2021.12.28

【オンデマンド視聴にご招待!】宇宙、人、夢をつなぐ 〜EARTHSHOTの挑戦〜「Advertising week asia 2021 Leadership Forum」セッションレポート①

今回で、連続6年目の東京開催となった「Advertising Week Asia」。2021年はコロナ禍以降初となるハイブリッド開催されました。そのなかから、11月19日(金)にリアルで先行開催されたイベント内のセッション、元JAXA宇宙飛行士の山崎直子さんと、講談社 クーリエ・ジャポン編集長の南浩昭の対談をレポートします。

✳︎C-stationではみなさまに、今年一年の感謝の気持ちを込めて、
本イベントのオンデマンド視聴の招待コードをプレゼントいたします。
(視聴期間:2022年1月6日(木)まで)
◆ご招待プロモーション・コード:2021

公式ウェブサイトご登録画面にて上記コードをご入力いただければ、無料視聴パスが発行されます。
※なお、パス発行およびログイン方法はこちらからご覧頂けます。

元JAXA宇宙飛行士 山崎 直子さん(右)と対談する講談社 クーリエ・ジャポン編集長 南 浩昭。
リアルで行われた対談の模様が「Advertising week asia 2021 Leadership Forum」でオンライン配信中


宇宙飛行士も「多様性」の時代

 山崎さんは、2010年にスペースシャトル・ディスカバリー号にミッションスペシャリストとして搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)の組立・補給ミッションに従事されました。

本日は、それまでの11年間の訓練期間における、さまざまなバックグラウンドを持つ多国籍なメンバーでのチームビルディングや、宇宙における国際協力などについて、宇宙滞在中に撮影した写真も見せていただきながらお話をお聞かせいただければと思います。まずは現在どんなことをされているのか、教えていただけますか?

山崎 現在は宇宙政策委員で政策面から宇宙に関わるとともに、「宙(そら)ツーリズム」またはスペースポートジャパンの活動などを通じて、宇宙と社会とを結びつけ、宇宙をより身近なものにしていく活動や次世代への宇宙教育などにも取り組んでいます。

元JAXA宇宙飛行士の山崎直子さん

南 今年、日本で13年ぶりに新しい宇宙飛行士募集の要項が発表されましたが、山崎さんが宇宙飛行士になられた時とは試験内容も違うのでしょうか。

山崎 昔は虫歯が一本でもあったり、視力が悪かったりすると宇宙飛行士になれない時代がありましたが、いまは、虫歯は治療してあればよく、視力もメガネやコンタクトで矯正されていれば問題ありません。

最近は理系という条件もなくなりました。ある程度の理系分野(STEM)の素養は必要ですが、それは選抜過程のなかで見ていくようです。身長も150センチ弱から190センチ強までかなり幅が広がり、宇宙飛行士も「多様性の時代」になった印象です。

 マンガ『宇宙兄弟』でも宇宙飛行士の試験内容が描かれていますが、実際にはどのような試験なのですか?

山崎 最初は書類審査と筆記試験です。なぜ宇宙に行きたいのかという動機や、英語力、STEM分野を含めた一般常識などの審査にパスすると、身体検査、面接、実技試験と約1年かけて選抜が行われます。

私のときには、最終試験では選考に残っていた8名が宇宙ステーションを模したような施設に1週間カンヅメにされ、外の世界とは一切遮断されたなかでさまざまな作業を行いました。

『宇宙兄弟』で真っ白いジグソーパズルを、1人で3時間以内に組み立てるという課題が出てきますが、これも実際にありました。

できたかどうかではなく、いかに工夫できるか、最後まで取り組めるかという「やり抜く力」みたいなものを見ていたような気がします。最終選考に残った8名のメンバーはもちろん、一緒に選抜試験を受けた仲間とは、いまでもネットワークがつながっています。

小山宙哉『宇宙兄弟』では、宇宙飛行士の試験で、主人公たちがホワイトパズルに挑戦するシーンが登場する 
画像出典:『宇宙兄弟』Twitterオフィシャルアカウント

宇宙飛行士になるまでの11年間にしていた訓練

 試験を乗り超えて宇宙飛行士の候補になってから実際に宇宙に行くまでの間は、どんな訓練をされるのですか?

