2021.02.18

ロボットクリエーター 高橋智隆さんが語る「ロボットと教育の親和性」 ──教育現場でも愛されるメカトロウィーゴ

フィギュアやプラモデルなどの幅広いグッズが人気のオリジナルロボットキャラクター「メカトロウィーゴ」は、講談社がIP事業展開に挑戦しているロボットキャラクターIP。世界初のスマホとロボットが一体化したSHARPの「ロボホン(RoBoHoN)」を開発した主要メンバーが独立して作ったロボットメーカーLivigRobot社により、プログラミング学習用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」が開発され、2020年に全国の小学校で必修化されたプログラミング学習の教材として学校への導入が進んでいます。

SDGsの推進役としても期待が大きいメカトロウィーゴの可能性について、世界的なロボットクリエーター 高橋智隆さんにお聞きしました。

(左から)株式会社リビングロボット 代表取締役 川内康裕さん、ロボットクリエーター 高橋智隆さん、クリエーター 亀井栄輔さん


科学への興味やITリテラシーを育む入り口として、
ロボット教育は最適

──高橋さんは、日本のロボティクスを牽引する存在であり、世界的なロボットクリエーターです。「メカトロウィーゴ」のことはご存知でしたか?

高橋 はい、最初にメカトロウィーゴの存在を知ったのはSNSの投稿だったと思います。お洒落なカラーリングに興味を持ちました。配色の工夫で世界観が膨らみます。たとえばスーパーカーの限定モデルに昔のルマン24時間耐久レースのカラーリングを施すことがありますが、モチーフやテーマのあるカラーリングは面白いですね。

それとメカトロウィーゴって、ガンダムやエヴァンゲリオンに比べたら、リアリティがあって、やがて1/1スケール(※)で製作出来るんじゃないかな。モノフェチの私にとって、実物があって実際に購入できることは、とても重要です。

※メカトロウィーゴをオリジナルデザインした小林和史氏によると、公式の1/1スケールは260㎝と設定されている。

メカトロウィーゴとの出会いを笑顔で語る、高橋智隆さん

──2020年7月からは、福島県を皮切りに福岡県、広島県などの学校で「あるくメカトロウィーゴ」が学習用ロボットとして導入されています。教育ロボットには、どのような可能性があると思われますか。

高橋 ロボットは、恐竜・カブトムシと並ぶ「子どもの好きなものランキング」の常連。それをきっかけに、工学やプログラミングが学べるというのは、子どもにとってすごくいいことだと思います。

もちろん好き嫌いや向き不向きはあるので、全員がロボットの専門家になる必要はまったくありません。ですが、科学への興味やITリテラシーを育む入り口としてロボット教育は最適で、全世界の子どもにその機会を提供出来たらと願っています。

2020年からの小学校でのプログラミング授業の必修化に伴い、現場ではさまざまな授業が行われていますが、パソコンの中で完結する授業より、実際に自分の手で触れるロボット教育の方が子供の関心が高いと感じています。

高橋さんがシャープと共同開発したロボホン(右)と、メカトロウィーゴ(左)

──具体的に、「手で触れる」ことは、どのようなメリットがあるのですか?

高橋 幼児が最初は積み木など形あるもので遊び始めるように、十分に子どもの脳が成長した後でないと、バーチャルなものや抽象的なプログラムを理解することは難しいのです。だからロボットを題材にして、徐々に数学や力学、電気、プログラミングを学んでいく方法が有効なのです。

亀井 たしかに、私もこれまでいろいろなロボット開発に関わらせていただいて来ましたが、もともと子どものころからラジコンが好きでよく分解して、モーターを取り出したりして、ロボットのようなものは小学生のころから作ってたんですよね。ロボットの効果音や音楽も、やはり子どものころからエレクトーンや楽器に触れてきて自然に作り始めたので、よく分かります。

触れる「楽しさ」もあわせ持つ、メカトロウィーゴ

先生も生徒も夢中になる
プログラミング学習用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」

──「あるくメカトロウィーゴ」を活用したプログラミング学習は、現在福島県、広島県、福岡県の小学校で100体以上が運用されているそうですね。これは、実際に授業で使われている「あるくメカトロウィーゴ」が、子どもたちの感性を刺激し、「楽しい」を引き出せているからでしょうか。

