2022.02.18

【リサーチ会社のプロが分析!】Z世代のファン化には、「ファン」による発信がキーポイント ── データで見るZ世代とSNS、そしてUGC

企業によって作られたコンテンツではなく、ユーザーによって作られたコンテンツ「UGC」(User Generated Content)。SNSなどで見かける消費者発信のコンテンツは、マーケティング効果を最大化する重要な要素として、昨今注目を集めています。その多くは、Z世代(10代後半〜20代前半の若年層)による投稿です。彼らとSNS、そしてUGCとの相関関係を、データをもとに分析してみました。

文/株式会社ビデオリサーチ マーケティングソリューション部 寺出 朋子

SNSからヒットを生み出す「UGC」

ここ最近、好きな商品(コスメやスイーツなど)やコンテンツ(アイドルやアニメ、キャラクター等)を紹介する自作の画像や動画の投稿がSNSでよく見られます。これをUGCといいます。UGCとは、「一般ユーザーによって作れられたコンテンツ」のことで、ユーザー生成コンテンツとも呼ばれています。

具体的には、ユーザー自らが作成したコスメの紹介の投稿や、アイドルのお気に入りシーンを集めたコラージュなどがUGCに該当し、その投稿が共感を呼び、ヒットにつながるケースもあるため、UGCへの注目度が高まっているのです。

素人発信の価値化と、推し活によって生まれた「UGC」の影響力

しかしなぜ、あくまで個人の発信であるはずのUGCが、マーケティング観点において重要だと言われているのでしょうか?

ひとつは、素人発信の価値が高まっていること。ネットの口コミで商品の購入を検討するなど、一般ユーザーの口コミの信頼性は高く、情報的な価値があると感じている方は、Z世代に限らず、多いのではないでしょうか。

ふたつ目は、「推し」という言葉の登場です。「推し」とは、応援するアイドルを指す言葉から、最近では「好きなもの」を指す言葉として定着してきています。「推し」は文字通りに"推す行動"で、ファン自身が「好きなもの」のために行動することを意味します。

「推す」行為には、「買う」・「投票する」・「参加する」といった行動のほかに、「SNSを通じて自分の好きなものを発信する」ことも含まれています。

こうした、「素人が発信することの価値化」「推しの登場」が、Z世代の発信を後押し、UGCの価値を高めているのです。

ファン以外にも情報を届ける「UGC」

2020年のコロナ禍、星野源さんの『うちで踊ろう』が社会的現象になりましたが、このムーブメントを作ったのもユーザーによる自作動画(UGC)の投稿でした。星野源さんの呼びかけをきっかけに、国内外問わず、星野源さんの歌をベースに、演奏やダンスを重ねたコラボ動画が多く投稿され、一大トレンドとなりました。

当時、星野源さんがInstagramに投稿した動画との多数のコラボがSNS上で生まれ、話題となった

ファン発信のコンテンツは、SNSを通じて多くの人の目に留まり、ファン以外の人にもその魅力や楽しみ方が伝わり、新たなファンを生み出す。この効果に着目し、最近では「UGC」のマーケティング活用に重きを置く企業も出てきています。代表的な例を挙げるならば、作業服の大手ショップ「ワークマン」もそのひとつです。女性客や若年層の開拓のため、Instagramを活用したUGC×マーケティングに力を入れており、SNSを通じてワークマンの魅力を知る女性が増えています。

UGCを生み出す第一歩は、Z世代を知ること〜データで見る、Z世代とSNS〜

UGCはあくまでユーザー生成コンテンツであり、PR投稿ではありません。自発的な投稿を生み出すためには、投稿の中心層である「Z世代」を知ることが重要です。

まずはZ世代のSNS投稿の実態を理解するために、年齢別のSNS投稿率を見てみましょう。ここではSNSの利用有無にかかわらず、それぞれの年齢全体での投稿率を示しています。

すると、Twitter、Instagramともに、投稿率は20歳前後が突出して高く、投稿のピークは、Instagramで19歳(全体の46.4%)、Twitterで23歳(全体の49.4%)と、どちらもZ世代でピークを迎えています。また、多少の傾向の違いはあるものの、Twitter、Instagramともに、30代手前で急激に投稿率が低下しています。

Z世代はInstagram 、Twitterの投稿率が著しく高く、20歳前後のユーザーに限れば、半数近くが日常的に投稿しています。その背景には、Z世代は完全なデジタルネイティブであり、幼少期からSNSに親しんできたため、SNSへの投稿のハードルが低いことも影響しているのではないでしょうか。

図1 年齢別のSNS投稿率(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女12-69歳)
※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島


Z世代がSNSを参考に購入しているモノ〜データで見る、Z世代のSNS経由の購買行動〜

ビデオリサーチ社の生活者データベース「ACR/ex」でZ世代の消費意識を見てみると、Z世代の40%以上が「SNSを参考に購入している」と回答しており、世代全体の1.7倍でした。

図2 Z世代の消費意識(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女12-69歳)

加えて、Z世代、全体ともに60%近くの方が「商品への人の評判が気になる」と回答。いかに、現代ユーザーが口コミを重視しているかが、データ面でも明らかになりました。

では、Z世代はSNSを参考にどのような商品を購入しているのでしょうか。こちらも「ACR/ex」を使ってSNSごとに見てみると、Instagramでは、Z世代は「美容」「ファッション」「グルメ」の順に高く、特に「美容」と「ファッション」は世代全体の1.4倍でした。

また、Twitterでは「美容」「グルメ」「ファッション」の順で、Instagram同様に、特に「美容」と「ファッション」は世代全体より高く、1.5倍以上でした。

図3 Instagram・Twitterに影響されて購入した商品項目(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女12-69歳)

Z世代は「SNSを参考にした購入」が他世代よりも多く、特に、美容やファッション関連では他世代よりもSNSでの影響力が大きいと言えます。このことから、「UGC×マーケティング」および、Z世代起点の「SNSマーケティング」は、美容とファッションとの親和性が高いと考えることができます。

Z世代は、SNS投稿が活発で、自分の好きなものを「推す」人たちです。UGCを生み出す最初の一歩として、Z世代に人気のインフルエンサーを起用することも有効な選択肢と言えるでしょう。つまり、彼らに愛される(推される)マーケティングの延長に、UGCはあるのです。


<著者プロフィール>


株式会社ビデオリサーチ マーケティングソリューション部
寺出朋子(てらで・ともこ)
2019年、株式会社ビデオリサーチ入社。メーカー等広告主や広告会社をクライアントに、広告効果測定やブランディングに関するリサーチに従事。同時にビデオリサーチのシンクタンク"ひと研究所®"の若者研究チームメンバーとして、若者のコンテンツ受容に関する研究に携わる。

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