2023.08.04

「きっかけは、『ドラゴンボール』。マンガ家になりたいと思った」マンガ家/KAT-TUN 中丸雄一 ── マンガから学んだことvol.11

さまざまな分野で活躍する人物から「マンガから学んだこと」を聞く連載。第11回は「月刊アフタヌーン」8月号でマンガ家デビューを果たしたKAT-TUN中丸雄一さんです。マンガ家を志した理由や影響を受けたマンガ、新連載『山田君のざわめく時間』について聞きました。

マンガ家になりたいという夢は、「人生でやり残したこと」

──22歳のときに、KAT-TUNとしてメジャーデビューを果たした中丸さん。そして今年、39歳にして「月刊アフタヌーン」でマンガ家デビューしました。いつから、マンガ家を目指すようになったのでしょうか?

中丸 子どもの頃から、マンガ家への憧れは抱いていました。中学時代には、「マンガの描き方」を教えてくれる本を読んで、実際にマンガを描いてみたこともあります。ですが、ストーリーを考え、さらに頭の中にあるイメージを、Gペンなど専門的な道具を使って、絵で表現することは想像以上に難しく、当時は挫折してしまいました。

その後、KAT-TUNとしてメジャーデビュー。仕事に没頭する日々を過ごしていました。しかし40歳を前にして、「人生でやり残したこと」を考えたときに、自分がマンガ家になりたかったことを思い出しました。また、絵を描くこと自体は続けていましたし、さまざまな経験を積んだことで、いまなら夢を叶えられるかもしれないと考えるようになりました。

──毎日お忙しいと思います。マンガを描くよりも休みたい、という気持ちには、ならないのでしょうか?

中丸 僕は、ワーカホリックなんです。家でゆっくりしていると罪悪感が生まれてしまうんですよね。芸能界の仕事は、プライベートで経験したことも仕事につながります。だからこそ、仕事がオフの日も「何をしたかが大切」という意識があります。

今回のマンガは、移動時間や空き時間を使って、描き進めました。僕としては、そこにやりがいを感じていましたし、自分の時間の使い方や仕事にとってもプラスに働いたと思っています。

『カメレオン』と『行け!稲中卓球部』から、ユーモアやセンスを学んだ

──当時は諦めてしまったものの、「マンガ家」に憧れた少年時代。影響を受けたマンガがあれば、教えてください。

中丸 中学時代は「週刊少年ジャンプ」を夢中で読んでいました。そのなかで自然と、友情や努力、勝利の大切さを学んだ気がします。少年時代に、さまざまなマンガに触れたことは、いまの自分の価値観や人格形成にも大きく影響していると思います。

具体的な作品を挙げるなら、『ドラゴンボール』。マンガ家に憧れたのも同作との出会いがきっかけです。ほかにも、同じく鳥山明先生の『Dr.スランプ』は、どのコマも、まるで一枚の絵のようで、そのおしゃれさに感動していました。発想もキャラクターもポップでかわいらしいのに、よく見るとものすごく細かく描き込まれている。全体像とディテールのギャップに惚れ惚れしてしまいました。

──中丸さん世代の中学時代といえば、友人同士で「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年マガジン」を回し読みするような時代だったと思います。講談社作品で影響を受けた作品があれば、教えてください。

中丸 そうですね。講談社さんの作品ですと、『カメレオン』が大好きでした。

小柄でケンカの弱い主人公が「ハッタリ」を武器にのし上がるヤンキーギャグマンガ。その設定もストーリーも魅力的で、子ども心に、ときには「ハッタリも大事なんだ」ということを学びました(笑)。

カメレオン(1)著:加瀬 あつし

それともうひとつ、『行け!稲中卓球部』も好きでした。さすがに(下ネタや過激すぎる表現が多いので)実生活で真似しようとは思わないですが、センスという部分は勉強になりました。他の作品もそうですが、僕はマンガから"目には見えない部分"、メンタリティや感性の部分で、多くの影響を受けた気がします。

行け!稲中卓球部(1) 著:古谷 実

──少年時代に読んだマンガの影響は、いまも大きいのですね。では、もしマンガに出会っていなかったら、中丸さんはどうなっていたと思いますか?

中丸 もっと感情が薄い人間になっていたかもしれません。マンガは、教科書では教えてくれないこと、感性や笑いのセンスなども学ぶことができます。こうして話をしていると、その影響力の大きさをあらためて実感できますね。

デビュー作『山田君のざわめく時間』を通じて、誰かを笑顔にしたい

中丸さんのマンガ家デビュー作『山田君のざわめく時間』

──マンガから多くの影響を受けた中丸さん。マンガ家デビュー作『山田君のざわめく時間』は、さまざまなことに内心がざわめいてしまう山田雄一(やまだ・おいち)くんが主人公です。漢字の読みは違うものの、中丸"雄一"さんと同じ名前ですね。何かつながりがあるのでしょうか?

中丸 全部が全部、自分をそのまま投影しているわけではないのですが、半分くらいは自分の感じたことが作品に反映されています。

たとえば、僕はお尻の筋肉が凝りやすいんですよ。顔見知りのマッサージ師さんなら気兼ねなくリクエストを出せるのですが、初めての方だと、ちょっと気を遣ってしまって、言いづらい。そういう日常の体験をマンガの中で誇張したり、表現したりしています。

読んでくださる方には、「ひょっとして実話なのかな」「本人もこう思っているのかな」と、想像しながら読んでもらえたらうれしいですね。

『山田君のざわめく時間』の第1話のタイトルは、「山田君、尻を揉んでほしくてざわめく」。中丸さんの体験が元になっている

──読者は『山田君のざわめく時間』を通して、新しいマンガ作品に、そして中丸さん自身の新たな一面にも出会うことができるのですね。

中丸 そうですね。一方で、アイドルは基本的に空想の世界。夢を売る職業です。リアリティとファンタジー、そのバランスは大切にしたいと思っています。

子どもの頃、地元で有名なタレントの方に遭遇して、とても感動した記憶があります。ですから自分自身も、「会えてうれしい」と思われるアイドルでありたいという思いもありますし、同時に浮世離れしすぎず、どこかで親しみを覚えてもらえる自分でありたいという気持ちもあります。そういう自分の思いも、マンガに反映できたらいいですね。

──中丸さんに対して、アイドルなのに、なぜか親近感を覚えてしまうという方は、多いと思います。そんな中丸さんの描いたマンガ作品だからこそ、多くの方が注目していると思います。

中丸 まずは、「中丸が描いているから」と読んでもらえることがうれしいですし、大変ありがたいです。一方で、マンガはひとつの作品として独立しており、作者があまり表に出てこない世界です。将来的には「この作者、知らないけど、読んでみようかな」と思ってもらえるような作品が描けるようになりたいですね。

──最後に。この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

中丸 自分が今日まで多くのマンガに触れ、さまざまなことを感じて、学び、夢を見たように、僕の作品を読んだ方にも何かを感じてもらい、笑顔になってもらえたらうれしいです。『山田君のざわめく時間』、ぜひ読んでみてください!

▼『山田君のざわめく時間』の詳細はこちら▼
https://afternoon.kodansha.co.jp/c/yamadakun/

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筆者プロフィール
C-station編集部

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