クーリエ・ジャポン編集長 南浩昭

山崎 私は、宇宙に行くまでの11年間訓練をしていました。日本は独自の有人宇宙船を持っていないので、訓練の大半はアメリカ、ロシア、カナダ、それから国際宇宙ステーション参加国のヨーロッパの国々など、さまざまな国で行います。

自分の訓練だけではなく、ほかの人が宇宙に行っている間の地上サポートや、開発業務のお手伝いなどをしながら宇宙に行く日に備えていました。

山崎さんが経験した訓練の様子。(左下)120㎏の宇宙服を着て、プールの中で行う船外活動の練習。
浮力と宇宙服の重さをうまく調節し、無重力状態で、作業練習を行う (C)JAXA

 印象に残っている訓練を教えてください。

山崎 野外で行われるサバイバルや野外リーダーシップ訓練には鍛えられました。

たとえば、チームビルディングを目的とした野外リーダーシップ訓練では、宇宙飛行士だけではなく、企業の経営者や政治家、学生なども参加します。10日間10人1チームとなり、ロッキー山脈で100キロ離れたゴールまで10日後に移動するというミッションを行いました。

「毎日リーダーを交代する」という条件のもと、その日のリーダーを中心にすべてを決めていくのですが、自然が相手なので、計画通りにいかなかったり、意見が割れたりいろいろなことがあります。そのなかでチームビルディングを学ぶという訓練は、非常に印象に残っています。

宇宙飛行士は世界中からさまざまな性格や立場の人が集まるので、ともすると、自分の立ち位置が固定されがちになります。普段と違う環境下で違う役割を担うことで、「あの人は大人しいと思っていたけれどそうではない」「自分にはリーダーは不向きと思っていたけれど素養がある」など、お互いの発見とともに、自分の枠を広げる訓練にもなりました。

見上げた地球の美しさが教えてくれた「特別感」

 実際に宇宙に行かれて、いかがでしたか?

山崎 地球を頭上に見上げた瞬間、驚きました。

宇宙に行く前は宇宙が特別な場所、憧れの場所だとずっと思っていました。ですが、実際に宇宙から青い地球を見たときに、地球の方が憧れの場所であり、特別な場所だということを思い知りました。地球自身の力強さと繊細さを感じ、まるで"地球"という、ひとつの生き物と対峙しているような感覚になりました。

頭上に見上げた地球の美しさに圧倒されたという山崎さん

たとえば太陽の光を受けて、空気のところだけ色が浮かび上がると、空気の薄さがよくわかります。空を見上げるとどこまでも高く続きそうに見えますが、実際には、こんなにも皮のような薄さなんだなということにも驚かされました。

青い線のように見えるのが地球の空気の層

 お忙しくて地球を眺める時間はそれほど取れないとお聞きしたことがありますが、宇宙でのスケジュールも教えてください。

山崎 私はアメリカ人クルーと一緒にペアを組んで、カナダ製のロボットアームを操作し、10トン近くあるイタリア製の補給モジュールを取り付けました。ほかにも、さまざまな実験装置をロシア人クルーらとともに設置しました。こうした国際協力ができたことも、とてもうれしかったです。多国籍のクルーが地球を見ながらともに任務を行ったことで、同じ地球の仲間として、より結束感が高まりました。

私は滞在日数が15日間と比較的短かったので、15日間連続で作業を行いましたが、先日地球に帰還した星出彰彦さんのように6ヵ月間という長期滞在におよぶ場合は、土日はお休みになると聞いています。ただ、土曜日は物品管理や清掃に追われるそうで、日曜日にひと息ついておられるようです。

宇宙船での実験装置取付作業の様子

 宇宙ではどのように時間管理をされているのですか?

山崎 宇宙では時間の感覚がわからなくなってしまうので、24時間を1日と決め、グリニッジ天文台の時刻に合わせて朝の6時くらいに起き、夜の10時くらいに消灯するという規則正しい生活リズムをつくっていました。

 宇宙では水の貴重さも実感されたとお聞きしました。

山崎 そうですね。私が行く少し前から水も循環されはじめ、トイレで使う水や尿などもリサイクルして自給自足に取り組みだしていたことも印象に残っています。

宇宙船の中では、ひとり1日3リットル程度の水で賄うというルールがありました。当然お風呂やシャワーはなく、飲み水がほとんどです。あとは宇宙食を戻すお湯で使って、残りのほんのちょっとした水で体を拭いたり、歯を磨いたりということしかできませんでした。

