2018.11.09

【マンガ/アニメ・インタビュー②】タイアップ・エージェンシーの役割/Tokyo Gets・原社長

諦めていた、あのタイトルとの
コラボレーションも実現可能!?

トキオ・ゲッツ 代表取締役 原 浩平(はら・こうへい)
大学卒業後、マーケティング企業に入社。アウトソーシング先の映画会社で映画ビジネスの内情を学ぶ。1998年、映画を中心としたタイアップ専門エージェンシーとしてトキオ・ゲッツを設立。

特定のセグメントに深く浸透する広告手法として、マンガ/アニメとのコラボレーションが有効なのは前回述べたとおり。しかし、自社ブランドとの親和性、煩瑣な権利問題のクリアなどで、マーケターがコラボレーションを躊躇しがちなのも事実だ。今回は、トキオ・ゲッツというタイアップ専門エージェンシーが、実際にどのような役割を果たすのかについて、同社代表取締役の原 浩平さんに話していただいた。

――トキオ・ゲッツさんの「エンタテイメント系コンテンツとのコラボレーション」というのは、いつ頃からやられていた手法なんですか?

 弊社は創業して20年を経過しました。日本でいうと、僕らが最初ではないかと。それ以前から、大手広告代理店さんには、エンターテインメント事業部という部署はありました。でも、それは、タイアップをするためでなく、コンテンツ制作の出資をするための部署。出資のついでに、自社のクライアントに向けてコラボレーションなどを提案するという、"ついで売り"的なことはありましたけど。あとは商品化専門の企業さん。こちらは結構あります。

――サンリオさんとかですね。いわゆる"キャラクタービジネス"というと、そちらの商品化専門のビジネスモデルを想起することが多いかもしれません。

 そうですね。サンリオさん、タカラトミーさん、バンダイさんなども、商品化専門ビジネスかと。企業とのコラボレーションを提案し、セールスプロモーションなどに役立てようとしている企業は、現時点で弊社の他には日本ではそんなに見ないですね。


トキオ・ゲッツの業務内容は、ひとことでいえばブッキングのエージェンシー。クライアント企業や広告代理店などから、特定のブランドや商品のセールスプロモーションなどの課題が提示され、それに相応しいコンテンツのタイトルを提案し、タイアップを成立させていくというもの。競合の有無、権利問題のクリア、予算、コンテンツホルダー側の禁止事項など、なにかと煩瑣な課題が多く、業界とコンテンツに精通していなければ難しい業務である。


――ずばり、トキオ・ゲッツさんのセールスポイントは?

 版権元さんに問い合わせをする前に、ある程度、企画の段階までは導けることですかね。作品の禁止事項、ワンクールの予算、描き起こしの所要時間、作家先生の好みなどを事前に把握した上で、その世界観に合った企画を作れます。クライアントさんにそれを提出して、「まだ全然裏も取っていませんが、今までの経験上、このようなものができるんじゃないかなと思っています」と。クライアントさんが、「いいですね、ぜひ裏取ってみてください」となって、ようやく版権元さんに話をする。「ここまで進んでいるけど、どうですか」って、「めちゃくちゃ面白いじゃないですか」とか、「去年とレギュレーション変わって、ここが駄目なんです」などといったところで、いろいろと軌道修正をかけていく。それが企画までの段階なんですけど、ここで皆さん、ほとんどが断念される。

――コンテンツホルダーとの強いパイプがなかったり、マンガ/アニメの分野によほど明るくない限り、コンテンツの権利問題をクリアするのは、やはり難しいことなのでしょうか。権利関係の世界というのは、なにやら迷路のようなイメージがありますが。

 たとえば、あるクライアントから広告代理店にアニメコラボの要望があった場合、広告代理店の担当者はどういう行動に出るか。たぶん、提案したいタイトルをピックアップして、版権元さんに連絡するはずです。でも、担当者がわからなければ、代表電話に連絡することになるし、まずはたらい回しにされる。挙句、プロモーションのライツを管理する部署でなく、放映権管理部署に行き着いてしまったり。
 首尾よくプロモーションのライツ管理部署にたどり着いたとしても、「まずは企画書をお送りください」となる。版権元さんも、初めて電話をかけてきた相手に、予算や競合についての話は絶対にできませんよね。そもそも、企画書を作るために情報が必要だったのに。
 企画書を書いたら書いたで、予算感が見えずに頓挫することもあります。あるいは、20枚くらい企画書を書くこともザラにありますが、競合が決まってしまっていて終了、ということもあります。

――専業の会社として成立して、ものすごく成長しているというのは、その市場規模の成長を予見されていたということですよね。

 当然、マーケットの規模は意識していますけども、この20年間において、意図的にマーケット開拓に成功したという実感はありません。ただ、5年ほど前から、毎日、中堅の広告代理店さんだったり、セールスプロモーションの広告会社だったり印刷系のプロモーション会社さんだったりと、どこかしらから問い合わせが入るような状況になりましたね。当初はプッシュ型のビジネスで、クライアント様との直接やり取りだけだったんですが。

――初めは映画とのタイアップが中心だったとのことですが。

 僕自身、映画が非常に好きだったので。当時は、たとえば、ブラッド・ピット主演の映画が日本で封切りされるタイミングで、ブラッド・ピットをCMのアンバサダーにしている企業さんがコラボしたりとか、CMを2年クールで流したりとか、非常に単純なコラボレーションが多かったんです。そこで、ブラピを起用していない企業さんとかにも、「ブラピの映画とコラボレーションしませんか」と提案したりもしました。すると、だいたい、「いや、うちブラピ使ってないし」という答えが返ってくる。「いやいや、使ってないので、ご一緒しませんかって話なんですよ」と。タイアップというスキームは理解されませんでしたね。「とにかく、ブラピなんて、そんなギャラの高い外タレは使えないから」、「いやいや、お金はかかりません。コラボレーションなんで、映画側にお金は1銭も払わなくていいです」というような話からしなければなりませんでした。
 ドアノックから始めていったのが21年前です。プッシュ型でやってきた理由は、皆さん、コラボレーションという広告手法をご存じなかったからなんですよ。

――問い合わせが増えた要因はどのように分析されていますか?

 マンガやアニメのメジャーなコンテンツは、大手広告代理店の出資者が決まっていて、そこ以外は何もできないと、世間一般では認識されていたようです。でも、トキオ・ゲッツは、すべてのものを取り扱って、ビジネスさせてもらってる。できないと思っていたものが、実際できるということに、ようやく皆さん気づかれたのでしょうね。もっとも、いまだに、「どんなコンテンツをお持ちなんですか」といわれることは、よくありますけども。


現在、年商は6億円弱というトキオ・ゲッツ。意外にも、「初年度から、まあまあ売上があったので、伸びとしてはそんなに大きくはないんです」とのことだが、マンガ/アニメという日本が誇るコンテンツを大きな軸のひとつとして、タイアップ専門エージェンシーというビジネスモデルを成立させたのは確かだ。次回は、その具体的な手法について、さらに切り込んでいく。

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