2023.12.11

【ミライトーク02】出版広告3.0 VOCEに見るパートナーとの共創により生み出される新たな価値とは? ── 講談社メディアカンファレンス 2023

講談社メディアカンファレンス 2023で参加者向けに限定公開された、メディアと広告の現在とミライを読み解くプログラム「ミライトーク」。そのレポートをお届けします。ミライトーク02では、「出版広告3.0 VOCEに見るパートナーとの共創により生み出される新たな価値」をテーマに、パネルディスカッションが展開されました

(左から)株式会社宣伝会議 出版・編集 取締役 月刊『宣伝会議』編集長 谷口優さん、
株式会社アイスタイル ブランド体験ユニット ブランドコミュニケーション推進本部 本部長 秋山 透さん、
講談社 VOCEウェブサイト編集長 三好さやか

「講談社メディアカンファンレンス 2023」は、本プログラムを含め、現在アーカイブ動画を期間限定で公開中です。
動画の詳細・視聴申し込みは、こちらからご覧ください。

「メディアアワード2023」を受賞したVOCEの強さ

株式会社宣伝会議 出版・編集 取締役 月刊『宣伝会議』編集長 谷口優(以下、谷口)
本日は、VOCEウェブサイト編集長 三好さやかさんと、「メディアアワード2023」を受賞されたVOCEさんの企画に関わっている秋山さんにご登壇いただいて、共創により生み出される新たな価値についてお話を伺ってまいります。

「メディアアワード2023」を受賞したVOCEさんの企画は、カスタマージャーニーが多様化しているなかでも機能するマーケティング施策でした。そこで、本セッションでは「コスメ」をテーマに、多様化するカスタマージャーニーにどう対応していけばよいのかを語り合いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

講談社 VOCEウェブサイト編集長 三好さやか(以下、三好)
VOCEウェブサイト編集長の三好さやかです。本日はよろしくお願いいたします。

今回「メディアアワード2023」を受賞した「VOCE」の企画は、「VOCE」と@cosmeさん、そして美容家の石井美保さんとのコラボレーションによる「美肌フェス」です。誌面はもちろん、ウェブサイト、SNS、ライブコマース、そして読者をご招待したリアルイベントを@cosmeさんで行い、@cosmeの店頭でも展開するというかなり立体的な企画を展開しました。

メディアアワード2023を受賞した、雑誌×ウェブ×リアルでつくる360°美肌応援プロジェクト「美肌フェス」 詳細はこちら

この企画で、クラランスさま、コーセーさま、大正製薬さま、日本ロレアルさまの4社に加えて、アイスタイルさまがパートナーシップ賞を受賞されました。

VOCEは「360°美容メディア」として立体的なプラットフォーム展開をすることを目指しています。自社メディアのみならず、さまざまなパートナーさまとのコラボレーションも積極的に行っています。

今回@cosmeさんでご一緒したアイスタイルさんとは、どちらも2000年にウェブサイトができたということで、ウェブサイトオープン20周年となる2020年に一度コラボレーションをさせていただきました。そこからご縁をいただき、今回のような広告企画もご一緒させていただくようになりました。

アイスタイル社との出会い、共創のきっかけを語る、三好


「共創」によって実現した、効果の最大化

株式会社アイスタイル ブランド体験ユニット ブランドコミュニケーション推進本部 本部長 秋山 透(以下、秋山)
ここ3年くらいずっとご一緒していますよね。VOCEさんには商品価値を高める編集力と、コンテンツへの信頼度の高さ、説得力があります。それは生活者の評判の集合値である@cosmeのクチコミとは異なる価値だと感じております。

弊社の生活者調査では、化粧品購入者はさまざまなメディアで取り上げられていることが重要だと考えているという回答が多いので、そういう点でも今回のように複数のメディアがコラボし、かつ信頼性の高い美容家の石井美保さんとも共創したというのは、非常に効率的かつ効果の高い企画だったと思っています。

