2021.06.04

データドリブンとは? 基礎から学ぶデータドリブンマーケティングとデータドリブン経営の考え方

ここのところ、「データドリブンマーケティング」や「データドリブン経営」などの言葉がビジネスシーンでよく聞かれるようになりました。
「データドリブン」は、さまざまなデータによって企業活動の意思決定や企画立案をより良いものにしてゆくための方法論です。
ますます重要視されているデータドリブンを、経営やマーケティングに取り入れて行きたい方に向けて、概要と導入のポイント、さらに事例などを交えてお伝えします。

データドリブンとは

データドリブンとは、企業がさまざまなデータを集め、可視化し分析することによって、企業のマーケティング戦略や経営方針を決定する業務プロセスを指します。
企業におけるデータドリブンの必要性は強く意識されつつありますが、実際に活かすことができている企業はまだ多くないようです。膨大なデータが飛び交う現在、データを活用できるかどうかは、企業の明暗を分けるほど重要であるという認識が必要でしょう。

データドリブンとマーケティング

データドリブンが今注目されている背景

マーケティング分野を中心に、なぜ今データドリブンが注目されているのか。それはITの進歩などによって得られる活動機会とデータの拡大、そして人々の多様性によって行動が大きく変わっていることと関係があります。

購買行動ひとつを取っても、消費者はリアルとデジタルを行き来しながら買い物をするようになりました。
消費者が商品を認知してから購入に至るまでの行動を例に考えてみましょう。ある商品の基本情報をCMで知り、SNSで評判を聞き、実際に店舗へ出向いて商品を確認し、再度ネット上で類似商品と比較したり口コミを調べるなどの情報収集をし、やっと購買の意思決定をしたとします。

このような場合、消費者の購買行動はネットとリアルを行き来する複雑な動きをしています。従来からあるマス告知や店頭訴求などのアプローチだけでは、増加する消費者との接点において充分な効果を上げることが難しくなりました。
そこで消費者の行動をより理解し、効果的なアプローチをする戦略を立てるため、根拠となるデータを活用してアクションするデータドリブンの考えかたが注目されてきたのです。

データドリブンへの注目とともに、精度の高いマーケティングツールも登場しました。このようなツールの進化もあり、企業は消費者に関するデータをさまざまな方法で収集・分析できるようになりました。
データを分析し、アクションプランを立てて実行と改善を繰り返すデータドリブンのプロセスは、まさにマーケティングのPDCAに一致します。

データドリブンマーケティングの構築方法

対象とする市場や消費者のデータを集め分析することで、自社に最適な戦略を見出すデータドリブンマーケティング。費用対効果を高める面でも大きなメリットがあります。
それでは、データドリブンマーケティングを構築するステップについてご紹介していきましょう。

1.KPIを設定する

まずはデータドリブンマーケティングを取り入れることで達成すべきゴールを設定します。そして、そのゴールを達成するために必要な個々のKPIを設定します。
たとえば「商品の売り上げ◯%アップ」がゴールであれば、そのために必要な個別の施策におけるKPIは何かを考えます。たとえばSNS発信後の反応数、口コミ収集数、カタログのダウンロード状況、オンラインショップへの訪問状況や成約数など、さまざまな指標があるでしょう。ここで決めた指標は、どのプロセスにおいても常に意識しなければなりません。

2.データの可視化と分析

収集できるマーケティングデータの内容は、担当する部署や部門によって異なります。たとえばWEB展開を担当する部門ならWEBサイトにおけるユーザーの行動履歴やオンラインショップの購買履歴などで、キャンペーン展開を担当する部門ならキャンペーン参加者の属性やアンケート回答結果など、販売管理を担当する部門なら在庫数や販売数などがあるでしょう。

データが集まったら分析の段階に入りますが、データの可視化から分析・共有まで自前で行おうとすると、膨大な時間とノウハウが必要です。そこで多くの場合、専門のツールが使用されます。
ツールには扱うデータや目的に応じていろいろなタイプのものがあり、中には外部サイトが提供するパブリックデータを取り込み、社内のデータとあわせて分析してくれるツールもあります。代表的なツールについては後ほど紹介します。
データドリブンを推進するには、ツールの存在は欠かせないといえます。ただ、ツールはいろいろな方向から可視化と分析をしてくれますが、どこに注目すべきかの正解を提示してくれるわけではありません。最も大事なことは、どの分析結果がKPIやゴールに対して重要なのか、マーケティング視点で見極めることです。

