2024.11.27
【ミライトーク02】生活者の心を動かす「価値」の作り方。~ブランド・メディアに求められる、「推される」コンテンツづくりのポイントとは~ ── 講談社メディアカンファレンス 2024
(左から)講談社 コミュニケーション事業第一部 副部長・林 祐平、講談社 FORZA STYLEエグゼクティブ プロデューサー・栗原 資英、電通 クリエーティブディレクター・嶋野 裕介さん
2024年10月30日に、東京會舘にて開催された「講談社メディアカンファレンス 2024」。本稿では、プログラムの一つとして行われた、メディアと広告の可能性を探るトークイベント「ミライトーク」のレポートをお届けします。ミライトーク02では、株式会社電通のクリエーティブディレクター・嶋野 裕介さん、講談社 FORZA STYLE エグゼクティブ プロデューサー・栗原 資英、講談社 コミュニケーション事業第一部 副部長・林 祐平が登壇。イケオジのためのライフスタイルメディア「FORZA STYLE」の取り組みを例に、読者から「推される力」を生み出すコンテンツ作りのポイントや、生活者の心を動かすメディアの価値とはなにかを語り合いました。
◆本プログラムを含めた、ミライトーク01・02のアーカイブ動画 および、「講談社メディアカンファレンス2024」贈賞式 完全版アーカイブ動画は、ご登録いただくことで無料でご視聴いただけます。ご登録のお手続きはこちらから。(なお、ご登録者さまには今後、C-stationグループのC-staiton、AD STATION、マンガIPサーチ、講談社SDGsのメルマガをそれぞれ月2回程度をお送りさせていただきます)
少しの「ダサさ」で共感を生み出す『FORZA STYLE』
林 まずは『FORZA STYLE』の紹介をさせていただきます。『FORZA STYLE』は、国内最大級のメンズファッションメディアです。 メディアパワーとしては、2100万PV、YouTubeのチャンネル登録者数も29万人を超えるなど、成長を遂げているメディアです。 広告出稿についても、おかげさまで5年前と比べ200%の成長率を誇っております。継続的に出稿いただくお客様も多く、『FORZA STYLE』を使えば「効果が出る」と認識いただいているのかなと思います。
林 メイン読者層は、30~40代の男性。年収は1000万円を超える読者さんもいらっしゃいます。コンセプトは「ユーモアは紳士のたしなみ。イケオジによるイケオジのためのメディア」と謳っておりますが、栗原さん、このコンセプトについてご説明いただけますでしょうか。
栗原 今の時代、個人の趣味や思考が多種多様にありますよね。だからこそ、広く30~40代の男性に向けてではなく、洒落っ気と子ども心を持った紳士に向けて情報を発信しています。ちなみに「イケオジ(笑)」なんですよ。「イケオジ」って、ちょっとダサいじゃないですか。
嶋野 上級テクニックですよね。少し前に「ちょいワル」が流行って、その次に「イケオジ」という言葉が出てきた。そのまま放っておくと笑われてしまう可能性がある言葉をあえて使うのは、まさに「ユーモア」です。かっこつけるだけじゃなくて、どういじられるかも含めての設計として完璧なんじゃないかと思います。
栗原 時代の流れを見ると、「マスキュリニティ(男らしさ)」の方ではなくて、趣味性の高いものをちょっとだけ「いじる」感じがあるなと。ちなみに『FORZA STYLE』のYouTubeは「イケオジ公式」と名乗っています。
情報過多の時代。ますます求められる、生活者の興味を引き出すコンテンツ作り
林 本題に入る前に「企業のマーケティングにおける良質なコンテンツの重要性」を見ていきたいと思います。博報堂が発表しております「メディア定点調査2024」では、メディアへの接触時間が日々増加しており、メディア総接触時間が430分を超えている状況だと示されています。 なかでも、スマートフォンとの接触時間が非常に増加してるいのがわかっています。