谷口 読者を招待したリアルイベントは、かなりのプラチナチケットだったとお聞きしました。

三好 はい。石井美保さんという人気の高い美容家さんの効果もあると思いますが、ちょうどコロナ禍が明けてリアルイベントが増えた時期でもあり、「目の前で手に取ってさわる」という美容本来の味わいを求める方が多かった印象です。

「360°美容メディア」として、多様化するカスタマージャーニーに対応

谷口 先ほど三好さんは「360°美容メディア」と表現されました。コスメは情報接点も購買接点もオフラインからオンラインに広がり、カスタマージャーニーも複雑化しているのではないかと思います。

そういう点では、今回の施策は認知から商品理解、購買まで、一気通貫にできたところが評価のポイントでもあると思います。実際コスメ業界では、カスタマージャーニーはどのように複雑化しているのでしょうか。コスメ購入のカスタマージャーニーの変化についてお考えをお聞かせいただけますか?

三好 数年前までは私たちも「アテンションから購買に至るまで」というカスタマージャーニーを描いてご提案していました。

でもいまは、ユーザーや読者が、いつどこで情報にふれるかというタッチポイントが多様化してきて、「これが正解」というカスタマージャーニーが描けなくなりました。どの気分でどのプラットフォームで何をしようとしているのかという気分ごとに施策やストーリーが必要になっていると感じます。

谷口 コンテンツのデリバリー先が無数に広がるので、編集者のお仕事は大変ですね。

三好 そうなんです。ひとつのコンテンツを流用できないので、いろいろなプラットフォームを育てています。

購入はゴールではなく、使用プロセスのひとつ

秋山 私は「購入はゴールではなく使用プロセスのひとつ」とよくお伝えしています。コスメは消費財のなかでも、心理的にも物理的にも非常に複雑なプロセスが介在しています。使ってはじめて価値の自覚が生まれ、その後のリピート購入やファンにつながると考えています。

「購入はゴールではない」と語る秋山さん

三好 まさにおっしゃる通りです。ビューティーは「手に入れたら終わり」ではありません。長く使い続けることで効果が出るものや、使い方が複雑なものもあるので、いろいろなストーリーを見せていくことが大事だと思っています。

コンテンツメーカーである我々出版社の場合は、製品のストーリーを作り、エンタメ力を持ってそれを届けることが役割だと思っています。

ビューティーはある意味すごく真面目で、スキンケア商品の発表会は化学の授業のようでもあります。それだけ真面目な商材をどう楽しく感じさせ、いかに手に取るきっかけを生み出すか。そこはまさにストーリー作りとエンタメが重要なので、さまざまなSNSで展開をしています。

谷口 詳しい含有成分を知りたいコアなファンがいれば、エンタメ情報として人気の商品や売れ筋のコスメを知りたいという人もいるということですよね。

三好 そうですね。特に化粧水や美容液などのスキンケア商材は、ぱっと見では違いがわかりません。悩みのある方に製品情報を正しくお伝えするときに、お金を払って雑誌を買ってくださるような読者は、化学式のような成分表示が並んでいてもしっかり読み込んでくれますが、無料で閲覧できるウェブサイトやSNSではエンタメ性がないとすぐに離れられてしまいます。

顧客とのタッチポイントを広げる、VOCEのチカラ

秋山 先ほど、購入は価値の自覚をしていただくためのきっかけの場とお話させていただきました。今回のコラボでVOCEさんならではのコンテンツ力、編集力によって、間違いなく価値の自覚を最大化できると感じました。また、VOCEならではの情報の信頼性や納得性は、ブランド体験の場として顧客とのタッチポイントを広げるのにとても有効だと感じました。

谷口 ちなみに今回は、両社にどのような課題があってコラボレーションすることになったのでしょうか。

三好 最近は、編集企画でもご一緒させていただいているので、そこからの流れで、というパターンが増えましたが、最初の頃は「競合なのにいいんですか」と驚かれましたよね。

我々コンテンツメーカーができることと、店舗もECサイトもメディアももっているアイスタイルさんができることは、違います。そして美容好きさんの求めるものも、美容好きさんの数だけあるので、競合でなく「共創」しましょうとお話をして、ご一緒することになりました。