3.アクションプランの立案と実行

データを分析し重要な結果を見極めたら、具体的なアクションプランの立案と実行に入りますが、ここからはツールに頼りきるプロセスではなくなります。
分析したデータをKPIと照らし合わせ、ゴールを達成するための施策を導き出して実践するマーケティング経験とスキルが必要になります。社内人材の確保とともに、必要があれば専門のコンサルティングに依頼することも考えられます。
データドリブンマーケティングの実行には、部署を超えた協力と連携が必要となる場面もあります。ゴールを達成するためには、組織全体が共通の認識を持って体制を構築すること、そして全体を統率できる人材を配置することなども重要となります。

データドリブン経営とは

データドリブンは、前述のような商品やサービスのマーケティング戦略だけでなく、営業戦略、人事計画、生産計画、財務分析など企業経営におけるさまざまな活動の意思決定で活用することができます。これがデータドリブン経営です。
データドリブン経営を推進するには、経営者層がデータドリブンの必要性を理解し、部門連携、ツール、人材確保などの環境を整えることが大切になります。

本から学ぶデータドリブン

データドリブンは新しい技術やソリューションによって日々進化を遂げており、そのキャッチアップは重要ですが、一方で体系的な知識が必要な分野でもあります。データドリブンに関する基礎知識や活用するための思考方法は、本から学ぶことで理解が深まります。

データ・ドリブン・マーケティング 最低限知っておくべき15の指標

著者はマーケティング分野の最高峰、米国ケロッグ経営大学院で教鞭をとり、マイクロソフトやインテル、デュポンなど世界の先進企業でのコンサルティング経験があるエキスパートです。この本はデータドリブンマーケティングに不可欠な指標について解説しており、アマゾンの社員の教科書としても使われているそうです。
データにもとづいたマーケティングの意思決定を進め、業績を伸ばしたい経営者やマーケティング幹部必読の本です。

引用:https://www.amazon.co.jp/

データ資本主義 21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か

ビッグデータ・ビジネスの本質を深く掘り下げた一冊です。
情報経済論の第一人者が、従来の歴史を塗り替えつつあるビッグデータ経済について論じています。新たな科学的方法論に基づき、ビッグデータ主導の経済や社会の構図から問題点まで明らかにしていきます。

引用:https://www.amazon.co.jp/

データドリブン経営入門

5G時代を迎えてデータが爆発的に増加する中、経営に必要な情報をいかに抽出し、どのように企業経営やマーケティング戦略に活かしていくべきか。基礎知識から基盤となる技術まで要点を解説し、データドリブン経営の導入をすすめます。

引用:https://www.amazon.co.jp/

データドリブン経営による企業事例

データドリブンを経営やマーケティング戦略に実際に取り入れた事例をご紹介します。

JTB

旅行会社のJTBは、データから顧客の渡航目的を発見し、そこで得た分析結果から施策を実行するデータドリブンマーケティングを実践しています。
JTBではデータドリブンの考えかたが企業全体に浸透しており、データドリブン専門部署まで設置されています。
部署の中もデータを分析するチーム、アクションプランを考え実行するチーム、統合データ基盤チームなどに分かれており、それぞれが顧客や経営の目線でニーズや課題を考えられる体制となっています。データドリブンを成功させた企業の代表例といえるでしょう。

トライアルカンパニー

小売業を展開する株式会社トライアルカンパニーは、スーパーなど72店舗の店内に約3,500台のカメラを設置し、消費者の動きや商品棚などのデータを収集・分析することで、商品の配置や欠品の対応などに活用しています。
データ分析によって最適な場所に最適な数量の商品を陳列することで、棚回転率や欠品改善率などの指標を大幅に向上させています。

