2024.10.17

《2024年調査》タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(3)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

だいぶ秋らしくなってきた9月28日、群馬県庁で開催された「ご当地キャラカーニバルinぐんま2024」の1日目に行ってきました。

このイベントは昨年に続いての開催で、全国から103キャラクターが集結し、熱心なご当地キャラファンに加えて地元のキッズ・ファミリーで大賑わいでした。

特に福島在住のファミリーYouTuber「HIMAWARIちゃんねる」(チャンネル登録者数362万人、ユーザーローカル社調べで国内88位:2024年10月10日時点)が登場したステージは圧巻でした。ぐんまちゃん&くまモンとの共演もあってか、地元女子キッズたちが大勢踊り出して、人気YouTuberの影響力をあらためて実感した次第です。

ご当地キャラカーニバルinぐんま2024

2024年9月28日「ご当地キャラカーニバルinぐんま2024」(筆者撮影)

前回は、Z世代における「タレント・有名人」「キャラクター」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー(Endorser:広告内で製品やブランドを宣伝する人)としての効果と可能性に関して、「商品・サービスへの興味が高まるのか」「購買意欲が喚起されるのか」「キャラクターのタイプ(マンガ原作系キャラ、ファンシー系キャラなど)によって反応がどう異なるのか」といった点について、大学生対象の定量調査データを分析して結果を紹介しました。

  • 推奨商品への興味や購入を喚起するのは「魅力度」や「憧れ」
  • 顔が見える存在では「知識やスキル」、架空の存在では「信頼・誠実さ」が重要
  • マンガ原作系キャラは、「信頼性」「魅力度」「専門性」などの因子で高スコア
  • 女子学生は、ファンシー系キャラが推奨する商品への興味や購入意向が高い
  • 男子学生は「信頼・誠実さ」、女子学生は「自分と似たところがある」に魅力を感じる

今回は同じ大学生のデータを対象に、商品・サービスのエンドーサーによって「商品・サービスへの興味が高まるのか」「購買意欲が喚起されるのか」「タレントのタイプ(お笑い芸人、アイドル、俳優など)によって反応がどう異なるのか」を分析した結果をご紹介します。


スポーツ選手や男性ミュージシャンは憧れの存在。男性お笑い芸人への評価は辛め

図表1は、純粋想起のうち第一想起されたタレント・有名人をタイプ別に分類し、6つのエンドーサー因子スコア(平均0、分散1)の平均値を比較した結果です。

図表1. 純粋想起学生・タレントタイプ別:エンドーサー因子スコア・男女比較

図表1. 純粋想起学生・タレントタイプ別:エンドーサー因子スコア・男女比較

タレント・有名人全般では、「知覚的類似性(自分と似ていると感じる)」が低い一方、「希望的識別性(その人のようになりたい)」が高いのが特徴です。「希望的識別性」は「スポーツ選手」や「男性歌手・ミュージシャン」で特に高く、これらのタレント・有名人が憧れの存在であることがわかります。

また、タレント・有名人全般で高い「推奨商品興味・購入喚起」を見せたのは「韓流アイドル・歌手・俳優」や「男子アイドル」である一方、「男子お笑い芸人」で極めて低くなっています。「男子お笑い芸人」は「希望的識別性」や「知覚的信頼性(信頼・誠実)」も低いことから、憧れや信頼・誠実さに欠ける上に推奨商品興味・購入喚起力が弱い存在として認識されているようで、大学生へのエンドーサーとしてのポテンシャルに疑問符が付きます。

男子はスポーツ選手や男性ミュージシャン、女子は女優と韓流スターの評価が高い

男子学生では、「男性歌手・ミュージシャン」で「知覚的類似性」と「希望的識別性」、「スポーツ選手」で「希望的識別性」「知覚的信頼性」「専門性(知識・スキル)」が特に高くなっています。

男子にとって、「男性歌手・ミュージシャン」は自分と似ている点が、「スポーツ選手」は特別なスキルと信頼感を兼ね備えている点が、それぞれ憧れの存在として評価されているようです。

女子学生では、「女性俳優」と「韓流アイドル・歌手・俳優」で「希望的識別性」と「知覚的信頼性」、「推奨商品興味・購入喚起」が特に高くなっており、「女性俳優」への「知覚的類似性」も高めです。

女子にとっては、信頼・誠実さが、憧れの存在として推奨商品の興味・購入まで喚起する重要ポイントとなるようです。なお、女子では「スポーツ選手」への評価も同様の理由で高い評価を得ていますが、回答者数が少ないため、グラフには表記していません。

