2024.03.06
急成長するビジネス映像メディア「PIVOT」コンテンツマーケティング成功の秘訣「オリジナルコンテンツのノウハウのすべてをスポンサードコンテンツづくりにつぎ込む」
ビジネスパーソンの学びに特化した映像メディア「PIVOT」。自社アプリおよびYouTubeで、多様なコンテンツを日々配信している。そんなPIVOTのビジネスの要となっているのが、企業とのタイアップ広告=「スポンサードコンテンツ」。スタートアップから大手企業まで依頼が絶えないという。なぜ人気なのか。同社ビジネスプロデューサー・藤本浩次氏に、制作の裏側、クライアントから評価されるポイントについて、「コンテンツマーケティング成功の軌跡」を聞いた。
PIVOTとは......
2022年3月よりリリースを開始した、「ビジネス」と「学び」に特化した映像メディア。最前線で活躍する起業家、ビジネスパーソン、クリエイターなどが登場し、話題のトピックや仕事で活きるスキルなど、多様な学びが得られるコンテンツを日々無料で配信している。ユーザーの約7割が44歳以下であることも大きな特徴。2023年9月にYouTubeチャンネルの登録者数が100万人を突破、2024年2月にアプリをリニューアル。
お聞きしたのは... 藤本浩次さん PIVOT株式会社 ビジネスプロデューサー
WEBサイト制作会社にて、小売事業者を中心にECサイトの運用コンサル業務を行い、メディアレップであるCCIへ入社。媒体社に向き合う部署にて広告営業や広告商品企画等をおこなった後、ビジネス開発部門に異動し、媒体社のデータ基盤開発、コンテンツ投資、合弁会社立ち上げなど、色々な角度で媒体社のビジネス支援を経験。2022年8月よりPIVOTへ参画。
出稿ますます増加中! PIVOTのスポンサードコンテンツ
――PIVOTが手掛けるスポンサードコンテンツについて教えてください。
藤本 PIVOTではオリジナルコンテンツのほかに、スポンサードコンテンツ(タイアップ広告)の制作を行っています。毎日3本の動画をアップしていますが、企業からの引き合いが多く、スポンサードコンテンツの割合も徐々に高まっている状態です。
うちのスポンサードコンテンツの特徴は、オリジナルコンテンツと同じフォーマットで制作しているところでしょうか。広告ラインナップはいくつかあり、クライアント企業がフォーカスしたい内容によって使い分けていただいています。
〈PIVOTメディアガイドより〉スポンサードコンテンツの番組ラインナップの一部。
人と企業にフォーカスするなら、企業トップインタビューの「&questions」、テーマの深堀なら有識者を招いてディスカッションする「&ISSUE」、サービス、プロダクトの紹介なら対談形式の「PIVOT SESSION」......と多様なフォーマットをご準備しています。
――どのような企業から依頼がくるのでしょうか?
スタートアップから大企業まであるなか、BtoB企業からの依頼が圧倒的多数を占めます。キャリア系、教育系、投資系といったかたちのないものを販売する企業や、世論喚起を目的とする組織などからの依頼は、動画との相性が良いからか、特に多いですね。当初はスタートアップのクライアントが大半でしたが、最近では大企業からの引き合いが急増中です。
また「自社イベントをプロデュースしてほしい」というケースも多くなりました。イベントに登壇する有識者をアサインし自社MCを立て、イベントを行い、後日アーカイブとして配信しています。自社の考えを広く伝えたいという思いを持たれ、そのイベントをコンテンツとしても残したいと考えられている企業が増えてきていると感じています。
〈PIVOT メディアガイドより〉様々な企業が出稿するなか、特にBtoB企業が多いことがわかる。
公開後、5日で300件の問い合わせがあった企業も!
