2022.10.20

【MCL】美容好きユーザーの関心はいま、「サステナブルビューティー」へ ── 調査データから見るwithコロナ時代のコスメトレンドの変遷|VOCE × ヴァリューズ

読者コミュニティを活用して、企業の課題解決に挑む新プロジェクト「講談社メディア・コミュニティ・ラボ(略称MCL)」では、講談社メディアの特性に合わせたマーケティングデータの調査・分析を行っています。
読者データの集約という観点で、このたび「VOCEウェブサイト」編集長・三好さやかと、MCLの調査パートナーである、マーケティングデータ分析・コンサルティングを行う株式会社ヴァリューズ 伊東茉冬さんによる対談を実施。コロナ禍での購買行動や美容意識の変遷を、美容好きの「VOCE」読者の声から得たデータと、ヴァリューズのサイトログ調査結果から振り返るとともに、最新のコスメトレンドについて考察しました。

「VOCEウェブサイト」編集長・三好 さやか(左)、株式会社ヴァリューズ 伊東茉冬(まゆ)さん


ECでの購買が増加──変わるコスメへのニーズと購買行動

三好さやか(以下、三好) 2020年の4月に最初の緊急事態宣言が発令され、以来、コロナ禍が続いたまま、およそ2年半が経ちました。まずは、withコロナ時代のコスメのニーズや購買行動の変化をテーマにお話しできればと思います。

伊東茉冬(以下、伊東) コロナ禍でリモートワークへ移行し、出社の必要がなくなった人が増えています。メイクをしなくてもいい状況が増えたことで、VOCE読者のなかで何か変化はあったでしょうか。

三好 VOCE読者は、美容が大好きです。ですからコロナ禍でも美容に関する行動をやめず、むしろこの時間をどう使おうかと、ポジティブに捉える動きがありました。たとえば、シワ改善の効果が期待されている成分「ビタミンA(レチノール)」は、きれいになる過程でどうしても肌に強い反応が出てしまうため、人と頻繁に会っていた頃には試しづらい傾向にありました。しかしコロナ禍のなかで、"人に会えない"という状況をプラスに受け止めて、試す人が増えたように思います。

行動が制限されたことで変化したニーズ

伊東 なるほど、面白いですね。弊社では、定期的に化粧品市場調査を続けています。購買行動について2021年6月に行ったアンケートを見ると、コロナ禍の影響で20代・30代の若年層では、「ECサイトでの購入が増えた」と答えています。VOCE読者との違いはありますか?

コロナの影響によりEC購入が増えたという人は、全体の20.7%。特に20代・30代は他世代より増加傾向<ヴァリューズ調査より>

三好 VOCE読者は、百貨店コスメ(デパコス)好きが多く、コロナ禍(緊急事態宣言)の影響で百貨店が閉まっていた時期は、ECを利用する機会が増えた印象があります。ただ、VOCE読者は、「コスメは試してから買いたい」という思いが強いんです。ですから、同時期に役立ったのが、雑誌の付録でつけたサンプルでした。特にスキンケアのサンプルは非常に喜ばれ、サンプルからEC購入につながったケースもありました。

加えて、コスメを紹介するInstagramのライブ配信でも変化がありました。コロナ前は塗り方や悩みに沿った質問が主でしたが、「テクスチャーや色を見せてほしい」という声が圧倒的に増えました。コスメを試せないなかで、少しでも購入の参考になる情報を得たい、という気持ちの表れだったのではないでしょうか。

伊東 行動が制限されたことで、ニーズも変化したのですね。

三好 もうひとつ象徴的だったのは、VOCEでも特設ページを展開している「イエベ・ブルベ診断」(パーソナルカラー診断)の流行です。肌色のタイプをイエローベース/ブルーベースに分け、それぞれに合ったコスメを紹介することで、自分に合った色味がわかるというものです。ECで買う際には、コスメを試すことはできませんが、「イエベ・ブルベ診断」を活用すれば、数ある色のなかから自分に合った色味を選びやすいとあって、多くのアクセスを集めました。

「VOCEウェブサイト」では、読者の悩みに寄り添い、「イエベ・ブルベ診断」のページを設けている

コロナ禍で、生活者が求めた「安心感」

伊東 弊社の調査では、コロナ禍(2021年時点)での化粧品の購入場所についてアンケートをしたところ、ECより店舗の方が多いのですが、一方で、「最もよく購入する場所=EC」と回答した人も34.1%いました。なお、購入しているECサイトは、Amazon、楽天市場、そしてメーカーの公式ECが多くを占めていました。並行輸入品など、安全かどうかわからない商品にECでは出会うことがあります。そのなかで「公式サイトなら安心」という気持ちから、メーカー公式ECの利用が伸びたと推察しています。

コロナ禍のなか、店舗とECを併用する層が半数以上という結果が出た(2021年6月時点)<ヴァリューズ調査より>

三好 VOCE読者に「コスメ購入の現状」を調査したデータがあるのですが、大きな差はないですね。信頼できるメディア=VOCEやインフルエンサーのSNSなどで情報をとり、信頼できる場所=百貨店などで買うという流れがあると感じます。

美容へのこだわりが強いVOCE読者。コスメ購入場所の調査では、ドラッグストアに次いで百貨店が2位、3位がブランドの通販サイト<VOCE大アンケート2021より>

価格にも表れる、VOCE読者の美意識の高さ

伊東 EC購入が増えた層は、美容意識が高く、購入価格も高い傾向が弊社の調査で出ていました。これについて、どう感じられますか?

