左から直木賞受賞の真藤さん、芥川賞受賞の上田さん
今年は年初から嬉しいビッグニュースで社内が沸き返りました。第160回芥川賞を上田岳弘さんの「ニムロッド」(群像2018年12月号)、町屋良平さんの「1R1分34秒」(新潮同年11月号)が、そして直木賞を真藤順丈さんの『宝島』(講談社刊)が受賞しました。弊社としては19年ぶりのダブル受賞でした。
事前に聞こえてくる下馬評から、正直なところ社内関係者の期待は大でした。
受賞作発表後の発信に向け、広報室ではあらかじめリリースの準備をしておきます。今回は、それぞれ単独受賞とダブル受賞の場合の3種類。ちなみに前回のダブル受賞は、2000年上半期の芥川賞・松浦寿輝さん著『花腐し』と直木賞・金城一紀さん著『GO』。
下馬評がいくら高くても、賞は水物。しかも強敵ぞろい。後輩作家へのお優しいが厳しい視点を持つ選考委員のご意見はどうまとまるのか。文体は、社会性は、物語運びは、斬新性は......受賞というパズルが完成するためのピースは山ほどあるので、当日はハラハラしながら広報室で中継を見守っていたところ、ふたつの吉報が19時前に相次いで飛び込み、無事発信にこぎつけました。受賞された上田岳弘さん、真藤順丈さん、おめでとうございます。また、芥川賞同時受賞の町屋良平さんはもちろん、心血を注いで候補作を書かれた各氏に心より敬意を表します。
以下は、1月16日、帝国ホテル(東京・千代田区)で開かれた記者会見での、受賞直後の興奮冷めやらぬ上田さん、真藤さんお二人の言葉です。
【「ニムロッド」上田岳弘さん】
──受賞の知らせをどこで聞きましたか。
「今回は(候補となるのが)三回目だったので、新春歌舞伎の『番長皿屋敷』を見ながら待っていました。受賞の感想ですか?......受賞したな、と(笑)」
──今までの上田さんの作品に比べ読み易くなっていると思いますが、今作は意識されたのでしょうか。
「初めのころの作品では、自分がどれだけ速い球を投げられるかというつもりで書いていたが、だんだんと皆さんに広く読んでもらいたいと思うようになりました。毎回試行錯誤しながらも作品の重さは失わずに書いていきたい」
【『宝島』真藤順丈さん】
──まずは受賞の感想を。
「ホッとしました。編集者の皆さんの期待に応えられたのが大きいです。山田風太郎賞も獲ったので、もうここまで来たなら落ちてもいい、俺には風太郎がいる! と(笑)」
──沖縄を描く意味とは何でしょう。
「沖縄の人間ではない(東京出身の)自分が書くという葛藤自体は何度もありました。現代日本の中で最も複雑な問題の一つである沖縄の問題について、それに対して腰が引けてしまうということは潜在的な(沖縄に対する)差別感情と同じではないのか、と。これを書くことによって沖縄の人からの批判が出てきたら僕が矢面に立って出ていこうと決心するまで逡巡がありました。沖縄の戦後史を多くの人に知ってもらいたい」
──『宝島』というタイトルに込めた想いは?
「守らなければならないもの。僕自身が憧れるもの、ですね」
お二人のますますのご活躍を期待いたします。あらためて、おめでとうございました。
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※弊社広報誌「News Clip」Vol.305よりの転載です。広報室の担当がまとめた記事から抜粋しています。