この調査から推測できるのは、生活者は「限られた時間のなかで、効率的に自分の興味がある情報を選択して接触している」ということです。つまり、届きにくい情報は「受け取らない」時代になってきているのだと考えられます。嶋野さんはこちらの調査結果を見て、どのように感じられましたか。
嶋野 裕介さん(株式会社電通 クリエーティブディレクター/ブランディングディレクター):東京大学卒業後、電通入社。「メーカーズマーク:家族と話す夏にしよう」「サントリーウイスキー碧:Ao meets 椎名林檎」「BOSS×Mリーグ : ボス雀」「森永乳業:宣伝部腸・浅田真央」「青森県:ぷよりんご」などのコミュニケーション設計を担当。著書に『なぜウチより、あの店が知られているのか? ちいさなお店のブランド学』がある。
嶋野 このデータは、捉え方が難しいなと思っております。今は、スマートフォンやタブレットでの視聴と言っても、デジタルだけはないんです。例えば、皆さんもスマートフォンでテレビ番組を見たり、「radiko」でラジオを聞いたり、雑誌を読んだりすることがありますよね。そのくらいメディアの境目が無くなってきているんです。単純にデジタル時代だというわけではなく、すごく混ざり合った数字なのだと見ております。つまり、「スマートフォンでの視聴が伸びている」という理由だけで「テレビや雑誌の接触時間が減る」わけではないと思います。
栗原 混ざり合っている。なるほど。
林 たしかにそうですね。ただ、情報があふれているこの時代、「企業が一方的に情報を流していくだけでは生活者に届かない」という課題はありますね。だからこそ「ブランドが届けたいメッセージを、生活者が関心を持ってくれる文脈で伝えられるコンテンツ作り」がますます重要になってくる。しっかりと文脈を用意し、伝えていかなければならない時代になっているのだと思います。
「推される力」が、読者の熱量を育む!
林 それでは、生活者が関心を持つコンテンツ作りのポイントとは何か。『FORZA STYLE』は関心を持ってもらうために、どういったポイントを意識してコンテンツを作っているのでしょうか。
栗原 資英(株式会社講談社『FORZA STYLE』エグゼクティブ プロデューサー):埼玉県熊谷市出身。『週刊現代』『FRIDAY』などでスクープを飛ばし、2015年秋から『FORZA STYLE』プロデューサーに就任。スマフォーのために面白ラグジュアリーを提唱。
栗原 関心を持ってもらうコンテンツに必要なのは「推される力」です。先ほどのメディア接触時間の話にもありましたが、今は大量の情報が溢れている世の中なので、本当に好きになってくれないと見向きもされないんです。
『FORZA STYLE』はおかげさまでYouTubeの再生回数は高い数字を誇っていますが、私たちは再生数よりも、1視聴、1PVが強く推されることを重視しています。「推す力」はわかりやすいものですが、「推される力」を生み出すのってすごく難しいんですよ。こちらから「推して!」と言っても、絶対に推してくれません。だから「推すな!」なんですよ。そうすると「推される」んです。ダチョウ俱楽部さんなんですよ、本当に(笑)。
一同 (笑)。
林 そもそも出版社は、リーチよりも「ニッチ」の文脈で、「ユーザーに届くコンテンツを作ってきた」というのが特徴的なコンテンツメーカーです。つまり、「推される力」を生み出すことによって、読者が熱量を持って推してくれる状況を作り上げてきたんですよね。やはり、推される、愛されるコンテンツを作るっていうのは、重要ですよね。
