2022.08.31

【MCL】共働きwith×博報堂キャリジョ研|データから見る新しい「共働き家族」の考え方 ── 講談社メディア・コミュニティ・ラボ共催セミナーレポート

読者コミュニティを活用して、企業の課題解決に挑む新プロジェクト「講談社メディア・コミュニティ・ラボ(略称MCL)」。その活動の第1弾として先日実施されたのが、「共働きwith」と博報堂キャリジョ研による共催オンラインセミナーです。最新の共働き家族のインサイトを、調査データをもとに考察しました。

7月12日(火)に開催された本セミナーの登壇者。左から、
瀧川千智さん/博報堂キャリジョ研
松井博代さん/博報堂キャリジョ研
岡本朋子/講談社 「共働きwith」編集長
鐘ヶ江徹(モデレーター)/講談社 第二事業局 「講談社メディア・コミュニティ・ラボ」 プロジェクトメンバー

「講談社メディア・コミュニティ・ラボ」の活動第1弾となる共催セミナー


鐘ヶ江 徹(以下、鐘ヶ江) 2022年6月に、講談社で「講談社メディア・コミュニティ・ラボ(MCL)」が発足しました。本プロジェクトは、講談社メディアの読者コミュニティとともに、社会課題や企業のマーケティング課題を、調査・分析・発信し、解決することを目指すものです。

本日は、講談社メディア・コミュニティ・ラボの活動の第1弾として、「共働きwith」と博報堂キャリジョ研の共催オンラインセミナーを実施します。まず、講談社メディア「共働きwith」についてご紹介します。

仕事も家庭も わたしらしく「共働きwith」とは

岡本朋子(以下、岡本) 「共働きwith」は、雑誌「with」の公式サイト「with online」の姉妹サイトとして昨年の7月に誕生した、新しいデジタルメディアです。

私は編集長として「with online」を運営するなかで、読者のみなさんが家事や育児、仕事との両立など、さまざまな悩みを抱えていることを感じていました。そのなかで、仕事も家庭も両立したいと願う女性を応援するために生まれたメディアが「共働きwith」です。

「共働きwith」では、著名人による連載やオリジナルマンガなど、多彩なコンテンツが展開されている 媒体資料はこちら


鐘ヶ江
 続いて、博報堂キャリジョ研さんのご紹介をお願いします。

20~30代の働く女性を研究するプロジェクト「博報堂キャリジョ研」とは

瀧川千智(以下、瀧川) 博報堂キャリジョ研は、博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの性メンバーにて、2013 年に立ち上げた社内プロジェクトチームです。立ち上げて8年くらいになります。

当初は、企業の男性を中心とした上層部に対して、女性のインサイトを語ることが多かったのですが、最近では、社会課題へとシフトしています。

働く女性が生きやすいニュートラルな社会づくりを活動のパーパスとしていますが、女性に特化しているわけではなく、女性も含めていい社会になったらいいなと考えています。

博報堂キャリジョ研は、
①家庭内ジェンダーギャップの解消
②女性特有のへルスケア課題の解決
③女性活躍支援
という3つのテーマを掲げ、キャリママのサポート、フェムケアの啓発、女子大生の早期キャリア教育などを行っています。

「共働き家族」関する調査リリースについて

鐘ヶ江 ありがとうございます。今回、それぞれの視点から「共働き家族」に関する調査を実施し、それぞれプレスリリースを出しました。

まず「共働きwith」のリリースについてですが、もともとは「with」本誌の共働きリアルレポートというコンテンツのために行ったアンケートがベースになっています。誌面では掲載できなかった興味深い内容などを深掘りして調査データとしてまとめ、6月22日に「共働き家族のカタチの"イマ・ココカラ"」として、プレスリリースを出しました。

続いて、博報堂キャリジョ研さんのリリースについてご説明をお願いします。

瀧川 博報堂キャリジョ研では今回、20代~40代のお子さんを持つ共働きの女性、プラス男性という両面から、ファミリーを調査し、7月8日に「共働きファミリーの将来・未来への意識調査」として、ニュースリリースを出しました。今後、リリース以外の内容もご紹介していく予定です。


調査から見えたこと

鐘ヶ江 では、ここからは、調査結果から見えた共通点や、気づきなどをご紹介します。
まず、仕事と家事の両立について、「共働きwith」の調査からユーザーインサイトを探りたいと思います。「共働きwith」の調査では、大きく考え方が二分する結果になったんですよね。