EC購入が増えた人は、スキンケアでもメイクアップでも美容意識が高く、購入金額も高い傾向にあった<ヴァリューズ調査より>

三好 ヴァリューズさんの調査とは少し違う切り口になりますが、VOCEでも2021年に「スキンケアの単品購入予算」についてアンケートを行っています。平均するとヴァリューズさんの「EC購入増加者」よりも、さらに予算感は多い印象です。具体的には、「美容液に関しては、1万円払ってもいい」というのが多くのVOCE読者の感覚で、VOCE読者のなかでも特に美容好きの人ほど、高価格帯のものを利用しているという結果があります。

VOCE読者は"濃い美容好き"。美容液をはじめ、スキンケアへの意識の高さがそのまま予算にも反映される結果となった<VOCE大アンケート2021より>

伊東 VOCE読者がいかに、本気で美容と向き合っているかがわかるデータですね。

アイテムごとに異なるコスメ購入のモチベーション 〜バタフライサーキット〜

三好 購買行動の変化という点では、コロナ禍以降、SNSの影響も大きくなっていますよね。ライフスタイル全体がデジタルシフトしたことで、SNSの影響力が高まっているのだと感じています。

伊東 そうですね。弊社とGoogleさんとの共同研究によって発見した、新しい消費行動「バタフライサーキット」においても、SNSは重要な位置付けにあります。これは、消費者の行動は一直線では進まず、行ったり来たり(さぐる・かためる)を繰り返して検討が進んで行動に至るという考え方です。

ファンデーション、アイシャドウ、美容液などのアイテムによる購買行動の違いをバタフライサーキットで数値化してみると、このようになります。

「ファンデーション」「アイシャドウ」「美容液」と、アイテムによって、情報検索するモチベーションは異なる<ヴァリューズ調査より>


三好 面白いデータですね。

「気軽に楽しみたい」の裏に隠されたインサイト

伊東 ファンデーションは肌に付けるものなので、"しっかりと確認したい"アイテム。アイシャドウは"気軽に楽しみたい"という気持ちが強いようです。また、美容液は"成分について納得したい""しっかり情報収集してから購入したい"という部分が強いことがわかります。

三好 なるほど。VOCEでも「神ファンデ」「神パウダー」のようなタイトルの記事は人気があるのですが、「ベースメイク(ファンデーションなど)についてはプロがすすめるものを知りたい」というニーズに合致しますね。

また、アイシャドウの「気軽に楽しみたい」というのは、季節や流行りものを気分で楽しむという側面があるアイテムだからですよね。VOCEの読者アンケートでも、メイクアップアイテムの購入理由について「気分転換」というキーワードが挙がっていますし、すごくわかります。

"メイクアップ"アイテムを購入するきっかけとして、約3割の人が「気分転換」と回答<VOCE大アンケート2021より>

伊東 メイクアップで「気分転換したい」というのは、コロナ禍で気持ちが沈んだからなのでしょうか。

三好 コロナ禍の影響も多少はあるかもしれませんが、メイクが自分の気持ちを上げるものになってきたからだと思います。特にVOCE読者は、美容をオタク的に楽しむ人たちで、人にほめられることを求めていません。まさに創刊以来変わっていない、VOCEのキャッチコピー「キレイになるって、面白い!」を体現している方たちなんです。自分が楽しいからやるというスタンスで、美容と向き合っているんですよね。

伊東 VOCE読者は、美容を心から楽しんでいるのですね。

VOCE美容流行語大賞に見る、トレンドの変遷 〜マスクとコスメの関係性〜

三好 VOCEでは、「VOCE美容流行語大賞」を年に2回発表しています。トップ10にはその時々のトレンドワードが並びます。突如自粛生活が続いたコロナ禍当初(2020年SS=春夏)から時を経つごとに、美容意識の変遷も見られてとても興味深いですよ。

VOCE美容流行語大賞トップ10の変遷

伊東 2020年春夏(SS)は「おうち美容」「マスクメイク」が上位というのは、たしかに時代が反映されていますね。

三好 はい。ですが、秋冬(AW)になると、マスク生活の影響で肌が荒れたことによる「マスク荒れ」が上位に。翌年、2021年春夏にはその延長でスキンケアへの意識が高まり、肌荒れ沈静成分である「CICA(シカ)」を使った「シカコスメ」が2位にランクインしています。また、マスク生活での表情筋のたるみから、引き締め効果が期待できる施術「ハイフ」が9位に入っていることも、マスクが与えた「コスメトレンドへの影響」と言えそうです。