スポンサードコンテンツのすごい効果
――これまで特に反響が大きかったスポンサードコンテンツの例を教えてください。
藤本 BtoB向けにセールス支援事業を展開するCross Border (現・Sales Marker)さんの動画は、成功事例の一つです。こちらの企業では、「インテントセールス」の支援をするサービス「Sales Marker」を提供されています。「インテントセールス」とは、各企業がどのようなニーズをもち、どのようなサービスを導入しようとしているのかという「インテントデータ(興味関心データ)」を分析し、クライアントのサービスを欲するだろう企業だけに効率よくアプローチする営業手法です。海外で増えている新時代のセールス手法で、国内でも注目され始めています。
動画は、当社CEO佐々木紀彦から代表取締役社長の小笠原羽恭氏へのインタビュー形式で制作。多くの企業が抱えている新規顧客開拓の課題感や「新時代の営業」とも言える「インテントセールス」について解説していただきながら、CrossBorderさんのサービスについても紹介という内容になっています。
〈YouTube PIVOTチャンネルより〉第1弾では、小笠原氏が「インテントセールス」について解説しつつ、自社サービスを紹介。
藤本 反響は大きく、公開後5日間で約300件の問い合わせが企業にあったそうです。サービスが魅力的でユニークなことに加えて、サービス自体、動画との相性が良かったのだと思います。結果、第2弾も発注いただけました。
〈YouTube PIVOTチャンネルより〉第2弾はでは、小笠原氏とセレブリックスのカンパニーCMO今井晶也氏が「セールスDXの現在地」をテーマにディスカッション。
――BtoC向けの動画で反響があった事例はありますか?
藤本 パーソルキャリアさんの動画は、2023年4~5月にかけて公開されから長く視聴されています。各業界のプロからスキルセットを学ぶ「SKILL SET」シリーズのキャリア版として全5本を制作。パーソルキャリアさんから、転職・副業・リスキリングなどの潮流や、「キャリアオーナーシップ」の考え方を解説していただき、プロデューサー・国山ハセンが学ぶという内容となっています。
〈YouTube PIVOTチャンネルより〉全5回の動画を通して、パーソルキャリアの専門家たちからキャリアについて深く学ぶことができる。
藤本 テーマは「副業で300万稼ぐ3要素」や「40歳以上=ミドル層の転職事情」など。PIVOTのメインターゲットである30~40代のビジネスパーソンの興味関心とうまくマッチしていたからこそ、公開後も長く視聴されていると考えられます。
――番組MCを担当されているのもCEO佐々木さんやプロデューサーの国山さんなどが多いですね。
藤本 佐々木や国山といったPIVOT社内のMCを起用しているところもスポンサードコンテンツの特徴です。オリジナルコンテンツと同じかたちでユーザーに届けることを意識しています。
オリジナルで培ったノウハウをスポンサードコンテンツに活用
――Sales Markerさんやパーソルキャリアさんのような、効果的なスポンサードコンテンツをつくることができるのはなぜだとお考えですか。PIVOTならではの強みを教えてください。
藤本 大きな強みは、オリジナルコンテンツで培ったノウハウを活かしてスポンサードコンテンツを制作できているところです。現在30人ほどの組織ということもあり、オリジナルコンテンツもスポンサードコンテンツも同様のチームでシームレスに制作しています。
スポンサードコンテンツの制作は、広告会社から「○○社のこの事業をアピールしたい」というような依頼をいただいてスタートすることが多いです。そこから、制作チームでテーマや切り口について話し合ったのち、クライアントに向け具体的な提案をしていきます。最初のアイデア出しの場として社内で企画会議が週2回行わていますが、そこにCEOの佐々木やCOOの木野下らも参加しているんです。
佐々木は日々オリジナルコンテンツの中で番組MCを担当するなどして制作に携わりながら、さまざまな知見を得ています。そのため企画会議でも「このテーマならこの切り口が良いのでは」「この分野ならこの人をアサインできそう」といったアイデアを出してくれます。私もビジネスプロデューサーとしてクライアント企業との窓口を担当しながら、企画・制作に携わっていますが、こうした制作現場の最前線にいるメンバーたちから「最初のアイデア」をもらえることはとても心強く思います。
――とはいえ、スポンサードコンテンツで「企業の伝えたいこと」と「コンテンツとしての面白さ」を両立させるのは難しそうです。どのような工夫をされていますか?