林 祐平(株式会社講談社コミュニケーション事業第一部 副部長):2007年インターネット広告会社に入社。広告営業担当を経て、出版社の広告商品の開発に従事。2022年1月に講談社に入社。『FORZA STYLE』の広告営業をしながら、『FORZA STYLE』の発信するコンテンツと「熱狂する読者」に注目し、オンラインストアの立ち上げを企画・実行。2024年9月から『FORZA STYLE』の営業リーダーを担当。
嶋野 本当に重要だと思います。今は海外でも「ファンダム」という言葉がすごく流行っています。これは、「ファン」と「キングダム」が混ざった言葉です。例えば、テイラースウィフトさんのコミュニティも「ファンダム」と呼ばれています。
これまでは、アーティストやコンテンツホルダーが情報を与えて、それをファンが喜ぶという関係性でした。しかし今は、ファン同士がつながってコンテンツを作り、アーティストがそのコンテンツを採用するなど、ファン発のコミュニケーションも生まれてきています。ただ情報を与えるのではない。与えたものがどう返ってくるか、まさに「推される」ためにはどうすればいいのか考えることが、ファンとのコミュニケーションにおいて非常に大事だなと思っています。
いじり、いじられ一緒に楽しむ。「内輪ネタ」で読者を巻き込む
林 では実際に『FORZA STYLE』が「推される」ために意識していることは何か。栗原からは「読者と一緒に楽しんでつくる、究極の内輪ネタ(=身近に感じさせる)コンテンツ」。これが、『FORZA STYLE』のコンテンツ運営のポイントだと聞いています。
嶋野 とても面白いですね。あえて「内輪ネタ」としているのは、なぜですか。
栗原 私たちが取り上げているのは、ファッションや時計、靴、車などの高級な嗜好品と呼ばれるものです。多くのメディアは「憧れを抱かせる」という意味でも、これらのアイテムをかっこよく、綺麗に魅せることが多いのですが、そこで戦っても勝てないなと。
それであれば、裏側を見せていくのはどうかと考えたんです。ADを巻き込んでみたり、演者がスタイリストさんを軽くいじってみたり......。『FORZA STYLE』の干場義雅編集長も、本当にいじられる力がすごいですからね(笑)。このように、関わる人たちを巻き込んで、アットホームな雰囲気を作っています。ときには読者をいじることもありますね。読者の方も「あ、俺のコメントいじられてる!」と、親近感を抱いてくれるのではないかなと。
林 読者の皆さんも、参加している感覚になりますね。
栗原 コンテンツを消費してもらうだけでなく、そのコンテンツを通して自己表現できるというのが、喜んでいただけている理由なのかなと。だからこそあえて「内輪ネタ」でもあるバックヤードを見せています。それが成功につながっているんじゃないかな。
林 ラジオのハガキ職人とパーソナリティみたいな関係性、ですね。
嶋野 似ていますね。テレビや新聞は広く届けるものなので難しいかもしれませんが、ラジオや雑誌は、ある程度狭まっているからこそ言えるネタや、関係性が築けるということだと思います。YouTubeであればリアルタイムでリアクションも取れるので、より深いコミュニケーションができるようになった。それが『FORZA STYLE』の「内輪ネタ」ということですよね。
栗原 おっしゃる通りです。いじり、いじられ、一緒に楽しむ。
林 その熱量が「推される力」になって、読者の心を動かすことができるのでしょうね。最近は「FORZA 買い」という言葉も生まれています。取り上げたものが売り上げにつながったという声もいただいておりますね。
嶋野 『FORZA STYLE』は、他メディアではなかなか難しい「いじる」ということをさせてくれる、かつ、スタッフの皆さんが堂々と自分からいじられに行くっていうのが、最先端だなと思います。
「推されるコンテンツ作り」。3つのポイント
<1> キャスティング 制作陣のファンを作ることを意識せよ!