伊東 2021年秋冬(AW)には、「リップモンスター」が3位に入っているのも、時代を映していますよね。

三好 そうですね。2020年の春にコロナ禍に入ってから1年ほどは、マスクで隠れない「アイメイク」に注目が集まっていました。カラー眉やカラーマスカラが流行し、目元まわりを盛るようになりました。

ですが、コロナ禍が長期化したことで、やはりチークやリップがないと満足できないことに気づき、2021年秋冬には「リップモンスター」というマスクに色移りしづらい口紅の商品名、そして2022年春夏には「チーク完全復活」が、ランクインしたわけです。

外食時などマスクを外す機会は増えつつあるなかで、口元や頬のメイクを意識する必要も出てきていますが、まだ"常に誰かに見られる"という状況ではありません。ですが、メイクをした方が日々の生活の活力になる。「人に見られるためのメイク」から、「自分自身のモチベーションを上げるためにするメイク」という視点が加わっているのを感じます。

2022年春夏のキーワードは「サステナブルビューティ」

伊東 2022年春夏には、これまでにない新しいキーワード「サステナブルビューティー」が2位に入っていますね。

三好 はい。2022年春夏は、サステナブルへの関心の高まりがランキングにも表れています。サステナブルは、VOCEでもずっと取り組んできたテーマですし、サステナブルな美容アイテムも徐々に認知されてきた証だと感じています。

今年4月、VOCEはアットコスメさんと「はじめてのSDGs」というコラボ企画を行いました。ライブ配信でサステナブルなコスメアイテムなどを紹介したのですが、視聴者の反応から意識の高まりを感じました。たとえば、中身だけ入れ替えられる「レフィル対応商品」を選ぶ、口紅は使い切れるミニサイズを購入するなど、SDGs的な観点を購入時に意識しているという方が多く驚きました。

約6割強がSDGやサステナブルに向けた取り組みをしている製品だと購買意欲があがると回答<VOCE調査より>


伊東 2022年春夏に、「サステナブルビューティー」への注目が集まった理由は何だとお考えですか?

三好 理由のひとつに、紫外線吸収剤フリーの日焼け止めなど、各大手メーカーさんが環境に配慮した商品を打ち出したことがあります。そこで「サステナブルビューティー」を知り、意識が高まった方も多いのではないでしょうか。今後もサステナブルなコスメは、増えていくと予想しています。

VOCEだから提供できる、企業が知りたい「美容好きの本音」

伊東 コスメ購買について、今後もSNSの重要性は変わらないと思うのですが、同時に「誰が言っているのか」といった権威付けも重要になると見ています。

三好 「誰が言っているのか」という点で言えば、VOCEの価値は、安心安全を裏切らない情報提供であり、メディアとしての「信頼性」にあります。個の発信力に注目が集まる時代ですから、私たちエディターも発信力を持つとともに、新しい美容家などの発掘、育成をしていきたいと思っています。同時に、百貨店などの「ビューティーアドバイザー(美容部員)」さんは、VOCE読者にとって、いちばん身近な存在なので、一緒に美容業界を盛り上げていけたらと考えています。

伊東 それは楽しみですね。企業サイドは、消費者のリアルな声が知りたいはずです。特にコロナ禍でユーザーとの接点が減り、その傾向は強まっていると感じます。弊社でも、定量的なデータの提示やインタビュー設定はできるのですが、より美容が好きでお金をかけているユーザーがどういう判断軸を持っているかは、企業の皆さんが知りたいところです。そういったときにVOCEの読者コミュニティは、大きな強みがあると感じました。

三好 ありがとうございます。VOCEは、2023年に創刊25周年を迎えます。今後はVOCEの読者コミュニティを活用し、企業が抱えるマーケティング課題の解決のお手伝いもできたらと考えています。現在、VOCEアンバサダーは約120人いますが、その母数を増やしながら、さらにコミュニティ力を強化していけば、きっとさまざまな場面でお力になれるはずです。本日はありがとうございました。


VOCE読者アンケート調査
調査概要「VOCE大アンケート2021」
●調査地域:全国
●調査対象者:VOCEコミュニティメンバー(VOCE本誌読者、VOCEアンバサダー、VOCEメルマガ会員、VOCE公式Instagram、Twitter、Facebookフォロワー、VOCE公式YouTubeチャンネル登録者、VOCE LINE公式 友だち)
●調査手法:インターネット調査
●調査期間:2021年6月22日(火)~2021年7月19日(月)


株式会社ヴァリューズ 化粧品市場調査
調査概要①「化粧品購入プロセス調査レポート」
●調査地域:全国
●調査対象者:株式会社ヴァリューズのモニターパネル 20歳以上の女性
●調査手法:インターネット調査
●調査期間:2021年6月24日(木)~2021年6月30日(水)

調査概要②「新情報行動「バタフライサーキット」を基にしたコスメ購入における情報探索行動調査」
●調査地域:全国
●調査対象者: 株式会社ヴァリューズのモニターパネル 20歳以上の男女(引用資料は女性のみ抽出)
●調査手法:インターネット調査
●調査期間:2021年10月19日(火)~2021年10月26日(火)

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