仕事と家事・育児の両立の考え方は、大きく二分

岡本 はい。共働きの方たちがそもそも、「どのような考え方(志向)で暮らしているのか」を知りたいと思い調査したところ、大きく2パターンにわかれました。

「仕事と家事育児の両立に関する考え方で、あなたに近しいものをお選びください」。

この設問に対して、共働きの方たちは、「キャリアを充実させて育児や家事は効率的にやりたい」という方が32%、「仕事をほどほどにして家事や育児をがんばっていきたい」という方が39%でした。

私たちは前者を「がんばり両立型」、後者を「ほどゆる両立型」と命名しました。

どちらが"正解"ということではなく、大切なのは、それぞれの生き方がうまくいくにはどうしたらいいか、という視点だと考えています。

瀧川 博報堂キャリジョ研も、独身の人も含めて「専業主婦願望のある方はどのくらいいるのか」を2014、17、20年と調査してきましたが、やはり少なかったですね。一度仕事を辞めてもペースを落として働き続けることを前提で将来を考えている方が9割以上でした。

岡本 この調査は、共働きではない女性(専業主婦、未婚の方)も対象に実施しています。なのに、働く前提で考えている方が多いという結果には、世の中が「共働き思考」に変わっていることが見てとれました。

鐘ヶ江 一方で、ワークライフバランスの考え方は、共働きの方とそうでない方に差が出たんですよね。

ワークライフバランスが良好な「共働き家族」

岡本 はい。「理想とするワークライフバランスを実現できていますか」という問いには、共働きの方のは、ある程度できているを含めると70%を超えています。

共働きではない方はそれよりも少ない結果で、子ども有りの方で59.6%、子どもなしの方で53%でした。

瀧川 共働きの方は忙しくて余裕がないというイメージだったので、意外な結果でした。コロナ禍のリモートワークによって、自宅で働く時間を持てたことで、家事の時間を取りやすくなり、バランスを取りやすい環境になっていることなども影響しているのかなと感じました。

共働き家族のメリット・デメリット

岡本 次に、共働きのメリット・デメリットとしてイメージしやすいものについて聞いた調査があります。

共働きのメリットとしていちばん多いのは、「お金に余裕ができる」ということです。これに関しては実際に共働きをしている方も、専業主婦の方も同じイメージを持っていることがわかりました。

「自立した女性として、社会とつながりを持ち続けられる」ことや、家事や育児だけでなく「1人の時間を持てる」ということにメリットを感じている方は、圧倒的に共働きをしている方のほうが多く、専業主婦の方たちは、そこをあまりメリットとして捉えてないこともわかりました。

瀧川 私も育児休業の期間は、復帰したら忙しくて自分の時間を持てなくなりそうと思っていたのですが、実際には会社で自分の時間が持てることに幸せを感じました。これは働いていない時には、気づかなかったことですね。

松井博代(以下、松井) 別の調査で定性的に聞いてみても、仕事があることで心や時間のバランスを保てるという意見もあるので、そういうところが反映されているのかなと思います。

一歩踏み出している先端層「未来行動ファミリー」

鐘ヶ江 自立という価値観に関しては、博報堂キャリジョ研さんの調査でも同じような結果でしたね。そちらもお伺いできればと思います。

松井 将来や未来に対する意識調査で、「自分自身や子ども、親に対して将来の不安や不満を感じていますか」という問いを共働きの方に投げかけたところ、8割の方が不安を抱えていると答えています。

不安や不満を抱えながらも、未来を考え何か行動を始めようとしている方と、できていない方。私たちは行動を始めている方を、一歩踏み出している先端層ということで「未来行動ファミリー」と名づけて分析しています。割合としては26%です。

キャリアへの意識を、「未来行動ファミリー」と、行動できていない「行動躊躇ファミリー」の違いに注目して見てみました。すると、「キャリアのプランは自分がやりたいかどうかで決めるべきだと思う」と「依存しすぎないように仕事で自立していたい」という自立性への意識に、両者の差が出る結果が出ています。