川内 プログラミング学習用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」は、福島県伊達市に本社を置くベンチャー企業である当社が開発しました。伊達市内の小中一貫校「月舘学園」で二足歩行ロボットのプログラミングに挑戦するパイロット授業を行ったところ、まず先生が夢中になり、子どもたちも休み時間もずっと触っていたそうです。

プログラミングも大事ですが、その自分がつくったプログラミングによって、実際に目の前でロボットが足をあげたり、歩いたりするというのが大事なんだと思います。プログラミングの組み方はわからなくても、自分のロボットを動かすために夢中で操作を覚えるのではないでしょうか。

11月には福岡県中間市市内のすべての小学校5年生を対象に、学習用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」を使ったプログラミング授業が行っていると聞きました。

福岡県・中間北小学校で行われた授業の様子

──プログラミング教育の課題は何だと思われますか?

川内 まだプログラミング授業の必修化が始まったばかりということもあり、現場も試行錯誤しているところですよね。リタイアしたエンジニアや、大学の先生などがボランティアでプログラミングを教えているところもあり、「ビジネス」として成り立ちにくい側面から市場の成長が進んでいないのは課題だと感じています。

資本主義の原則からいえば、本当にいいものは高い値段であってもいいサービスを受けて十分に満足してもらう、というのが理想です。

たとえば玩具や日用品にしても、高いものを買えば長く大事に使おうと思いますが、とりあえず数千円くらいで買ってきた安物だと、最初は面白いと思って使っても、しばらくすると壊れたりして使わなくなることが多々あります。プログラミング教育でも、「いいものは高いけれど、長く深く楽しめる」という流れをつくらないと、産業側にもサービスを受ける消費者側にもデメリットしかなくなるのではないかと危惧しています。

学習用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」を開発した、リビングロボットの川内康裕さん(手前)、その開発をともに支えたクリエーターの亀井栄輔さん(奥)

ロボット教育は、将来のキャリア形成にとって大きなプラスになる

──子どもたちに興味を感じてもらうために、それなりに手間とお金をかけることも大事だということですね。

高橋 子どもって、大人より発想が柔軟で根気強いんです。アイデアも豊富だし、大人がそれまでの経験から難しそうだ、面倒だと諦めてしまうことにも果敢にチャレンジします。私が関わっているロボット教室の全国大会でも、天才的なロボット作品が集まります。適切な年齢にロボット教材を与えることは、子どもの可能性を伸ばすうえで非常に重要だと思います。それによって、知育的な基礎能力から実用的なITスキルまで、将来のキャリア形成にとっても大きなプラスになると考えています。

ロボット教育によって、「将来GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のような企業で活躍できる」「ITベンチャー企業を自ら立ち上げる」というチャンスが得られるのならば、教材費用は決して高くないと思います。

──「全員がロボットの専門家になる必要はない」とおっしゃいましたが、ロボットが好きじゃない子に対してのアプローチはどうお考えですか。

高橋 あるレベルまで導いてあげれば、好きな子はロボットの道を進むだろうし、そうじゃない子は違う道に進みます。なので、ロボット教育はその"きっかけ"の部分を与えてあげればいいはず。

残念ながら、従来のロボット教育には「専門教育の押し売り」みたいな側面がありました。いきなり学問体系に沿って「モーターの仕組み」とか「電子の動き」から教えられると、子供たちは拒絶反応を示してしまう。最初は何もわかっていなくても、ただモーターを使ってロボットを動かしているうちに「そもそもモーターって何で回るんだろう」と、後から知識を深めていけばいいんじゃないでしょうか。

プログラミングも、コンピュータの仕組みや歴史から学ぶ必要はないと思っています。ツールとして使っていくうちに、もしその原理に興味を持てばその時学べば良いし、そこは探求せずにただ道具として使うだけの人がいてもいいと思います。

日本にロボット教育が広がっていくにつれて、
技術の進歩も加速していく

──ロボット教育によって多様性も育てられるのですね。メカトロウィーゴは高い汎用性とカスタマイズ性が特徴ですが、「自分らしさ」を育てるにはどういうアプローチが効果的だと思われますか?