藤本 マネタイズのことを考えるとクライアントの方を向きがちになりますが、やはり大切なのは「ユーザーが知りたいことは何か」をとことん考えることだと思います。特に今のPIVOTはYouTubeが主戦場ですが、YouTubeの視聴者は「PIVOTチャンネルだからを見よう」という人ばかりではありません。僕たちの動画はたくさんあるコンテンツのうちの一つなので、まずは見てもらわなければ始まらないんです。
ユーザーが知りたいことを導き出すために必要なのは、クライアントがターゲットとする人たちの視点に立ち、どんなことに関心を持ち、どんな課題を抱えているのかを考えること。それをクライアント企業が伝えたいことと結び付けて制作しています。効果の検証も重要ですが、とくにサムネイルのクリック率には注目します。動画の内容を簡潔に表現しつつユーザーの興味をそそるキャッチコピーなどを、過去のデータも参照しながら皆で考える「サムネ会議」も開いています。
オリジナルコンテンツを日々配信すれば「ユーザーが知りたいこと」に関する知見やデータはたまっていきますので、反響が良かったテーマや切り口をクライアントに提案することもあります。PIVOTユーザーは、自己投資と同等に子どもの教育への意識も高く、「EDUCATION SKILL SET」の「自己肯定感の育て方」をテーマがヒットしています。同時に、教育系の動画は女性の視聴者が多いのも特徴。こうしたデータを提示できるからこそ、教育系のクライアントに対して「こんな番組をやりませんか?」と説得力をもった提案をすることができています。
〈YouTube PIVOTチャンネルより〉「自己肯定感を下げない叱り方」をテーマとした動画はYouTubeでの再生回数が97万回を超えた。教育系は、人気ジャンルの一つとなっている。
スポンサードコンテンツはストック型
長期にわたる閲覧・再生でクライアント企業の資産に
――そのほかのPIVOTスポンサードコンテンツの特徴はありますか?
藤本 スポンサードコンテンツがストック型であることでしょうか。YouTubeのおすすめ表示が優位に働くことで、一度つくったスポンサードコンテンツをPIVOTチャンネルに置いておけば、YouTube内でずっとプロモーションがかかるということになります。これもPIVOTのスポンサードコンテンツの価値だと考えています。すぐに結果が出なかったとしても「今回の反省を活かして別のアプローチで動画をつくりたい」と再度ご依頼いただけることもよくあります。
――タイアップ広告では「プロに任せる」というスタンスの企業も多いかと思います。PIVOTのクライアント企業さんは、一緒にコンテンツをつくりたいというところも多いのですね。
藤本 ご依頼いただく企業の多くがPIVOTのファンでコンテンツをよく見てくださっています。そのため制作するコンテンツに対して「こういうふうにしたい」という要望が強かったり、「自分が出演したい」と言われたりすることもあります。PIVOTでは営業担当も企画から制作進行までコンテンツづくりに携わるので、「一緒にコンテンツをつくりたい」という思いを持った企業を積極的に巻き込みながら、ともに制作することができていると思います。
YouTubeで登録者数100万人を突破
今後はよりロイヤリティの高いユーザー獲得へ
――最後に、PIVOTのこれからの目標を教えてください。
藤本 今後は、よりロイヤリティの高いユーザーを増やしていくためにアプリとウェブを強化していきます。2022年3月のスタート時は動画と記事の両方を配信していました。その後、記事よりも動画のほうが多く見られていることがわかり、2023年1月頃から映像主軸のメディアにシフトしました。また当初はアプリとウェブで配信していましたが、ユーザー獲得のためYouTubeで動画をフルオープンしたところ、これがが功を奏してチャンネル登録者数が一気に増え、現在は100万人を超えています。
そして、2024年2月、アプリとウェブをリニューアルしました。ひとつ違ったフェーズに入ったと感じています。よりロイヤリティの高いユーザーを獲得していくためのマーケティング施策やコンテンツ制作について、チーム皆で考えていきたいと思っています。
撮影/村田克己 取材・文/土居りさ子(Playce) 編集・コーティネート/川崎耕司(C-station)
川崎耕司 シニアエディター・コーディネーター
C-stationコンテンツ責任者。C-stationグループの、広告会社・広告主向け情報サイト「AD STATION」担当。