withコロナが新たな日常になりつつある昨今、これまで活況を呈していたライブエンターテインメントの開催中止や延期が相次いでいます。
キャラクター関連に限定しても、声優ライブや2.5次元舞台、アニメ・玩具展示会、ご当地キャラ集合イベントがほぼ全滅。今後否応なしに進むであろうデジタルトランスフォーメーション(DX)が顧客との関係性構築や顧客体験価値にいかなる影響を及ぼすのか、ピンチをチャンスにする施策はあるのか。とにかく今が時代の変換点であることは間違いありません。
これらの状況を鑑みて、現在企画中のキャラクターに関する最新定量調査は、8月中旬以降の実施を目指して準備中です。プリテスト結果については、間に合うようであれば次回連載にてお知らせします。
キャラクター活用効果が特に高いのは?
第2回では、キャラクターが様々な "心地よい体験"を提供していること、キッズは「コミュニケーション」、中高年は「パーソナル」、男性は「物語・ストーリー」、女性は「自己の分身」など、性・年代でキャラクターに求めるものが変化することなどをご紹介しました。
キャラクターへの向き合い方が、男性は地動説、女性は天動説、との仮説も提示していますので、興味をお持ちになった方はぜひご一読ください。
今回は、前回に続き「キャラクターを活用した商品やサービス、広告に触れることでどんな効果が期待できるのか」について、より深堀りしてご紹介します(対象者全体である男女3-74歳全体の結果については、前回をご覧ください)。
図表1は、2018年3月に楽天インサイトへの委託で、日本国内在住の男女3~74歳4,500名を対象に実施したキャラクターパワーリサーチから、「キャラクター活用効果」に関する主な項目の性と年代別の回答結果です。
グラフのスコアは、「『キャラクター』が、パッケージ・おまけなどで商品に付いたり、広告で使われることで、その商品や広告についてどのようにお感じになりますか?」との前提条件を付けた上で、各項目に「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合です。
図表1. 性・年代別:主なキャラクター活用効果項目の回答結果
《注目・好意・記憶》に属する各項目の中で、「目にとまりやすくなる」「キャラクターを見かけた時に、その企業や商品の広告が思い浮かびやすくなる」「その企業や商品に好感を持つ」は、いずれも男女キッズ(園児・小学生)および女子ティーン(中学生-19歳)以上で高く、特に女性20-34歳(F1)の高さが目立ちます。
《探索・書込み・購入喚起》の中の「その企業の商品をほしくなる・サービスを利用したくなる」は、男女キッズと女子ティーン、女性20-34歳(F1)で特に高くなっています。
《安心感・信頼・評判》の中の「言っていることが、わかりやすくなる」、《話題共有・拡散》の「家族や友人との共通の話題になる」は、いずれも男女キッズから20-34歳で高くなっています。
いずれの項目も男子キッズ(園児・小学生)でスコアが突出して高く、この層でキャラクターの活用効果が最も期待できることがわかります。
実際に財布を握っているのは母親ですし、少子化もあってこの層向けのキャラクターコンテンツはレッドオーシャン、死屍累々ですが、男子キッズに刺さって爆発的にヒットした妖怪ウォッチなどの事例も記憶に新しいです。
また、女性全般でスコアが高く、35歳以上では男女差が大きくなっています。これらの結果から、女性は幅広い年代でキャラクター活用効果が高い様子がうかがえます。
キャラ活用の効果は、年齢上昇に応じて深化する
これらキャラクターによる提供体験が性・年代でどう変わっていくのか、多変量解析の手法の一つであるコレスポンデンス分析を使って可視化してみました。
図表2の知覚マップでは、各々の性・年齢と関連が高い提供体験項目が近くにプロットされており、原点からの方向が同じ項目同士は関連が高いことを表しています。
図表2. キャラクターが商品や広告に使われることで、どんな効果が見込めるか(コレスポンデンス分析)
このマップから、キャラクター活用で見込める効果は性別よりも年代で異なり、 (1)園児~中学生(キッズ・ローティーン)、(2)高校生~30代(ハイティーン・ヤング)、(2)40代~74歳(ミドル・シニア)、の3グループに大別されることがわかります。
(1)園児~中学生(キッズ・ローティーン)では、「言っていることがわかりやすくなる」「言っていることを見たり聞いたりする気になる」などメッセージが自分ごと化されることで、「家族向けや子ども向けの商品への興味が高まる」「家族や友人との共通の話題になる」「家族や友人知人など、まわりの人たちに話したくなる」「言っていることが自分や家族に向けられている」など家族・友人と話題が共有されて、企業・商品への興味度や購入意向がアップする効果が見込めます。この年代は性別による違いが特に少ないのも特徴です。
