本が売れない時代に、次々とベストセラーを生み出している書籍専門PRの黒田剛さん。講談社在籍時に数々のヒット作を手がけた後、2017年にPR会社・株式会社QUESTOを設立。独立後も各出版社からのPR依頼が後を絶ちません。そんな黒田さんが、4月に初の著書『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』を発売。「営業はしない」「リリースは送らない」など、黒田流の仕事術がぎっしり詰まった一冊が完成しました。
今回は、黒田さんと同じ部署で働いていたこともあるC-stationチーフエディターの川崎耕司がインタビューを実施。PR担当者はもちろんのこと、マーケターやセールスなど、あらゆるビジネスパーソンに響く「非効率なのになぜかうまくいく」メソッドを、担当編集の下井香織さんを交えながら伺いました。
書籍のPRという狭い業界で培われたメソッドだからこそ、マーケティングのさまざまな場面に通じる縮図として、読者のみなさんの参考になるのではと思います。合計1万字という"非効率"なボリュームのインタビュー、じっくりお楽しみください!
『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』(講談社・4月10日発売)
非効率は、"超効率的"? 実体験から生まれた「非効率思考」
川崎:黒田さんとは講談社時代、同じ編集部にいたことがありましたね。当時から、常に現場に足を運んでいる姿が印象的でした。
黒田剛 非効率家/書籍PR 株式会社QUESTO代表
黒田:懐かしいですね! 僕は今も変わらず、ずっと『現場に足を運ぶ』ことを大事にしていますよ。今回出版する本のPRも同じですね。プルーフ(サンプル本)を出版社の編集者や書店の方々に配る際は、必ず手渡し。一気に発送したほうが効率はよさそうに見えるけど、直接会って渡すことでその場の反応を肌で感じられるし、後の返信の有無も含めて、次にどう渡すかのヒントになるんです。
川崎:もうすでに『非効率思考』......ですね!
黒田:それを繰り返しながら対応を磨き上げ、一件一件オンリーワンの対応するのが僕のやり方。すでに、成果につながっているんですよ。たとえば蔦屋書店 代官山店のイベント担当者に本を渡しに行ったら、すごく興味を持ってくれて。早速、イベントの開催が決まりました! 人から見たら非効率に感じるかもしれませんが、自分にとっては"超効率的"なんですよね。
川崎:僕も早速拝読しました。この本には、そうした格言や、ビジネスパーソンの参考になるメソッドがたくさん書かれているけど、僕が一番印象的だったのは『PRとは、「つくる人」(著者や編集者)と「つたえる人」(メディア)をつなぐ役割だ』という言葉です。一般的には、本と読者をつなぐのがPRの役割だと思うけど、黒田さんのアプローチはそこが違うんだなと。
同じように、マーケターの仕事は商品と消費者をつなぐのではなく、商品をつくるひと(or商品のストーリー)と消費者に伝える人をつなぐものだと考えてみると面白いですよね。セールスであれば、商品とお客さんをつなぐのではなく、商品をつくるひと(orストーリー)とお客さんのニーズをつなぐ仕事。そう捉え直せば、黒田さんの『非効率家のPRメソッド』には、C-stationの読者であるビジネスパーソンに役立つメソッドや視点が、たくさんあるはずだと思ったんです。
『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』のプルーフ。「はじめ200冊用意していたのですが、結局重版して400冊つくりました(笑)。一般的には50冊くらいだと思いますけどね」(黒田)
黒田:メソッドに抽出してくれたのも、「非効率」というキーワードを生み出したのも、編集担当の下井さんです。「非効率なのが黒田さんの面白いとこだ」って。僕が6時間話し続けた内容を下井さんがまとめたnote記事があるのですが、今回の本はその記事をきっかけに制作が決まりました。いつもの自分が話しているだけなんだけど、1,000以上の"いいね"がついたり、「共感しました!」と多くの人からポジティブな声をいただけたことは、自分のなかでも大きな気付きでした。
川崎:この本には幼少期のエピソードや書店営業時代の話など、黒田さんの実体験がたくさんつまっていますよね。黒田さん自身が普段からそうした視点を持っていたからこそ、形になったものが多いんじゃないかな。今回は、そうした黒田さんのエピソードを掘り下げながら、実践的な「非効率メソッド」をじっくり聞いてみたいと思います。
「お困りごとはありませんか?」からはじまる非効率PR 〜悩みを徹底的に聞いて、解決案を提案する~
図書館の困りごと「図書パンフレットが古い!」。自作ランキングリストで新刊情報を提供し、司書から大絶賛!