林 では具体的に、『FORZA STYLE』が考える「推されるコンテンツ作りのポイント」をご紹介させていただきます。ポイントは「キャスティング」、「コピーライティング」、「コミュニティ」の3つ。です。『FORZA STYLE』ならではの特徴を示しながら紹介いたします。
林 まず1つ目が、「キャスティング」です。この動画に登場する「河井」というスタッフは、『FORZA STYLE』の編集部員。定年・再雇用となった講談社の編集部員自らが出演し、送別会の様子を皆でいじって楽しむという動画です。読者の皆さんも一緒にコメントで盛り上がっていましたね。こうしたコンテンツを数多く提供している意図はやはり「制作陣のファンを作る」ということでしょうか。
栗原 河井は「番長」と名乗っている編集部員です。彼は元々、男性向けの情報誌『ホットドッグ・プレス』などのメディアでファッションに関わっていました。実は、ここに異動してきてまだ1年ぐらいなのですが、即・定年という......(笑)。ただ、熱量が高く、司会も抜群に面白い、私も大好きな先輩です。番長には、「推される力」がすごくあると感じています。特に、番長と古着屋に行く動画は人気です。ボタンを掛け間違えてしまう姿など、可愛らしいんですよね。
番長を含めて「オジーズ」と呼んでいるメンバーがいるのですが、彼らは「今月キツいから、買うのは難しいかも」みたいな発言をすることも多いです。演者のリアルな発言は視聴者にとって「自分ゴト」になりますし、「この人 推してみよう」と思ってもらえるきっかけにもなる。「番長、次は退職金で買ってね!」とか、そういう1コメントを稼げると、推されるようになっていくと思います。
嶋野 メディアでありながらも、インフルエンサーみたいな立ち位置で発信されている。独特なポジションにもいらっしゃるのだなと思います。
林 裏側も見せながらキャラクターを育て、そこにファンをつけていく。そこが『FORZA STYLE』のキャスティングのポイントですね。
<2> コピーライティング 「ちょっとダサくて隙があるネーミング」が親近感につながる
林 2つ目は「コピーライティング」です。『FORZA STYLE』はコピーに大きなこだわりを持ったメディアです。
林 ネーミングのポイントは、①わかりやすい、②語呂がいい、③言ってて気持ちがいい、④必殺技感がある、⑤ちょっとダサい、の5つです。まとめると、遊び心を持ったネーミング、身近に感じさせるようなネーミングをつけている、ということだと思います。
栗原 「ちょっとダサい」は非常に重要です。例えば「オシャレ王決定戦」という日本で一番オシャレな人を決めるというコンテンツ。昨年の応募総数が2000件を超えるほどの人気コンテンツなのですが、ネーミングはダサいですよね(笑)。この企画は2025年で10周年を迎えるので、10周年は盛大にやろうと考えています。
嶋野 「ダサい」とは少し違うのですが、私は「隙がある」ということだと思いました。隙があるからお客さんが入って来られる。すべてを完璧にしないで、あえて隙を意図的に作っているからこそ、そこにチャンスがあるのだと感じます。「ダサい」というよりは、「隙がある」なんじゃないかな。
栗原 ぴったりですね! 確かに、「隙が無い」とコメントしないですからね。
林 その隙があるからこそ、楽しんでいただいているのでしょうね。
<3> コミュニティ 制作陣に直接会えるイベントで、ファンの熱量を上げる
林 3つ目が、コミュニティです。『FORZA STYLE』は非常に多くのコンテンツを発信しておりまして、それぞれのコンテンツにコミュニティが生まれています。こちらの写真は、FORZAの人気コンテンツ「ロック福田の腕時計魂!」の「ソウルメイトオフ会」というイベントです。 『FORZA STYLE』は、「読者」という呼び方はあまりしておりません。「腕時計魂!」のファンに関しては、「ソウルメイト」と呼んでいて、彼らが一堂に会する機会を定期的に設けています。
