早くも9月です。3年ぶりの行動制限がない夏を、いかがお過ごしになられたでしょうか。筆者は8月11日にJR京都伊勢丹で開催された「もへろんアートワールド展」を、8月20日に大阪中之島美術館で開催された「展覧会 岡本太郎」を鑑賞してきました。
前者では、もへろんさんがデザインした「ひこにゃん(滋賀県彦根市)」と「たわわちゃん(京都タワー)」がゲストで登場し、後者では、この夏にEテレ深夜枠の放送され一部層で大人気となった特撮テレビドラマ「タローマン」の特別展示「タローマンまつり」が併催され、いずれも熱心なファンが押し寄せて大盛況となりました。アートとキャラクターの融和性や動員力、消費活性を促すパワーについて、あらためて実感した次第です。
前回は、筆者が講義を担当する2つの大学で2022年6月下旬から7月上旬に調査したアンケート結果から、大学生の好きなキャラクターの純粋想起ランキングと好きな理由について、下記の内容を紹介しました。
- 大学生が好きな作品のうち約4割が「マンガ原作系」
- 男子大生は主人公に、女子大生はサブキャラに支持が集まる傾向
- 男子大生と女子大生では、キャラへの好感の持ちかたが異なる
今回は、2021年11月に実施した「キャラクター定量調査2021」の結果を用いて、大学生以外も含めたZ世代とその下のα世代、さらにZ世代より上の世代を比較した、マンガ・アニメ・キャラクター関連の消費実態に関する分析事例を紹介します。
「キャラクター定量調査2021」概要は図表1の通りです。
図表1. 「キャラクター定量調査2021」調査概要
今回の分析では「Z世代」を男女11-25歳と規定し、下の「α世代」は男女3-10歳、Z世代より上(X世代やY世代やミレニアル世代など)は男女26-74歳でまとめて「Y世代以上」として集計しています。
Z世代やα世代、Y世代に関する詳しい解説は「講談社SDGs」の記事をご覧ください。
キャラクター全般への好意度と可処分所得額がともに高いZ世代
図表2は、「キャラクター定量調査2021」結果を用いて、「Z世代」「α世代」「Y世代以上」の男女別で、X軸:キャラクター全般への好意度(「キャラクターが好きなほうである」の質問に「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答)、Y軸:可処分所得平均月額(住居費や光熱費、交通費、ふだんの食費などを除いて、自分で判断して自由に使える額)で作成したバブルチャートです。バブルの大きさは、男女3-74歳全体に占める各世代の出現率を示しています。
図表2. Z世代vs他世代:バブルチャートによる比較(キャラクター好意度,可処分所得平均月額,出現率)
キャラクター全般への好意度は各世代とも男性より女性で高く、α世代>Z世代>Y世代以上、可処分所得平均月額はZ世代以上で女性より男性で高く、Y世代以上>Z世代>α世代となっています。
キッズやティーンの可処分所得については代理回答者である母親が自分のこととして答えた可能性もあるため参考程度ですが、キャラクターが好きでも可処分所得が低いα世代や、可処分所得が高くともキャラクター好きが少ないY世代以上と比べて、Z世代はキャラクター好意度と可処分所得がともに高めであることがわかります。
マンガ好意度が他世代よりも高く、女子でその傾向が顕著
図表3は、キャラクターや、マンガ・アニメなど作品型コンテンツに関する好意・視聴に関する質問について、4段階評価のうち「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合を、「Z世代」「α世代」「Y世代以上」の男女別で比較したグラフです。
図表3. Z世代vs他世代:キャラクター・作品型コンテンツに関する好意・視聴
前出の通り、キャラクター全般への好意度はα世代がZ世代を上回っており、テレビアニメやアニメ映画、ネット配信動画・アニメについても同様です。そのような中、マンガ全般への好意度は、Z世代がα世代や他世代を大きく上回り、特に女子のマンガ好意度が世代間でトップになっている点が注目されます。マンガ好意度は、男性はZ世代だけでなくY世代以上でも高めなのに対し、女性ではZ世代のみが突出しており、興味深い結果です。
男子は多様な手段でアニメ視聴、WEB・SNS受発信やソーシャルゲームプレイも活発
図表4は、深夜アニメ視聴やネット配信・CS局での視聴、DVD・BD購入など、アニメに関する視聴の多様性や、WEB・SNSでのアニメやキャラに関する情報の受発信、テレビゲーム購入やソーシャルゲームプレイに関するグラフです。いずれの行動についても、Z世代、特に男子が他世代に抜きんでて高い結果となっています。
図表4. Z世代vs他世代:アニメ視聴方法の多様性、WEB・SNS受発信、ゲームプレイ
専門ショップでフィギュアやコンビニくじを買い求め、同人活動やコスプレ経験も豊富
図表5は、アニメ、マンガ、キャラ関連のキャンペーンやグッズなどの購買行動と、コミケ参加やイラスト、マンガ、ストーリー執筆など同人活動、コスプレ経験に関するグラフです。Z世代は、グッズやオマケ目当てのキャンペーン商品の購買ではα世代に次ぐスコアですが、秋葉原や池袋のような専門ショップが集まるエリアへの訪問や、コンビニくじ、フィギュア・プラモデルの購買はトップです。また、同人活動やコスプレ経験もZ世代、特に男子が他世代よりも高い結果となっています。
図表5. Z世代vs他世代:グッズ・買い物行動、同人活動・コスプレ経験
コラボカフェやミュージアム、2.5次元舞台の訪問や聖地巡礼も活発
図表6は、アニメ、マンガ、キャラとのコラボカフェ、常設展、期間限定展示会、観光施設への訪問、聖地巡礼、声優ライブや2.5次元舞台への来場経験、アニソンカラオケ、推しの俳優・声優に関するグラフです。いずれもZ世代がトップで、特に男子が高い結果となっています。声優ライブや2.5次元舞台に限定すると、会場では女性の姿が目立つため、少々意外な結果です。
図表6. Z世代vs他世代:グッズ・買い物行動、同人活動・コスプレ経験
男子はSDGsシンボル・アイコンとしてのキャラクター活用にも肯定的
図表7は、キャラクターを活用した特定ジャンルのマンガ・小説・雑誌などへの好意や閲読状況と、キャラクターへの期待・要望に関するグラフです。戦国武将など歴史ものから「萌え系」まで、硬軟織り交ぜた題材をアニメやマンガ、ゲーム、小説(ライトノベルなど)にすることで、Z世代、特に男子に受け入れられやすくなる様子が窺えます。
また、「キャラクターを、企業や自治体の、社会貢献など公共性が高い活動を伝える広告で見てみたい」という回答は、Z世代男子で最も高くなっています。Z世代からの関心が高いといわれるSDGs活動において、それを自分ごと化するためのアイコン・シンボルとして、キャラクター活用のポテンシャルが高いことを窺わせる結果といえます。
図表7. Z世代vs他世代:キャラ活用マンガ・小説・雑誌の好意・閲読、キャラへの期待
今回は以上です。Z世代は他世代と比べてデジタルネイティブとして特化した活動が目立ち、特に男子がいわゆるオタク的な行動にいずれも積極的である点や、女子のほうがマンガへの好意度が高い点が印象的な調査結果でした。
次回は引き続き2021年11月に実施した「キャラクター定量調査2021」の結果を用いて、大学生以外も含めたZ世代と、α世代、Z世代より上を比較しての、キャラクター全般での日常接点と提供体験と活用効果の関係に関する、定量調査結果を踏まえた分析事例を紹介します。どうぞお楽しみに。
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<第2部 バックナンバー>
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧
筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。