キャリアの意識を比較すると、「行動躊躇ファミリー」よりも、「未来行動ファミリー」のほうが自立の意識が高いことがわかった

また「夫婦やパートナーの間でキャリアプランをよく話す」や「自分とパートナーのキャリアが折り合う部分を見つけたい」という項目も差が大きく、夫婦間でのコミュニケーションを活発に行っていることが、未来行動ファミリーの特徴として浮かび上がっています。

理想の家事分担は5:5、現実は7:3

鐘ヶ江 パートナーとの意識や夫婦内分担みたいなところについて、お話しいただけますか。

岡本 「自分と配偶者の理想の家事・育児の分担」について、いま実際にどのような形で家事分担しているかを聞きました。

共働きの方で子ども有りの方に関しては、31.8%が「ほとんど自分である」と答え、いちばんのボリュームゾーンである43.3%の人は「7割ぐらいが自分である」と答えています。興味深いのは、お子さんのいない家庭のほうが家事・育児の分担はできていることです。

松井 子どもの世話は、何故か女性側に負担がいきがちというのは、実感値としてもありますね。

夫婦間のバランス/ジェンダーギャップに対する平等意識

鐘ヶ江 夫婦間のバランスについては、博報堂キャリジョ研さんの方でも近い調査をされていたかと思いますので、ぜひお伺いできればと思います。

松井 ジェンダーギャップに対する平等意識についての調査なのですが、「家事や育児の負担は平等にするべき」なのか、「なるべく平等にしたい」のか、もしくは仕事量とか給料が男性の方が多いことが往々にしてあるので、そこでの「差がついても仕方ない」とか「差つけるべき」で、グラデーションで聞いています。

未来行動ファミリーの先端層は、平等にすべきが7割で、行動躊躇ファミリーに関しても6割を超えていますが、先端層では平等意識がより高いということが浮き彫りになっています。

パートナーとの分担比率を聞いた結果で、未来行動ファミリーと行動躊躇ファミリーの男性を比較して差が大きかったのが、自分と配偶者の分担は5:5と答えた方の割合です。

ただよく見ると、男性は5:5でできていると思っていても、女性は自分が8、9割やっているという方が4割ぐらいで、いちばんのボリュームゾーンです。このギャップはなかなか埋められないところがあるなと思います。

岡本 理想の5:5でストレスなく暮らすために、会社を変えるとか世の中を変えるっていうアクションを起こすことはもちろん大事ですが、ちょっとハードルが高いのも事実です。その時に「彼がやってるのは3割だけど、じゃあ自分も3割でいいんじゃない」という考え方があっていいと思います。

その残り4割を補うために、便利家電や外部のサービスを利用することで、物理的にも精神的にも、すごく楽になっていくんじゃないかなと思いました。

瀧川 共働きである程度お金も稼げているからこそ、そのお金を4割の方へ使うのは効率的でいいですよね。

岡本 2人で、もしくはお子さんと遊ぶ時間ができたり、教育にさける時間ができたりすると、また違った充実感も味わえそうです。


家事のアウトソーシング。今後は「サスティナビリティ」「スキルフリー」「タイムシフト」に注目

鐘ヶ江 アウトソーシングという切り口については、双方で調査をしているかと思いますので、それについてもお伺いします。

岡本 現状で配偶者がやっていないけど、できればやってほしい家事は何かを聞いたところ、掃除関連、特に水回りの掃除がすごく高く出ていました。

食材や日用品の買い物は、自分がやっていてもまったく苦にならないというか、むしろやってほしいと思っていないところを見ると、ストレス発散になったり好きな家事だったりするのかなと思いました。

苦手や嫌いでアウトソーシングしたい家事を聞くと、やはり圧倒的に掃除、特に水回りでした。子供の世話は低い値で、これに関しては自分でやりたいという意識がすごく強いのだと思います。

松井 私たちは、どのようなものをうまく活用しているかを聞いています。子どもの習い事・塾や保育、乾燥機つき洗濯機やロボット掃除機などの便利家電、あとは食品の宅配サービスなどですね。未来行動ファミリーでは、さまざまなものを幅広く利用している結果でした。

瀧川 スコアが低いところにも注目してみました。家事代行サービスやベビーシッターのような、人を介するサービスに対しては、まだまだ抵抗があることを感じます。家事代行やベビーシッターは、もっと使われる余地があるし、関連する企業は伸びしろがあると思っています。

岡本 一度使ってしまえば、こんなに楽だったのかって思う分野ですよね。「共働きwith」の方でも、先端層の方はこういったサービスをうまく使っていらっしゃる方が多いという印象です。

