2025.05.19
《2024-25年調査》マンガ・アニメを目的とする「聖地巡礼」に積極的なのは?|マンガキャラクター活用の極意【第二部】
2025年5月3日-4日、富士スピードウエイにSuperGT第2戦を観戦してきました。GT300クラスでは、#4 グッドスマイル初音ミクAMG GT3の他にも、#9 PACIFIC アイドルマスター NAC AMG 、#48 脱毛ケーズフロンティアGO&FUN猫猫GT-Rなどの"痛車"が増えて活況を呈していました。9月13日-14日には「頭文字D 30th Anniversary 2days」が開催されるようで、楽しみです。
2025年5月3日-4日 静岡県小山町 富士スピードウエイ(筆者撮影)
前回は、広告・プロモーションのエンドーサー(宣伝役)としてのタレント・有名人、YouTuber、VTuberの純粋想起による好意度ランキングと、タイプ別内訳について、以下の内容をご紹介しました。
- アイドルやお笑い勢に交じって「大谷翔平」が上位に
- 「Snow Man」は女性全年代でトップ、男性アイドルは女性各層でランクイン
- 女子ティーンでは韓流、男子ティーンではYouTuberの想起が目立つ
- 圧倒的に強い「HIKAKIN」、「東海オンエア」「キヨ。」「平成フラミンゴ」なども上位に
- 「ホロライブ」「にじさんじ」勢が上位を占めるVTuber
- ごく一部のVTuberは男女ティーンの支持を得て市場を牽引
今回は、 同じく2024-25年キャラクター定量調査から、現在の「推し活」を構成する行動のひとつである、アニメやキャラクターによる聖地巡礼に関する結果を紹介します。
なおこの調査は筆者が企画・分析を行い、実査部分を「楽天インサイト」に委託して2024年2月16日(金)~20日(火)に実施しました。調査に関するお問い合わせは、SNSへのDMなどで直接筆者までお願いいたします。
「マンガ・キャラクター関連の施設やミュージアム」への訪問経験者は2割弱
図表1は、「アニメやマンガ、特撮のキャラクターを使った観光施設やモニュメントがあるスポットに行ったことがある」の質問に対する回答です。
図表1. マンガ・キャラクターを使った観光施設やモニュメントがあるスポットに行ったことがある
男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は18.1%です。性・年齢別にみると、男性はティーンから34歳で約3割と比較的多く、男性35-49歳と女性20-34歳でも約2割います。
図表2は、「アニメやマンガ、特撮、キャラクター関連の常設ミュージアムや博物館に行ったことがある」の質問に対する回答です。
図表2. マンガ・キャラクター関連の常設ミュージアムや博物館に行ったことがある
男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は16.9%です。性・年齢別にみると、男性はティーンから34歳で約3割と比較的多く、男性35-49歳と女性20-34歳でも約2割います。
「マンガ・キャラクター関連の期間限定展示会」への訪問経験者も2割弱
図表3は、「アニメやマンガ、特撮、キャラクター関連の期間限定の美術展や展示会に行ったことがある」の質問に対する回答です。
図表3. マンガ・キャラクター関連の期間限定の美術展や展示会に行ったことがある
男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は16.0%です。性・年齢別にみると、これまで紹介した観光施設や常設ミュージアムと異なり、女性ティーンが最も多くなっています。
また、男女ティーンから34歳で2割以上、男性35-49歳でも約2割います。最近はショッピングモールや駅など若者層の生活動線上に期間限定のポップアップストアが展開されることも珍しくなくなっているためか、若い層を中心に浸透している様子が窺えます。
聖地巡礼は男女3-74歳の1割強が経験、男20-34歳では3割弱
図表4は、「アニメやマンガ、特撮の舞台となった場所や地域に行ったことがある(聖地巡礼)」の質問に対する回答です。
図表4. アニメやマンガの舞台となった場所や地域に行ったことがある(聖地巡礼)
男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は14.8%です。性・年齢別にみると、男性は20-34歳で3割弱と最も多く、男子ティーンと女性20-34歳でも約2割います。
聖地巡礼経験者はこの11年間で倍増、女20-34歳が特に増加
前述の聖地巡礼に対する回答を、時系列で比較したのが図表5です。
図表5. 性・年齢別 時系列比較:アニメやマンガの舞台となった場所や地域に行ったことがある(聖地巡礼)
男女3-74歳全体では、2013年2月の7.4%から2020年9月には11.4%、2024年12月には14.8%と、この11年間で倍増しています。「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞2016でTOP10入りした2016年でなく、コロナ禍の最中の2020年に増加している点が興味深いです。
性・年齢別では男20-34歳が2015年以降2割以上と高く、2024年2月では男女ティーンでも2割を超えています。女20-34歳も、ここ数年増加傾向にあります。
広義での聖地巡礼は男女3-74歳の3割弱が経験、男20-34歳では約4割
これまで紹介した4つの訪問行動(観光施設やモニュメントがあるスポット、常設ミュージアムや博物館、期間限定の美術展や展示会、舞台となった場所や地域への訪問)を広義の「聖地巡礼行動」と定義して、全ての経験者、いずれかの経験者、全くの未経験者、に三分類して、性・年齢別に各タイプの出現率を比較しました。
図表6. 性・年齢別:「聖地巡礼行動」タイプ内訳
男女3-74歳全体では、①「4つの聖地巡礼行動全ての経験者」(コア聖地巡礼者)7.9%、②「いずれかの経験者」18.6%、③「全くの未経験者」73.5%で、①+②の「聖地巡礼経験者」が26.5%です。
性・年齢別にみると、①「4つの聖地巡礼行動全ての経験者」(コア聖地巡礼者)が多いのは、順に男子ティーン、男20-34歳、女20-34歳、男35-49歳です。①+②の「聖地巡礼経験者」が多いのは、順に男20-34歳、女子ティーン、男子ティーン、女20-34歳、男35-49歳です。
いずれにせよ、男女ティーンから34歳と男35-49歳が、アニメやマンガなどの舞台を巡り、資料をみて、時にはグッズを購入する「聖地巡礼」のメインであることが確認されました。
今回は以上です。
次回は、2024-25年キャラクター定量調査から、現在の「推し活」を構成する行動である、アニメ・マンガ・キャラクターの関連イベント、2.5次元舞台、コラボカフェ訪問、アニソンカラオケ、コスプレなどの経験に関する結果を紹介します。どうぞお楽しみに。
<第2部 バックナンバー>
第34回:《2024-25年調査》 タレント、YouTuber、VTuberの最新人気ランキング
第33回:《2024-25年調査》 マンガ・テレビアニメ・劇場アニメ・ネット動画に関するユーザーの意識はどう変わったか
第32回:《2024-25年調査》 キャラクターの最新人気ランキング
第31回:スマホの普及で生活者とキャラクターとの接点はどう変化したか
第30回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(4)
第29回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(3)
第28回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(2)
第27回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する
第26回:《2024年調査》キャラクター・YouTuber・Vtuberのエンドーサー(宣伝マン)としての可能性を分析する
第25回:《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)
第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。