2024.06.18
《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する|マンガキャラクター活用の極意【第二部】
5月11日(土)と5月12日(日)に、広島県呉市の大和波止場で「呉ご当地キャラ祭」が開催されました。2018年の豪雨被害の時に呉市を応援してくれた全国の方々や各地のご当地キャラへの恩返しで始まったこのイベントも、コロナ禍を経て今回で6回目。各地から50以上のご当地キャラが集まって盛り上がりました。
あいにく12日は朝から豪雨で早めの終了となりましたが、大和ミュージアムでのご当地キャラとの触れ合いの場が急遽設定され、貴重な機会となりました。呉氏をはじめとする参加キャラの皆さん、関係各位の皆さんに感謝します。
「呉ご当地キャラ祭」会場(2024年5月11-12日)
左:ふなっしーファミリー&呉氏(広島県呉市)、右:大和ミュージアムで有明ガタゴロウ(佐賀県)と
※筆者撮影
前回は、タレント・有名人およびVTuberの純粋想起による好意度ランキングと、タレントタイプ別ファンとキャラクターコアファンの関係について、以下の調査結果を紹介しました。
- お笑い芸人とアイドルに高い支持。「大谷翔平」の人気はさらに上昇
- 男性お笑い芸人は同性から、男性アイドルと俳優は異性から高支持
- マンガ全般への好意度が特に高い「タレントタイプ別ファン」は?
- VTuberは純粋想起スコアが極めて低く、存在感はまだまだ
今回も「キャラクター定量調査2024」から、今年初めて測定したYouTuberの純粋想起による好意度ランキング、さらにYouTuber・VTuber各ファンとキャラクターコアファンの関係について分析します。
純粋想起TOP3は、HIKAKIN、はじめしゃちょー、東海オンエア
まず、男女3-74歳全体での「好きなYouTuber」ランキングです。
図表1. 男女3-74歳全体:純粋想起による「好きなYouTuber」ランキング
Q. あなたが好きな「YouTuber」は誰ですか。好きな順に「3つ」までお書きください。グループ名でも結構です。
純粋想起による好意度1位は「HIKAKIN」で、2位の「はじめしゃちょー」「東海オンエア」以降に大きく差を付けています。5位の「よにのちゃんねる」は旧ジャニーズの二宮和也さん、中丸雄一さん、山田涼介さん、菊池風磨さん、「エガちゃんねる」は江頭2:50さんによるチャンネルで、16位の仲里依紗さん、19位の辻希美さん、中田敦彦さんなどのタレント・有名人も複数名上位にランクインしています。
女性Z世代は、親しみやすさや類似性から同年代女性YouTuberを支持
次に、純粋想起上位YouTuberを性・年齢別に見てみましょう。
図表2. 性・年齢別:純粋想起による「好きなYouTuber」ランキング
「HIKAKIN」は男性では各年代ともにトップですが、女性ティーンおよび20-34歳のいわゆるZ世代では、「平成フラミンゴ」「東海オンエア」がそれぞれトップとなっています。
女性Z世代では、「平成フラミンゴ」「むくえな」など同年代女性YouTuber2人組の人気が高く、男性アイドルやイケメン俳優が上位を占めるタレント・有名人の純粋想起結果(前回紹介)と異なる傾向を示しています。
女性Z世代にとって、男性アイドルやイケメン俳優は変わらず憧れの存在である一方、YouTuberは見た目や親しみやすさで自分たちと似た部分を持ちながら良好な友達関係を見せてくれる、リアルさと理想を兼ね備えた存在である様子が窺えます。
一方、「好きなYouTuber」のタイプ別純粋想起率(図表3)からは、女性ティーンでは「Snowman」や「よにのちゃんねる」などタレントとして高い人気を誇る男性アイドルによるYouTube発信が人気であること、男女とも35-49歳のミドル層では「HIKAKIN」などYouTubeで発信する元・素人や何らかの専門家の他に、アイドルやお笑い芸人など、出自が異なる様々なYouTuberが玉石混交状態で支持されていることなどが窺えます。
図表3. 性・年齢別:「好きなYouTuber」タイプ別・純粋想起率
YouTubeはあくまでもプラットフォームに過ぎず、自分の「推し」が活躍する姿を観られるのであれば、テレビでもYouTubeでも構わない、というファン心理を反映した結果だと言えるでしょう。
また、好きなYouTuberとして、一般的なYouTuberやタレントでなくVTuberを想起した人は男性20-49歳で多く、この年代がVTuberのコアファンであることがわかります。
VTuber純粋想起率は、男女ティーンおよび男性20-34才でのみ高い
次に、性・年齢別の純粋想起上位VTuberを見てみました。
図表4. 性・年齢別:純粋想起による「好きなVTuber」ランキング
男女ティーンおよび男性20-34歳でのみ複数のVTuberが純粋想起されていますが、女性20-34歳ではトップでも1%未満、女性35-49歳では想起率0と、まだ限られた年代にしか浸透していないようです。
「好きなVTuber」の所属グループ別純粋想起率(図表5)では、「にじさんじ」が男女ティーンで、「ホロライブ」が男子ティーンと男性20-34歳で高いなど、グループで支持層が異なる様子も見受けられます。
図表5. 性・年齢別:「好きなVTuber」所属グループ別・純粋想起率
マンガ好意度が特に高いのはVTuberファン、特に「にじさんじ」ファン
続いて、好きなYouTuberの純粋想起タイプ別と好きなVTuberの所属グループ別に、テレビアニメ、マンガ、キャラクターへの好意度とネット配信キャラ動画・アニメ視聴度を比較しました。
図表6. 「好きなYouTuber」純粋想起タイプ別・「好きなVTuber」所属グループ別:テレビアニメ・マンガ・キャラクター好意度、ネット配信動画・アニメ視聴度
男女3-74歳全体 < YouTuber想起者全体(男女3-74歳全体の49%) < VTuber想起者全体(男女3-74歳全体の11%) の順で、テレビアニメ・マンガ各コンテンツへの好意度も、キャラクター好意度も、ネット配信動画視聴も高い、いわゆる「コアファン」が多くなることがわかります。さらに、マンガへの好意度が相対的に高いのはVTuber純粋想起者で、特に「にじさんじ」想起者では86%がマンガ好きと回答しています。
これだけの結果では言い切れませんが、マンガ作品とのコラボキャンペーンや新刊発売の告知役として、VTuber、特に女性ティーンのファンが多い「にじさんじ」のVTuberは極めて親和性が高いのでは、と思われます。
一方、YouTuberでの男性アイドル想起者は、マンガへの好意度やネット配信キャラ動画・アニメ視聴度が低いレベルにとどまっています。これらの結果から、同じ女性ティーンでも、男性アイドルファン(女性ティーンの44%)と「にじさんじ」ファン(女性ティーンの13%)とでは、かなり嗜好性が異なるのでは、と考えられます。この点については、今後追加分析を進めていきます。
マンガ・アニメなどのコンテンツやキャラクターグッズ、ネット配信視聴などをプロモーションするために、どんな人たちに向けて誰を起用するべきか、これまで分析してきたファンの嗜好性を参考に検討してはいかがでしょうか。
今回は以上です。次回からは、商品・サービスのエンドーサー(宣伝役)として、タレント・有名人、キャラクター、YouTuber、VTuberのどんな要素がどんな人たちに支持されて、いかなる効果を発揮するのかについて、分析事例を紹介していきます。どうぞお楽しみに。
<第2部 バックナンバー>
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)
第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧
筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。