2024.08.22

《2024年調査》タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(1)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

世間は夏休み中ですが、この時期に前期講義の採点に大忙しとなる大学教員もいます。今年の自分がまさにそれで、約600名分の課題レポートをひたすら読み込みました。

これだけ多くのレポートを読み続けると、テーマ自体の面白さだけでなく、構成の見事さや見せかたの上手さが際立つものを多数みかける一方、全くダメなものも大量にあって、こんなに個人差が出てくるものか、と感慨深いものがありました。自分なりの方法で学生たちに気づきを促していかないと、と思った次第です。

前回は、「タレント・有名人」「キャラクター」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー(Endorser:広告内で製品やブランドを宣伝する人)としての効果と可能性について、以下の調査結果を紹介しました。

  • 魅力度が高いのは、1.タレント 2.キャラクター、専門性は1.タレント 2.YouTuber
  • 信頼できる憧れの存在として評価されるタレント・有名人
  • Z世代にとって、YouTuberとキャラクターはタレントに匹敵する身近で信頼できる存在
  • 男性Z世代はYouTuber とキャラクター、女性Z世代はタレントへの評価が高い

今回は、タレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuberをエンドーサーとすることで、商品・サービスへの興味が高まるのか、購買意欲が喚起されるのかについて、大学生を含むZ世代に踏み込んだ分析結果を紹介します。

Z世代イメージ

大学生に最も人気のタレントは男子がお笑い芸人。女子は男性アイドルとK-POPアイドル

今回のZ世代分析に用いたのは、明治大学商学部で「レジャービジネス論」を受講している3-4年生のうち約500名からの回答結果です。
男女比はほぼ2:1で、YouTuberとVTuberは2024年5月17日、キャラクターは2024年7月5日、タレント・有名人は2024年7月12日から各々1週間にわたって調査しました。

図表1は、タレント・有名人、キャラクターの純粋想起による好意度ランキングです。

図表1.  大学3-4年生:純粋想起による「好きなタレント・有名人」「キャラクター」ランキング
Q. あなたが好きな「タレント・有名人」は誰ですか。「キャラクター」は何ですか。好きな順に「3つ」までお書きください。

大学3-4年生:純粋想起による「好きなタレント・有名人」「キャラクター」ランキング

タレントは男女計でYouTubeでの発信も盛んな「霜降り明星」がトップで、「Number_i」「千鳥」「嵐」「ダウンタウン」「SixTONES」「大谷翔平」「東海オンエア」「TWICE」が僅差で続きます。
男子は男性お笑い芸人や野球選手やYouTuberが、女子は男性アイドルとK-POPアイドルが強く支持されており、傾向が全く異なります。

大学生に最も人気のキャラは「ちいかわ」。男子はマンガ原作系、女子はファンシー系を支持

キャラクターは男女ともに「ちいかわ」がトップで、女子はもちろん、男子でも2位以下に差をつけています。男女計の2位以下は「ポケットモンスター」「ONE PIECE」「ドラえもん」「スヌーピー」です。

男子は「ONE PIECE」「ドラえもん」「NARUTO」「名探偵コナン」「キングダム」「進撃の巨人」などマンガ原作系が支持されているのに対し、女子は「スヌーピー」「おぱんちゅうさぎ」「んぽちゃむ」など、シニカルさやダークさを包含したファンシー系が人気です。

大学生に最も人気のYouTuberは「東海オンエア」。VTuberは人気が分散

図表2は、YouTuber、VTuberの純粋想起による好意度ランキングです。

図表2.  大学3-4年生:純粋想起による「好きなYouTuber」「VTuber」ランキング
Q. あなたが好きな「YouTuber」は「VTuber」をお知らせください。

大学3-4年生:純粋想起による「好きなYouTuber」「VTuber」ランキング

YouTuberは男女ともに「東海オンエア」がトップで、特に男子では圧倒的です。男子では「HIKAKIN」「ニートと居候とたかさき」「キヨ」が、女子は「むくえな」「平成フラミンゴ」など同年代の女性2人組が続きます。

VTuberは男女ともに「葛葉」がトップですが圧倒的というわけではなく、「キズナアイ」「ローレン・イロアス」「剣持刀也」「渋谷ハル」が僅差で続いて人気が分散している上に想起数自体が少ないです。

