2020.09.24

「佐藤オオキ流ビジネスデザインは、無から有を生み出し、課題を解決する」──電通 電通ビジネスデザインスクエア 増田 哲

デザインを起点に、包括的な課題解決を目指す「ビジネスデザイン」は、デザインの持つ力を最大化するための手法ともいえます。では、「ビジネスデザイン」はこれまでの"デザイン"と何が違うのでしょうか。株式会社電通 電通ビジネスデザインスクエア シニア・ビジネスデザイン・ディレクター 増田哲さんに、お話を聞きました。

株式会社電通 電通ビジネスデザインスクエア シニア・ビジネスデザイン・ディレクター 増田哲さん
撮影場所:電通ビジネスデザインスクエア 共創カフェ

デザインの持つポテンシャルを拡張する「ビジネスデザイン」

──ビジネスの課題をデザインで解決する「ビジネスデザイン」。その範囲は広く、一言で表現するのは難しいと思いますが、増田さんはどのように捉えていますか?

増田 ビジネスデザインに明確な定義はなく、現状は使われ方もまちまちです。そのなかで私たち電通ビジネススクエアデザインでは、クライアントの抱える課題の"本質"を見極めて、デザインを起点に課題解決を図るアプローチ法と捉えています。

企業の数だけ課題があり、悩みがあります。「会社のイメージを刷新したい」「商品の売り上げを回復させたい」。しかし、どうしたらいいかわからない。そこで効果を発揮するのがビジネスデザインの視点です。デザインによる解決方法を模索しながら、必要であれば、デザイン領域を超えて、ご提案するケースもあります。

たとえば、依頼内容はパッケージデザインのリニューアルだとしましょう。ですが、味に問題があると感じれば、その点に言及することもあります。なぜなら私たちのゴールは「課題解決」であり、デザインの納品ではないからです。

そのビジネスデザインに、チームで取り組むべく、ビジネスデザインスクエア内に5月に誕生したのが「事業創造グループ」です

これまで"左脳型プロセス"中心で行われてきた戦略コンサルティングに、ビジネスをデザインする"右脳型プロセス"を加えることで、「価値創造」を具現化するクリエイティブチームとして発足しました。事業開発や商品開発、さらには都市開発までと、幅広い領域で課題の発見から解決までをワンストップでサポートしています。

──増田さんは、2017年に電通とnendo(ネンド)の協業でビジネスデザイン領域を事業とする合弁会社「cacdo(カクド)」の社長に就任しています。このタイミングで、電通に戻り、ビジネスデザイン事業を展開する理由を教えてください。

増田 いちばんは、時代が大きく変化している今こそ、社外で得た知見を社内に還元するべきだと感じたからです。ビジネスデザインには、電通という巨大な会社にも好影響を与えるポテンシャルがある。私はそう考えています。

2017年、私がnendoと組んだ理由も、ビジネスデザインを学びたいと思ったからです。同社の代表を務めるのは、世界が認める、日本を代表する気鋭のデザイナー・佐藤オオキ氏。彼と出会ったきっかけは、ロッテのブレスケアガム「ACUO」のパッケージデザインを手掛けたこと、そしてその商品が大ヒットしたことに起因しています。この仕事をお願いしたのが私でした。彼とは、以来、友人でありビジネスパートナーという関係を続けています。

(左)受賞歴多数、気鋭のデザイナーであり、デザインオフィスnendo 代表 佐藤オオキ氏
(右)出会いのきっかけとなったロッテ「ACUO」 

彼の発想は常に斬新で、驚かされるばかりです。学ぶことが多く、親しい関係ではありますが、彼を師として、仰いでいる部分もあります。

そのなかで、5年くらい前でしょうか、「デザインという視点をもっと経営に取り入れたい」という依頼が多くなってきたとのことで、佐藤オオキ氏から「nendoの発想力やプロダクト力と、電通のプロデュース力やコミュニケーションデザイン力を組み合わせないか」と声を掛けてもらいました。

当時、電通内にもビジネスデザインスクエアを発足する機運が高まっている状態でしたが、我々は世界で活躍する佐藤オオキの「デザイン思考」や「右脳型プロセス」を直に学んだ方が将来電通のビジネスをより拡張できるのではと思い、社内のクリエーター3人を引き連れ、合弁会社「cacdo」を立ち上げました。

──cacdo創業から3年。そのなかでの最大の収穫とは何だったと感じていますか?

