台風が相次いだ9月が終わります。3年ぶりに高知県須崎市で開催された「ご当地キャラまつりin須崎」への参加でキャラ団体やコアファンの皆さんと旧交を温めたり、福井工業大学の公開講座やオープンキャンパスで「福井を盛り上げるご当地キャラを考えてみよう」をテーマに講義を行い、小・中学生や高校生など参加学生の柔軟なアイデアに唸らされたりと、慌ただしい中でも充実した日々でした。今年も残り3ヵ月、後期の授業も始まりました。気を引き締めていきます。
前回は、2021年11月に実施した「キャラクター定量調査2021」の結果を用いて、大学生以外も含めたZ世代と、その下のα世代、Z世代より上の世代を比較しての、マンガ・アニメ・キャラクター関連の消費実態に関する定量調査結果を用いた分析事例を紹介しました。
- キャラクター全般への好意度と可処分所得額がともに高いZ世代
- マンガ好意度が他世代よりも高く、女子でその傾向が顕著
- 男子は多様な手段でアニメ視聴、WEB・SNS受発信やソーシャルゲームプレイも活発
- 専門ショップでフィギュアやコンビニくじを買い求め、同人活動やコスプレ経験も豊富
- コラボカフェやミュージアム、2.5次元舞台の訪問や聖地巡礼も活発
- 男子はSDGsシンボル・アイコンとしてのキャラクター活用にも肯定的
今回は、前回に続いて2021年11月に実施した「キャラクター定量調査2021」(調査概要は前回をご参照ください)の結果を用いて、大学生以外も含めたZ世代と、α世代、Z世代より上を比較しての、キャラクター全般での日常接点と提供体験と活用効果の関係に関する、定量調査結果を踏まえた分析事例を紹介します。
なおZ世代やα世代、Y世代に関する詳しい解説は「講談社SDGs」の記事をご覧ください。
Z世代のキャラクターとの接点は、発信側との心的距離が近い傾向
図表1は、好きなキャラクターや気になるキャラクターの日常接点に関する質問について、4段階評価のうち「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合を、「Z世代」「α世代」「Y世代以上」の男女別で比較したグラフです。なお、以下のグラフごとの名前は、図表1、図表2、図表3ともに、因子分析の結果から命名しています。
図表1. Z世代vs他世代:キャラクターに関する日常接点
Q. 次にあげるものの中で、あなたがふだん、お好きなキャラクターや気になるキャラクターと接することが多いのはどれですか?
キャラクターに関する日常接点で、α世代がZ世代を上回っているのは《玩具・雑貨・グッズ》と《クチコミ》です。一方、Z世代がα世代やY世代以上を大きく上回るのは《SNS・LINE・公式サイト》で、続いて《2.5次元舞台・ライブ配信・カードゲーム・コラボカフェ》(特に「トレーディングカード・カードゲーム」「SHOWROOM、インスタライブなどのライブ配信・視聴サービス」「キャラクターのカフェ・飲食店」)、《マンガ・動画・ゲーム・映像ソフト》(特に「マンガ雑誌・コミックス・単行本」)、そして《玩具・雑貨・グッズ》のうち「関連グッズなどのショッピングサイト」です。
男子はゲームや配信、女子はSNSやLINEスタンプなど
Z世代男子は、《2.5次元舞台・ライブ配信・カードゲーム・コラボカフェ》のうち「トレーディングカード・カードゲーム」「SHOWROOM、インスタライブなどのライブ配信・視聴サービス」「俳優・声優がキャラクターを演じる2.5次元舞台・ミュージカル」、《マンガ・動画・ゲーム・映像ソフト》のうち「テレビゲームソフト」が高くなっています。
Z世代女子は、《2.5次元舞台・ライブ配信・カードゲーム・コラボカフェ》のうち「キャラクターのカフェ・飲食店」、《SNS・LINE・公式サイト》のうち「LINEなどのスタンプ」「Twitterやfacebook、InstagramなどのSNSサービス」「キャラクター公式サイトやTwitter公式、Facebook公式」が、それぞれ高くなっています。また、前述したように《マンガ・動画・ゲーム・映像ソフト》のうち「マンガ雑誌・コミックス・単行本」はZ世代で男女共通して高く、特に女子で高くなっています。
これらの結果から、Z世代のキャラクターに関する日常接点は、舞台やコラボカフェ、SNSなど、対面・オンラインともに送り手(発信側)との心的距離が近いものが高い傾向でした。
男子はカードゲームやテレビゲーム、ライブ配信・視聴サービスなど、用意された設定・世界観の中で受け手としての自身の技能や熱意が可視化される接点、女子はSNSやLINEスタンプなど、インタラクティブで同じキャラが好きなファン同士のコミュニケーションを楽しめる接点が目立って高い様子がうかがえます。
なお、《マンガ・動画・ゲーム・映像ソフト》のうち「Youtube、TikTok、ニコニコ動画などの動画投稿サイト」はα世代・Z世代ともに高く、Z世代以下の層が日常的に接する重要な接点であることを裏付ける結果となっています。
男子は非日常体験や気分転換を求め、女子はお気に入りのキャラによる癒しや楽しさを求める
