2023.02.08

さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

先日の大寒波襲来で、福井県にも大雪が降りました。10日過ぎてもまだ巨大な雪山が歩道や駐車場に残っています。
これまで各地の大雪の様子を報道で見かけ、たまに出張や旅行の移動中に遭遇してその大変さは知っているつもりでしたが、この体験が日常になり、毎日雪かきをしないと家から外に出られない、歩道に寄せられた雪で膝まで埋もれるので長靴は必需品だ、などの切実さがようやく理解できました。何事も、自分ごととして受け止められるか否かで、共感や支援の気持ちが大きく変わることを痛感しています。今は受験シーズンで、雪による交通障害が特に大変なようです。春が待ち遠しい限りです。

さて前回は、2023年のキャラクター界隈における展望あるいは期待として認識している「5つのトレンド」について解説しました。

  • テレビからWEB配信への流れはさらに進む
  • アニメ映画の成否は二極化傾向が続く
  • 動画サイトやSNSの活用による「ファンファースト施策」が進化
  • 原画展・作品展、2.5次元舞台などが本格復活し、流行を作る
  • 聖地巡礼が海外インバウンド客誘引のきっかけに

今回からは、筆者が共同研究などで大変お世話になった大阪公立大学の荒木長照先生と、荒木先生のもとで学んだ辻本法子先生、田口順等先生との共著「コンテンツの、コンテンツによる、コンテンツのためのマーケティング」(大阪公立大学出版会:、2023年2月発刊予定)から、「マンガ原作系キャラクターファン」のマーケティング活用効果に関する研究結果を、3回にわたってご紹介します。今回は、マンガ原作系キャラクターファンとファンシー系、絵本・ゲーム等原作系ファンのプロフィール比較です。

ここで用いたデータは、日本国内に居住する男女3~74歳の1,165名を対象として、2021年11月5日(金)~10日(水)に実施した「キャラクター定量調査2021」によるものです。調査概要については当連載の第二部第一回で紹介しています。
現在は「キャラクター定量調査2023」の調査設計をしており、実施・集計後に当連載でも結果をご紹介します。

【男性】純粋想起による好意度はマンガ系キャラが上位を占める

「キャラクター定量調査2021」で測定した、好きなキャラクターの純粋想起回答を用いて、2021年11月時点での男女3~74歳全体1,165人の想起上位キャラ(作品単位で集計)がどんなタイプだったか、その出自を確認した結果をまとめてみました(図表1)。

図表1. 「好きなキャラクター(作品)」2021年純粋想起上位一覧

ここでのキャラクタータイプ分類基準は、以下の通りです。

  • マンガ原作系:週刊誌や月刊誌、新聞などのマンガ作品を原作として展開
  • 絵本・ゲーム等原作系:絵本、小説、ライトノベル、ゲームなどを原作として展開
  • オリジナル系:特定の原作がないオリジナルのアニメや映画などから展開
  • ファンシー系:日用雑貨・文具・アパレルなどのグッズから展開
  • 企業キャラ:企業が商品・サービスの広告・広報手段として展開(タレントが手掛けるキャラクターもこちらに分類)
  • ご当地キャラ:行政団体などが地方イベントや地域活性化などの広告・広報手段として展開

男女3~74歳1,165名が回答した上位キャラクターは、1位「ポケットモンスター」が絵本・ゲーム等原作系、2位「スヌーピー」3位「ドラえもん」4位「鬼滅の刃」がマンガ原作系、5位「ミッキーマウス」がファンシー系、12位「くまモン」がご当地キャラ、26位「機動戦士ガンダムシリーズ」がオリジナル系と、それぞれ出自が異なります。

続いて、男女3~74歳で3人以上から純粋想起された計112キャラクターを対象として、出自による各キャラクタータイプの構成内訳を性・年齢別に比較しました(図表2)

図表2.  性・年齢別:「好きなキャラクター(作品)」の出自タイプによる構成内訳


男女3~74歳全体では、マンガ原作系、ファンシー系、絵本・ゲーム等原作系、オリジナル系のシェアが高く、企業キャラ、ご当地キャラのシェアは僅かです。
男性は全般にマンガ原作系が上位を占め、特に成人層では子どもの頃に接触したマンガ原作系が上位を維持し続けています。これは、キャラクターに限らず、少年期に好きだったものへの思い出をいつまでも忘れない男性の特性を示す結果と言えそうです。

【女性】ティーン・ヤングでマンガ原作系キャラ、特にサブキャラが多く想起される

女性は各年齢層ともファンシー系が上位で、年齢による好みの違いは少なくなっています。その中で、女子中学生-19歳や20-34歳ではマンガ原作系(「ハイキュー!!」「東京リベンジャーズ」など)が多く想起されており、キャラクターへの愛着の方向性がファンシー系から理想の男子に広がっているようです。

