2019.12.18

ファンや読者を信用して、さらに飛んだ展開を! 「講談社メディアカンファレンス2019」 メディアアワード総評レポート(後編)

「講談社メディアカンファレンス2019」「メディアアワード」総評の後編です。前回に続き、総評後半で紹介された4企画についてレポートします。審査員は月刊『宣伝会議』編集長の谷口優さん、コミュニケーションディレクターの佐藤尚之さん、PRストラテジストの本田哲也さんのお三方が務められました。

(左)審査員の本田哲也さん、(中)佐藤尚之さん、(右)谷口優さん

「メディアアワード」は、2018年5月から2019年7月までに実施された広告主と講談社による全ての広告企画が対象。従来の講談社広告賞は雑誌別の広告作品が対象でしたが、今回より広告主と講談社が共同で作り上げた未来志向の広告企画を対象としています。

審査基準は、クリエイティブ性、企画性、パフォーマンスの3つ。第1次選考は講談社社内メンバーで構成されたメディアアワード審査員会が、優れた24企画をファイナリストとして選定。その後、3名の社外審査員による第2次選考で、8企画が「メディアアワード」として選定されました。なお、従来の広告賞のような大賞やメディア別部門賞など、賞のグレードやカテゴリーは廃止しています。

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5)宝くじをViVi世代に自分ゴト化してもらうには?
動画、SNS、誌面、リアルを連動させた、噂したくなるクイズ企画に

【広告主】
全国都道府県及び20指定都市
【媒体名】
ViVi / NET ViVi
【企画意図】
若い女性に「宝くじを買う」ことをより身近に感じてもらうため、ViVi読者のライフスタイルのなかに宝くじを取り入れたストーリー仕立ての動画を制作。彼氏役の小関裕太さんの顔は動画の中では隠し、「このイケメンは誰!?」というクイズ式プレゼントキャンペーンをSNS、誌面、主要駅のデジタルサイネージで実施することで話題化を狙いました。キャンペーンスタートから1か月後に行われたViVi Nightでの協賛ステージに小関裕太さんが登場することで、クイズプレゼントキャンペーンの正解発表の場とし、ViViの持つSNSの拡散力や熱量の高いイベントを、最大限に活用した企画となりました。
動画は4本の合計で10万回以上の再生数を記録。ViVi Nightのステージの模様は、ViViのInstagramでもリアルタイムでレポートされ、イベント翌朝のワイドショーをはじめとしたテレビメディアやYahoo!ニュースでも多く取り上げられ、話題となりました。

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谷口 『ViVi』世代の女の子たちに、宝くじを自分ゴト化してもらうための企画です。『ViVi』読者のライフスタイルの中に宝くじを取り入れた、ストーリー仕立ての動画を制作しています。
この世代の女の子たちの関心事は恋愛なので、恋愛のドキドキと宝くじを買うドキドキを重ね合わせて、宝くじデートというものを提案して、その様子を描いています。デート相手の彼氏役をクイズ形式にして、最後まで誰だか分からないという設定が話題を広げました。本田さん、いかがですか。この宝くじ×『ViVi』の企画は。

本田 審査で見ている間中、いろんな意味で、こそばゆく恥ずかしくなった企画です(笑)。そもそも、宝くじを若年層に買っていただく、あるいは、興味関心をあげるという時点で、チャレンジとしては難易度が高い企画だと思います。宝くじのドキドキみたいなことと、このデートのドキドキは、むりやり共通項見つけたなとは思いつつ、でも、逆にそのぐらいしないと、このオーダーに対してのコンテンツの成立はあり得なかったのではないかと思います。

彼氏役が最後に分かる工夫やイベントもやっていましたが、「そうきたか!」と印象に残りました。事業主体や、長い間その事業主体をお手伝いしているエージェンシー・代理店だとなかなか出ないアイデアなので、『ViVi』編集部からのアイデアや観点発信でできたというところを評価させていただきました。