川崎:まずは、書籍にも書かれている「お困りごとはありませんか?」からはじまるPR術について聞いてみたいと思います。書店で営業をしていた時の経験が、この考え方につながっているそうですね。
黒田:そう。それが僕のPRの根幹ですね。最初に就職したのは、芳林堂書店という老舗の書店。そこの外商部で、学校図書館の司書さんたちに本の発注をしてもらう仕事をしていました。営業の仕事って、最初は「こんなサービスがあります!」「この割引率で提供できますよ!」と説明して、決まるかどうかの話だと思っていました。
でも、最初の3ヵ月くらいは、ただ名刺を置いて回るだけの日々。全然成果が出ないし、心が折れそうになってたんです。そんなときにIBMがなぜ成長したかが書かれた本を読んで、「お困りごとはありませんか?」というアプローチを知り、「これだ!」と思いました。それから無謀な飛び込み営業を辞めて「困りごとを聞く」スタンスで行こうと決めたんです。
川崎:でも、いきなり営業さんが「困りごとはありませんか?」と聞きに来ても、取り合ってくれないこともあるんじゃないですか? どのように司書さんたちを巻き込んでいったのでしょう。
川崎耕司 C-stationチーフエディター
黒田:まず僕がやったのは「相手を知る」こと。当たり前のことですが、学校ホームページなどでとにかく情報を集めました。そして、いくつかの学校を通っているうちに、司書さんが自分の時間を持てるのが、午前と午後、それぞれ2時間くらいだとわかってきたんです。そこからは1日2件に絞って訪問し、それ以外の時間をすべてリサーチに当てていましたね。つまり、1日何十件も訪問するのではなく、一件一件にじっくり時間をかけようと考えたんです。
話を聞いてもらうために「今は契約していただかなくて大丈夫です!」と正直に伝え、相手の困りごとを聞き出すようにしていました。そうすると不思議なもので、「話題の新刊が入ってこない」「図書パンフレットの情報が古く、生徒向けの本を選びにくい」などの困りごとを、話してくれるようになったんです。
川崎:営業やPRをするときってどうしても自分たちのことを伝えようとしてしまうけど、相手を徹底的に知り、聞く姿勢が大事ということですよね。
黒田:その通りです。「こんなお困りごとないですか?」と、まだ相手が見えていない困りごとを見つけて提案できるようになれば「こいつわかってるな」と信頼してもらえるんですよね。
でも、「パンフレットが古い」という困りごとの解決は、大変でしたね。各所を探したのですが新刊情報のまとまったものは見つからず......。結果、すでに契約している学校図書館から受注した本をランキング化したパンフレットを自作して配りました。それが司書の方々から大絶賛されまして! 2年目には、いきなり20件もの新規契約を獲得することができました。
テレビ局の困りごと「盛り上がるトークテーマがほしい!」。『妻のトリセツ』から「妻を絶望させるセリフ」を提案し、多くの番組で特集が組まれるように!
黒田:「お困りごとを聞く」というスタイルは、書籍PRの際も同じです。僕が講談社に転職し担当した『妻のトリセツ』シリーズも、テレビ局のお困りごとを聞き出し、解決策を提案できたことが、成功につながった要因だと思っています。
『妻のトリセツ』 (講談社+α新書) 著:黒川伊保子
川崎:『妻のトリセツ』シリーズは、70万部を超えるベストセラーとなりましたね。「テレビ局の困りごと」って、どのようなものだったのですか?