これは、女子向けマンガが原作となったアニメやドラマ、映画が人気を博していることに加えて、少年マンガ誌の読者としても女子層が確固たる地位を築き、原作マンガの評判や単行本の売れ行きに多大な影響を及ぼすことを反映した結果ではないでしょうか。特にこれらの女性ティーン・ヤング層は、仲間やライバルなど魅力的なサブキャラたちを多く想起しており、作品によっては主役よりも人気を集めているのが特徴です。
「進撃の巨人」では主役のエレン・イェーガーが一番人気なのに対し、「東京リベンジャーズ」では、マイキーこと佐野万次郎が、主役の花垣武道より女性層から多くの支持を集めています(図表3)。

図表3.  性・年齢別:「東京リベンジャーズ」「進撃の巨人」の純粋想起内訳

想起キャラタイプでクラスター分類すると、最も多いのは「マンガファン層」

好きなキャラクターのタイプやキャラクターへの反応は、必ずしも性・年齢のみで規定されるわけではありません。また、マンガ原作系やファンシー系など好きなキャラクターのタイプによって、キャラクターに求める体験価値が異なり、広告や各種プロモーションで強調する点も違ってくるものと予想されます。
そこで、好きなキャラクターの純粋想起結果を各キャラクターの出自で分類したアプローチをサンプル単位で用いて、調査対象者のタイプ分類を行いました。そうすることで、作成された各クラスターがどんな属性を持ち、どんな接点に触れることで、提供体験がどう強化され、どんな活用効果が見込めるのかが比較可能となります。

具体的には「キャラクター定量調査2021」の調査対象サンプルごとに、好きなキャラクターの純粋想起内容(好きな順に3つまで記入)が「マンガ原作系」「絵本・ゲーム等原作系」「オリジナル系」「ファンシー系」「企業キャラ」「ご当地キャラ」の各タイプに該当した場合はそれぞれ「1」、非該当・無記入の場合は「0」と分類し、上記6タイプそれぞれについて最小値0から最大値3までの整数値データを作成して、k-means法による非階層クラスター分析を行いました。その結果、以下の4クラスターが算出されました(図表4)。

図表4. 想起キャラクタータイプによるクラスター分類結果

分類された4つのクラスターは、想起キャラのほとんどがファンシー系の「ファンシー系ファン層」、ほとんどがマンガ原作系の「マンガファン層」、どのタイプのキャラの想起数も少なく、ご当地キャラが僅かに多めの「無関心層」、そして絵本・ゲーム等原作系が多く、マンガ原作系、ファンシー系、オリジナル系も比較的多い「キャラ・アニメ・ゲームファン層」と命名しました(図表5)。

図表5. 想起キャラタイプ4クラスターの出自別キャラ平均回答数

「マンガファン層」は男性が多く、可処分所得も多い

算出された想起キャラタイプ4クラスターを、性・年齢構成で比較したのが図表6です。
「キャラ・アニメ・ゲームファン層」が男女キッズ(特に男子)、「ファンシー系ファン層」が女性全般、「マンガファン層」が男性全般、「無関心層」が男ミドルと男女シニアがそれぞれ多くを占めることが明らかになりました。

図表6. 想起キャラタイプ4クラスター別:性・年齢構成

続いて、キャラクター好意度と可処分所得平均月額、出現率でバブルチャートを作成し、想起キャラタイプ4クラスターによる以下の違いを可視化しました(図表7)。

図表7. 想起キャラタイプ4クラスターのバブルチャート

  • マンガファン層:出現率28.8%で最も多い。キャラクター好意度は61.5%で高め。男性が約6割を占め、特に多いのは男子中学生から34歳で、男35歳から74歳も比較的多いのが特徴。女性は35歳以上が少ないが中学生から34歳は比較的多い。可処分所得平均月額は28,872円で最も多い。
  • ファンシー系ファン層:出現率24.4%。キャラクター好意度は66.5%で高め。女性が8割近くを占め、特に多いのは女子中学生-19歳。男性はどの年代も少ない。可処分所得平均月額は24,832円で最も少ない。
  • キャラ・アニメ・ゲームファン層:出現率19.7%。キャラクター好意度は71.7%で最も高い。男子園児・小学生が全体の1/4を占め、女子園児・小学生が次ぐなど、平均年齢が低く、男女50-74歳が少ない。可処分所得平均月額は28,519円で男女3~74歳全体より多め。
  • 無関心層:出現率27.1%。キャラクター好意度は25.9%で極めて低い。男35-49歳と男女50-74歳が多く、女子園児・小学生から34歳が少ないなど、平均年齢が高い。可処分所得平均月額は26,596円で男女3~74歳全体より少なめ。

今回はここまでとします。次回は、各クラスター、特にマンガファン層とそれ以外の層で、日常接点・提供体験・活用効果がどう異なるのかを比較します。どうぞお楽しみに。

<第2部 バックナンバー>
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

講談社が提供する各種プロモーションサービスのご利用に関するお問い合わせ・ご相談はこちら