谷口 本田さんは「こそばゆい感じ」とおっしゃいましたが、女性は女性誌の、この妄想で暴走している感じのコンテンツを、案外、楽しむところがあって。

本田 分かります。その辺が『ViVi』の編集力というか、見立て力だと思いますし、それは他のメディアでもあると思うんですよね。

佐藤 僕たちが「すごい、いいね」と言った時点でもうダサイという話なのかもしれませんが、この若年層の感覚をちゃんとつかんでいる『ViVi』の編集部が企画をして、写真も動画も相当かわいかったし、インスタへの展開などを見ても、コンテンツメーカーとしての雑誌の力をとてもよく使ったんじゃないかな。さっき本田さんも言っていましたが、広告会社では逆にできない作りで、たとえ思い付いても、こんなにちゃんとかわいく作れないという気がします。コンテンツメーカーとしての力をすごく感じます。

コミュニケーションディレクターの佐藤尚之さん

6)「ねんDo!」でつくろう! ヘンゼルとグレーテル (読み聞かせ動画付き)

【広告主】
株式会社アガツマ
【媒体名】
おともだち / キッズボンボン
【企画意図】
『おともだち』で連載している「世界名作おはなし」の「ヘンゼルとグレーテル」と、立体造作家の森井ユカ氏を起用したこむぎねんど「ねんDo!」とのタイアップ企画。「ねんDo!」で作ったお菓子の家や絵本の登場人物を使って、YouTubeチャンネル『キッズボンボン』の人気コンテンツである絵本の読み聞かせ動画を制作。動画の後半では、いっちー&なるが実際に「ねんDo!」でお菓子作りにも挑戦し、誌面と動画でより読者に分かりやすく説明しました。
動画の再生回数は2.6万回を記録。YouTubeのコメント欄には、"読み聞かせが上手くて聞きやすかったです。粘土もリアルで上手いですね"といった声が寄せられ、「誌面と共にねんDo!での遊び方がよく伝わった」とクライアントからも高い評価を得ました。

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谷口 『「ねんDo!」でつくろう! ヘンゼルとグレーテル、読み聞かせ動画付き』は、アガツマの商品である小麦粘土とのタイアップ企画です。粘土で作ったお菓子の家や絵本の登場人物を使って、『おともだち』で連載しているヘンゼルとグレーテルの物語を動画で制作するというものです。
YouTubeチャンネルの『キッズボンボン』のコンテンツ人気と、絵本の読み聞かせ動画の人気が高いことから実現した、紙面とYouTubeのコラボレーションですね。紙面と動画を組み合わせることで、粘土作りの細かいプロセスもきちんと分かりやすく紹介できています。

「デジタルネイティブ」の小さなお子さんに、紙の雑誌を手元に渡すと、壊れたiPadと間違えて嫌がられるという話も聞きます。幼児誌とデジタルメディアのYouTubeチャンネルの連携は、超デジタルネイティブ世代と、どういうふうに接点を作っていくのかと考えたときに、誌面からデジタル、デジタルから誌面、双方向で入り口ができているように感じられ、とてもいいんじゃないかと思いました。読み聞かせ動画としても機能しているということなので、親御さんが安心してお子さんに見せることができる教育コンテンツにもなっていると思います。また、広告主にとって、コンテンツマーケティングに活用できる素材にもなっているというところが、今後の活用も含めて評価した点です。

本田 うちの娘もそうですが、完全にYouTubeネイティブというか。「テレビ」という言葉を覚える前に「YouTube」を覚えますからね。そういういわゆる、メディアハビットであり、タッチポイントであるところを、うまく捉えた企画だと思います。

