2020.11.24
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むキャラクターとユーザーとの接点| マンガ・キャラクター 活用の極意と最新事情<第7回>
皆さんお元気でお過ごしでしょうか。コロナ禍第3波とGoToキャンペーンが重なって、自粛すべきかせっかくの機会を利用すべきかお迷いの方も多いかと思いますが、残り少なくなった2020年が充実することを願うばかりです。
前回は、日本国内に居住する男女3~74才の2,000名を対象として9月17日(水)~23日(水)に実施した最新定量調査結果から、講談社の主な少年マンガ、青年マンガ、女子マンガについて、以下の傾向をご紹介しました。
●少年マンガ原作作品のメイン支持層は、男女ティーンとM1(男20~34才)、そして連載終了後も支持を続ける男性中高年
●青年マンガは、ドラマ化やアニメ化で女性や若年層に支持が広がる作品と、読者と一緒に年齢を重ねながら新たな世代もファンにする長期連載作品が併存
●女子マンガは、読者が成人してもファンで居続ける少女向けファンタジー作品と、ドラマ化で男性や若年層にも支持が広がるオトナ向けリアル作品が併存
●認知率は低くとも認知者ベースの好意度が高い、つまり熱心なファンが存在する『通受け』ゾーンに位置する作品は、今後の可能性が期待できる
今回はキャラクターとユーザーの接点について掘り下げてみましょう。
ユーザーはどんなメディアや場所でキャラクターに関する情報に接しているのか。2020年9月、日本国内在住の男女3~74歳2,000名を対象に楽天インサイトへの委託で実施した「キャラクター定量調査」をもとにご紹介します。
※調査の概要についてはこちらをご覧ください。
SNSやLINEスタンプなどでキャラクター接点のDXが進行中
図表1は「あなたがふだん、お好きなキャラクターや気になるキャラクターと接することが多いのはどれですか」との質問に「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合です。
「好きなキャラクターや気になるキャラクターを思い浮かべながらお知らせください」と注釈を付けたうえでの回答で、計36の質問項目を多変量解析の一手法である因子分析を用いて6つに集約し、筆者が命名した因子名を、《玩具・雑貨・グッズ・ショー》のように《 》で表記しています。
図表1. どこで好きなキャラクターと接することが多いか
男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人が特に多かったのは、《玩具・雑貨・グッズ》を介した接点です。「おもちゃ・ぬいぐるみ・フィギュア・人形(43.2%)」「日用雑貨・文具(40.0%)」、そして「お土産店やお土産コーナー(38.5%)」「コンビニ・スーパーのキャンペーン/飲料・食品などのおまけ・景品(36.5%)」「食玩・玩菓、カプセル玩具、ゲームセンター景品、コンビニくじ(36.0%)」「デパートや駅ビル・ショッピングモールなどのキャラクター専門ショップ・売り場(30.3%)」などです。
他には「地上波のテレビアニメ・特撮番組(37.6%)」「地上波で放送した映画(33.8%)」「マンガ雑誌・コミックス・単行本(32.0%)」「Youtube、TikTok、ニコニコ動画などの動画投稿サイト(29.9%)」など《TVアニメ・映画・マンガ・動画投稿サイト》や、「地上波のテレビCM(38.5%)」「街角や駅などの店頭、看板、ポスター(30.8%)」など《TV(アニメ・映画以外)・街頭》、「LINEなどのスタンプ(36.9%)」などが接点として多かったことがわかります。
これらの結果から、グッズ(雑貨・玩具・土産物)、テレビ(CM・アニメ番組・映画)、店頭(キャンペーン・おまけ)、LINE、マンガなどがキャラクターコンテンツの主な接点であることがわかります。
2015年12月の調査結果と比べると、コロナ禍でイベント中止や外出自粛が続いたためか、多くの接点でスコアが下降傾向にあり、特に「地上波のテレビCM(-12.5%)」「地上波のクイズ、バラエティ(-10.5%)」「コンビニ・スーパーのキャンペーン/飲料・食品などのおまけ・景品(-10.5%)」は二桁の大幅マイナスを記録しています。
その一方、「LINEなどのスタンプ(+7.5%)」「Twitterやfacebook、InstagramなどのSNSサービス(+4.8%)」「キャラクターの公式サイトやTwitter公式アカウント、Facebook公式ページ(+2.5%)」などのSNS系はスコアが上昇傾向で、キャラクターとの接点におけるデジタルシフトが進んでいることを示す結果となっています。ちなみに「マンガ雑誌・コミックス・単行本」は、2015年:34.2%⇒2020年:32.0%で、-2.2%とほぼ横ばいでした。
キッズは玩具とテレビアニメ、女性はグッズ売場とLINEスタンプ、男性はマンガや動画サイトが主な接点
図表2で、主な接点ごとに性・年代別の回答結果を見てみました。
図表2. 性・年代別:主なキャラクター接点の回答結果
《玩具・雑貨・グッズ》
