2024.07.19

《2024年調査》キャラクター・YouTuber・Vtuberのエンドーサー(宣伝マン)としての可能性を分析する|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

7月3日(水)に東京ビッグサイトで開催された「ライセンシングジャパン」会場にて、「日本キャラクター大賞2024」の表彰式に選定委員&プレゼンターとして参加しました。

日本キャラクター大賞 キャラクター・ライセンス賞は【推しの子】、「機動戦士ガンダム シリーズ」、「ちいかわ」、日本キャラクター大賞 ニューフェイス賞は「TVアニメ『葬送のフリーレン』」、プロダクト・ライセンシー賞は「一番くじ」、プロモーション・ライセンシー賞は「ハッピーセット ハローキティ50周年」、リテイル賞は「セサミストリートマーケット」が受賞。選定委員特別賞には「プリキュアシリーズ」が選ばれました。

そして、グランプリを獲得したのは、2022年に続いて「ちいかわ」でした。日本キャラクター大賞サイトにも詳細記事が記載されています。関係各位の皆さま、おめでとうございました!

「日本キャラクター大賞2024」表彰式

「日本キャラクター大賞2024」表彰式(2024年7月3日:キャラクター・データバンク提供)

前回は、今年初めて測定したYouTuberの純粋想起による好意度ランキング、さらにYouTuber・VTuber各ファンとキャラクターコアファンの関係について、以下の調査結果を紹介しました。

  • 純粋想起TOP3は、HIKAKIN、はじめしゃちょー、東海オンエア
  • 女性Z世代は、親しみやすさや類似性から同年代女性YouTuberを支持
  • VTuber純粋想起率は、男女ティーンおよび男性20-34歳でのみ高い
  • マンガ好意度が特に高いのはVTuberファン、特に「にじさんじ」ファン

今回は「キャラクター定量調査2024」から「キャラクター」と「タレント・有名人」、そして「YouTuber」「VTuber」の、エンドーサー(Endorser:広告内で製品やブランドを宣伝する人)としての効果と可能性を比較した分析結果をご紹介します。
2023年調査では、「キャラクター」と「タレント・有名人」で比較しましたが、今回は「YouTuber」および「VTuber」とも比較します。

宣伝マンのイメージ

魅力度が高いのは、1.タレント2.キャラクター、専門性は1.タレント2.YouTuber

図表1は、今回用意した12項目に関する男女3-74歳全体での因子分析結果と、12項目の調査回答TOP2スコア(各項目で4段階評価のうち「かなり+まあ当てはまる」と答えた人の割合)です。

図表1. 男女3-74歳全体:エンドーサーとしての「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」評価比較

男女3-74才全体:エンドーサーとしての「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」評価比較

今回新たに加えた、魅力に関する4項目「親しみやすい」「面白い」「見た目がいい(かっこいい、かわいい等)」「魅力的である」が、専門性を示す2項目「スキル(技能)がある」「知識がある」と同じ因子になったことは新たな発見です。

この専門性・魅力に該当する項目は、魅力のTOP2スコア順で「タレント・有名人」>「キャラクター」>「YouTuber」「VTuber」になりました。専門性のTOP2スコア順では「YouTuber」と「キャラクター」が逆転していますが、何らかの専門性で支持を集めている「YouTuber」が評価されるのは、納得がいく結果です。

信頼できる憧れの存在として評価されるタレント・有名人

知覚的類似性(自分と似ていると感じる)はいずれもTOP2スコアが低く、たとえ一般人も多く含まれるYouTuberであっても、自分と似た存在としては認識されていないようです。

希望的識別性(その人のようになりたい)のうち「私が見習いたい存在である」と知覚的信頼性(信頼・誠実)は、「タレント・有名人」が高めで、「YouTuber」と「キャラクター」が続きます。

図表2は、「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」で、4つのエンドーサー因子スコア(平均0、分散1)の平均値を比較した結果です。

図表2.  男女3-74歳全体:「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー因子スコア比較

男女3-74才全体:「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」

「タレント・有名人」と「VTuber」のスコア差が最も大きいのは「専門性・魅力」で、最も小さいのが「知覚的類似性」であることや、全般に「キャラクター」と「YouTuber」のスコア差は僅かであることがわかります。

Z世代にとって、YouTuberとキャラクターはタレントに匹敵する身近で信頼できる存在

図表3は、性・年齢別にみた12項目調査回答のTOP2スコアです。専門性・魅力は、男女ティーンとF1(女20-34歳)で「YouTuber」と「キャラクター」が「タレント・有名人」に迫っており、特に専門性では「YouTuber」が「タレント・有名人」に匹敵するか上回っています。

図表3. 性・年齢別:エンドーサーとしての「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」評価

性・年齢別:エンドーサーとしての「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」評価

性・年齢別:エンドーサーとしての「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」評価(2)
知覚的類似性(自分と似ていると感じる)では、男女ティーンとM1(男20-34歳)で、「YouTuber」と「キャラクター」が「タレント・有名人」に迫っており、これらの年代では、YouTuberやキャラクターに自分を重ね合わせる人も比較的存在するようです。

希望的識別性(その人のようになりたい)と知覚的信頼性(信頼・誠実)は、男女ティーンおよび男女20-34歳で「YouTuber」と「キャラクター」、特に「YouTuber」が「タレント・有名人」に迫るか上回っています。

以上の結果から、これらの年代にとってのYouTuberは、自分もなれるかもしれない、信頼できる憧れの存在として認識されていることがわかります。

男性Z世代はYouTuber とキャラクター、女性Z世代はタレントへの評価が高い

図表4は、性・年齢別に「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」で4つのエンドーサー因子スコア(平均0、分散1)の平均値を比較した結果です。

図表4. 性・年齢別:「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー因子スコア

性・年齢別:「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー因子スコア

性・年齢別:「キャラクター」「タレント・有名人」「YouTuber」「VTuber」のエンドーサー因子スコア

「キャラクター」と「YouTuber」の評価が特に高いのは男女ティーンと男女20-34歳のZ世代です。

男性Z世代では特に「YouTuber」の評価が、男子ティーンでは「キャラクター」の評価が高いのに対して、女性Z世代では「タレント・有名人」の評価がさらに上回ります。ちなみに、女性Z世代でのタレント・有名人が男性アイドルやイケメン俳優を指すことは、前々回でご紹介したとおりです。

女性20-34歳以外のZ世代では、相対的に「VTuber」の評価も低くないようです。なお、35歳以上では「タレント・有名人」の評価が相対的に高く、特に女性でこの傾向が顕著となっています。

今回は以上です。次回は、商品・サービスのエンドーサー(宣伝役)として、タレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuberを起用することで、商品・サービスへの興味が高まるのか、購買意欲が喚起されるのかについて、Z世代における分析結果を紹介します。どうぞお楽しみに。

<第2部 バックナンバー>
第25回:《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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