黒田:いくつかあったのですが、たとえば『テレビ番組で、視聴率が取れるスタジオトークテーマが欲しい』という困りごと。メディア側は、出演者が意見を交わし合い、盛り上がれるテーマを探していたんです。そこで僕は、『妻のトリセツ』の中にある「夫が気づかない、妻を絶望させるセリフ」を、読者の感想と合わせて提案。すると、企画会議で盛り上がり、多くの番組で特集が組まれるようになりました。
大事なのは、お困りごとを聞いたら、間違っていてもいいから必ず解決案を伝えること。お困りごとの解決に労力を惜しまず提案すれば結果はついてくるはずです。
「相手の頭の中で想像させる」〜提案の中身を相手に妄想させることで、人の心は動く~
"ビフォア・サンライズ理論" 相手にストーリーをイメージさせることで現実になる
川崎:次に、「頭の中で想像させる」というメソッドについても、詳しく聞いてみたいと思います。マーケティングの世界では色々なメソッドやフレームワークが語られていますが、いま立ち返るべきは"ストーリー"なんじゃないかと考えています。黒田さんの「頭の中で想像させる」というメソッドも、まさにストーリーがなければ成り立たない。人が想像するには、何かしらの物語が必要なんですよね。
『ビフォア・サンライズ』(監督リチャード・リンクレイター/1995年製作/101分/アメリカ)
黒田:「頭の中で想像させる」は、僕のなかで「ビフォア・サンライズ理論」と呼んでいます。これは僕の大好きな映画『ビフォア・サンライズ』から着想を得た考え方です。この映画のストーリーは、アメリカ人の青年がフランス人の大学生と電車の中で出会い、途中駅のウィーンで降りて朝までの14時間を一緒に過ごすというもの。その映画のなかで、青年は女性と一緒に過ごすために『ここで自分と電車を降りたらどうなるか』を、女性に想像させるセリフがあるんです。
メディアに提案するときも同じ。たとえば、著者を番組に売り込もうとするときには、「この著者の出演が決まったら、どんな番組構成ができると思います?」と伝える。そうすると、相手は「こんな構成ができるかも」と想像し始めるんですよね。相手にストーリーを想像させることができれば、おのずと相手から連絡が来るようになる。非常に効果的だと感じています。
株式会社QUESTOに集まった、川崎(左)、黒田剛さん(中央)、書籍編集者の下井香織さん(右)。下井さんは、女性誌FRaUの編集を20年近く務めたベテラン編集者。現在は書籍編集者として活躍中。担当書籍は、シリーズ累計30万部突破『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる』、シリーズ累計6万部突破『英語ぐんぐんニャードリル』他。
リリースは送らず、相手の想像力を掻き立てる"材料"を提案する
川崎:相手に想像させて、相手に決めてもらうということですよね。ここは黒田さんの「リリースは送らない」という手法にもつながっていると思います。リリースは、自分の伝えたいことだけがてんこ盛りになりがちですから......。
黒田:そうですね。リリースは送らずに、「それならこんな番組にできる」と想像してもらえるような"材料"を書いた企画書、レシピを送っています。本のPRをするとき、どうしても本の魅力だけを伝えてしまいがちですが、「著者が稼働できます!」「著者の自宅取材OK!」といった具体的な材料と調理法を提供することで、相手がイメージを膨らましてくれるんですよ。
いま、『非効率思考』
「ひまわり」って漢字で書けますか? 商品の使い方を想像させるひとことを見つける
黒田:この「想像させる」という僕のPR手法ですが、思い返すと母の影響も大きいと思うんですよね。僕の実家は『黒田書店』という書店を営んでいました。母もそこで働いていて、百科事典や美術全集の単店売り上げ日本一を何度も取る"伝説のセールスウーマン"だったんです。小さい頃は友人から「うちの親、またお前の母親に本売られたらしい」と言われたりして、恥ずかしかったんですけどね......(笑)。
僕も小さい頃は店番を頼まれることがよくありました。今でも覚えているのは、レジ横に『日本語大辞典』の「向日葵」のページが開いて置いてあった時のこと。店番をするとき、母から「お客さんが来たら『買ってください』ではなく、『ひまわりって漢字で書けますか?』とだけ聞いてみて」と、言われていました。
すると相手は『どんな漢字だっけ?』と頭の中で思い浮かべるわけですよね。スマートフォンもない時代『これが一冊あれば便利だ』と感じて、次に黒田書店に来た時にはつい『日本語大事典』を買ってしまう......。つまり、相手の頭の中に『何それ?』と思わせるような小さな欠片を残しておくことで、その後の行動がどんどん膨らんでいくんです。
