2020.06.23

SNSマーケティングのプロが語る「新型コロナとコスメ」──コロナ禍における美容4大トレンド

新型コロナウイルスの影響によって、リモートワークが広く浸透。「女性のコスメ事情にも変化が起こっている」と、SNSマーケティングのプロ、トレンダーズ株式会社 執行役員・橋本 菜々子さんは語ります。"コロナとコスメ"をテーマに、幅広くお話を聞きました。

トレンダーズ株式会社 執行役員 橋本 菜々子さん
同社のインフルエンサーマーケティング事業の統括責任者であり、
女性インサイトから購買意欲を掻き立てるSNSマーケティングのプロフェッショナル

新型コロナを機に、新たな美容トレンドが誕生

──コロナの影響で急速に広がったリモートワークによって、在宅時間が増加。美容に関して、女性ユーザーにさまざまな行動変容が起こったそうですね。

橋本 はい。当社では美容に特化した動画メディア「MimiTV」を運営しており、そのユーザーを対象にしたTwitterで行ったアンケート調査によれば、「美容関連でスマートフォンを閲覧している時間」について、半数以上が3時間以上増えた、と回答しています。

このデータから、コロナを機に、人と接する機会が減ったことで、リアルな口コミによる情報収集が難しくなり、多くの女性ユーザーたちがネットに美容関連の情報を求めたことがわかります。

その背景には、オンラインミーティングでは、手の込んだアイメイクは目立たず、「肌ツヤ」と「血色感」の演出が重要であり、それに対応したメイク「Zoom映え」などが話題になったことも要因のひとつでしょう。

つまり、現状に適したメイク、コスメを模索する女性が、このコロナ禍で増加したわけです。では、実際、どこで情報収集していたかといえば、それは「SNSの個人投稿」であることが、同じく当社の調べでわかっています。

外出自粛が続くなかで、"今"に対応したコスメがほしい。できれば、試してから購入したいけれど、試せない。そこでユーザーたちは、SNSの口コミを頼りにしたわけです。

どんな状況においても、女性は"美しく"ありたいもの──。今回のコロナ禍においても、情報収集を怠らない彼女たちの姿から、そんな女性ならではの想いを感じ取ることができますよね。

──コロナがなければ、「Zoom映え」という言葉が生まれることもなかったかもしれませんね。ほかにも新たなトレンドは、存在するのでしょうか?

橋本 はい。当社では、「コロナ禍における美容4大トレンド」と呼んでいます。そのひとつが「Zoom映え」です。残りの3大トレンドについてもご紹介しましょう。

2つ目が「マスクメイク」です。外出にはマスクが不可欠のため、特にマスクをしていても崩れにくいベースメイクアイテムを求めるニーズが高まりました。逆に、口元が隠れるため、派手なリップメイクはダウントレンドとなりました。

3つ目が「ノーファンデ」。テレワークへの切り替えや、マスク着用によりファンデーションを塗らない人が増加。肌負担の少ないベースメイクアイテムを取り入れるなど、スキンケアに注力するようになりました。

4つ目が「D2C型PR」です。今回のコロナの影響を受け、コスメの新作発表会(リアルイベント)の中止や、雑誌等の媒体も撮影が中止になったことを受け、露出先を失ったブランドが選択したのは、自社SNSや社員のSNS発信に注力することでした。見事に商品PRを成功させ、新たな道を切り拓いたブランドも登場しました。

その代表格が「オルビス」です。同社は最近、企業SNSやPR担当の個人SNS発信を活発化。SNS上でメイクのHow Toや商品紹介を行うことによって、商品の魅力を広く届けることに成功しています。

オルビスの公式Twitterアカウント

SNS発のバズコスメと、メディアの相関関係

──コロナ以前から、Twitter発の「バズコスメ」が生まれるなど、コスメとSNSは相性がいい傾向にありますよね。

橋本 はい。ここ数年、Twitterを起点に話題となったコスメが、翌日にはドラッグストアやECショップで完売してしまう、といった現象が多く見られています。今回も同様に、肌に優しいオーガニック系のバズコスメが誕生し、ECショップで完売するなど、コスメとSNSの親和性の高さがあらためて浮き彫りとなりました。

ちなみに、バズコスメがTwitterで生まれやすい背景としては、「Twitterは本音メディア」であると考えるユーザーが多いからです。つまり、嘘が少ない。信憑性が高い情報としてユーザーも受け取っている印象があります。

特に美容感度の高い女性ユーザーほど、信頼度の高い情報を求める傾向にあります。

──"信頼度の高い情報"とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

橋本 たとえば、自分がフォローしているインフルエンサーが紹介するコスメを使ってみて、いいと思えば、ユーザーは信用できると判断します。では、大元の美容系のインフルエンサーたちがどこで情報を収集しているかといえば、メディアを活用しています。

講談社さんですと「VOCE」のベストコスメ企画などは、"美容のプロが選んだアイテム"という、いわばお墨付きですよね。そうした情報は、美容系のインフルエンサーたちも、しっかりチェックしています。そのなかで気になったものがあれば、実際に使ってみる。よければ、自分のSNSで紹介する。結果、バズコスメになる、ということもあります。

美容の深い情報を提供する、美容誌のパイオニア「VOCE」

つまり、バズコスメを辿ってみたら、実はその始まりは"メディアの情報だった"というパターンも複数存在しているわけです。受け手のユーザーは、メディアでも絶賛され、かつ自分の好きなインフルエンサーも称賛していれば、その情報の信頼性は高いと判断し、試してみたくなりますよね。

ですから、当社が運営しているメディア「MimiTV」においても、動画というリアリティある描写を活かして、いかにユーザーから「信頼を獲得するか」という視点は非常に重要視しています。

──最後に。女性ユーザーがネットを通じて、美容関連の情報を求めるようになったことを受け、これまでになかった形で「バズコスメ」が生まれる可能性もあると思います。その点については、どうお考えでしょうか?

橋本 今回、コロナの影響で、"会えない"という制約が生まれたことで、Instagram上でコラボ配信が増えましたよね。そこから見えたことは、コラボレーションすることで、見ているユーザーの「共感は高まる」ということです。

ひとりがレコメンドしたものに対して、もうひとりが賛同する。その様子に、納得感が生まれ、商品への購買意欲も高まっている印象を受けました。今後コラボ配信から、バズコスメが生まれることもあるのではないでしょうか。

また、バズコスメに限らず、Instagramのコラボ配信は、次のSNSマーケティングのトレンドになる可能性もあると考えています。なぜなら、そこには女性心を刺激する"楽しさ"や"喜び"が詰まっているからです。

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