2024.09.19

《2024年調査》タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(2)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

8月31日、東京ビッグサイトで開催された「東京おもちゃショー2024」パブリックデーに行ってきました。2020年にコロナ禍で中止されて以来の訪問です。

昨年の再開以降は、チケット有料化やネット事前登録によって混雑度合いが改善されましたが、同時開催の「コロコロ魂フェスティバル」など、夏休み最後のレジャーとしてアナログな玩具やゲームに興じるキッズ・ファミリーの熱気が溢れる箇所も多数ありました。

国内外の人気IP玩具やグッズはもちろん、個人的には1930年からのカプセルトイ(ガチャガチャ)の歴史や推し活グッズなど、今に続く流行を実感させる展示も多数で感慨深かったです。

2024年8月31日「東京おもちゃショー2024」写真

2024年8月31日「東京おもちゃショー2024」(筆者撮影)

前回は、Z世代での「タレント・有名人」「キャラクター」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー(Endorser:広告内で製品やブランドを宣伝する人)としての効果と可能性について、以下の調査結果を紹介しました。

  • 大学生に最も人気のタレントは男子がお笑い芸人。女子は男性アイドルとK-POPアイドル
  • 大学生に最も人気のキャラは「ちいかわ」。男子はマンガ原作系、女子はファンシー系を支持
  • 大学生に最も人気のYouTuberは「東海オンエア」。VTuberは人気が分散
  • 大学生コアファンにとってVTuberは信頼できる魅力的な存在
  • 「推奨商品への興味・購入喚起」ではキャラクターがタレント・有名人に匹敵する

今回は、引き続き商品・サービスのエンドーサーとしてタレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuberによって商品・サービスへの興味が高まるのか、購買意欲が喚起されるのかについての分析です。

前回紹介した6因子間の関係や、タレントやキャラクターのタイプ(お笑い芸人、アイドル、マンガ原作系キャラ、ファンシー系キャラなど)によって反応がどう異なるのか、同じく大学生を対象とした定量調査データを用い、分析した結果を紹介します。

推奨商品への興味や購入を喚起する「魅力度」や「憧れ」

図表1は、前回同様、タレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuberのエンドーサータイプ別に1つ以上純粋想起した学生を対象とした、「推奨商品興味・購入喚起」との単相関係数です。

図表1. 純粋想起学生・エンドーサータイプ別:推奨商品興味・購入喚起との単相関係数

図表1 純粋想起学生・エンドーサータイプ別:推奨商品興味・購入喚起との単相関係数

回答学生計で「推奨商品興味・購入喚起」と特に相関が高いのは、各タイプ共通して「魅力度」でした。「タレント・有名人」と「YouTuber」では、「希望的識別性(その人のようになりたい)」も高くなっています。

「キャラクター」は全般に相関が低めで、「専門性(知識・スキル)」との相関がみられません。これは、キャラクターが有する専門性があくまでも物語や設定上の架空のものであり、推奨商品・サービスへの興味や購入を喚起する説得力が弱いためでは、と推察されます。

一方、「VTuber」では「専門性」との相関も高めです。これは、VTuberは今どきアニメルックのかわいい・カッコいい見た目だけでなく、実在する「中の人」が何かの一芸に秀でているため、そこが評価されての結果では、と考えられます。

男子学生では、「キャラクター」も「希望的識別性」との相関が相対的に高めです。これは、たとえ架空であっても、ファンにとって自分の目標となるような憧れの存在だと認識されれば、推奨する商品への興味が高まることを示す結果では、と考えられます。

また、男子学生における「VTuber」、女子学生における「YouTuber」は、「知覚的類似性(自分と似ていると感じる)」との相関も高く、自分と似た部分を感じる存在と認識すると、推奨する商品への興味が高まるのでは、と考えられます。

顔が見える存在では「知識やスキル」、架空の存在では「信頼・誠実さ」が重要

図表2は、エンドーサータイプ別に1つ以上純粋想起した学生を対象とした、「魅力度」との単相関係数です。

図表2. 純粋想起学生・エンドーサータイプ別:魅力度との単相関係数

図表2 純粋想起学生・エンドーサータイプ別:魅力度との単相関係数

回答学生全体で、「推奨商品興味・購入喚起」以外で「魅力度」と特に相関が高いのは、「タレント・有名人」です。「YouTuber」では「専門性」、「キャラクター」と「VTuber」では「知覚的信頼性(信頼・誠実)」が高い相関を示しています。

実在して顔が見える存在には知識・スキルを、架空または顔が見えない存在には信頼・誠実さをアピールすることが、魅力度アップに有効ということでしょうか。男子学生も同様の傾向です。