黒田:だから、僕に「どうやってこの本を売ればいいですか?」と相談に来る人とは、「ひまわりって漢字で書けますか」みたいなものを一緒につくることを大事にしています。多くの人は、「ここも、あれもアピールしないと!」と考えてしまいがちですが、それでは聞いている人はお腹いっぱい。「ひまわりって漢字で書けますか?」のようなひとことを見つけて、相手の想像力に任せてみることがポイントだと思います。
「エレベーター15秒メソッド」〜提案は会議室でなくてもできる~
川崎:気になるのは、書籍にも書かれている『エレベーター15秒メソッド』。エレベーターの短い時間をも提案の場所に変えてしまうのが、黒田さんですよね。思い返せばこのインタビュー企画が決まったのも、たまたま会議室入れ替えの時に黒田さんから声を掛けられたことがきっかけでした。
黒田:そうでしたよね! 実際、あの時川崎さんと話した時間は、10秒もなかったと思います。
川崎:「今度、本出すんです!」だけ言われて......。でも、僕は黒田さんのそれまでのお仕事を知っているから、「今C-stationっていうメディアにいるから出る?」と即答しました。まさに、黒田さんのメソッドに巻き込まれたんだと思います。無意識に想像していた、ということですかね。
黒田:エレベーターだけでなく、僕に言わせればどんな瞬間も提案のチャンスなんです。いつの日か、アポイントを取って話すより、エレベーターを待っている時間やエレベーターに乗っている時間に少しでも何か提案したほうが、その後に連絡がくることが多いと気づいたんですよね。
一緒に会社をやっている兄と取材に行くことが多いのですが、取材場所に向かうエレベーターでは、兄に軽く『非効率思考』の話をしてもらうんです。「実はうちの弟が本を出すんですよ」と何気なく話すと、相手は「何それ?」と気になりますよね。その後、取材が終わり、僕が「お疲れ様でした! すごくいいインタビューでしたね」と下まで送るんです。そのタイミングで「そういえば、本のプルーフができたんですよ」と話を振ると、「あの時話していた本のことだ」と思い返してくれる。「ほしい!」という反応がかえってきたら、本を渡す......。
つまり、15秒でも相手の頭の中に余韻を残せるし、そこから次に繋がっていくんですよね。もちろんPRは、一発で決まることはなかなかありません。エレベーターの15秒のような小さなことでも繰り返しやっていけば、ばちっとはまる時が来ると信じています。
「もっと聞きたい」と思えるような、15秒の動画をいつも持っておく
川崎:短い時間で相手に興味を持ってもらうコミュニケーション術は、PRだけじゃなく、マーケティングやセールスにも応用できそうです。でも、15秒で話すのはなかなか難しいようにも思えます。
黒田:もちろん、15秒ですべてを伝える必要はありません。逆に、「もっと聞きたかったな」と思ってもらうような名残惜さがある方がいいんですよね。
15秒で相手の興味を引き出すためのポイントとして、僕は「この本ならこの話をしよう」という、15秒の短い動画を頭のなかに持っておくように心がけています。わかりやすく言えば、駅のホームで友人とお別れするようなイメージ。「今度僕マラソン出るんだよね!」「え、なんで!」というタイミングで、電車のドアが閉まる。その後「今度その話聞かせて!」と相手から連絡が来る。そんなエンディングまでを想像しながら話しています(笑) 。
「東京マラソン2025」に出場した黒田さん。初めてPRを担当した書籍『体幹ランニング』の著者・金哲彦先生に勧められてマラソンを始めたそう。 「僕のPRのモットーは『著者に言われたことはやってみる』。メディアの担当者に実体験を元に熱く話をすると、やっぱり話を聞いてもらいやすいんですよね!」
黒田:でも、もし今僕が自著の『非効率思考』をエレベーターの中でPRするなら、「代官山の蔦屋書店でイベントやるんですよ!」かな。「え、なんで!」と思ってもらえたら大成功。前述の「相手の頭の中で想像させる」につながるのですが、内容を細かく言わず、相手の頭の中に「気になるな」という小さな種を残すと効果的なんですよね。
"ストーリー"で伝えるから、相手の心を動かせる〜情報にすぎない事実やデータではなくストーリーで伝えるということ〜
データや事実は「情報」にすぎない
川崎:ナラティブマーケティングというキーワードが話題となったり、講談社メディアカンファレンスの昨年のテーマが「物語の力がミライを創る」だったりと、今多くのマーケター、セールスパーソンは"ストーリー"に注目していると思うんです。黒田さんが話してくれた『エレベーター15秒メソッド』も、続編やエンディングを想像しながら話をするのも、ストーリーですよね。
黒田:たしかに、"ストーリー"というワードは『非効率思考』の中に何度も出てきます。僕は、相手の心に響かせるには、ストーリーで伝えることが大切だと考えています。単なるデータや事実は、情報として伝わるだけで印象に残りづらいものですから。