増田 3年の間で、営業利益を6倍に伸ばすことができたこと、これは大きな自信となりました。

佐藤オオキ氏率いる「nendo」が扱うデザイン分野は、プロダクトデザイン、空間デザイン、そして企業のブランディングや課題解決に関わるビジネスデザインの領域までと、多岐にわたります。一方で我々の「cacdo」では、その中でも主に "ビジネスデザイン"に注力し、より多くの企業に提供することを目指しました。nendoが生み出す質の高いアイデアを、電通で培ったプロデュース力でより円滑に案件を進め、具現化していくこと。それが私たちに求められたミッションでした。

しかし当初は、自分たちが受け身になり過ぎてしまい、なかなか機能することができませんでした。そこで無名の新会社「cacdo」として、さまざまな企業に売り込みに行きました。すると、「ビジネスデザインには興味がある」といった声や、「電通×nendoという掛け合わせが面白い」など、概ね我々を好意的に受け止めてくださる企業の方が多くいらっしゃり、「佐藤オオキ氏監修のビジネスデザイン」の仕事を数多く受注することに成功しました。

こうして佐藤オオキ氏とともに共創することで、私たちは"佐藤オオキ流のビジネスデザイン"を学び、大いに成長することができました。この"知見"を電通で共有することは、未来を見据えた上でも有用だと考えています。

──新たな知見「佐藤オオキ流のビジネスデザイン」とは、どのようなものですか?

増田 無から有を生み出し、驚きと感動を与えてくれるもの。いわば、課題解決を実現する、『ドラえもん』の二次元ポケットですね。「こんなものがあったらいいよね」というものをゼロから生み出したり、視点や発想を少し変えることで、既存のものをバージョンアップさせて大きな効果を生み出す。それはまるで、手品のようでもあります。

これまでの電通のやり方は、マーケティングデータを積み上げて仮説や戦略を立て、それをもとにクリエイターがプロダクトを作るというものでした。しかし「ビジネスデザイン」では、顧客視点でクライアントと一緒に仮説を立て、クライアントに寄り添いながら、一緒に答えを見つけていきます。これは"データ至上主義"からの脱却であり、データだけ見ていては絶対に生まれないクリエイティブとの出会いを創出します。

具体的に、いくつか事例をご紹介しましょう。

ビジネスデザインによって課題を解決した事例

●【case01】:70周年事業コラボレーション商品「Co-Feiler」の開発/フェイラー

70周年記念モデル「Co-feiler」の開発。
厚みのある生地という特徴を活かした二つ折りデザインで
「ハンカチタオルの新価値」を追求した

増田 ドイツの伝統工芸織物シュニール織の老舗ブランド「FEILER(フェイラー)」。 厳選された原綿を多数の工程によって織り上げることで生まれる厚みのある柔らかな質感と美しい色柄が特徴で、高級ハンカチとして知られています。

cacdoは同ブランド70周年のタイミングで、質感はそのままに、シュニール織の触り心地を生かした、携帯性の高いサイズのタオルハンカチ「Co-feiler(コフェイラー※小型のフェイラー)」を提案。新たな顧客創出にもつながり、クライアントにも大変喜ばれました。

●【case2】:企業の魅力やメッセージを訴求した100周年ロゴ・ツールデザイン/ハナマルキ

ハナマルキの「H」に想いを集約し、ロゴ、スローガン、アイテムをデザインした

増田 2018年、味噌メーカー「ハナマルキ」は100周年を迎えました。その記念プロジェクトとして、ロゴ、スローガン、アイテムをデザインしました。

まず「ハナマルキ」が何を大事にしているかという原点に立ち戻り、企業理念、社長の思い、社史などを分析したところ、素材とモノ作りを大切にする誠実さ(Honest)、伝統のハイブリッド(Hybrid)、家庭の味(Home)など、多くのキーワードが「ハナマルキ」の「H」から始まるという事実を発見したんです。そこで、「H」を軸にストーリーを紡ぎ、過去の100年を振り返るのではなく、次の100年のための"周年ブランディング"として、ご提案しました。

当初は「100周年のロゴをデザインしてほしい」というご依頼だったのですが、トータルでご提案した結果、キャッチフレーズ、ブランドブック、各種ペーパーツール、贈答用みそのパッケージデザインなど、トータルプロデュースさせていただくこととなりました。

マーケティングの「ニューノーマル」を作りたい

──時代は「ニューノーマル」。マーケティングも新たなフェーズに突入するかもしれませんね。

増田 そうですね。広告の世界でも、これまでのデータ至上主義が大きく変わる時代が来ると感じています。

なぜなら、新型コロナの影響で先が見えない現在は、どんなに綿密な調査をしても、どこにも正解はありません。そのなかで、会社の存在意義やSDGsといった外部要因からその企業の強みを掘りだし、寄り添いながら答えを導き出す「ビジネスデザイン」は、今の時代に、そしてこれからの企業の課題解決にマッチしているのではないかと考えています。

また「ニューノーマル」という視点では、コンタクトレス時代に即した、アイデア発想法があってもいいと思っています。そこビジネスデザインスクエアでは、オンラインを活用して、短期間で100人以上の専門家から500以上のアイデアを創出できる「Expert Idea500」というサービスの提供を始めました。これによって、"会わなくても、時間がなくても、質の高いアイデアを集める"ことが可能です。

新規事業検討の高速化を通じて企業のイノベーション創出支援を行い、
社会に新しい価値を提供していく「Expert Idea 500

今後も、時代に適した新しいサービスや、cacdoで培ったビジネスデザインを軸に、「ブランディングのニューノーマル」を創造し、企業はもちろん、社会課題の解決までお手伝いしていけたらうれしいですね。

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