2021.06.29

ペルソナは、PDCAを回すことで初めて効果を発揮する──マーケティング基礎知識「ペルソナ設定」とは?

マーケティングでよく耳にする「ペルソナ」。しかし、ただ設定するだけでは、その効果は発揮されません。構成要素や設定後にすべき効果検証など、マーケターとして知っておきたい「ペルソナ設定」におけるポイントについて、株式会社講談社 コミュニケーション事業第一部 デジタルマーケティンググループの山﨑瑛記が解説します。

山﨑 瑛記(やまざき・えいき)
株式会社講談社 コミュニケーション事業第一部 デジタルマーケティンググループ

2016年に新卒で株式会社フォーエムに入社。システムエンジニアリング業務や大手出版社やオンラインメディアの広告収益化支援コンサルティング業務に従事。2019年に株式会社講談社に入社。デジタルメディアの運用型広告を担当。2019年10月に講談社の独自データを活用した広告商品「OTAKAD」をリリース、現在もプロダクトマネージャとして従事。

そもそも「ペルソナ設定」とは?

──マーケティングにおいて「ターゲットの適切な絞り込み」は非常に重要な要素です。そのためには「ペルソナの設定」が必要だとよく言われていますが、そもそも「ペルソナ」とは何ですか。

山﨑 マーケティング用語としての「ペルソナ」とは、商品やサービスを利用する典型的な仮想のユーザー像のことです。年齢、性別、職業はもちろんのこと、住んでいる場所や、年収、趣味、家族構成、日々の行動パターン、ライフスタイルなどを設定するケースが多いですね。

──設定する項目は、多ければ、多いほどいいのでしょうか?

山﨑 そうですね。細かく設定すればするほど、ユーザー像をより正確に描くことができますから、効果的なマーケティングが実現可能です。

ただしその効果は、「あくまで想定しているペルソナが適切であることが前提」となります。

「ペルソナ」の構成要素とは?

──「適切なペルソナ」の構成要素にはまずどんな項目が考えられますか

山﨑 代表的な項目として、以下のようなものが挙げられます。

・性別
・年齢
・居住地
・世帯年収
・未既婚
・子ども有無
・職業

たとえば、20代女性、未婚、東京在住、大手広告代理店勤務、年収450万円。さらにライフスタイル(興味関心、趣味嗜好)にまで踏み込むなら、「スイーツとお酒が好きだが、帰りが遅いのでスーパーではなくコンビニで購入している」、「休日はネットフリックスを見るか、彼氏と会うことが多い」といった具合に、仮想のユーザー像を設定します。

興味関心、趣味進行まで反映したペルソナの例 

年齢や性別などの基本情報だけでなく、ライフスタイルから、ユーザーの趣味嗜好まで把握できると、マーケティング施策も検討しやすくなります。

ペルソナを細かく設定するメリットとは?

──ここまでペルソナを細かく設定することは、企業のプロモーション活動において、どのようなメリットがあるのでしょうか?

山﨑 最大のメリットは、広告予算の最適化だと思われますね。

もちろん、商品の規模感、対象が幅広い場合、たとえば飲料やコスメなどの場合には、基本情報だけ決めて、詳細なペルソナ設定をしないで広告を打つというケースもあります。

とはいえ、もし詳細かつ適切なペルソナ設定ができていれば、"無駄"を最小限に抑えることが可能です。

──「広告予算の無駄が最小限に抑える」というのは、どういうことでしょうか?

山﨑 よく例に上げられるのがデモグラフィック情報でのターゲティングです。スキンコスメ商品を「30代女性」でターゲットしているキャンペーンがあるとします。その30代女性には乾燥肌に困っている方もいらっしゃると思いますし、シワが気になり始めた、という方もいらっしゃると思います。

どんな課題を持たれている方にこの商品を届けるべきか、商品の強みを解決策と思ってもらえるのか、まで議論を深めておかないと、商品と広告を受け取るユーザーとの間でミスマッチが起きてしまう可能性があります。

特に、WEB広告の場合は、この"無駄"を最小限にすることが、「広告予算の最適化」と「効果の最大化」につながります。

「ペルソナ」と「ターゲット」は何が違う?