図表2は、好きなキャラクターや気になるキャラクターへの体験欲求(キャラに接することでどんな気持ちになりたいか)に関する質問について、4段階評価のうち「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合を、「Z世代」「α世代」「Y世代以上」の男女別で比較したグラフです。
図表2. Z世代vs他世代:キャラクターに関する体験欲求
Q. あなたは、「キャラクター」を通して「どんな気持ちになりたい」と思っていますか。あなたがお好きなキャラクターや気になるキャラクターを思い浮かべながらお知らせください。
キャラクターに関する体験欲求は、ほとんどの項目でα世代がZ世代を上回っており、この年代(男女3-10歳)がキャラクターに夢中になっている様子がうかがえます。一方、Z世代がα世代やY世代以上を上回るのは、《参加・注目・同一視》のうち「日常では味わえないスリルや冒険を感じたい」のみでした。
Z世代男子は、《参加・注目・同一視》のうち「日常では味わえないスリルや冒険を感じたい」がα世代より高く、《癒し・安らぎ》のうち「気分転換したい」、《参加・注目・同一視》のうち「役に立つ知識を得たい」がα世代に迫るスコアです。
Z世代女子は、《癒し・安らぎ》のうち「癒されたい」「楽しい気分になりたい」、《カタルシス・非日常感》のうち「ワクワク・ドキドキしたい」がα世代に迫るスコアです。
これらの結果から、Z世代のキャラクターに関する体験欲求は全般にα世代ほど強烈ではないものの、男子はマンガやアニメ、ゲームなどのストーリーや世界観に感情移入しての非日常体験や気分転換、知識習得を求め、女子はかわいさやカッコよさなどを備えたお気に入りのキャラクターに癒されることで、束の間の楽しい気分を求める、という性別による体験欲求の違いがうかがえます。
男子は企業の情報探索や評判アップが見込め、女子は商品・広告の話題共有・拡散が見込める
図表3は、好きなキャラクターや気になるキャラクターの活用効果(商品や広告・キャンペーンでの活用)に関する質問について、4段階評価のうち「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と回答した人の割合を、「Z世代」「α世代」「Y世代以上」の男女別で比較したグラフです。
図表3. Z世代vs他世代:キャラクターに関する活用効果
Q. 「キャラクター」が、パッケージ・おまけなどで商品に付いたり、広告・キャンペーンで使われることで、どのようにお感じになりますか?あなたがお好きなキャラクターや気になるキャラクターを思い浮かべながらお知らせください。
キャラクターに関する活用効果も、ほとんどの項目でα世代がZ世代を上回っています。Z世代がα世代やY世代以上を上回るのは《話題共有・拡散》のうち「ネット(Twitter、LINE、Instagramなど)に書き込みたくなる」でした。
Z世代男子は、《探索・信頼・評判》のうち「その企業に関する情報を知りたくなる」がα世代より高く、《話題共有・拡散》のうち「どんな企業や商品・サービスなのか知りたくなる」、《探索・信頼・評判》のうち「その企業の活動を、応援したくなる」「その企業や商品にセンスのよさを感じる」「その企業や商品が世間や周囲で評判がよいと感じる」がα世代に迫るスコアです。
Z世代女子は、《親近感・記憶・所有喚起》のうち「どんな人にも、幅広く受け入れられやすい」、《話題共有・拡散》のうち「家族や友人知人など、まわりの人たちに話したくなる」「家族や友人との共通の話題になる」がα世代に迫るスコアです。
これらの結果から、Z世代のキャラクターに関する活用効果は全般にα世代ほど明確ではないものの、男子はキャラクター活用企業の情報探索が促進されて、センスや評判のよさなどで活用企業への評価が高まり、女子はキャラクターを使った商品や広告の話題が共有・拡散されやすくなる様子がうかがえます。
今回は以上です。Z世代は他世代と比べてデジタル・対面ともに発信側との心的距離が近いインタラクティブな接点に数多く接触しており、マンガやYouTubeなど動画投稿サイトの接触が男女共通して高いのが特徴的です。また、Z世代男子はゲームや配信などで用意された設定・世界観に没入・感情移入しやすく、それらの世界観をうまく生かした商品や広告を通して活用企業への評価が高まる傾向にあり、Z世代女子はお気に入りのキャラによる癒しや楽しさなどの気持ちを、SNSなどで友達や趣味仲間と共有・拡散する傾向にあることがわかりました。キャラクターに関する日常接点や体験欲求、活用効果が性別でここまで異なるのは、新たな発見でした。
次回は、ここ数年でかなり世間に浸透してきたYouTuberやVTuberに関する最新分析事例を紹介します。どうぞお楽しみに。
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<第2部 バックナンバー>
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧
筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)
栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。