女子学生では、「タレント・有名人」「キャラクター」で「希望的識別性」「知覚的類似性」との相関が高くなっています。女子は、自分と似た部分もある、憧れの存在に魅力を感じるということで、性別による違いが興味深いです。

マンガ原作系キャラは、「信頼性」「魅力度」「専門性」などの因子で高スコア

図表3は、純粋想起されたキャラクターをタイプ別に分類して、6つのエンドーサー因子スコア(平均0、分散1)の平均値を純粋想起学生計で比較した結果です。

図表3. 純粋想起学生・キャラクタータイプ別:エンドーサー因子スコア・男女比較

図表3 純粋想起学生・キャラクタータイプ別:エンドーサー因子スコア・男女比較
前回記した、タレント・有名人に匹敵するスコアであるキャラクター全体の「推奨商品興味・購入喚起」は、キャラクタータイプによる有意差がみられず、安定して高めです。
ただし女子で「絵本・童話・小説系」が低い点が目につきます。あくまで仮説ですが、「絵本・童話・小説系」のキャラクターはキッズ層向け商品・サービスに起用されることが多く、女子大学生にとっては対象外となるためではないか、と推察されます。

また、キャラクター全般で低めの「専門性」は「ネット系」や「ファンシー系」で特に低い一方、「マンガ原作系」では高くなっています。これは、マンガに登場する一部のキャラクターが特別な能力を持っており、それがそのキャラクターの個性としてストーリー中で描かれていることを反映した結果だと考えられます。

男子学生は、「知覚的信頼性」や「希望的識別性」が「マンガ原作系」で特に高くなっています。これは、前述の特別な能力を持つ「マンガ原作系」の登場人物に、男子が憧れや信頼感を抱きやすい傾向を示した結果です。

女子学生は、「希望的識別性」が「ネット系」で、「専門性」が「ネット系」「ファンシー系」でそれぞれ低い一方、「知覚的類似性」「推奨商品興味・購入喚起」が「ネット系」「ファンシー系」で高くなっています。これは、女子が推しキャラに対して、憧れの存在であることや特別な能力を求めておらず、自分と似た不完全な存在だと感じることで、消費を含めて応援したくなる傾向を示した結果ではないかと思われます。

女子学生は、ファンシー系キャラが推奨する商品への興味や購入意向が高い

図表4は、純粋想起学生を対象としてキャラクタータイプ別に集計した、「推奨商品興味・購入喚起」との単相関係数です。

図表4. 純粋想起学生・キャラクタータイプ別:推奨商品興味・購入喚起との単相関係数

表4 純粋想起学生・キャラクタータイプ別:推奨商品興味・購入喚起との単相関係数

回答学生計で「推奨商品興味・購入喚起」と相関が高いのは、各タイプ共通して「魅力度」です。
その中で「ファンシー系」は、「希望的識別性」との相関が最も高く、「知覚的類似性」など他の因子も総じて高くなっています。これらの傾向は女子で顕著で、自分と似た部分もある憧れのファンシー系キャラが推奨する商品への興味や購入が喚起される様子が窺えます。

男子学生は「信頼・誠実さ」、女子学生は「自分と似たところがある」に魅力を感じる

図表5は、純粋想起学生を対象としてキャラクタータイプ別に集計した、「魅力度」との単相関係数です。

図表5. 純粋想起学生・キャラクタータイプ別:魅力度との単相関係数

図表5. 純粋想起学生・キャラクタータイプ別:魅力度との単相関係数

回答学生計で、「推奨商品興味・購入喚起」以外で「魅力度」と特に相関が高い因子は、「マンガ原作系」では「知覚的信頼性」、「ファンシー系」「ゲーム系」では「専門性」です。この傾向は男子で顕著です。

女子では「ファンシー系」「ネット系」で「知覚的信頼性」「専門性」が、「マンガ原作系」で「知覚的類似性」が高くなっています。同じ「マンガ原作系」でも、男子は信頼・誠実さが、女子は自分と似たところがあるキャラクターが魅力度アップに効いており、やはり性別による違いがみられます。

今回は以上です。
次回は、引き続き商品・サービスのエンドーサー(宣伝役)としてタレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuberによって商品・サービスへの興味が高まるのか、購買意欲が喚起されるのかについて、さらにタレントのタイプ(お笑い芸人、俳優、アイドル、スポーツ選手、韓流アイドル・歌手・俳優など)によって反応がどう異なるのか、分析結果を紹介します。どうぞお楽しみに。

<第2部 バックナンバー>
第27回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する
第26回:《2024年調査》キャラクター・YouTuber・Vtuberのエンドーサー(宣伝マン)としての可能性を分析する

第25回:《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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