2023.06.16
純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】
新型コロナの自粛緩和で、どこも人出と活気が戻りつつあります。筆者が出向いた5月20日~21日の千葉県成田市「ご当地キャラ成田詣」、6月4日の大阪府吹田市「有明ガタゴロウ爆誕祭in大阪」にも多くのファンが各地から集まり、久々の再会とグリーティングを楽しんでいました。各イベント主役の「うなりくん」(成田市)は2010年誕生、「有明ガタゴロウ」(佐賀県有明海)は2012年誕生で、出自や立場は違えどもベテランの人気ご当地キャラで、両イベントに登場したご当地キャラ好きアイドル・寺嶋由芙さんとの縁が深い点も共通します。
コロナ禍の2020年以降は相次ぐイベント中止・延期で活動の場が限定され、特に有志で活動しているキャラは資金面の厳しさから活動継続が困難な中、「有明ガタゴロウ」や「みっけちゃん」(大阪府枚方市)、「大根ちゃま」「ちゃぱくん」(東京都大田区)たちが今回元気な姿を見せてくれたことには、心から感謝します。まだ警戒すべき状況と感じているからか、それとも周囲に気を遣ってのことか、室内会場でのファンのノーマスク姿はほとんどみられませんでしたが、今後が楽しみです。
前回から、今年2月に実施した「キャラクター定量調査2023」で得られたいくつかのトピックを紹介しています。まず、純粋想起による2023年キャラクター好意度ランキングのうち、「キャラクター全般」と「企業オリジナルキャラ」に関する以下の調査結果を紹介しました。
- 「スヌーピー」「ポケモン」「ドラえもん」が安定して高い支持を獲得
- 「ちいかわ」が大躍進、「ONE PIECE」「すみっコぐらし」も着実に上昇
- 「ちいかわ」は女子キッズ・ティーンと男女ヤング・ミドルから、「進撃の巨人」「転スラ」は男女ティーンから支持
- 企業キャラの上位は定番・古参キャラクターが中心
今回は、前回に続いて「キャラクター定量調査2023」(男女3~74歳1,150名対象、2月24日~3月1日実施)での純粋想起による2023年キャラクター好意度ランキングのうち、「ご当地キャラ」、そして比較検討対象として、「タレント・有名人」、「Vtuber」に関する結果を紹介します。
全国でのご当地キャラトップ3は不動の「くまモン」「ふなっしー」「ひこにゃん」
男女3-74歳全体でのご当地キャラ純粋想起トップは「くまモン[熊本県]」でした。2012年12月と2013年12月に1位、2014年12月と2015年12月は2位で、2015年12月以降は不動の1位、2位以下に大きく差をつけています。2位は「ふなっしー[千葉県船橋市]」。こちらは2013年12月に2位、2014年12月と2015年12月に1位、2017年2月以降はずっと2位です。3位は「ひこにゃん[滋賀県彦根市]」。調査を開始した2009年12月から2010年11月と2011年12月に1位、2012年12月に2位、2013年12月以降はずっと3位です。
ご当地キャラブームでテレビに出演し続けた「ふなっしー」が「くまモン」からトップを奪取した2014年~2015年に順位変動がありましたが、この上位3キャラは、いずれも変わらず上位を維持し続けています(図表1)。
図表1. 男女3-74歳全体:純粋想起による「好きなご当地キャラ・ゆるキャラ」ランキング
Q. あなたが好きな「ご当地キャラ」や「ゆるキャラ」は何ですか。好きな順に「3つ」までお書きください。
*「ご当地キャラ」 とは、その地域の自治体・官公庁・団体等の活動や、地域イベントへの注目度アップのために作られ、活用されているオリジナルキャラクターのことを指します。ご当地のヒーローなども含めてお答えください。
地元トップ支持の「ぐんまちゃん」「チーバくん」「みきゃん」など
2021年10月開始のテレビアニメ化で話題になった「ぐんまちゃん[群馬県]」が、放送前(2020年9月)の6位から4位にランクアップしている他は、この10年で上位陣の顔触れにほぼ変動がありません。ブームが落ち着いて久しい今、コアファン以外にも話題になるような施策や新たなキャラが出現しないと、全国レベルでは今後も大きな変化がみられないのでは、と推察されます。
「ぐんまちゃん」を使った地域ブランディングに積極的な群馬県は、4月4日に講談社からオリジナル絵本「ぐんまちゃん たぬきおんせんへゆく」を発売し、テレビアニメ「ぐんまちゃん」シーズン2も放送開始するなど、様々な展開を行っています。
