2024.05.17
《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する|マンガキャラクター活用の極意【第二部】
4月27日(土)に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」へ行ってきました。5年ぶりの訪問です。
超歌舞伎や土俵、自衛隊車両、人工衛星などスケールの大きな展示はなくなりましたし、コスパ面での悪化は否めませんが、良い意味でのごった煮感は変わらずです。
新たな傾向は、猫も杓子もVTuber頼みだった点です。ニュースにもなったギャル姿のラスボスこと小林幸子さんの出演が翌日だったため、見られなかったのが残念でした。
「ニコニコ超会議」会場(2024年4月27日) ※筆者撮影
前回は、純粋想起による2024年キャラクター全般好意度ランキング上位キャラの支持層に関する分析結果から、グッズやストーリーなど、どんな訴求への反応が期待できそうか、以下の調査結果を紹介しました。
- キャラクター・マンガへの好意度が特に高い「ちいかわ」「ポケモン」のファン
- TV・映画などのアニメへの好意度が特に高い「コナン」「ちいかわ」「ポケモン」のファン
- マンガ原作系キャラのファンは、他のマンガ系キャラへの好意度も高い
今回は、前回に続いて「キャラクター定量調査2024」から、タレント・有名人およびVTuberの純粋想起による好意度ランキングと、タレントタイプ別ファンとキャラクターコアファンの関係について紹介します。
お笑い芸人とアイドルに高い支持。「大谷翔平」の人気はさらに上昇
まず、男女3-74歳全体での「好きなタレント・有名人」ランキングです。
図表1. 男女3-74歳全体:純粋想起による「好きなタレント・有名人」ランキング
Q. あなたが好きな「タレント・有名人」は誰ですか。好きな順に「3つ」までお書きください。グループ名でも結構です。
純粋想起による好意度1位は「ダウンダウン」で、2位「SnowMan」、3位「明石家さんま」と続きます。松本人志氏の活動休止が続いているためか「ダウンダウン」のスコア自体は4.3%→3.2%と低下していますが、昨年同様にトップです。
昨年3位だった「King & Prince」は47位にダウンし、脱退メンバーによる「Number_i」が19位にランクイン。一方で「大谷翔平」が昨年の23位から7位へと大きく上昇しています。
他にも、「やす子」(20位)、「高橋文哉」「SEVENTEEN」(各26位)など、旬のタレントやアイドルがランクインしています。
※昨年ランキングは、こちらをご覧ください。
男性お笑い芸人は同性から、男性アイドルと俳優は異性から高支持
次に、性・年齢別の純粋想起上位タレント・有名人を見てみます。
図表2. 性・年齢別:純粋想起による「好きなタレント・有名人」ランキング
※各年代上位5人・グループを記載
男性お笑い芸人は男子ティーンと35歳以上で高い一方、女子キッズ~49歳では低くなっています。それに対し、男性アイドルは女子ティーン~34歳で高いが男性全般では低いなど、対照的な結果となっています。
また、男性俳優は女子ティーン~34歳および50歳以上で高い一方、キッズ以外の男性では低く、女性俳優は男女20-34歳および男性35歳以上で高いなど、タレントの性別による支持層の違いが顕著です。
ちなみに男性歌手・ミュージシャンは女性50歳以上、女性アイドルは女子ティーン、韓流アイドル・歌手・俳優は女子ティーンから34歳、YouTuberは男子ティーンおよび女子キッズ、声優・アニメ歌手は男子ティーン~34歳で高い、など、特定の性・年代で支持が高いタレントも見受けられます。
以上の傾向は、「好きなタレント・有名人」の純粋想起内容をタレントタイプ別に分類した図表3の結果をもとに考察しています。
図表3. 性・年齢別:「好きなタレント・有名人」各タイプの純粋想起率
マンガ全般への好意度が特に高い「タレントタイプ別ファン」は?
続いて、好きなタレント・有名人の純粋想起タイプ別に、テレビアニメ、マンガ、キャラクターへの好意度とネット配信キャラ動画・アニメ視聴度を比較しました。
図表4. 「好きなタレント・有名人」純粋想起タイプ別:テレビアニメ・マンガ・キャラクター好意度、ネット配信動画・アニメ視聴度
男女3-74歳全体と比べて、テレビアニメ・マンガ各コンテンツへの好意度も、キャラクター好意度も、ネット配信動画視聴も特に高い=コアファンが多いのは、「声優・アニメ歌手」と「YouTuber」の想起者でした。
以前と比べて声優・アニメ歌手やYouTuberは多数存在するため、特定個人・グループのファンは分散・並立していますが、総じて推す対象への熱量が高い人が多く、コンテンツとの親和性の高さを反映した結果と言えます。
また、テレビアニメ全般への好意度が高いのは「女性歌手・ミュージシャン」「アイドル」「お笑い芸人」の想起者で、マンガ全般への好意度が高いのは「お笑い芸人」「男性歌手・ミュージシャン」想起者でした。
さらにキャラクター全般への好意度が高いのは「女性お笑い芸人」「男性歌手・ミュージシャン」「男性アイドル」「スポーツ選手」「韓流アイドル・歌手・俳優」の想起者で、ネット配信動画視聴度が高いのは「海外歌手・俳優・スポーツ選手」「韓流アイドル・歌手・俳優」「女性アイドル」の想起者でした。
マンガ・アニメなどのコンテンツやキャラクターグッズ、ネット配信視聴をプロモーションする際に、エンドーサー(宣伝役)として誰を起用するべきか迷ったときには、このようなファンの嗜好性を参考にするとよいのではないでしょうか。
VTuberは純粋想起スコアが極めて低く、存在感はまだまだ
最後に、男女3-74歳全体での「好きなVTuber」に関する純粋想起結果を紹介します。
図表5. 男女3-74歳全体:純粋想起による「好きなVTuber」ランキング
Q. あなたが好きな「VTuber」は誰ですか。好きな順に「3つ」までお書きください。グループ名でも結構です。
※「VTuber」 とは、バーチャルYouTuberの略で、2Dや3Dなどのバーチャルな姿で配信をするYouTuberのことを指します。
「宝鐘マリン」「キズナアイ」が同率1位で、Vtuber大手事務所が運営するグループである「にじさんじ」と「ホロライブ」の所属Vtuberが上位に多数ランクインしている状況は昨年と同じです。ただしほとんどのVTuberで純粋想起スコアが1%未満にとどまるなど、多くの人々にとってはまだまだ存在感が希薄で、話題先行型であることに変わりはないようです。
今回は以上です。次回は、今年の調査から初めて測定したYouTuberの純粋想起による好意度ランキングと、YouTuber、VTuber各ファンとキャラクターコアファンとの関係について紹介していきます。どうぞお楽しみに。
<第2部 バックナンバー>
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)
第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧
筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。