《玩具・雑貨・グッズ》のうち「おもちゃ・ぬいぐるみ・フィギュア・人形」「日用雑貨・文具」「食玩・玩菓、カプセル玩具、ゲームセンター景品、コンビニくじ」は男女キッズ(園児・小学生)および女性中学生以上で高く、「コンビニ・スーパーのキャンペーン/飲料・食品などのおまけ・景品」は男20-34才(M1)でも高くなっています。また、「お土産店やお土産コーナー」「キャラクター専門ショップ・売り場」は、20代女性でキッズと同等かそれ以上に重要な接点となっており、ファンシー系キャラが好きなオトナ女子が一般化していることをうかがわせます。
《TVアニメ・映画・マンガ・動画投稿サイト》
《TVアニメ・映画・マンガ・動画投稿サイト》のうち「地上波のテレビアニメ・特撮番組」「地上波で放送した映画」は特にキッズで高く、「地上波のテレビアニメ・特撮番組」および「マンガ雑誌・コミックス・単行本」「動画投稿サイト」は男子ティーンや男20-34才(M1)で高いのが特徴的です。
これらの結果は、男性若年層を中心に、マンガを起点としていわゆる深夜アニメで放送されるようなコアなキャラクターコンテンツがテレビアニメや動画投稿サイトで浸透していくことを裏付けるものです。これまでマンガ雑誌やコミックスにハマっていた年代が、動画サイトにシフトしつつある途中経過ではないか、とも読み取れます。
《SNS・LINE・公式サイト》
《SNS・LINE・公式サイト》のうち「LINEなどのスタンプ」と「Twitterやfacebook、InstagramなどのSNSサービス」は男女ティーンで高く、LINEスタンプは女性20-49才でも高くなっています。SNSを連絡手段として日常的に使うこの層は、コミュニケーションツールとしてキャラクターを積極的に用いており、見慣れぬ新キャラクターへの受容性も高いのではと考えられます。
接点としてのマンガの役割は、「ストーリー」訴求から「アイコン・シンボル」的位置づけへとシフト中
次にキャラクターとの接点が性・年代でどう変わっていくのか、多変量解析の手法の一つであるコレスポンデンス分析を使って可視化してみました。図表3の知覚マップでは、各々の性・年齢と関連が高い接点項目が近くにプロットされており、原点からの方向が同じ項目同士は関連が高いことを表しています。
縦軸は、上が「アナログ」系、下が「デジタル」系の接点です。横軸は、右がアニメや映画など「ストーリー」系、左がWEB・SNSやグッズ・イベントなど、「アイコン・シンボル」として活用されている接点です。
図表3. どこで好きなキャラクターと接することが多いか(コレスポンデンス分析)
それでは、図中の男性(青)と女性(赤)のラインとポイントをご覧ください。まず園児・保育園児は、男女とも絵本や食玩・カプセル玩具・ゲームセンター景品・コンビニくじ、お土産コーナーなどが主な接点である点が共通します。その後、小中学生では、男子がテレビアニメやCM、映画、マンガにシフトするのに対し、女子がグッズやグッズ売場、衣料・アクセサリー、テーマパークに大きくシフトするなど、男女による接点の違いが顕著になります。
高校生から20代の主な接点は、男子がマンガ雑誌・コミックス、各種動画サイト、女子がキャラクターのカフェ・飲食店、記念館・ツアー・乗り物、SNS、30代-50代では、男性が各種動画サイトやBS・CS局でのテレビアニメ、女性がキャラクター専門ショップ・売場、日用雑貨・文具です。
全般に、男性は単独でも完結しやすい接点を、女性は友達や彼氏・家族と一緒に行ったり、やり取りすることで盛り上がる接点を選ぶ傾向にあるようです。
そして60-74才は男女ともに園児・保育園児と近いアナログ接点の近くに位置する点が特徴的です。祖父母と孫のコミュニケーションを円滑にする役割をキャラクターが担っている様子が、こんなところからも窺えて興味深いです。
ところで、「マンガ雑誌・コミックス・単行本」のポジションを2015年と比べると、縦軸は変わらずやや「デジタル」寄りですが、縦軸は2015年より「ストーリー」から「アイコン・シンボル」方向へとシフトしていました。
電子コミック化が進んでいる昨今、デジタル寄りなのは頷けますが、アイコン・シンボル寄りにシフトしているのは、マンガに求める主軸が骨太なストーリーよりもキャラの見た目のかわいさやカッコよさに移りつつあることを示しているのではないか、と考えられます。この点については、より詳細な検証が必要と考えています。
今回は以上です。来月の第8回では再び講談社の主な少年マンガ、青年マンガ、女子マンガを題材に、「キャラクターによる提供体験の違い」についてお話したいと思います。どうぞお楽しみに。
<バックナンバー>
第1回:調査データにみる日本人とマンガ・キャラクターの関係
第2回:データでわかった、キャラクターが提供する体験と効果の実像
第3回:キャラクターが誰に、どのように効くのか可視化する
第4回:Twitterの書き込みからマンガの情報拡散を分析する
第5回:Googleトレンドから見えた、マンガ・キャラクターの人気傾向とクラスタリング
第6回:最新調査で探る各種マンガコンテンツの「広がり」と「熱さ」
筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授として、現在は法政大学経営大学院で学びながら、駒澤大学や福井工業大学で講師も務める。