌の2拠点生活を開始。リモートワークの可能性を模索中。

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