秋山 当社はメディアもやりながらECも店舗も展開しているので、VOCEさんの出版社ならではの編集力に期待をして取り組みをさせていただきました。

三好 私たちは店舗を持っていませんので、お互いが持っているものをちょうどパズルのようにはめて補完できる関係性だったなと思います。たくさんのメーカーさんにも協賛いただき、非常に喜ばれました。来春もまたやりたいなと思っているので、ぜひまたよろしくお願いいたします。

読者目線で、正しく届ける

谷口 さらにパワーアップした企画が出てきそうですね。ちなみにおふたりはクライアントさんとお話されることも多いと思いますが、クライアントさんのなかでカスタマージャーニーの多様化について、よく聞く課題などはありますか?

秋山 ここ数年の変化としては情報流通の構造が変わっているとよくお聞きします。SNSの台頭なども含め、自社のブランドをどう伝えればいいかというところでお困りのメーカーさんが多い印象です。

谷口 情報量が増えすぎたことで、本当に届けたい情報が届いてほしい相手に届かないということですね。

三好 「自分たちで届けているけれど届かない」「届けたい相手に届かない」というお悩みは、私もよく伺います。その場合は、メディアのアカウントを使って発信していただいたり、私たちがタイアップでお伝えしたりしています。

それから、メーカーさんが自社の強みだと思っていることの発信が購買につながらないケースもあります。「売るためには、こちらを打ち出したほうがいいのに」と思うのに、ミスマッチの発信をしている。そういうご相談が最近はとても増えました。

谷口 読者目線で見たときにもっと魅力的なポイントを、エンタメとしてつくっているということですね。

三好 企業として伝えなくてはいけないメッセージは大事にしつつ、編集部内で何が読者に刺さるのかを話し合い、ご提案しています。

秋山 化粧品メーカーやブランドさんが、こう使ってほしい、こういう人に使ってほしいということがちゃんと伝わっていないというのは、弊社の@cosmeのクチコミからも感じます。化粧品は、正しい使い方もそうですが、使ってほしい人に使ってもらわないと効果が半減します。ですから、「正しく伝える」ということがほかの業種より、より重要なのではないかと思います。

成功のポイントは、読者の熱量×リーチ力

谷口 一般的にいうと、同じ顧客層を対象にしているアイスタイルさんとVOCEさんは「競合」ですが、なぜこんなにうまく共創ができているのでしょうか。今回はさらに、石井美保さんやメーカー4社さんなど、ファンを基盤としてプラットフォームができていますが、成功のポイントを教えてください。

本プログラムのモデレーターを務めた、谷口さん

三好 VOCEと@cosmeさんが一緒にやることで、それぞれのファン・読者の信頼度が増していると感じています。さらに、コラボレーションすることによってそれぞれから得られる情報の種類も増えているので、お客さまや読者もプラスに感じてくださっているのだと思います。

ビューティーに関しては、YouTubeなどSNSでも発信をされている方もたくさんいらっしゃいますが、そうなればなるほど、何が本当に信頼できるのか迷っている方も多くなっていると思います。そこをちゃんと伝えるのが私たちの使命でもあると思っています。

秋山 アイスタイルはメディアも実店舗もECサイトもあり、さまざまな顧客接点を持っていますが、特に店舗の顧客接点は、出会い頭的な演出を我々は工夫して創っている。今回のようなコラボレーションで、VOCE読者の"濃い美容好きさん"というエッセンスを店舗やメディアなどに展開していくことで、当社にとっても、もちろんVOCEさんにとっても、コスメブランドにとっても、新しい顧客との接点やコスメとの出会いが演出できたと考えています。

谷口 雑誌由来のブランドのファンの熱量の高さと、@cosmeさんの広いリーチ力を重ねたことが今回の施策の成功ポイントということですね。

秋山 コロナ禍でリアル店舗はここ数年苦しい状況にありましたので、今回、「パートナーシップ賞」を受賞させていただき、大変光栄です。店舗を盛り上げる企画は、我々としても大いに参考になりました。

