児童書や図鑑、絵本などに長年携わっていた編集者たちが2021年に立ち上げた子育て世代向けメディア「コクリコ」。ユーザーの支持が厚く、開設から1年半でPVが10倍以上成長しました。そんな「コクリコ」では、子育て渦中のママ層のリサーチを得意とする「エニママ」とのコラボレーションによる、「コクリコラボ」の取り組みがスタート。子育て世代のインサイトへの多様な調査アプローチで、業界からの注目度が高まっています。この「コクリコラボ」の活動について、コクリコを運営する講談社第六事業局の服部徹、日下部由佳、大矢真史が話します。( 「コクリコ」の詳しい説明記事はコチラ )
(左から)講談社第六事業局の服部徹、日下部由佳、大矢真史
コクリコラボの強み・魅力は
子育て読者層のお悩みの「見える化」
──今いちばん保護者世代から求められていることはどんなことで、そこに対して「コクリコラボ」はどのようなアプローチをしているのでしょうか?
日下部 令和3年版「厚生労働白書」によると、第一子出産後の継続就業率は53.1%(出産前有職を100%とした場合)と前期の統計(2004-2009)よりも13%もアップしており、計測データのある1985年以降過去最高です。
ママたちの生活は大きく変化しているのですが、男性の育児休暇取得率は、期間の長短を不問にしても、ようやく13%くらい。
厚生労働省 資料 「育児・介護休業法の改正について」より
また、パートナーによるサポートだけでなく、社会的なサポートも十分とは言えない現実があります。
厚生労働省 資料 「育児・介護休業法の改正について」より
そのような背景をふまえて、「コクリコラボ」では、保護者を対象に子育てのサポート状況についてアンケートをとりました。
保護者を取り巻く「子育てのサポート体制」について、周囲の協力・サポート状況(理想)のアンケート結果
保護者を取り巻く「子育てのサポート体制」について、周囲の協力・サポート状況(実態)のアンケート結果
調査結果では、コクリコ編集部の予想通り、保護者の理想と現実の乖離が大きく、周囲の協力が十分に得られていないことが明らかになりました。家事単体、育児単体だけでも、それを仕事とみなせば、それだけで食べていけるほどの重労働。そこに自分の仕事も加わり、多忙が積み重なって、疲弊している保護者の現状がありました。
喫緊の課題は「保護者が働きやすいように仕事と家庭を両立できる環境づくりをする」こと。その層に向けたお困り事解消サービスは、これからもっと成長する可能性が高いことも読み取れました。
──疲弊しているママたち。そして、パートナーや社会のサポートが実態に追い付いていない。これらが具体的にわかるエピソードを教えてください。
日下部 あらためて「コクリコ」の特長を説明すると、ユーザーは男女比で約4対6。ママ層読者が若干多いながら、昨今の男性の育児参加もあり、子育てに興味のある男性読者もいるニュートラルな"子育てお悩み解決"サイトです。
具体的に保護者の日常を知る一手として、「読み聞かせ」をテーマにアンケートを行ったところ、ここでもやはり「保護者が十分な育児サポートを受けられていない」状況が明らかになりました。
読み聞かせは、本来、動物や面白いキャラクターが登場して、声色を変えて、驚かしたり、笑わせたり......子どもとの楽しいコミュニケーションタイムのはず。けれども、アンケート結果では、5%の人を除き、なんらかの負担を感じている保護者が90%以上いる、という現実が浮き彫りになりました。この衝撃の結果により、記事のPVは急上昇。ニュースでもとりあげられ、世の中から注目を集めたほどでした。
服部 多かれ少なかれ負担だと感じている保護者層が、本当に多いのですね。我々自身も本を販売している身として、ただ、年齢ごとに推薦図書を並べる、だけでなく、実情をふまえて、もう一歩先へ踏み込んだ提案が必要なのだと実感しました。
大矢 「もう一歩先へ」がどういうことかというと、たとえば、セガトイズさんの「ドリームスイッチ」が例としてあげられるかもしれません。この「ドリームスイッチ」は、親のかわりに読み聞かせをしてくれるのですが、子どもを寝かしつける時に困りごとになっている、「疲れて寝落ちする」「なかなか寝室へ行かない」など、子育て層のお悩みを掘り起こした結果、こういった解決商材の開発に繋がっているのだな、とあらためて認識をした次第です。
このようなことをふまえると、私たちも出版社が持つ膨大な児童書や児童向けコンテンツを、コクリコラボの最大の武器・インサイトリサーチと組み合わせることで、今後の新たなサービスに活用・展開できる可能性が広がるのではないかと思っている、そういうことです。
──「コクリコラボ」の現在のメンバー数や調査方法、その強みなどを教えてください。
大矢 「コクリコラボ」は、常時2000人の"復職予定・復職希望"のママ会員を持っている、復職支援をする会社「エニママ」さんと一緒に調査活動をしています。
日下部 年に6クール、2,000人にWEBアンケートをし、さらにグループインタビューなどで、多くの保護者の生の声を聞いています。オフラインでのインタビューの際は、保護者たちは赤ちゃんを抱いたまま、饒舌にお悩みを熱く語ってくれ、我々の記事制作のヒントに大いに役立っています。
子育て関連企業の方々から、リアルな悩みの吸い上げに困っていると聞くことがあるのですが、カジュアルな雰囲気でホンネに迫ることができるので、それが「コクリコラボ」の一番の強みですね。編集業務で培った取材力で、リアルな子育て層の悩みを深堀りし、サービスや商品の開発や改善へのヒントになるインサイトに迫った調査結果をお届けできるということです。
服部 このラボにより、子育て世代がどのようなコンテンツを好み、どんなお悩みを持っているかが具体的にわかるようになり、強みである児童書やコンテンツをより太く活用する方向性が見えてきました。
企業の皆さまには、こども向け書籍で鍛えた我々の編集力・取材力を生かした「コクリコラボ」のインサイトリサーチ、そしてコクリコのメディアとしてのインフラ・記事化を活用いただくことで、よりニーズに沿ったサービスの新たな展開をご提供できると思います。
──「エニママ」とコラボするに至ったいきさつは?