7)ViViとAmieのカワイイカーライフ100日間

【広告主】
トヨタ自動車株式会社
【媒体名】
ViVi / NET ViVi
【企画意図】
Vitzの女性向け特別仕様車 F "Amie"発売に際し、女性顧客獲得のための新しいコミュニケーションチャレンジとして行った、ViViとのコラボレーション企画。ViViがamie公式Instagramアカウントを開設&プロデュースし、ViViならではのこだわりの世界観のもとで作り出す"おでかけ写真"を毎日公開する【ViVi&Amie 100デイズ 投稿キャンペーン】を100日間実施しました。
メインキャラクターにはViVi専属モデル・八木アリサを起用。ViV公式インフルエンサー集団やViVi girlも一緒に投稿を行い、100日間の運用で約8000フォロワーを獲得。これまで低かった20代女性の購入者比率が上昇するなど、高い効果がありました。またこの投稿をベースにオウンドサイトのコンテンツ供給を行ったり、誌面TUとそれを再編集した店頭用ポスター・カタログ制作、そして販売店参加型のフォトコンテストを実施したりするなど、Instagramを核とした多角的コミュニケーションにも成功しました。

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谷口 こちらは、トヨタのVitzの女性向け特別仕様車Amie発売に際して、『ViVi』とAmieがコラボレーションした企画です。『ViVi』がAmieの公式インスタグラムアカウントを開設して、100日間にわたりプロデュースするというもので、100日間の運用で、150投稿、8000フォロワーの獲得に成功しました。まさにソーシャルメディアの世界に雑誌のブランドが浸透していって、企業のブランドとコラボレーションしたケースです。
クチコミやソーシャルメディアといえば、本田さんの専門領域ですよね。いかがですか。

月刊『宣伝会議』編集長の谷口優さん

本田 そうですね。これも本当はおじさんが評価しちゃ駄目な企画という気がしますが......(笑)。でもこのインスタのひとつ一つの画像が、非常にクオリティが高いんです。写真自体というより、インスタっぽさとか、構図含めてということなんですが。事業主体からの発信では、なかなか作り得ないところをやってますし、さきほどのYouTubeと一緒ですが、ターゲットのコンタクトポイントと、どういうコンテンツが適しているのかということも徹底的に研究されているという点では、これも編集力というか、コンテンツ制作力の高さを感じます。

佐藤 本当に一個一個のクオリティが、非常に高い。小物も含めて素晴らしいので、伝えたい相手にとってもすごく伝わるいいコンテンツだなと思いました。

谷口 編集部の方だけではなく、『ViVi』公式インフルエンサーの『ViVi』ガールズも投稿に参加しているそうで、より読者目線に立ったコンテンツの作り込みになっているのかな、と思います。

佐藤 そうですね。あと、車があまり出てこないのが良い。広告にすると逆にしらけちゃうんですけど、商品である車がそんなに出てこないというのが、またいいなと思いました。ストーリーや世界観もちゃんと作れていて、とてもいいと思いました。

谷口 消費者との接点が作りづらい商品を持つ企業の方は「商品を主語にしないコミュニケーションが必要」ということをおっしゃいますが、そうしたコミュニケーションを考える際のヒントになる企画ではないかと思います。

8)漫画家にも、こころに、お茶を。
「先生。こころに一息、入れてください。」

【広告主】
サントリー食品インターナショナル株式会社
【媒体名】
モーニング
【企画意図】
サントリー緑茶「伊右衛門」と講談社「モーニング」とのコラボレーション企画。「漫画家にも、こころに、お茶を。」というコンセプトのもと「モーニング」に連載中の人気漫画家4名にリレー形式で1週間の休みを取ってもらい、その休暇中には別の漫画家が代わりに描き下ろした作品のイラストとメッセージで構成されるスペシャルコンテンツを誌面に掲載しました。
今回の企画では、週刊連載中の人気漫画家・三田紀房先生(『ドラゴン桜2』)、小山宙哉先生(『宇宙兄弟』)、ツジトモ先生(『GIANT KILLING』)、鈴ノ木ユウ先生(『コウノドリ』)4名のお休みを伊右衛門がサポートしました。
まず、休暇宣言広告を「モーニング」本誌表4純広告にて実施。翌週より4週間で4人の漫画家が休暇を取り、最後に休暇の御礼広告を表4純広告(カラー描き下ろし&コメント)で展開しました。読者からも好意的な反響を得ることができた企画でした。

