マーケティング戦略において「ターゲティング」は欠かせない重要な要素です。 適切なターゲティングができていないと、商品とマッチしていない「売れない市場」に商品を売り込むこととなり、ムダを生んでしまいます。
ターゲティングを行うことによって、従来のターゲットを変更し、それによって売れない商品が売れるようになったことも珍しくありません。それほどにターゲティングは、商品の売上を左右する重要なポイントです。 この記事では、ターゲティングと何か、どのような方法でターゲィングをしたらいいのか、 どのようなターゲティングの成功事例があるのか、などを解説します。
ターゲティングとは
ターゲティングとは、さまざまな分析によって「市場(顧客層)」を絞り込んだうえで、商品を必要としていて、かつ、そのビジネスにとって適切なターゲットを選び出す、一連のマーケティング活動を指します。
商品とニーズがマッチしていない市場に売ろうとしても、購入に至る可能性は低く、予算や時間をムダにしてしまいます。またニーズだけでなく、そこで勝てる市場を選ぶことも大事です。
売れていた商品の売上が下がってしまったときに、ターゲットを追加したり変更したりすることで、新たな市場での売上が生み出せることもあります。ターゲティングはとても大切なマーケティング活動であることがわかります。
広告を出稿する際にも、不特定多数に広告を出すより、成約しやすいターゲットに絞って広告を出したほうが、予算をムダにすることなく効率的です。
マーケティングにおけるSTP分析
マーケティング戦略を考える際に、「STP分析」と呼ばれる分析方法があります。STPとはセグメンテーション(S)、ターゲティング(T)、ポジショニング(P)を意味し、ターゲティングも3つの分析ステップのひとつとなっています。それではひとつずつ解説していきましょう。
セグメンテーション
セグメンテーションは、市場をニーズによって細分化し、そこに「年齢」「性別」「職業・職種」「趣味」「生活スタイル」などの要素を組み合わせながら分類し、グループを作る方法です。
ターゲティングをする前段階であり、このセグメンテーションがうまくできていないと、適切なターゲティングが行えません。
セグメンテーションの段階で、ニーズを持つグループがどこにあるかを充分に把握することができていれば、次に行うターゲティングで適切な判断をすることができます。
ターゲティング
ターゲティング段階では、セグメンテーションでグルーピングした市場のなかから、自社の商品の販売に適した市場を決めていきます。
決定するにあたっては、そのグループの市場規模や成長性、そのグループを選んだ場合の競合との優位性、そのグループに効果的に情報を届けることができるかという伝達性などを考慮して判断します。
ターゲティングを実際に行う場合のフレームワークとして、次項で「6R」についてご紹介します。
ポジショニング
ポジショニングでは、ターゲティングで決めた市場に対して「商品の立ち位置」を決めていきます。商品にどのような魅力があるのか、商品がどのような価値を提供するのか、などを明確にし、ターゲットから選ばれるような位置づけを見つけ出します。ポジショニングマップを作ってみるなども良い方法です。
またポジショニングをしっかり決めることは、その後の広告やブランディング戦略の軸を明確にすることにもつながります。
ターゲティングのフレームワーク「6R」
ターゲティングを行う際に役立つ、「6R」と呼ばれるフレームワークがあります。「6R」では、以下の6つの項目で、市場を判断します。
有効な市場規模(Realistic Scale)
市場を判断するときは、その規模に注意しなければなりません。市場規模が小さいと商品が売れる数も少なくなってしまう可能性があります。
市場でどれくらいの商品が売れそうなのか、事業を継続できるだけの市場規模があるのか、などを確認しましょう。
競合(Rival)
その市場に強力な競合がいるのか、いないのかは重要なポイントです。強い競合がいる場合、商品と市場がマッチしていても、売れるまでの難易度が上がります。逆にいない場合は、さほど苦労せずとも商品が売れる可能性があります。
競合がいない場合には、なぜ競合がいないのかも確認しておく必要があります。
到達の可能性(Reach)