栗原 「腕時計魂!」は、腕時計の取材を続けて30年以上のロック福田さんと、メンズファッションライターの丸山尚弓さんが演者となって、腕時計談義を展開するコンテンツです。写真の真ん中にいる髪の毛の長い方がロック福田さん、その右当たりにいる白い服の女性が丸山さんですね。
林 出演者と読者が同じ立場で、友達のように集まっているのがお分かりいただけるかと思います。私もイベントに案内で参加したのですが、読者の方から「栗ちゃん(栗原)元気にしてる?」と、声をかけてくれたこともあって。制作、演者、読者の距離が並列なメディアだな、と改めて思いました。
嶋野 編集長が出てくるメディアは多くありますけど、ここまで愛されて、いじられるというのはなかなか聞かないですね。
栗原 私たちも愛されていますが、一方で私たちも読者を推しているんですよ。来てくれている人たち皆さんが本当に面白い人たちなので、ある種、一緒にメディア作っている楽しさがありますね。
嶋野 読者の方とつながってリサーチを行うことはあると思いますが、友達のように輪が広がっていくというのは理想系であり、究極の形ですね。ここに時計の企業さんを巻き込むオフ会もあったりして、すごいなと思いました。
栗原 初めは不安もありましたが、こうしたイベントが雪だるま式に経済効果を生んでいくのだと実感することができました。
「憧れ」と「親近感」を生む、『FORZA STYLE』のブランドコミュニケーション事例
林 ここからは『FORZA STYLE』をブランドコミュニケーションにいかに活用できるのか。事例を基にお話をさせていただきます。
林 こちらは「タカシマヤスタイルオーダーサロン」の事例です。干場編集長と、先ほど紹介した河井が出演しています。干場編集長が出演することでラグジュアリー感を醸成しながらも、河井のキャラクターで親近感も創出する、というキャスティングです。さらにこの動画の特徴として、なんと、河井のご子息が出演するんですよ! 私は見ていて前代未聞だと思いましたね。
嶋野 すごいですね!
林 ラグジュアリーで「憧れ」を作りながら、「自分もタカシマヤのスーツ作ってみたいな」と思わせるのがポイントです。非常に多くの方々から来店されて、受注が入っていると聞いております。
嶋野 今の広告は、インフルエンサーでもPRと絶対につけなければいけませんが、この動画はPRと付けてもリアリティがあるのが魅力です。
栗原 俗にいう「案件」ですが、逆にそれがいいのかもしれません。「あ、番長仕事してるじゃん!」とコメントしてくれたファンもいましたね。
林 憧れと親近感を作りながら、育てたキャラクターもしっかりと出演をさせ、コンテンツへの興味を持ってもらう。そこからファンを雪だるま式に集めていく、という仕掛になっているかと思います。
林 続いては、スイス生まれの高級時計ブランド「EDOX(エドックス)」とのコラボについてです。EDOXさまがブランド創立140周年を迎えたということで、記念モデルの時計を『FORZA STYLE』と一緒に製作し、購入した方々向けにファンイベントを開催した事例になります。
『FORZA STYLE』は昨年から公式オンラインストアを開設し、生地やデザインにこだわったオリジナル商品をどんどん販売しております。そこでEDOXさまより「140周年記念を盛り上げたい」とお話をいただきました。オリジナルモデルの時計の金額は40万円。1カ月で100本完売いたしました。
林 ファンイベントは、購入した皆さんを講談社のスタジオにお招きして開催しました。ここでもコミュニティが生まれていましたね。
栗原 イベントでは、購入特典として、時計着用シーンをプロのカメラマンがひとりひとり撮り下ろすという企画を行いました。普段『FORZA STYLE』の動画を撮っている大坪というカメラマンがいるのですが、彼にもファンが付いておりまして。「時計を買うと、あの大坪さんが俺の写真を撮ってくれるらしいぞ!」と、盛り上がっていましたね。 非常に熱量のあるコミュニティが生まれていると思いました。
嶋野 着眼点が鋭いですね。自動車だとファン同士の集まりやイベントは多いですが、時計も実はニーズがあった。ニーズはあるのに、なかなか集まる場がなかったのでしょうね。