三好 リアルの力を感じましたね。目の前でコスメを提供して購入いただくきっかけのひとつがつくれたのはよかったと思いました。

谷口 オンラインもいいですが、コロナ禍で失われていた分、リアルでコスメを買うところに楽しみを見いだされた方も多かったということですね。

三好 雑誌や店舗、ウェブは、読者やお客さまに、新しいブランドとの出合いをお届けできますので、引き続き、ここは盛り上げていきたいですね。

「VOCEアンバサダー」を活用し、マーケティング課題を解決

谷口 読者のインサイトを探るというところでもVOCEさんはさまざまなお取り組みをされています。三好さん、ご紹介いただけますか?

三好 はい。企業のみなさまがどういうふうにプロモーションしていいかわからないというご相談があると先ほど申し上げました。そのソリューションのひとつとして、いま私たちがいちばん力を入れているのが「VOCEアンバサダー」という269名いるコスメオタク・オブ・オタクと呼ぶべき、濃度の高い読者さんたちです。最近では「VOCEアンバサダー」の視点を活かし、各メーカーのマーケティングやソリューションの提案も行っています。実際に、企業さまの会議に参加して商品のプロモーション方法を提案したり、製品を試して人にすすめたいかどうかを率直に意見したりするケースもありました。

「VOCEアンバサダー」を紹介する三好(右)

谷口 今春行った調査の結果を見ても、「VOCEアンバサダー」の熱量の高さがわかります。「美容の情報・知識を人に教えたい」割合が98%。驚異的な高さですので、コスメ以外のマーケティング施策でも起用できそうですね。

三好 まさにおっしゃる通りです。美容好きが関わる商材は、実はコスメだけに限りません。私たちは美容を広い範囲で定義しています。化粧品はもちろん、サプリメントのようなインナービューティーや、ヨーグルト、水、プロテインなど口に入れるものや、ライフスタイルまわりの香りなども含まれます。

ほかにも「VOCEウェブサイト」ではフェムテックの連載もしていて、多くの方に読まれています。また「VOCEウェブサイト」初のメンズ美容コミックス『僕はメイクしてみることにした』も好評です。

ミライの出版広告の可能性

谷口 今回のコラボレ-ションは、出版広告の枠に収まらない企画だったと思います。あらためてミライの出版広告の可能性について、お考えをお聞かせください。

三好 私たちはいままでも、「読者大アンケート」みたいなことはやってきましたが、あくまでも自前の読者を分解しているだけでした。しかし、今春実施した一般女性と比較してデータ化した「VOCE白書2023」の調査では、美容業界、美容好きの見えない実態が深掘りできました。美容好きのなかでもいろいろな層がいることが可視化できたので、一概に「美容好き」といってもいろいろなアプローチがあるということを、より説得力を持ってお伝えしていきたいと思っています。

秋山 セグメントすることでわかりやすくなりますし、細分化することでマーケティングの精度も上がってくると思うので、すごくいいと思います。

今回のコラボレーションでは、お互いの弱みを補完するのではなく、お互いの強みをさらに増すことができました。ブランド、生活者にとっても有意義な企画になりましたので、またぜひ続けていけたらと思います。

谷口 強いメディア同士のコラボが、お客さまにも幸せなミライを生み出していくのですね。今日はありがとうございました。


【講談社メデイアカンファレンス 2023 ミライトーク02】
出版広告3.0 VOCEに見るパートナーとの共創により生み出される新たな価値とは?

登壇者:
・秋⼭ 透/株式会社アイスタイル ブランド体験ユニットブランドコミュニケーション推進本部 本部⻑
・三好 さやか/講談社 VOCEウェブサイト編集長
・谷口 優(モデレーター)/株式会社宣伝会議 出版・編集 取締役 ⽉刊『宣伝会議』編集長

「講談社メディアカンファンレンス 2023」は、本プログラムを含め、現在アーカイブ動画を期間限定で公開中です。
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