──ペルソナと似た言葉として「ターゲット」もよく聞きますが「ペルソナ」と「ターゲット」は、何が違うのでしょうか?

山﨑 言葉の意味としては、本来「ペルソナ」は"仮面"を意味し、心理学的には人の"外的側面"を指す用語です。一方で、「ターゲット」は"標的"を意味します。

私見ではありますが、広告的な意味合いでいいますと、広告を届けたい特定のユーザー層は「ターゲット」として指す場合が多いです。その前段階、マーケティングを検討するうえでの、ライフスタイル(興味関心、趣味嗜好)にまで踏み込んだユーザー像の設定は「ペルソナ」と表現するケースが多いように感じます。

なお、一般的に「ターゲット」よりも、「ペルソナ」の方が細かくユーザー像を設定します。しかし、商品やサービスを求めているユーザーのライフスタイルまで設定することは容易ではなく、そこに「ペルソナ設定」の難しさが存在しているように思います。

ターゲットとペルソナの違い。ペルソナの方がより詳細なユーザー像を設定する


ペルソナは、本当に設定するべき?

──ペルソナの設定には、時間と労力がかかるという難しさがある反面、成果が見えづらいケースもあります。ペルソナ設定の有用性に疑問を感じている方もいるのではないでしょうか?

山﨑 そうですね。まずお伝えしたいのは、ペルソナというのは広告の効果を最大化するための手法のひとつに過ぎません。ほかにもストーリー設定とか、カスタマージャーニーの想定など、マーケティングにおいて考えるべきポイントは多数あります。その中で、どれくらいペルソナを重視するのか。極端なことを言えば、「ペルソナを設定しなければマーケティングは成功しない」わけではありません。

もし「ペルソナ」を重視するのであれば、設定したのちに、PDCAを回しながら、検証し続けることが重要です。なぜなら、もしペルソナの設定が間違っていたら、それは届ける相手を間違えていることになり、マーケティング施策の効果が下がってしまうからです。

ファーストタッチポイント選定にも活きる「ペルソナ設定」

──ある意味でペルソナ設定は、諸刃の剣。適切な設定ができれば、大きな効果を期待できそうです。山﨑さんおすすめの「ペルソナ活用法」があれば、教えてください。

山﨑 ユーザーとのファーストタッチポイントを検討する際は、非常に有効だと思います。

ユーザーと商品(またはサービス)が出会うためには、どこかで何かしらのファーストタッチポイントがあります。それはテレビかもしれませんし、WEBかもしれませんし、チラシかもしれません。

全体の広告予算の中から、どこにいくら振り分けるのか。その検討の際には、ペルソナ設定は有効に作用しやすいです。なぜならタッチポイントごとに、届くユーザーは異なるからです。

メッセージを届けたい相手によって、タッチポイントは自ずと変わります。ある程度興味を持ってくれる人たちに対して、興味を持ってくれる接点できちんと届けてあげることで、広告効果は最大化する。ならば、事前にどの人に広告を当てるのかという議論、つまりペルソナ設定をし、タッチポイントを検討する必要が出てくるわけです。

──ペルソナ設定をしておくと、具体的に、ユーザーとのファーストタッチポイントを検討する際に、どのように活用できるのでしょうか?

山﨑 たとえば、ペルソナの中に「週末はゴルフをする」という人物像があったとすれば、ゴルフ場に行く車の中で流れるラジオに出稿できないだろうかと考えられますし、「Kindleでマンガをよく読む」という人物像であれば、電子書籍の中に広告配信するなど、ユーザーの行動パターンから、適切なファーストタッチポイントを導き出すことができます。

