WEBメディアにおいて、ライティング力は必要不可欠な要素ですが、紙媒体に比べて目移りしやすいWEB媒体では、「文章がうまい」だけでは、最後まで読者を惹きつけることは困難です。読者を飽きさせず、最後まで読まれるページを作るヒントを、月間2000万UUが訪れるニュースメディア『現代ビジネス』の編集部が解説します。
トップの画像で読者の話題を集めた田原総一朗さんの記事
WEB媒体と紙媒体の一番の違いは、読者の「読むことに対する意識」が異なる点です。
WEB媒体は、雑誌や新聞などに比べるとて「ながら読み」をする人が多いので、読者の興味があちこちに移りやすい特長があります。そのため、文章力はもちろんのこと、「最後まで飽きずに読んでもらう」テクニックが必要となります。
紙媒体では「起承転結」という構成がよくいわれますが、WEBの場合は「結結結結」といってもいいほど、結論を意識した書き方をすることが重要だと思います。
ページをいくつかにわける場合、1つの記事全体を読んだ時には「起承転結」のストーリーになっていても、ページごとにも問題提起とその答えがあるという作りを意識しないと、どうしても読者には「なかなか答えにたどり着けないな......」と思われてしまいます。
WEBの読者は、読み終えた時に「読んでよかった」という驚きや発見、納得(共感)があってはじめて「いいね」を押したり、やリツイートをしてくれます。記事を前後編に分けているものもよく見かけますが、前編で話を盛り上げておいて「結論は後編で!」などと展開しても、後編は読まれにくく、前編も「なんだか中途半端な記事だったな」という印象で終わり、アクションを起こしてもらえません。
やはり最低でもひとつの記事の中に、ひとつの「明確な結論」が入っていなければ、読者には満足してもらえないのです。
多くの人の目を惹くには、タイトルも重要になります。
これは感覚的な言い方になってしまいますが、3~4年前までは、中身は薄いのに大げさなタイトルをつけて読者の興味を惹く手法が目立っていました主流だったこともありました。
いまは「極秘情報」や「衝撃の~」のように、多少センセーショナルなタイトルをつける場合には、必ずそのタイトルに付随する情報が織り込まれていなければ、読者から「なんだか大げさなメディアだな」とそっぽを向かれることになります。
たとえば、『現代ビジネス』で昨年12月11日に公開された「ファーウェイ事件、中国の猛反撃は『この日』に行われる可能性」(近藤大介氏)という記事は、読み進めていくと「この日」という答えとその理由がきちんと考察されています。こうした記事は読者からの「納得感」も得られるため、支持されるのです。
では、読者が興味を失わずに最後まで読みたいと思うのはどんな記事なのでしょうか。
最後まで読まれる記事の特徴を4つあげてみます。
1 スクープ記事
1つめは、スクープ記事です。改めて言うのも恥ずかしいぐらいですが、スクープ情報は、紙であってもWEBであっても最も強いコンテンツです。誰も知らない情報、ここだけでしか手に入らない情報をひとつでも多く掲げることは、WEBメディアにおいてもっとも優先すべきことだと思います。
2 時事ニュース
2つめは、オンタイムな話題に関連した記事です。最近だと、カルロス・ゴーン氏が逮捕された4時間後に公開された「ゴーン追放はクーデターか......日産内で囁かれる『逮捕の深層』/ルノーとの間に生じていた『歪み』とは」(11月20日/井上久男氏)という記事が高い関心と注目を集め、150万PVを超えました。
時事ニュースは、起こった事件が「生きている」うちに発表することが重要です。『現代ビジネス』では、少なくとも2日以内に公開できるよう記事を作ることを心がけています。
3 共感性がある
3つめは、読者が記事を読んだ時にSNSでシェア、拡散したくなるような記事です。
拡散力の高さという点において、ツイッターを意識しないわけにはいきません。140字のツイッターで拡散してもらうために、記事の中に30~40字で切り取ってリツイートできるような短いパートを3つか4つ入れるような工夫を意識するとよいと思います。
11月18日に公開された「オードリー若林『もうすぐ、マウンティングがダサい時代が来る』/『ナナメ』とサヨナラした男が思うこと」という記事は、200万PVを超えましたが、多くの読者の共感を集めるための工夫が凝らされた記事です。ぜひご一読いただければと思います。
記事の中にどれだけ読者の共感を呼ぶ部分を詰め込めるかは、最後まで読まれるための重要な要素、なのです。
4 驚嘆性を呼ぶ
4つめは、「こんな知らないことがあったのか」という驚きや発見を意識することですです。驚きや新しいことの発見は、読者のアクションを起こしやすいものです。「あの人がこんなことを考えていたのか」「この現象は、そういう風に見ればいいのか」という意外性を持たせることが、話題を呼ぶ記事作りには重要です。
写真で読者の興味や話題を集める
写真で話題を集めるやり方もあります。公開後半年以上経っても話題となっているのが、6月21日に公開されたジャーナリスト・田原総一朗さんの「田原総一朗がアダルトVRの世界を初体験!」という記事です。
トップにVR用の器具を装着した田原さんが現れる画像は衝撃的で、「あの田原さんがこんな恰好をするなんて......」と、まずはその意外性で話題になりました。ほかにも、漫画家・小説家の折原みとさんの「ネットの『自己破産デマ』で大迷惑を被った漫画家の悲劇/『嘘の噂』はこうして簡単に作られる」(11月7日公開)などは、笑顔の本人のすぐ横に「自己破産」の検索結果が貼られている、
かなり強烈なインパクトの画像が大きな注目を集め、シェアやリツイートが続き、いまでも読まれている人気記事です。
たしかに強烈なインパクトを与える画像だ
とはいえ、写真はあくまでも「読者の興味を集める」ための手段です。ここでご紹介した記事も、読者の共感や納得をさそう内容だったからこそ、今日に続くまで読まれているのだと思います。
記事の中身が面白くなければ、どんなにいい写真を使っても意味はなく、逆に読者に愛想を尽かされたり、悪評が出回ったりすることになりかねません。その点には、いつも注意しています。
メディアの応援団を作る
最後に、読者数を増やすための最も重要なアイデアをご紹介します。
それは、メディアの応援団を増やすという方法です。
『現代ビジネス』でも、公開した記事を「非常によくわかる」「面白い記事」などと、ツイッターやブログなどで定期的にシェアしてくださるくれる方がいます。おこがましいかもしれませんが、その方々はいわば現代ビジネスの「応援団」だと思っています。そのなかにはフォロワー数を100万人以上持つ影響力のある方や、知名度の高い方もいて、そういう方たちの「応援(=シェアやリツイート)」によって、飛躍的に記事の読者数が伸びることもあります。
自分たちの記事やサイトを定期的にシェア・拡散されている方を見つけたら、その人がほかにどんな記事やサイトをシェアしているのか、調べてみるとよいでしょう。その方々彼らが日頃、どんなことに興味や関心を持っているかがみえてきます。
彼らが好意的に反応してくれそうな記事はどんなものか。「応援団」を「仮想の読者」に見立てて、その方々に彼らに読んでもらうことを意識して記事を書いていくと、多くの人に読まれる記事の形が見えてくるのではないかと思っています。
こうした「応援団」になってくださる方を一人でも多く増やして作っていく。時間のかかる取り組みではありますが、これが、長く深く、そして最後まで読まれる記事を作るための最も重要なポイントではないかと思います。