2023.11.21

地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

11月19日に関東学院大学の横浜・関内キャンパスで開催された日本広告学会第54回全国大会で、「ご当地キャラ好意度と地域魅力度の関係を探る」を報告しました。ここで内容のポイントとなった仮説は以下の2つです。

  • 地域魅力度は、その地域への訪問経験や居住・宿泊経験によって高まる
  • ご当地キャラへの好意が地域魅力度に及ぼす影響は、一部の県に限られる

ちなみに一部の県とは、熊本県、千葉県、滋賀県、群馬県、愛媛県などのことです。
以上の仮説を検証し、群馬県が制作したアニメ「ぐんまちゃん」により、群馬県民以外の群馬県魅力度向上と、群馬県民の地元愛着度のさらなる向上にそれぞれ貢献したことを示しました。地域活性化は他人事でない課題ですし、ゆるキャラブームが残したことを示すべく、引き続き分析していきます。

前回は、居住地域とキャラクターやマンガへの好意度や接触状況に関する、以下の分析結果をご紹介しました。

  • 大都市圏以外の地域で、キャラクターやマンガへの好意度が高い
  • 店頭におけるキャラクターとの接触も、大都市圏以外の地域で多い
  • マンガ系ファンは、南日本および東京で多く存在する

今回も、地域魅力度ランキングについて、全国一律に評価が高い県、周辺県では魅力度が高い県を整理して、それらの県にいかなる違いがあるのか、キャラクターやマンガに対する意識や行動と地域魅力度の間に関係があるのか、定量調査データを用いて探っていきます。

地域魅力度ランキングのトップは北海道で、沖縄県、京都府、東京都と続く

北海道のイメージ写真

まず、2023年2月実施の男女3-74歳を対象とした「キャラクター定量調査2023」結果を用いて地域魅力度ランキングを算出しました(図表1)。

表中の点数は、ブランド総合研究所が実施している「地域ブランド調査」と同じく、都道府県の魅力度について「とても魅力的」100点、「やや魅力的」50点、「どちらでもない」「あまり魅力を感じない」「全く魅力的でない」0点で点数をつけ、加重平均した結果です。

図表1. 地域魅力度ランキング(日本全国:男女3-74才全体)

地域魅力度ランキング(日本全国:男女3-74才全体)

結果は男女20-79歳が対象の「地域ブランド調査」で算出された地域魅力度ランキングとほぼ同じ(単相関係数※ 0.970)で、北海道が2位以降に大差をつけた78.6点で1位、2位の沖縄県、3位の京都府、4位の東京都がともに65点台の僅差で並んでいます。40点未満が26県で、最下位は唯一20点台の茨城県でした。筆者の出身地の栃木県は42位、現在住んでいる福井県は38位と、下位に沈んでいます。

ちなみに、この「地域魅力度」という指標は、訪問経験との単相関係数が0.768、居住・宿泊経験との単相関係数が0.855で、行ったことや住んだことがある地域とほぼ同じ意味を持つことが、今回分析で明らかになっています。

※2つの変量の相関関係の程度を示す数値。-1から1までの値で1に近いほど正の相関関係、-1に近いほど負の相関関係が強く、0に近いほど相関関係が弱い。

各地域共通して、観光や仕事などでの訪問経験がない県が魅力度下位に

続いて、前回分類した12箇所の居住地域別に地域魅力度ランキングを算出しました(図表2)。

図表2. 居住地域別:地域魅力度ランキング(男女3-74才全体)

居住地域別:地域魅力度ランキング(男女3-74才全体)

居住地域別:地域魅力度ランキング2(男女3-74才全体)

居住地域別:地域魅力度ランキング3(男女3-74才全体)

どの地域もトップは北海道ですが、2位以降の顔触れは地域によって異なります。
東北は宮城県が5位、北関東は群馬県が9位、南関東は神奈川県が4位、甲信越静は静岡県が8位、東海は愛知県と三重県が9位、北陸は石川県が8位、近畿は京都府と大阪府が3位、中国・四国は広島県が9位、北部九州は福岡県が2位、南九州・沖縄は熊本県が3位など、各地域とも地元県の魅力度が他地域と比べて高めになっている点は共通します。

各地域にとって観光や仕事などで行き来する機会が少ない馴染みのない県が、総じて低い点数にとどまっているようです。「地域ブランド調査」の地域魅力度ランキングで毎年なにかと話題になる北関東3県ですが、観光や仕事などで行き来する機会が多いと思われる北関東および東北では、魅力度が決して低くないことがわかります。

地元への愛着は南九州・沖縄、北海道。北関東で高く、中部エリアで低い

居住地域別に、地元への愛着度を比較してみました(図表3)。「自分が今住んでいる地域に愛着がある」との質問に対して、「かなり当てはまる」と答えた人が最も多かったのは南九州・沖縄、次いで北海道です。「まあ当てはまる」を加えると、北関東がもっとも多いことがわかります。

図表3:居住地域別:地域愛着度
居住地域ごとの地域魅力度で、47都道府県を6つのクラスターに分類

居住地域別:地域愛着度

一方、甲信越静、東海、北陸などの中部エリアは、相対的に地元への愛着度が低めです。名古屋でローカルプライド(シビックプライド)が低く、自虐傾向にあることは各所で聞きますが、周辺エリア一帯も同様の傾向にあるようです。

最後に居住地域別の地域魅力度を用いて階層クラスター分析を実施したところ、6つのクラスターが抽出されました(図表4)。

図表4:居住地域別の地域魅力度による47都道府県の6階層クラスター

居住地域別の地域魅力度による47都道府県の6階層クラスター

  1. トップ観光地(北海道):魅力度78.6点
    北海道はすべての地域で魅力度トップで、1つだけ独立したクラスターとなっています。
  2. その他東日本(12県):魅力度36.1点
    東北6県、北関東(埼玉含む)4県、甲越2県で、魅力度は低めです。
  3. サード観光地(8県):魅力度46.8点
    地域はバラバラで、有名な観光地やレジャー施設があり、魅力度はやや高めです。
  4. セカンド観光地(大都市+沖縄):魅力度62.4点
    東京・大阪とその隣接県、福岡、沖縄で、魅力度は高めです。
  5. その他西日本(15県):魅力度35.9点
    中国・四国と北陸・東海エリアなどで、魅力度は低めです。
  6. の他九州(5県)魅力度
    42.6点九州5県で、魅力度は平均程度です。

東西の27県は、遠方からの魅力度評価が低いレベルにとどまる

なお、居住地域別に6階層クラスターの地域魅力度平均値を算出したところ(図表5)、①トップ観光地(北海道)と④セカンド観光地(大都市+沖縄)は、どの地域でも共通して高い魅力度を獲得しています。

図表5:居住地域別:6階層クラスターの地域魅力度平均値

6階層クラスターの地域魅力度平均値

一方、②その他東日本(12県)は近畿以西で、⑤その他西日本(15県)は東北、南九州・沖縄で魅力度が低いレベルにとどまっています。これら27県は、物理的な距離の遠さや訪問機会の少なさなどに起因して、全国的にアピールするのが困難である様子が窺えます。

今回は以上です。
次回は、今回試みた居住エリアや地域魅力度ランキングで分類された各都道府県をPRする際に、どんなキャラクターやタレントを使えば効果を発揮するのかについて紹介します。どうぞお楽しみに。

<第2部 バックナンバー>
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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