USJ

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、データドリブンとは逆をゆく人の感覚を重視したマーケティングを指向していましたが、ある時点から先進的なリーダーを中心にデータドリブンの考えかたへと方向転換。施策をひとつひとつ変革していきました。
まずはパークに来園する消費者のデータを手に入れようと、WEB予約の改善に力を注いだ結果、ECサイトでのチケットの販売数が3年間で3倍になりました。
併せて「スマートゲート」の導入をきっかけに、来場者の導線データを確保し、マーケティングに活用していきました。その後もパーク内での行動を可視化するため、センサーやGPSを活用してデータを収集。その分析に基づいたサービスを展開しています。

データドリブンツールの種類

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ここからは、データドリブンに欠かせないツールの種類について簡単にご紹介します。
それぞれのジャンルに多くのツールが存在しますので、実際に選定する際には各企業の目標や課題、扱うデータ、必要となる機能などを慎重に検討することが大切になります。

BI(ビジネスインテリジェンス)

BIは、企業が収集し蓄積した多くのデータを分析・可視化して、マーケティング戦略や売上分析、予算管理、人事管理などさまざまな経営の意思決定に役立てるツールです。
代表的なツールとして「Tableau」「Salesforce Analytics」「Google データポータル」などがあります。

MA(マーケティングオートメーション)

MAは、顧客情報を収集・蓄積して分析やコミュニケーションを行うことで、見込み客を育成したり実際の成約につなげるためのツールです。
顧客情報に基づき、それぞれが求めている情報を適切なタイミングで提供することで購入意欲を育てます。またそれに対する顧客の反応を分析し、改善を推進します。多くのプロセスを自動で行うことができ、効率的な収益化をサポートします。
代表的なツールとして「Probance」「Pardot」などがあります。

WEB解析ツール

Google analyticsが代表的な支援ツールとして知られるWeb解析ツールは、自社サイトへの訪問や閲覧状況、ユーザーの行動や閲覧環境など、さまざまなデータを提示してくれます。
ユーザーがどこからサイトへ流入したのか、どのページから閲覧したのか、滞在時間はどれくらいか、どこで離脱したかなどを分析することで、自社サイトの課題を見つけることができます。

DMP(データマネジメントプラットフォーム)

DMPは、企業が収集した顧客データを分析することで、ユーザーの行動や興味関心などを把握することができるプラットフォームです。DMPの中には、自社のデータと外部サイトが提供するパブリックデータを統合して分析活用できるものがあり、商品開発や新規顧客開拓、広告活動などに活用することができます。
代表的なツールとして「Rtoaster」「Repro」などがあります。

SFA(セールスフォースオートメーション)

SFAは主に営業プロセスを管理し、営業の効率化や利益向上を図るためのツールです。顧客情報や営業スタッフの活動情報の共有はもちろん、活動記録や顧客対応記録をもとに次に取るべきアクションを教えてくれたり、レポートを自動作成するなどの機能を持っています。営業課題を抽出する際にも有効です。
代表的なツールとして「Salesforce」「Senses」などがあります。

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)

CRMは、顧客との関係を継続的に築き上げて営業活動の効率化や利益向上を図るだけでなく、サービス改善やマーケティングにまで活かしていくためのツールです。
購買履歴や要望、クレームなど顧客にかかわる情報を記録・分析し、それぞれに応じたアプローチや対応が実施できる環境を提供します。
代表的なツールとして「Sales Cloud」「eセールスマネージャーRemix Cloud」などがあります。

データドリブンを活かす広告配信方法

最後に、いまや集客に欠かせない広告配信においても、データを活用した施策を行うことをおすすめします。
講談社が提供するデジタルマーケティングサービス「OTAKAD(オタカド)」は、複数メディアを横断して取得した読者データをもとに、読者を独自のセグメントで分類。企業が情報を伝えたい読者セグメントに対して「最適な広告」を「最適な掲載場所」に配信します。
配信後には、ユーザーごとのタイアップ広告の読了率や滞在時間などを測定。これによって、サービスや商品と親和性の高いユーザーのペルソナを知ることもできます。つまり、自社データでは不足していたターゲットの趣味趣向に関するデータを取得できるため、次の施策を考える手がかるを得る機会にもなるのです。

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