松井 博報堂キャリジョ研では、家事や育児を楽にしたり時短したりするという次の視点として、サステナビリティがあるんじゃないかと仮説を持って調査をしています。

「多少お金をかけてもサステナビリティを取り入れたい」、「効率だけなく環境によい生活や家事を心がけている」といった項目は、未来行動ファミリーで高くなっています。

瀧川 いままで共働きや主婦向けの商品は、簡単や利便をメインに打ち出すことが多かったと思います。これからは企業としてSDGsに貢献しているとか、これを使うことで何かSDGsに貢献する要素があるということ、またそれらの掛け合わせがあると、特に未来を見据えている未来行動ファミリーのような先端層は、興味を持ってくれるのではないかと思います。

共働きwith×博報堂キャリジョ研 共同企画「Future Family Dialogue Salon」

鐘ヶ江 インサイトをしっかり見ていくと、こういった先端層の新たな価値観みたいなものが見えてきますね。さて今回、「共働きwith」と博報堂キャリジョ研さんの共同企画を考えましたので、そのご案内をさせていただければと思います。

瀧川 「共働きwith」と博報堂キャリジョ研で「Future Family Dialogue Salon」というプランニングパッケージを共同開発しました。日本語でいうと、未来志向の家族の対話型のサロンで、「共働きwith」の読者さんと一緒に、博報堂キャリジョ研のプランニング力も掛け合わせてやっていこうというものです。

社会課題をイシュー起点でプランニングする私たち博報堂キャリジョ研と、イシューホルダーコミュニティである「共働きwith」を掛け合わせて、対話型のプランニングのようなことをしていく予定です。共感を超えて共鳴みたいなことができるようなマーケティングをやっていきたいと思っております。

岡本 「共働きwith」には「withLabo(ウィズラボ)」という組織があります。この組織はもともと、雑誌「with」を愛してくださっていた読者さんたちから派生しているサポーター組織で、現在およそ6300人いらっしゃいます。

その中で、共働きで「共働きwith会員」という形で活動してくださっている方たちが2000人ほどいます。アンケートや、ブログ、座談会へのなどで積極的に関わってくださっていて、読者モデルとして出ていただくこともあります。

自分が思っていることを、言語化するのに長けていている方が多く、こういった企画にはぴったりではないかと思います。

瀧川 私たちもグループインタビューやワークショップを行っていますが、言語化が上手か、普段の生活で課題意識を持っているかということで着地点が大きく左右されることを感じます。こういった人たちをたくさん抱えていらっしゃることは、すごく大きな武器ですよね。

「Future Family Dialogue Salon」で具体的に何をやっていくかは、その時の課題次第ですが、大きく2ステップに分けています。

ステップ1は、ダイアログをするというセッションです。
事前アンケートやワークショップなどがメインになると思いますが、そこでしっかり話をしてイシューを出していきます。

ステップ2でアウトプットを作ります。
たとえば共働きというテーマで企業さんと一緒にアクションロゴを作ろうとか、タイアップ的にコンテンツを作ることもできますし、クライアントさんのオウンドのメディアの制作やオンラインのイベントの開催、SNSの運用なども考えられます。

さらにスタートアップ企業さんと一緒に、新しいサービスや商品開発などもできたらと思っています。「共働きwith」で考えているテーマがあれば、ぜひ教えてください。

岡本 共働きの人たちが、何に対して消費をしたいと思っているかを調査すると、子どもの教育に関しては、お財布が緩む傾向があります。それから住まいに関してですね。

コロナ禍でちゃんとした家に住みたいとか、家族が増えて家を購入したいというフェーズにいる読者さんたち多いこともあります。住まい選びや教育に関する学びをオンラインで行う機会もあるので、こういったプランと掛け合わせていくのもすごく面白いんじゃないかなと思います。

瀧川 いいですね、ぜひいろんな業種でもやっていきたいなと思っているので、よろしくお願いいたします。

鐘ヶ江 ぜひ本共同企画に、ご興味持たれた企業さまやマーケターの方いらっしゃいましたら、お声がけいただければと思います。

今後も、講談社メディア・コミュニティ・ラボでは、さまざまな形で情報発信を行なっていく予定です。ぜひご注目ください。本日はありがとうございました。

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