「ペルソナ設定がマーケティング効果を高める」と言われるのは、このように、ユーザー像の行動パターンから、最適なマーケティングを検討できるからです。


ペルソナ設定が間違っていた場合は、どうすべき?〜PDCAを回す重要性〜

──ペルソナを細かく設定した場合、もしその想定が的外れなものであった場合に、多くのユーザーを取りこぼしてしまうのでは、という懸念もあります。

山﨑 前提として、広告においては購入対象となるユーザー全員に宣伝し、100%無駄なくアプローチする、ということはまず不可能です。その上で、取りこぼしや的外れが発生してしまうことは、それ単体で言うと決して「ペルソナ設定」のデメリットではありません。

ペルソナというのは、あくまでPDCAサイクルを回す上での「仮説」にあたります。設定したペルソナで広告配信をしたところ、想定とまるで違う結果になったとしても、踏まえて「改善点」を検討し、次のアクションへとつなげることで、ペルソナは最適化されていきます。

ペルソナを検証するPDCAのイメージ

懸念があるとしたら、そうしたPDCAを回す仕組みのない状態で、ペルソナ設定をしてしまうことでしょうか。

自分たちの設定した「ペルソナ」を過信してしまい、これが正解だと思い続けてしまうことで、結果として広告費を浪費し続けてしまう。それを防ぐためには、ペルソナ設定をするだけでなく、同時にPDCAを回して検証し続けることが、マーケティングの最適化につながると言えるでしょう。

ペルソナ設定で広告効果を最大化するテクニックは?〜効果検証がしづらい大規模プラットフォームの活用法〜

──Google広告やFacebook広告など、大規模プラットフォームを活用した広告配信では、ターゲティングの条件を細かく設定可能です。ここでもやはり「ペルソナ設定」は活きそうです。一方で、詳細なレポートは得ることができないため、PDCAは回しづらいように感じます。

山﨑 大きなプラットフォームほど、打った広告に対する検証がしにくい傾向にあるかもしれません。

なぜなら、Facebookに出稿して、結果的にコンバージョンが伸びたけど、要因を探っていくと、ターゲティングが的中したのではなく、実はTwitterなどの他のプラットフォームで偶然バズったことが真の要因だったというのも、よくある話です。

一方で幅広いユーザーに配信できるため、最初のペルソナ設定が合ってさえいれば、広告効果を最大化できるというメリットもあります。

私がおすすめしたいのは、Google広告やFacebook広告などの大規模プラットフォームと並行して、PDCAを回しやすい別のプラットフォームにも出稿をすることで、ペルソナを検証しながら広告効果を高めていくという方法です。

ペルソナ設定、検証に活用できる「OTAKAD」

──講談社独自の広告配信プラットフォーム「OTAKAD」を活用したマーケティング施策は「PDCAの回せる環境」に該当すると思いますが、具体的にどういう仕組みなのでしょうか。

山﨑 講談社が提供する広告ネットワーク・プラットフォーム「OTAKAD」では、配信された広告に対して、いつ、どの講談社メディアで接触したのかといった、ユーザー一人ひとりの細やかな分析が可能です。

どういう文脈の中で広告を見て興味関心を示してくれたのかを、より明確に把握できるため、結果の評価もしやすく、適切にペルソナの検証、PDCAを回すことができます。また検証だけでなく、そもそもの最初のペルソナ設定(仮説)を検討する際にも、広告配信の結果から、ペルソナを考える材料を獲得することが可能です。

──昨今は、個人情報保護の観点から「Cookie規制」が大きな話題となっていますが、「OTAKAD」は講談社メディアにだけ横断的に広告配信するサービスですので、1st party cookieを利用できるというのもメリットになりそうですね。

山﨑 はい。1st party cookieを使えるからこそ、「OTAKAD」では個々のユーザーの細かな情報が取得でき、精度の高い詳細な分析レポートを出すことができます。

最後に、繰り返しとなりますが、「ペルソナ」はただ設定するだけでなく、「検証」し、PDCAを回すことで効果が最大化されます。広告配信をする際はぜひ、多角的な視点からプラットフォームを選び、上手に使い分けましょう。

──本日お時間いただき、どうもありがとうございました。「そもそもペルソナとは」、「ペルソナ設定の重要性」などについてお話をいただきました。

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