2024.02.20

コロナ禍の前後で、マンガ・アニメやキャラクターへの「好意度」はどう変化したか|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

2024年も旧正月を迎えて、都心には多くの中国系観光客が来ており、コロナ禍が一区切りついたことを実感しています。そんな中国系観光客の喧騒とはほど遠い静けさの中、福井県では福井駅前に体長12mのティラノサウルス実物大ロボットが設置されるなど、3月16日の北陸新幹線の敦賀延伸を控えての準備が整いつつあります。

JR福井駅西口のティラノサウルス実物大ロボット(2023年2月15日:筆者撮影)

JR福井駅西口のティラノサウルス実物大ロボット(2023年2月15日:筆者撮影)

前回は、コロナ禍前後である2018年3月と2023年2月の定量調査データを用いて、キャラクターに関する日常接点がどう変化したか、キャラクター界隈におけるデジタルシフトの進行状況を以下のとおりに紹介しました。

  • マンガからのキャラクター接触については変化が少ない。ただし男子キッズで減少傾向
  • 動画配信サービス・動画投稿サイトでの接触は大きく増加
  • テレビ放送系からのキャラクター接触は軒並み減少
  • SNS疲れ? LINEやSNSによる接触は下降傾向に

今回は、コロナ禍前の2014年まで遡り、2020年のコロナ禍以降の定量調査データと比較する形で、マンガを含めた主要コンテンツおよびキャラクターに関する好意度がどう変化したか、デジタルシフトの進行状況を深掘りします。

マンガファンは高齢化し、男子キッズ・ティーンで減少傾向

2014年から2023年までの「キャラクター定量調査」データを用いて、「マンガ(単行本や雑誌など)が好きなほうである」という設問に対して「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人の割合を性・年齢別に時系列比較した結果が図表1です。

図表1. 性・年齢別:マンガ好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

性・年齢別:マンガ好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

男女3-74歳全体では、コロナ禍前後(2014~2018年平均vs2020~2023年平均)ともに4割半ばで推移しており、ほぼ違いはみられません。性・年齢別でみると、男子キッズ(園児・小学生)、ティーン(中学生-19歳)のスコアダウンが目立つ一方、男女35歳以上ではスコアアップを果たしています。

男性は20-34歳、女性はティーンでマンガファンが特に多い傾向はコロナ禍前後で変わりませんが、時系列でみると時間経過による高齢化が進行中であることと、エントリー層である男子キッズ・ティーンのマンガファンが先細り、減少傾向にあるようです。

テレビアニメとアニメ映画ファンも高齢化、男女キッズで減少傾向

続いて、「テレビアニメが好きなほうである」という設問に対して「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人の割合を性・年齢別に時系列比較した結果が図表2、「アニメの映画が好きなほうである」という設問に対して「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人の割合を性・年齢別に時系列比較した結果が図表3です。

図表2. 性・年齢別:テレビアニメ好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

性・年齢別:テレビアニメ好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

図表3. 性・年齢別:アニメ映画好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

性・年齢別:アニメ映画好意度・時系列比較 (2014年~2023年)
男女3-74歳全体では、コロナ禍前後(2014~2018年平均vs2020~2023年平均)ともにテレビアニメ好意度は約5割、アニメ映画好意度は約4割で推移しており、こちらもほぼ違いはみられません。

性・年齢別でみると、男女キッズ(園児・小学生)のスコアダウンが目立つ一方、男女35歳以上ではスコアアップを果たしています。

男女キッズでテレビアニメ およびアニメ映画のファンが特に多い傾向はコロナ禍前後で変わりませんが、時系列でみるとやはり時間経過による高齢化が進行中であることと、まだ多いとはいえ男女キッズのファンが先細り、減少傾向にあるようです。

キッズのネット配信動画・アニメファンは、マンガファンを上回るまでに増加

そして、「インターネットで配信されるキャラクターの動画やアニメをよく見るほうである」という設問に対して「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人の割合を性・年齢別に時系列比較した結果が図表4です。

図表4. 性・年齢別:ネット配信動画・アニメ好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

性・年齢別:ネット配信動画・アニメ好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

男女3-74歳全体では、コロナ禍前後(2014~2018年平均vs2020~2023年平均)でネット配信動画・アニメ好意度は26.2%から31.5%と増加しています。

性・年齢別でみると、男女キッズの10ポイント以上を筆頭に、ほとんどの性・年齢で大幅なスコアアップを果たしており、コロナ禍によってデジタルシフトが加速した様子が明白です。

この激しいデジタルシフトによって、キッズでの好意度が高いコンテンツは、コロナ禍前の

  1. テレビアニメ
  2. アニメ映画
  3. マンガ
  4. ネット動画

から、コロナ禍後には

  1. テレビアニメ
  2. アニメ映画
  3. ネット動画
  4. マンガ

に順番が変動しています。ネット動画の勢いがどこまで伸びるのか、今後も要注目です。

キャラクターファンは男子ティーンで大幅増加、ミドル・シニアでも増加

最後に、「キャラクターが好きなほうである」という設問に対して「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人の割合を性・年齢別に時系列比較した結果が図表5です。

図表5. 性・年齢別:キャラクター好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

性・年齢別:キャラクター好意度・時系列比較 (2014年~2023年)

男女3-74歳全体では、コロナ禍前後(2014~2018年平均vs2020~2023年平均)ともに5割半ばで推移しており、ほぼ違いはみられません。

性・年齢別でみると、男子ティーンの大幅なスコアアップが目立ち、男女ミドル(35-49歳)と女性シニア(50-74歳)でもスコアアップしています。

男女キッズでキャラクターファンが特に多い傾向はコロナ禍前後で変わりませんが、時系列でみると男女ミドルの増加は頷けるとして、男子ティーンの増加が顕著な点について、これがどのような要因によるものなのか、現在実査中の「キャラクター定量調査2024」の結果を踏まえながら、分析を進めていきます。

今回は以上です。次回からは「キャラクター定量調査2024」の結果を報告していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

<第2部 バックナンバー>
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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