上記のエンドーサータイプ別に純粋想起率を比較したのが図表3です。

図表3.  大学3-4年生:「好きなタレント・有名人」「キャラクター」「YouTuber」「VTuber」純粋想起率

大学3-4年生:「好きなタレント・有名人」「キャラクター」「YouTuber」「VTuber」純粋想起率

「タレント・有名人」「キャラクター」は3つまで、「YouTuber」「VTuber」は数を制限せずに質問した結果のため単純比較できませんが、VTuberが一般大学生にとってはまだまだ浸透していない存在である様子が窺えます。

大学生コアファンにとってVTuberは信頼できる魅力的な存在

図表4は、今回用意した14項目のTOP2スコア(各項目で4段階評価のうち「かなり+まあ当てはまる」と答えた人の割合)を、回答学生計と、エンドーサータイプ別に1つ以上純粋想起した学生(各タイプの出現率は図表3参照)に絞り込んだ純粋想起学生計(=コアファン)で算出した結果です。

図表4.  大学3-4年生:エンドーサーとしての「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」評価比較&因子分析結果

大学3-4年生:エンドーサーとしての「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」評価比較&因子分析結果

回答学生計では全般に低かったVTuberも、純粋想起学生計では「知覚的信頼性(信頼・誠実)」や「専門性(知識・スキル)」、「魅力度(親しみ・面白さ・見た目の良さ)」の点で、他タイプと遜色のないスコアになっています。
VTuberのファンは数こそ少ないものの総じて熱量が高く、企業コラボ起用時にはタレントやYouTuberよりも反応が良い、という話をよく聞きますが、それを裏付ける結果だと言えるでしょう。

今回新たに質問に加えたのは、「推奨商品興味・購入喚起」に関する2項目、「好きな(おすすめしている)商品・サービスに興味が湧く」「好きな(おすすめしている)商品・サービスを買いたくなる・利用したくなる」です。
因子分析の結果、計6因子(図表4で赤文字表記)の1つとして抽出されました(今回は「専門性」と「魅力度」も別々の因子として抽出されています)。

「推奨商品への興味・購入喚起」ではキャラクターがタレント・有名人に匹敵する

図表5は、「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」で、6つのエンドーサー因子スコア(平均0、分散1)の平均値を純粋想起学生計で比較した結果です。

図表5.  純粋想起学生計:「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー因子スコア男女比較

純粋想起学生計:「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー因子スコア男女比較

広告やキャンペーン、コラボ企画などで起用した際に、各々のコアファン(ここでは純粋想起学生計を指します)へのエンドーサーとしての役割が期待できそうなのは、「知覚的類似性(自分と似ていると感じる)」が高いYouTuber、「希望的識別性(その人のようになりたい)」「知覚的信頼性(信頼・誠実)」が高いタレント・有名人です。

「魅力度」は各タイプで差がなく、いずれも高いスコアとなっています。「専門性(知識・スキル)」でキャラクターのみ低いのは、架空の存在故の説得力の弱さに起因するものではないかと思われます。

一方、今回新たに設けた「推奨商品興味・購入喚起」でキャラクターがタレント・有名人に匹敵し、YouTuberやVTuberを上回るスコアになっているのは、きわめて興味深い結果です。

女子はタレント・有名人(=男性アイドルやK-POPアイドル)のスコアが「推奨商品興味・購入喚起」を含めて全般に高い一方、男子と異なり「希望的識別性」「専門性」においてキャラクターのスコアが低いことから、男女でタレント・有名人やキャラクターに求めるものが異なるのではと思われます。このあたりは更なる分析が必要です。

今回は以上です。次回も引き続きタレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuberによって商品・サービスへの興味が高まるのか、購買意欲が喚起されるのかについて分析します。

今回紹介した6因子間の関係や、タレントやキャラクターのタイプ(お笑い芸人、アイドル、マンガ原作系キャラ、ファンシー系キャラなど)によって反応がどう異なるのか、同じデータを用いて分析した結果をご紹介します。どうぞお楽しみに。

<第2部 バックナンバー>
第26回:《2024年調査》キャラクター・YouTuber・Vtuberのエンドーサー(宣伝マン)としての可能性を分析する
第25回:《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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