回答サンプル数自体が10人未満で少ない県もあるため標本誤差に留意する必要がありますが、各キャラの地元都道府県に限定すると、トップ支持となっている"ローカルスター"も存在します。熊本県での「くまモン」や滋賀県での「ひこにゃん」、群馬県での「ぐんまちゃん」はもちろん、千葉県での「チーバくん」、愛媛県での「みきゃん」、島根県での「しまねっこ」、山口県での「ちょるる」など、各地でご当地キャラが今も地域の誇りとして愛されていることがわかります。
司会・MCなどのTV出演で幅広い支持を集めるお笑い芸人・男性アイドル
男女3-74歳全体でのタレント・有名人の純粋想起トップは「ダウンタウン」で、2位「SnowMan」、3位「King & Prince」と続きます。
お笑い芸人や男性アイドルなど、TVのバラエティなどにMCやゲストとして出演することの多い人やグループが、幅広い層の支持を集めています。また、人気TVドラマに出演する俳優たちや、K-POPの歌手たちも、数多く支持されています。
ただ、上位陣のスコア差は総じて少ないことから、消費者の好みが分散して、日本を代表するタレントが多岐にわたっている様子も窺えます(図表2)。
図表2. 男女3-74才全体:純粋想起による「好きなタレント・有名人」ランキング
Q. あなたが好きな「タレント・有名人」は誰ですか。好きな順に「3つ」までお書きください。グループ名でも結構です。
男性お笑い芸人は同性からの、男性アイドルと俳優は異性からの支持が高い
図表3は、性・年齢別の純粋想起上位のタレント・有名人です。
男性お笑い芸人は、男子ティーン~40代で高い一方、女子ティーン~34歳では低くなっています。それに対し、男性アイドルは、女子ティーン~34歳で高い一方、男子ティーン〜74歳では低いなど、対照的な結果となっています。
また、男性俳優は女子ティーン~74歳で高い一方、男子ティーン~74歳では低いのですが、それに対し女性俳優は男女20-34歳で高いなど、タレントの性別による支持層の違いが顕著です。
ちなみに女性アイドルは男20-34歳(+女20-34歳)、韓流アイドル・歌手・俳優は女子ティーンと女35-49歳、YouTuberは男子ティーンなど、特定の性・年代で支持が高いタレントも見受けられます。以上の傾向は、「好きなタレント・有名人」の純粋想起内容をタレントタイプ別に分類した結果(図表4)をもとに記しています。
図表3. 性・年齢別:純粋想起による「好きなタレント・有名人」ランキング
図表4. 性・年齢別:「好きなタレント・有名人」タイプ別純粋想起率
にじさんじ・ホロライブ所属が6割を占めるVtuberは、まだ存在感が希薄
最後に紹介するのは、男女3-74歳全体の「好きなVtuber」に関する純粋想起結果です(図表5)。
トップはVtuberの元祖と言える「キズナアイ」で、「クロノワール」「宝鐘マリン」が同率2位。Vtuber大手事務所が運営するグループである「にじさんじ」と「ホロライブ」の所属Vtuberが、想起者全体の58.3%と多くを占めているのが特徴です。
ただし、1つ以上想起した人が調査対象全体に占める割合を比べると、キャラクター全般が84.3%、企業オリジナルキャラが29.5%、ご当地キャラが67.5%、タレント・有名人が72.0%なのに対し、Vtuberは10.4%にとどまっており、多くの人に想起されない=まだ存在感が希薄なことがわかります。現時点では、今後の伸びしろに期待、といったところでしょう。
図表5. 男女3-74歳全体:純粋想起による「好きなVtuber」ランキング
Q. あなたが好きな「VTuber」は誰ですか。好きな順に「3つ」までお書きください。グループ名でも結構です。
*「VTuber」 とは、バーチャルYouTuberの略で、2Dや3Dなどのバーチャルな姿で配信をするYouTuberのことを指します。
今回は以上です。
次回からは、同じく「キャラクター定量調査2023」から、「キャラクター」と「タレント・有名人」のエンドーサー(Endorser:広告内で製品やブランドを宣伝する人)としての効果と可能性を比較した分析結果をご紹介します。どうぞお楽しみに。
<第2部 バックナンバー>
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧
筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。