コクリコラボ
日下部 そもそもコクリコは、講談社内で児童書に関わるメンバーが多く集う場所です。図鑑、児童書、絵本、ディズニー......子どもが興味をもつ本、保護者が子どもに読ませたい本、のノウハウを熟知しているメンバーが知育もエンタメ性もふまえて横断的に立ち上げたサイトです。
服部 子ども向けコンテンツの分野で、総合出版社ならではの子育てトピックスを紹介し、正解のない子育ての中で悩む親世代に問題解決策やヒントを与えたい、という熱意でコクリコを作っていました。
ところが、企画会議で、ノウハウや経験値はあるものの、はたしてそれは現時点の子育て世代のニーズにマッチしているのか、という議論になりまして。そこで、よりリアルな子育て世代の声や反応が聞きたいと。子どもが好きなものは知っている我々が、今の世情で子を育てるリアルな保護者を知ろう、とお声がけしたのが、ママの復職支援をしている「エニママ」さんなんです。
大矢 復職支援をしているエニママさんは、無償で企業への人材紹介しています。家庭や家族のために第一線を退いた有能な人材が適材適所で利用でき、最初から条件面で合致しているので離職率が低いため、企業側からも好評を得ているそうです。
日下部 冒頭にお話しした厚生労働省の資料データを受けて、子育て世帯のスタンダード、「子あり共働き層」の具体的なニーズを、コクリコ編集部自体が知りたかった。それが、最初のきっかけです。我々のターゲットはお子さんとその保護者なんですが、同じターゲットを共有する企業さんにも活用していただけるのでは、と「コクリコラボ」が誕生したというわけです。
──コクリコのメディアコンセプトと、子育てママのホンネリサーチに強いエニママのスタンスが合致して、子育て世代のインサイトを深く追究できる「コクリコラボ」が誕生したのですね。
服部 そうです。現在では70件以上の調査を終え、より保護者世代のインサイトに迫ることができています。
コクリコラボ 調査例
生の声を、高い共感力と拡散力へつながる記事に活かす。
リアルイベントの集客や意欲の高さ、教育熱心さも特徴
──この先のコクリコラボの展望を教えてください。
服部 まずは、育児と仕事の両立に関心の高いママたちを束ねる「コクリコラボ」のアンケートで、等身大の保護者世代が悩みを共有します。そして、記事化により他の家庭でも同じ悩みをもっていることを知ってもらう。そのお悩みに対する試行錯誤や工夫を、信頼される識者が伝えたり、座談会を開催したり......。できることは数多くあり、コクリコラボの展望は無限に広がっています。
──今後、コクリコラボから、企業に何が提供されるんでしょうか?
大矢 取材やインサイトリサーチの中で盛り上がったテーマを軸に、「今の子育て世代のニーズ」と「豊富な情報」と「ソリューション」、これらをセットで子育て世代に響く展開をご提案したいです。
メディアとして、質問の厳選やアンケート結果の適切な集約、取材力、記事制作スキルは言うまでもありませんが、総合出版社である講談社のさまざまな部署を一気通貫させて、そのノウハウやプロモーション力、読者に対する説得力、豊富なアプトプット先など、お客様の課題設定からゴールまでをご提案することを目指したいですね。
服部 一気通貫ということで言えば、たとえば、「コクリコ」と「講談社こども教室」を一緒に活用すれば、ママ向けに商品サンプリングが可能です。
全国に6,000人もの子どもたちをかかえる「講談社こども教室」
記事タイアップならば、コクリコをはじめ、男性ターゲットの情報誌や雑誌・サイト、各種女性向け雑誌で実施できますし、withonlineのサブブランドサイト『with class』と組んで女性の意識を共有したり、子育て・教育系インフルエンサーとの共同運営が話題となっているInstagramメディア『with class mama』を活用してSNS上で拡散&共感を集めたり、マーケティングから商品開発までを得意とする『VOCE LAB.』との連携も可能です。
共働き世帯に向けた情報サイト 「 with class 」
子育て・教育系インフルエンサーとの共同運営が話題となっているInstagramメディア「with class mama」
商品開発からの支援事例を多数もつ 「 VOCE LAB. 」
大矢 このコクリコラボの活用で、困りごとを発掘し、ターゲットにフィットする提案は何なのかを知ることができます。また、新しい事業や仕掛け作りの礎となるデータもご提供できます。確かな情報をもとにしたさまざまなコラボレーション、ニーズにそったフレキシブルな企画立案など、幅広く対応できるということですね。
服部 始まったばかりの事業ですが、各方面よりお問い合わせも増え、今後どんなことをしていこうか、コクリコラボのメンバーもわくわくしています。時代の移り変わりとともに保護者を取り巻く状況も変わっていきますが、保護者の悩みやインサイトをしっかりと把握し、そのソリューションとしてフォローできる商品やサービスが増えていく。そんな流れで、子育てがいっそう楽しくなるといいですね。