栗原 コミュニティ作りと言えば、トークアプリのDiscordも活用しています。Discordは、実はファンから教えてもらったものなんです。『FORZA STYLE』もFacebookやXのアカウントはあるんですけど、読者の皆さんは「他の人に見られたくない」という気持ちがあるようでした。見られたくないけど、知り合いとはDiscordを使って毎日のようにチャットしているのだと。実際、「ソウルメイト」の皆さんはよく活用してくれています。
嶋野 読者の方から教えてもらって、それを取り入れるというのは面白いですね。
林 Discordのコミュニティに企業さまが入っていただき、一緒に商品を盛り上げていくことで、『FORZA STYLE』を十分に活用していただけるのではないかと思っています。Discordの限られたコミュニティであれば、読者やユーザーの本音を引き出せる機会にもなるのではないでしょうか。
読者に向き合ってきたからこそ「嘘」がない。『FORZA STYLE』の価値
林 最後に、嶋野さんから見て「出版社のコンテンツ作り」そして『FORZA STYLE』の価値を聞いてみたいと思います。
嶋野 先ほどお話に出ていた、「コピーライティング」の5つのポイントが、何よりの特徴であり価値が生まれている部分だと思います。私は広告代理店でいろいろな企業さんとお話するのですが、当然我々も企業も、かっこよく、正しく、良い所にフォーカスして伝えたいと考えてしまうんです。それはもちろん正しい意欲だと思います。
しかし、全ての商品・サービスには、解釈次第でツッコミどころがあったり、気づかない魅力がたくさんあったりするんですよね。一方『FORZA STYLE』は、ある意味サードオピニオンと言いますか......。僕らが言いづらいことも含めて、解釈してくれる立場だと思っています。だからそこに「嘘」がなくて信頼できるのかなと。
そして、わかりやすく、語呂がよく、キャッチーなものを作ることは、雑誌を作ってきた皆さんの得意分野ですよね。なかでも「ちょっとダサい」は本当に大事だと思っています。我々が言うと、当然クライアントさんはNGですが、『FORZA STYLE』が言うと、逆に受け入れられやすい。その理由は、読者に1番近いところにいるから。それができるのが、講談社や『FORZA STYLE』と組むことの大きな価値なのではないかと思っています。
栗原 いろいろな方向性から解釈するというのは、まさに「編集の力」なのかもしれませんね。
林 嶋野さん、ありがとうございました。『FORZA STYLE』は2025年で10周年を迎えます。記念イヤーということで、さまざまな広告サービス、企画を展開していく予定です。一緒に盛り上げていただける企業さま、ぜひぜひお問い合わせをいただければなと思います! 皆さま、本日は誠にありがとうございました。
◆本プログラムを含めた、ミライトーク01・02のアーカイブ動画 および、「講談社メディアカンファレンス2024」贈賞式 完全版アーカイブ動画は、ご登録いただくことで無料でご視聴いただけます。ご登録のお手続きはこちらから。(なお、ご登録者さまには今後、C-stationグループのC-staiton、AD STATION、マンガIPサーチ、講談社SDGsのメルマガをそれぞれ月2回程度をお送りさせていただきます)
※ミライトーク03のアーカイブ動画、ならびにレポート記事に関しては、権利関係の都合上、2025年以降での公開を予定しています。予めご了承くださいませ。
【講談社メデイアカンファレンス 2024 ミライトーク02】
生活者の心を動かす「価値」の作り方。
・嶋野 裕介(株式会社電通 クリエーティブディレクター/ブランディングディレクター)
・栗原 資英(講談社 FORZA STYLEエグゼクティブ プロデューサー)
・林 祐平(講談社 コミュニケーション事業第一部 副部長)
撮影/村田克己(講談社写真映像部) 取材・文/室井美優、水溜兼一、中牟田洋子(Playce) 編集・コーディネート/丸田健介(講談社SDGs)
丸田健介 エディター・コーディネーター
C-stationグループで、BtoB向けSDGs情報サイト「講談社SDGs」担当。