自社が、その市場にアプローチをする手段があるのか、またターゲットが簡単に商品を手に入れられるのかを確認します。商品と市場がマッチしていたとしても、現実的にターゲットに商品を知ってもらうことが困難だったり、商品を届けることができなかったりでは意味がありません。
たとえばいい市場だったとしても、遠く離れていてそこまで商品を運ぶことが困難だった場合は除外せざるを得ないでしょう。
測定可能性(Response)
市場にアプローチをするときに、広告などの施策の成果を測定できるかどうかを確認します。成果を測定できれば、そのデータを元に、施策の改善やマーケティング戦略の見直しが可能です。
また施策だけでなく、市場に関するデータを集める手段がどれくらいあるのかも確認しておくといいでしょう。
成長性(Rate of Growth)
その市場において、今後成長が期待できるかどうかは非常に重要です。対象となる人数が頭打ちである、あるいはニーズが衰退気味であれば将来性が薄く、商品の売れ行きの伸びも見込めないでしょう。
また現時点では好調であっても、市場が衰退し始めていないかも重要なポイントです。長期的な視点で市場を見極めましょう。
波及効果(Ripple Effect)
商品が売れたときに、どれだけ周りに波及しそうかという視点です。商品が購入された後に「口コミ」が起こると、急速に商品の認知度や売り上げが高まる可能性があります。
現代では、SNSでシェアされやすいかどうかも、市場を判断するうえで重要なポイントです。
ターゲティングの事例
付知ヒノキの高級ねこプランター
観光事業会社「ゴシンボク」が販売をした「付知ヒノキの高級ねこプランター」は、ターゲティングの重要性がわかる事例です。
当初、岐阜県の旧付知産ヒノキを使った花用のプランターの販売を開始したものの、まったく売れませんでした。しかし、この商品を猫向けのベッドとして売り出したところ、SNSで話題となり、在庫がなくなるほどの売れ行きとなりました。
ターゲットを、「花を育てている人」から「猫を飼っている人」に変えただけで、大きな反響を生む結果となったわけです。
このように、ターゲティングによってターゲットを変更することで、同じ商品でも売れ行きが大きく変わるケースが見られます。
シーブリーズ
夏の制汗剤として有名な「シーブリーズ」。販売当初は、海で遊ぶことが好きな20〜30代男性をターゲットとして販売されていました。しかしその後、マリンスポーツを楽しむ男性が減ってしまい、売上が低迷してしまいます。
そこで改めて市場調査をおこなったところ、運動部など部活に所属している女子高生がもっとも汗ケアに気を使っていることをつきとめ、「部活で汗をかきがちな女子高生」にターゲットを変更しました。
ターゲットの変更に合わせてブランディングから見直し、商品のパッケージや広告イメージも刷新しました。このリニューアルによって、わずか1年で売上が8倍にもなり、いまにつながるロングヒットとなりました。
ターゲティング後に広告で効果的にアプローチする
ターゲティングをしたあと、そのターゲットに対して広告やSNSなどを使い、最適なアプローチをすることも重要です。正しいターゲティングができてもアプローチができなければ、マーケティング戦略は失敗します。広告の選定では、狙ったターゲットに対してすぐに的確なアプローチができるかどうかが重要な判断基準です。
講談社が提供している「OTAKAD」は、講談社の持つ膨大なデータとAI解析によって、より精度の高いターゲティングと的確な広告掲出ができる広告プラットフォームです。
広告の配信後は、ウェブサイト別、クリエイティブ別、デバイス別などさまざまな角度から検証できる詳細な分析レポートが確認できます。これによって、想定ターゲットとの整合性を確認できるほか、新たなユーザー層(ペルソナ)や新しいクリエイティブの切り口の発見にもつながります。
ターゲットを間違えてしまうと、売れる商品も売れなくなってしまいます。逆にターゲティングによって適切なターゲットに変えるだけで、売れなかった商品が売れるようにもなります。
ターゲティングは、その後の販売戦略やブランディング、プロモーションなどにも大きな影響を及ぼす、戦略の根幹であるといえます。マーケティングを成功させるには、適切な市場を選び、ターゲットを決めることが重要なのです。大雑把に決めたり、感覚で適当に決めるのではなく、商品の売上を決定づける大事な項目として、じっくりと取り組みましょう。