2023.10.19

地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

地域ブランド研究所が毎年発表している「地域魅力度ランキング」の2023年結果が、10月13日に発表されました。魅力度上位は北海道、京都府、沖縄県、東京都など変わらず、今回最下位だったのは茨城県でした。

自分の出身地の栃木県はかつて最下位になったことがあり、現在住んでいる福井県も毎年40位前後であることから、地域の魅力度とは果たしてどんな意味を持つのか、個人的に問題意識を持って分析を進めています。

得られた知見の一部を、11月19日に関東学院大学(横浜・関内キャンパス)で開催される日本広告学会第54回全国大会にて「ご当地キャラ好意度と地域魅力度の関係を探る」というタイトルで発表すべく、報告資料を現在作成中です。

前回は、想起キャラクタータイプ別に、どんな組み合わせが広告・キャンペーンなどの活用効果を発揮するのか、人気タレントとキャラクターの起用に関する検証材料とすべく、前々回に続き、定量データを用いて以下の分析結果をご紹介しました。

  • 好きなマンガキャラに対し誠実さや信頼、憧れを感じている「マンガ系ファン」
  • 「ファンシー系ファン」には人物+ファンシーキャラのコラボが有効
  • マンガキャラの魅力を熱く語れる「お笑い芸人」を使ったコラボも有効

今回からは、冒頭に記した問題意識に基づき、地域によるキャラクター・マンガ好意度および関連行動の違いについて分析してみます。

地域魅力度ランキングについても、全国一律に評価が高い県、地元および周辺県では魅力度が高い県を整理し、それらの県にいかなる違いがあるのか、さらにキャラクターやマンガに対する意識や行動と地域魅力度の間に関係があるのか、調査データを用いて探っていきます。

第17回イメージ画像

大都市圏以外の地域で、キャラクターやマンガへの好意度が高い

これまでと同様に2023年2月実施の「キャラクター定量調査2023」結果を用いて、まず調査対象者を居住地域別に分類しました。

本来であれば47都道府県別に結果を比較したいところですが、コストとの兼ね合いで調査対象者数が男女3-74歳。分析可能な最小限のレベルまで各地域を細分化したいので、関東は北関東、南関東、東京都に、九州は北と南にそれぞれ分割。中国・四国は1つにまとめ、最終的には以下のような分類となりました。

  1. 北海道
  2. 東北(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)
  3. 北関東(茨城県、栃木県、群馬県)
  4. 南関東(埼玉県、千葉県、神奈川県)
  5. 東京都
  6. 甲信越静(山梨県、長野県、新潟県、静岡県)
  7. 北陸(富山県、石川県、福井県)
  8. 東海(愛知県、岐阜県、三重県)
  9. 近畿(大阪府、京都府、滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県)
  10. 中国・四国(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県)
  11. 北部九州(福岡県、佐賀県、長崎県、大分県)
  12. 南九州・沖縄(熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)

図表1は、キャラクター全般およびマンガ全般について、「好きなほうである」との質問に対する4段階評価での居住地域別回答結果です。

図表1. 居住地域別:キャラクター全般およびマンガ全般への好意度

居住地域別:キャラクター全般およびマンガ全般への好意度居住地域別:キャラクター全般およびマンガ全般への好意度2

キャラクター全般の好意度は、「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」が日本全国男女3-74歳の55.3%で、北海道、北関東、甲信越静で高く、東北で低めになっています。マンガ全般は、「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」が日本全国男女3-74歳の43.6%で、甲信越静と南九州・沖縄で高く、近畿で低めになっています。キャラクターと比べて、マンガは地域による好意度の違いが小さいようです。

キャラクター・マンガともに、東京都、南関東、近畿、東海など東・名・阪大都市圏以外の地域、具体的には北海道や甲信越静、南九州・沖縄などで、好意度が高めになる点が共通しています。ただし、北陸のように、地方でありながらキャラクターやマンガの好意度が低い地域も存在します。

店頭におけるキャラクターとの接触も、大都市圏以外の地域で多い

続いて、キャラクターに関する日常接点のうち、地域による違いが比較的大きかったものを紹介します。
図表2は

  • コンビニ・スーパーのキャンペーン/飲料・食品などのおまけ・景品
  • デパートや駅ビル・ショッピングモールなどのキャラクター専門ショップ・売り場
  • Twitterやfacebook、InstagramなどのSNSサービス
  • キャラクターのカフェ・飲食店

の居住地域別回答結果です。

図表2:居住地域別:キャラクターに関する日常接点

【設問】
次にあげるものの中で、あなたがふだん、お好きなキャラクターや気になるキャラクターと接することが多いのはどれですか?

居住地域別:想起キャラ4クラスターの構成割合1

居住地域別:想起キャラ4クラスターの構成割合2

居住地域別:想起キャラ4クラスターの構成割合4

居住地域別:想起キャラ4クラスターの構成割合5

今もキャラクターコンテンツを普及させる上での重要な接点であり、最近はVtuberやスマホゲームキャラでも多く展開されている「コンビニ・スーパーのキャンペーン/飲料・食品などのおまけ・景品」は、北海道、東北、南九州・沖縄での接触が多く、南関東、中国・四国で少ないようです。
今や全国各地で設けられている「デパートや駅ビル・ショッピングモールなどのキャラクター専門ショップ・売り場」は、北海道、北部九州での接触が多く、北陸や南関東で少ないようです。

これら店頭での接触が南関東で少ないのは意外ですが、自分が住んでいた船橋などを例に考えると、あまりに多くのキャラクター関連のショップ・売り場やキャンペーンが展開されているため、それが常態化して反応が鈍くなっているのでは、と推察されます。なお、北陸については、福井県がイオンのない全国唯一の県であることも影響しての結果でしょう。

Twitterやfacebook、InstagramなどのSNSサービス」での接触は、南九州・沖縄、北海道に加えて東京都での接触が多く、東海、南関東で少ないようです。東京は"映えスポット"が多く、情報受発信がしやすい、紹介された店に訪問しやすい、などの環境にあることが理由として考えられます。これは、「キャラクターのカフェ・飲食店」で東京が突出して高いことからも想像できる結果です。

マンガ系ファンは、南日本および東京で多く存在する

今回分析の最後に、前回まで何度かご紹介した、純粋想起で回答したキャラクターのタイプで分類した想起キャラ4クラスターが地域別にどんな割合で存在するのかを見てみました。

図表3:居住地域別:想起キャラ4クラスターの構成割合

居住地域別:想起キャラ4クラスターの構成割合
マンガ系ファンは、中国・四国、九州全体(北部九州+南九州・沖縄)などの南日本に加えて、東京でも多く存在しています。一方、北関東や東海では比較的少ないようです。大型書店も多い東京でマンガ系ファンが多いのはなんとなく納得がいきますが、南日本で多い理由については、あらためて調べる必要がありそうです。

今回は以上です。
次回は、冒頭に書いた通り、地域魅力度ランキングで全国一律に評価が高い県、地元および周辺県では魅力度が高い県を整理して、それらの県にいかなる違いがあるのか、キャラクターやマンガに対する意識や行動と地域魅力度の間に関係があるのかを紹介します。どうぞお楽しみに。

<第2部 バックナンバー>
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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