2018.11.16

【マンガ/アニメ・インタビュー③】ブランド形成型コラボと販促型コラボ/Tokyo Gets・原社長

すべての広告活動はクライアントの課題解決が起点となる。マンガ/アニメとのコラボレーションも例外ではない。特定のセグメントに深く響く手法であることは、すでに第1回で述べたとおりだが、より幅広いターゲット層への訴求が課題となることもある。トキオ・ゲッツでは、プロモーションの課題をブランド形成型と販売促進型とに2大別し、それぞれコラボレーションすべきタイトルを分類しているという。実際のタイトルを例に挙げ、その手法について、同社代表取締役の原 浩平さんに語っていただいた。

トキオ・ゲッツ 代表取締役 原 浩平(はら・こうへい)
大学卒業後、マーケティング企業に入社。アウトソーシング先の映画会社で映画ビジネスの内情を学ぶ。1998年、映画を中心としたタイアップ専門エージェンシーとしてトキオ・ゲッツを設立。

ブランド形成型と販売促進型とでは、
コラボレーションするタイトルは違ってくる

――タイアップ型プロモーションをコーディネイトする際、スキームやメソッドに何か決めごとはありますか。

 特別なスキームとかメソッドはありません。ただ、ブランド形成型と販売促進型とで、われわれの中でコンテンツはしっかり分けています。
 たとえば、ファンシー系のキャラクターやファミリー向けのアニメは、どちらかというとブランド形成のほうに使わせていただく。ファン層として多くはないコア系のアニメに関しては、販売促進で使わせていただく。社内のデータベースを元に区別をさせていただいてます。当然、どっちにも響くコンテンツというのもありますが。
 いずれにしても、クライアント様の課題をヒアリングしてから、ブランド形成型か販売促進型かを判断し、コンテンツを当て込んで成立する見通しがついたら、版権元さんに相談するという流れになります。

――それぞれのプロモーション手法について詳しくお願いします。まずはブランド形成型から。

 ブランド形成型はメインターゲットに向けて出していくことが多いです。ブランドのイメージをキープできるよう、あまりエッジの効いたプロモーションではなく、既存の購買層の方々に許容してもらえる範囲でアニメのタイトルを選ぶように心がけています。メインターゲットの方々が、ターゲットから外れたのかなと勘違いをさせてしまうと、サイレントクレームとして売り上げは落ちる可能性もあるし、下手をすると炎上にもなりかねません。

――具体的なタイトルでいうと、ブランド形成型向きのアニメにはどんなものがありますか。

 たとえば『ONE PIECE』。『ハローキティ』や『ドラえもん』なども、販売促進型というよりはブランド形成型で使います。コアなアニメだとブランドや商品のイメージを壊す可能性があるんです。施策としても、ベタ付けでミニタオルが付いてくるとか、実際にプレゼントで当たるのが映画の試写会だったりとか。そういった誰もが楽しめるようなものにしていくことが多いですね。

――販売促進型プロモーションについても教えてください。

 逆に、販促はエッジをかけないとできません。ここでしかもらえないアイテムだったり、ファン心理をくすぐるようなものをもっていかないと。キャンペーンの期間も短い。メインターゲット向けブランド形成型は、長く、2カ月間やってもいいんですが、コア系アニメと販売促進型でやるときは、1週間とか2週間とかのタームにして、メインターゲットの人たちの邪魔にならないようにしつつ、そこで売上をしっかり上げていくことが多い。期末、ゴールデンウィーク、夏の売上だけうまく上げたいとき、などですね。

コア系のタイトルは、良くも悪くもインパクトが強い。短期集中型のコラボレーションで訴求し、ブランドや商品のイメージに、コンテンツの印象を強く浸透させすぎないというのも頷ける。エンゲージメントの強いターゲットへの期間限定的な周知としては効果を発揮する。セグメントのシビアな現在において、トキオ・ゲッツが成長している秘密は、そのあたりの緻密なコーディネイト力にもあるのだろう。


 もともと主婦層向けだけども今回だけは20代向けでキャンペーンを張ってみようとか、もともと男性向けだけど女性にブランド・チェンジさせるトライアルとして使ってみようとか。販促量としてあまり高くはないけども、限られた予算で、がっつりついたファンの方々に向けた施策としても有効です。

――さきほどの「社内のデータベース」ですが、たとえば『進撃の巨人』『七つの大罪』という講談社のタイトルを分類するとどうなりますか。

 まず『進撃の巨人』。以前はコア系だったんですが、現在では非常に成熟し、ブランド形成ができるぐらい認知度が広がっています。そして、皆さんが、ふと感じてしまう、少し怖い、野蛮なイメージというのも薄れてきてますよね。SDキャラまで出ているし。
 かつては、白十字さんだったり、さまざまなところで、エッジを求めてプロモーションさせていただきました。今、『進撃の巨人』で提案するなら、エッジをかけるというよりは、コンセプトありきのプロモーションですかね。たとえば、壁というものに特化し、何かを打ち崩せる、新しいものに挑戦している、乗り越えるとか、そういったメッセージ性があるものと組み合わせるとか。ダイエット関連だったり、駆逐のイメージがあるから害虫対策でもいい。そういったものに対して挑んでいくというコンセプトを作り上げるようなものとして、『進撃の巨人』は根付いてるのではないでしょうか。

──いっぽうの『七つの大罪』はどうでしょう?

 『七つの大罪』は間違いなくコア系です。われわれから見れば、要するに、販促にしっかりと寄与できる作品だろうなという判断です。柔らかくかわいいタッチの作品ではありますが、世間一般の認知度としては、『七つの大罪』というタイトルの重さが先行してしまいがち。どういう作品なのかを知っているコアなアニメファンたちに向け、販売促進型として投入していく。でも、そろそろ成熟期を迎えるのかなとは感じています。大罪ネタで何か、"七つ"とか、"大罪"とか、そういったもので、もうちょっといじれるようなものも出てきそうですね。

――販売促進型に当て込むコンテンツのリサーチはどのようにしているんですか。

 販促ではファンがどれだけついているのかが重要。単純なフォロワー数だけでなく、リアルタイム検索での動きも見ていかないといけません。もうひとつ意識しているのが、いろいろなグッズ売り場の反応。これは、指標としてけっこう見ています。タイトルごとの棚の位置や占有率の推移、特棚がどうなっているかなど。最もトレンドに早い人たち、つまり女性系でいうと、乙女ロードは指標が如実に出るエリアですね。そういう場所をひょこっとのぞいてみたクライアント様が、「なんだこのアニメ、なんでこんなに人だかりができているんだろう」みたいなところから、「じゃあ自分たちの商品にそれを付けると売れるのか」などと想像するところから始まることもあるのかなとは思います。


トキオ・ゲッツがマンガ/アニメとのコラボレーションで成功してきた背景には、専業エージェンシーならではの深い知識と、綿密なリサーチによる裏付けが存在している。メインターゲット向けのブランド形成型プロモーションにおいては、コンテンツの深い理解に基づく独自の切り口が求められ、コアなファン層向けの販売促進型プロモーションにおいては、最先端のトレンドまで要求されることになる。次回最終回は、そのデータベース形成について語っていただく。


原さんインタビュー①「アニメコラボの集客力」はこちら
原さんインタビュー②「タイアップ・エージェンシーの役割」はこちら

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