高橋 私は1人1体のロボット教材を持つということが大事だと思います。「学校の備品」だとそれほど愛着がわきませんが、「自分のもの」と思えば大事に使おうと思いますよね。それが学習効果を高める結果にもつながると思います。

グループで協調性を持って意見をまとめるという教育が多い中、イノベーションを推進するためには、自分のアイデアをとことん突き詰めて試行錯誤することがとても大事だと思うんです。

──今後、ロボット教育をもっと広めていくためには、何が足りないとお考えですか。

高橋 プログラミング教育でロボットを使った授業を取り入れる学校が増えてきましたが、その子どもたちが大人になり、日本国民の科学リテラシーが向上することを願っています。それによって、コロナウイルス問題を含む様々な社会課題に、より科学的で合理的な対応が出来るようになり、社会全体の豊かさを向上させることにつながると考えています。

亀井 そういう意味では今、「あるくメカトロウィーゴ」の進化を目指して、より細かい動きが指示できるようにすることで子どもたちが「あるくメカトロウィーゴ」をダンスさせて一緒に踊ったり、一緒に歌ったりということがより自由自在にできるように改良を重ねているんです。高橋さんがおっしゃるような影響を子どもたちが受け取ってくれたらうれしいですね。

高橋 「新製品や新技術が登場したとき、アメリカ人は面白がって買うけれど、日本人は様子を見てしばらく待つ」と揶揄されることがあります。それが日米のイノベーションの力量差になっていると感じています。是非、今からロボット教育をスタートし、知的好奇心を育んでもらいたいですね。ロボットを学んだ子どもたちのなかから、未来のスティーブ・ジョブズが出現してくれたらいいですね。

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●メカトロウィーゴNEWS

「あるくメカトロウィーゴ」の一般向け発売がいよいよスタートし、その皮切りに2月26日(金)まで「あるくメカトロウィーゴ」一般向けクラウドファンディングの募集がMakuakeで開催中。自分がウィーゴのコックピットに入って操縦する気分を味わえる「コックピットモード」の機能も追加されるそうです。ぜひチェックしてください。
⇒Makuake「あるくメカトロウィーゴ」クラウドファンディングページ 
https://www.makuake.com/project/livingrobot/  


講談社が「メカトロウィーゴ」のストーリー展開の可能性を探り実現した、山田悠作さんのマンガ連載『万能変化メカトロウィーゴ』の1巻も発売中。搭乗者となる子どもの多様性や可能性を引き出したいというコンセプトの作品です。ぜひご覧ください。
⇒Amazon『万能変化メカトロウィーゴ』購入ページ
https://cutt.ly/dkQLOor 

⇒マガポケ1話試し読みページ
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13933686331621228174


<プロフィール>

高橋智隆(たかはし・ともたか)
ロボットクリエーター
京都大学工学部卒業と同時に「ロボ・ガレージ」を創業。代表作にロボット電話「ロボホン」、ロボット宇宙飛行士「キロボ」、デアゴスティーニ「週刊ロビ」、グランドキャニオン登頂「エボルタ」などがある。ロボカップ世界大会5年連続優勝。米TIME誌「2004年の発明」、ポピュラーサイエンス誌「未来を変える33人」に選定。開発したロボットによる4つのギネス世界記録を保持。東京大学先端研特任准教授、大阪電気通信大学客員教授等を歴任し、現在(株)ロボ・ガレージ代表取締役、ヒューマンアカデミーロボット教室顧問

川内康裕(かわうち・やすひろ)
株式会社リビングロボット代表取締役社長
愛大学工学部卒業後、シャープ株式会社へ入社。通信関連の商品開発に携わる。数々の携帯電話・スマートフォンの開発を行い、世界初のスマホロボット「ロボホン」の開発に携わる。2018年、株式会社リビングロボットを設立。2018年に講談社とメカトロウィーゴのロボット化について話をはじめ、2020年に「あるくメカトロウィーゴ」の開発が完了。2020年8月からBtoB向けで「あるくメカトロウィーゴ」がプログラミング学習用に福島県や福岡県の公立の小中学校に導入が開始され好評を得ている。

亀井栄輔(かめい・えいすけ)
クリエーター
様々なハードウェアの開発や、3Dプリンタでロボットの自作まで行うエンジニアであり、作曲家や、振り付け師としての側面を持つマルチクリエーター。ロボットコンテンツの製作にも関わり、大手電器メーカーのロボットや組立式のロボットのモーションプログラムや楽曲を多数製作。製作したプログラムは、高い評価を得て国のイベントやTVドラマなどでも使用される実績を持ち、現在もメーカ向けに製作を続けている。

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