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谷口 サントリーの伊右衛門と『モーニング』のコラボレーション企画です。「漫画家にも、こころに、お茶を」というコンセプトのもと、『モーニング』に連載中の人気漫画家4名にリレー形式で1週間の休みを取ってもらい、その休暇中に別の漫画家の方が代わりに描き下ろした作品のイラストとメッセージを誌面に掲載しました。
「漫画家さんのお休みを、伊右衛門がサポートする」という立てつけになっている企画なんですけど。佐藤さんこちら、いかがですか。

佐藤 マンガ好きや『モーニング』ファンにはとても面白い、素晴らしい企画だと思います。
「お茶で1週間休む?」という疑問は、ちょっとだけ自分の中でありましたけど(笑)、「伊右衛門で一息入れる」ということは伝わってきますし、コンテンツはどうしても見ちゃいますよね。これを写真に撮ってSNSに上げる人も多分いるでしょうし、とても面白い発信のスタートラインだなと僕は思います。

谷口 それぞれのマンガ家のファンの方は、ここでしか読むことができないコンテンツですから、とてもうれしいですよね。また、魅力的なコンテンツをサポートしてくれた伊右衛門ブランドに対する好感度もあがりそうです。ありがとうございます。


「メディアアワード」を振り返って

谷口 全8作品、佐藤さんと本田さんに講評をいただきながら進めてまいりました。お二人は従来の「講談社広告賞」の頃から、この審査を長く続けておられますが、今回の「メディアアワード」全体について、お感じになられたことを最後に一言ずつお聞かせいただけたら......。まずは、本田さんからお願いします。

本田 僕は今年、審査員を務めるのが3回目になります。従来の「講談社広告賞」の時代から見させていただき、今回はいわゆるコンテンツメディアという発想や、SNS、デジタル、リアルを立体的に組み立てるような企画が、相対的には多くなったと感じました。

ただ、海外の広告賞や企画などを見ていると、「おー、そうきたか」という企画が多いんです。そういう意味では、これは期待値かもしれませんが、もうちょっとふざける、というか、面白くできる余地があるんじゃないかと感じています。単なるバズ狙いや、ワンショットの話題狙いというよりも、ちゃんとそのブランドと企業の正当なところを押さえた上でやっている感覚が加わってくるといいんじゃないかと思いました。

PRストラテジストの本田哲也さん

谷口 ありがとうございました。佐藤さん、お願いいたします。

佐藤 立体的にメディアを組み合わせたり、コンテンツメディアとして出版や雑誌がスタートラインになって、そこから、すでにある共感をもとに、情報が広がっていくという作り方って、すごく真面目になりがちなんです。構築から入っちゃうので、構築を全体にフレームワークすると、アイデアが飛びにくいということが、僕も自戒を含めてありがちで、本田さんも言われた通り、アイデアの発想の飛び方や、話題・驚きを感じる企画が少ないという気がしました。

特に「雑誌」がスタートラインになったり、雑誌社のコンテンツメーカーの方々がスタートラインになったりするということは、その先に、既存のファンの方たちとの共感があるはずです。ファンの方々は、多少飛んでもついてくる。「こう展開するから、このぐらいがちょうどいいところだろう」とか着地を考えず、ファンや読者を信用して、もっと思いっきり飛んで展開するということが、コンテンツメーカーとしてはできるのではないかと感じました。こういうコンテンツを持っている方々で、それを作れる方々じゃないとできないことって、本当にいっぱいあると思うので、そういうところも、次回期待したい部分です。

谷口 ありがとうございます。今日はクライアントの方々もたくさんいらっしゃっています。お二人からは、編集者と読者の絆を信じて、ぜひクライアントの皆さんも、もっと思い切ったことを企画としてやってみたらどうかというアドバイスをいただきました。

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