地球は大きな水の惑星といわれています。しかし海、川、運河、氷河の水すべての水を1カ所に集めると、地球の重量のわずか0.02%しかないということが人工衛星のデータなどから、わかってきました。実際に、地球上の7分の1の人が安全な距離で安全な水にアクセスできないといわれています。水の大切さ、貴重さをあらためて実感しました。

地球上の水を1カ所に集めた図

 地球に戻られたあと、貴重な体験をどのように活かしているのですか。

山崎 次世代の人たちに宇宙のことをもっと知ってもらえたらいいなということから宇宙教育に力を入れ始めました。科学館で宇宙教室を定期的に開いたり、各地域に支部がある宇宙少年団のお手伝いをしたりするなど、宇宙を通じて身近な地球のことに興味を持つ人を増やす活動をしています。

私には、いつか月の上に"寺子屋"のようなものが作れたら、という夢があります。そのためには、もっとたくさんの人が宇宙に行ける時代になってほしいので、国の宇宙港(ロケットや宇宙船を打ち上げるポート)だけではなく、民間の飛行機のように宇宙船が離発着できる「スペースポート」をつくろうという活動もしています。

すでにアメリカでは12港整備されていて、イギリス、イタリア、グアム、ブラジル、ドバイなども力を入れ始めています。日本がアジアのなかで宇宙輸送のハブになれたらいいなという思いから、スペースポートジャパンという非営利型の一般社団法人を立ち上げました。

一般社団法人スペースポートジャパン 公式サイトより 
© canaria, dentsu, noiz, Space Port Japan Association


現在は国内4ヵ所に民間のスペースポートが整備されはじめていますが、アメリカでは、ニューヨークと上海を39分で宇宙船を使って結ぶという構想を数年前に出しています。もしかしたら各地が1時間以内に結ばれていくという未来が、そう遠くないうちに実現できるかもしれません。

 スペースポートは、日本の宇宙ビジネスを活性させる点でも大きく貢献できそうですね。

山崎 宇宙産業は、今年6月に決定された国の成長戦略の重点領域にも入っています。現在世界的に40兆円の産業規模といわれていて、2030年代後半には100兆円を超えるといわれています。

米国を中心に宇宙旅行ビジネスが立ち上がりつつあり、今後巨大マーケットへと成長する可能性が高まるなか、宇宙先進国である日本に複数の民間スペースポートを作り、日本を宇宙旅行や宇宙輸送のビジネスの拠点とすることは、日本経済にとっても重要な意味を持ちます。

宇宙からのデータや画像を農林水産業、カーナビのような測位データ、自動運転などいろいろなことに可能性が広がっています。将来的には、スペースポートをハブに、複合的な産業として盛り上がっていけたらいいなと思っています。

 宇宙産業はSDGsの観点からも期待されています。日本人として唯一山崎さんが参画されている「アースショット賞」も、SDGsのゴール達成に大きく寄与する取り組みだと思いますが、具体的な内容を教えていただけますか?

山崎 アースショット賞は「地球環境の回復」を目的に、2021年から10年間で総額5000万ポンド(約68億円)を授与するアワードです。自然回復、空気、水、気候変動、ゴミのない世界の5分野に対してそれぞれ毎年賞を設け、それを10年間コミットして続けていくことによってイノベーション、アイデア、技術だけではなくて社会のシステムまで含めて、それをどんどん地球規模にスケールアップしていこうというものです。

私はこのなかで評議員を務めているのですが、第1回となる今回は、ファイナリストに日本の「WOTA」という水のリサイクルをするスタートアップ企業が選ばれました。

世界中から集まった750のノミネートのなかから、
最終選考に日本のスタートアップ企業が選定されたことも話題となった

今後は、企業の成長やビジネスの幅を広げるアワードへと発展させ、日本でも受賞式が開催できたらと願っています。

持続的な地球環境保護には、力を合わせて同じ方向に向けていくことが大切だと思っています。また発信をしていく、ネットワークを広げていくということも重要です。みなさんと大きな目標をひとつにして、そこに向かって力を合わせていけたらと思っています。

本日は貴重な機会をありがとうございました。


開催日時:2021年12月7日(火)9:35〜10:20
Channel:On-site
テーマ:メディアビジネスの革新とデジタルトランスフォーメーション: 2
登壇者:宇宙飛行士 山崎 直子さん
株式会社講談社 クーリエ・ジャポン編集長 南 浩昭
https://asia2021.advertisingweek.com/program

講談社が提供する各種プロモーションサービスのご利用に関するお問い合わせ・ご相談はこちら