憧れの同性タレントによる推奨が、商品興味・購入を喚起する

図表2は、第一想起タレント・有名人タイプ別に集計した、「推奨商品興味・購入喚起」との単相関係数です。

図表2. 純粋想起学生・タレントタイプ別:推奨商品興味・購入喚起との単相関係数

図表2. 純粋想起学生・タレントタイプ別:推奨商品興味・購入喚起との単相関係数

大学生全体で「推奨商品興味・購入喚起」と相関が高いのは、ほとんどのタイプで「魅力度」、次いで「希望的識別性」でした。

「魅力度」との相関が特に高いのは、「男性アイドル」「韓流アイドル・歌手・俳優」「男性歌手・ミュージシャン」「男性俳優」「女性俳優」で、「希望的識別性」との相関が特に高いのは、「スポーツ選手」「男性俳優」「女性俳優」です。

また、「知覚的信頼性」との相関は「スポーツ選手」や「女性俳優」、「専門性」との相関は「男性歌手・ミュージシャン」でも高くなっています。一方、「知覚的類似性」との相関は、どのタイプでもみられませんでした。

これらの結果から、魅力的で憧れのタレント・有名人が薦める商品・サービスへの興味・購入が喚起される傾向は、各タイプで共通することがわかります。また、スポーツ選手や女優では信頼・誠実さ、男性ミュージシャンでは専門性など、タレントタイプによって商品・サービスへの興味・購入を喚起する訴求ポイントが異なる様子も窺えます。

「希望的識別性」との相関は、男子学生では「スポーツ選手」「男性俳優」、女子学生では「バラエティタレント・有名人」「女性俳優」で高く、同性タレント・有名人の推奨が効きやすいようです。

男子は誠実で信頼できるタレントに、女子は憧れのイケメンに魅力を感じる

図表3は、第一想起タレント・有名人タイプ別に集計した、「魅力度」との単相関係数です。

図表3. 純粋想起学生・タレントタイプ別:魅力度との単相関係数

図表3. 純粋想起学生・タレントタイプ別:魅力度との単相関係数

大学生計で「推奨商品興味・購入喚起」以外に「魅力度」と特に相関が高い因子は「希望的識別性」「知覚的信頼性」「専門性」で、「男性歌手・ミュージシャン」「男性俳優」「女性俳優」などで顕著です。また、「韓流アイドル・歌手・俳優」では「知覚的類似性」、「スポーツ選手」では「専門性」との相関も高くなっています。

男子学生では「韓流アイドル・歌手・俳優」「男性歌手・ミュージシャン」「男性お笑い芸人」「女性俳優」で「知覚的信頼性」と、女子学生では「韓流アイドル・歌手・俳優」「男性俳優」で「希望的識別性」との相関が高いことから、男子は誠実で信頼できる存在、女子は憧れの存在(イケメンが多く含まれます)に魅力を感じているようです。

「マンガ原作系ファン」と「ファンシー系ファン」では、好きなタレントのタイプが真逆

最後に、前回紹介した第一想起キャラクタータイプ別に、どんなタレント・有名人タイプが第一想起されているかを集計しました(図表4)。

図表4. 純粋想起キャラクタータイプ別:純粋想起タレント・有名人構成比


「マンガ原作系」「ファンシー系」想起者は、ともに「男性お笑い芸人」の想起がもっとも多い点は共通しますが、「マンガ原作系」は「男性俳優」「女性俳優」の想起が多く「男性アイドル」「韓流アイドル・歌手・俳優」が少ないのに対し、「ファンシー系」は「男性アイドル」「韓流アイドル・歌手・俳優」の想起が多く「男性俳優」「女性俳優」が少ないなど、真逆の傾向を示しています。

また、「絵本・童話・小説系」では「男性俳優」「男性アイドル」「韓流アイドル・歌手・俳優」「男性歌手・ミュージシャン」の想起が、「ゲーム系」では「スポーツ選手」が多く、「ネット系」では「女性俳優」や「韓流アイドル・歌手・俳優」が多いなど、好きなキャラクターのタイプによって好きなタレントの傾向が異なります

もっと詳しく分析する必要がありますが、Z世代向けにキャラクターコンテンツや関連グッズの広告・広報をする際、各タイプに相応しい起用タレントを考える上での参考材料となりそうな結果です。

今回は以上です。次回は、Z世代での商品・サービスのエンドーサー(宣伝役)としてのタレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuber関する分析の完結編として、エンドーサータイプによる各因子間の因果関係の違いを紹介します。どうぞお楽しみに。

<第2部 バックナンバー>
第28回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(2)
第27回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する

第26回:《2024年調査》キャラクター・YouTuber・Vtuberのエンドーサー(宣伝マン)としての可能性を分析する

第25回:《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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