(2)高校生~30代(ハイティーン・ヤング)では、「どんな企業や商品・サービスなのか知りたくなる」「その企業に関する情報を知りたくなる」「その企業のウエブサイトを見てみたくなる」「ネットに書き込みたくなる」など、企業・商品への探索やネット書き込み行動が目立ちます。30代は男女でポジションが大きく異なり、女性30代は上の年代グループにプロットされますが、女性は育児などでライフステージが大きく変わることを反映した結果かと思われます。
(3)40代~74歳(ミドル・シニア)では、「その企業や商品を身近に感じる」「その企業や商品にセンスのよさを感じる」「その企業や商品に好感を持つ」「その企業や商品が世間や周囲で評判がよいと感じる」など、企業・商品への評判や好意度がアップします。また50代以上のシニア層では、「目にとまりやすくなる」「意識しなくても、つい視野に入ってくる」「キャラクターを見かけた時に、その企業や商品の広告が思い浮かびやすくなる」など、注目・リマインド効果も顕著です。
各性・年代の傾向をまとめると、メッセージの自分ごと化・共有⇒企業・商品の探索&ネット書き込み⇒注目・リマインド&企業・商品評判・好意度アップなど、年代が上がるにつれてキャラクター活用で見込める効果が変わってくることがわかります。
特に若者層において、探索・共有・書込みによるブランド価値向上が見込めることから、今のネットやスマホを使ったコミュニケーション活動とキャラクターの相性が良いことがわかります。
少年マンガ、青年マンガ、女子マンガのファンは必ずしも性・年齢に準拠しない
ここからは、マンガ原作系のキャラクターを細分化して、生活者の反応を見ていきましょう。
この連載で一部結果を掲載予定している、最新の定量調査がまだ実施できていないため、今回は予告的な内容にとどまることをご了承ください。
マンガには様々な種類があって、それぞれヒット作が日々生み出されていることは、C-stationの読者の皆さんなら既にご存知でしょう。諸説ありますし、もっと的確な解説もあるかと思いますが、それぞれについて簡単に定義してみました。
- 週刊や月刊の少年マンガ誌で連載されている作品を指す。本来は男子小学校高学年から高校生を対象読者と想定したマンガだが、明らかに男子大学生以上や女子を対象にしたマンガも含まれる。
青年マンガ
- 週刊や月刊の青年マンガ誌で連載されている作品を指す。かつては成人男性を主な対象にしていたが、現在は男子中高生や女子を対象としたマンガも含まれる。サブカル系のマンガがこちらに分類されることも多い。
女子マンガ
- かつては少年マンガ誌と対をなす形で少女読者向けの少女マンガ誌で連載されている作品のことを指したが、いまは青年マンガ誌と対をなす女性マンガも多数出版されている。少年マンガと青年マンガ以上に少女マンガと女性マンガの境界線が曖昧なため、両者を合わせて「女子マンガ」と呼ぶことにする。
こうした中で、果たして一般的な分類通りの性・年齢がファンなのかを検証してみました。
図表3は、第1回でも使用した株式会社キャラクター・データバンクが男女3~65歳2,000名を対象に実施した2018年6月のキャラクター・イメージ調査結果から、純粋想起で上位にあげられた「好きなキャラクター」のうちマンガ原作系(計68)を、少年マンガ原作系(計45)、青年マンガ原作系(計18)、女子マンガ原作系(計5)に分類して、好意度スコアの平均値を性・年齢別に算出したものです。
図表3. マンガ原作タイプ別にみた、純粋想起による2018年「好きなキャラクター」好意度平均値
マンガ原作系キャラクター全体の7割近くを占める少年マンガ原作系は、特に男子キッズ・ティーンで、そして20歳以上の男性全般、さらにティーン女子にも好意を持たれています。
青年マンガ原作系はマンガ原作系の3割近くを占め、年代による差は少ないようです。
女子マンガ原作系はマンガ原作系の1割未満ですが、セーラームーンなど以前からのキャラクターが多くあげられたこともあって、20歳以上女性だけでなく、男子未就学キッズ、20-39歳男性にも好意を持たれています。
これらの結果から、各マンガのファンは必ずしも性・年齢に準拠しない様子がうかがえます。
キャラクターの効果とは何か? そしてそれを誰が感じるのか? この調査によって、感じ取っていただけましたでしょうか。
今回はここまでとし、来月の第4回では最新調査結果をもとに、「講談社マンガのポジショニング」について語る予定です。どうぞお楽しみに。
<バックナンバー>
第1回:調査データにみる日本人とマンガ・キャラクターの関係
第2回:データでわかった、キャラクターが提供する体験と効果の実像
筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授として、現在は法政大学経営大学院で学びながら、駒澤大学や福井工業大学で講師も務める。