メディアに本をPRする際も、ストーリーを軸に伝えるようにしています。たとえば、以前PRを担当したのが、『温めれば、何度だってやり直せる』という、久遠チョコレートの創業者・夏目浩次さんの著書でした。久遠チョコレートは年間売上18億円を達成し、全国で働くスタッフの7割が障がい者という企業です。ただ、こうした事実を並べるだけでは、単なる説明にすぎません。
『温めれば、何度だってやり直せる チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来』(講談社) 著:夏目浩次
黒田:そこで僕がメディアに伝えたのは、夏目さん自身のストーリーでした。夏目さんのストーリーをひとことで言うならば、「全国平均賃金1万6000円という障がい者雇用の世界に、チョコレートで革命を起こした男の物語」です。障がい者雇用を促進しようと始めたパン工房事業で失敗し1000万円の借金を抱えたこと、「温めて溶かせば、何度でもやり直せる」チョコレートづくりに着目してチョコレート事業を立ち上げたこと、結果障がい者の"稼げる場所"を作り出し、彼らの所得を全国平均の10倍にしたこと──こうした成功までのストーリーを紹介したところ、多くのメディアに取り上げられるようになったんです。
「情報」ではなく「ストーリー」で伝えることで、相手の心を動かし『読んでみたい!』と思ってもらうことができると思います。
ストーリーで聞くから、ストーリーで伝えられる
黒田:もう一つ大事なのが、ストーリーで聞くということ。本にも書いたんですけど、僕が得意なのは、どちらかといえば『ストーリーを聞くこと』なんですよ。誰かと二人で食事に行く時には、その人が生まれてから現在までのストーリーを聞き出すことが多いです。人は未来のことを聞かれると戸惑うけど、過去のことは絶対に話せるんです。自分のルーツに興味を持ってもらえるのって、嬉しいですからね。
でもこれは、著者のインタビューをするときにもすごく活きるんですよ。つまり、僕がストーリーで伝えることができるのは、ストーリーで話を聞いているから。そこから自然と相手の心に響く伝え方ができるんだと思います。
思い返せば、これも子どもの頃からのクセなんですよね。黒田家では、修学旅行から帰ってくると2泊3日すべての行動を1日目の朝から、順番に話していくのが定番でした。両親が「それで?」「それで?」と面白がって聞いてくれるのが嬉しくて、僕もついついストーリー仕立てでいつまでも話してしまってたんです。「ストーリーで聞く」「ストーリーで伝える」ことは、そんな両親のもとで育つ中で、自然と身についた習慣なのだと思います。
番外編:黒田さんが、「C-station」をPRするとしたら?
川崎:最後におまけで、C-stationについて聞いてみてもいいですか。黒田さんがC-stationをPRするとしたら、どうします?
黒田:C-stationの読者層である、広告業界や広告主のマーケターって、ある程度限られてますよね。toCのメディアと違って。であれば、僕ならまずキーとなる人たちに直接『お困りごと』を聞きに行くところから始めると思います(笑)。自分らしく。『あなたの課題はC-stationを通して解決できますよ』という提案をしていくんだろうな。一方で、PRとして「ネット広告」には、すごく注目しています。いま、出版業界でも、
川崎:ネット広告とは、非効率家らしくない(笑)。
黒田:はい(苦笑)。なので、狭く深くマーケターの人たちに刺さるように原始的に非効率思考で行くのと同時にネット広告を掛け算する、ということですかね。
それと、C-stationには"編集者の視点"をもう少し期待したいです。たとえば、僕が本を書くとき、編集者の下井さんが原稿を読んでは『黒田さん、この話入れる必要あります?』とか『これ分かりづらいんでもっと具体的に書けませんか?』ってズバズバ言ってくれたんですよ。それが、めちゃくちゃ痛いんですけど(笑)、でも必要なんです。そういう取捨選択の視点が欲しいかな。
たとえば、旬な人物をしっかり捉えたコンテンツがトップに出ていて、その人が講談社と絡んでるとか。そういう構成になっていたら、僕が営業に行っても、説得力が増すと思うんですよね。まさに、『ひまわりって、漢字で書けますか?』みたいな、直感的に惹きつける仕掛けが欲しい。そういうフックを作れると、C-stationはもっと強くなるんじゃないかなと思いますね。
川崎:最後は、それこそ痛いアドバイスもいただけましたが(笑)、とても参考になります。黒田さんが、超多忙じゃなければどんどんPRしてもらいたいくらいです。
ビジネスパーソン、マーケターの読者のみなさんには、書籍のPRって狭い世界の話に見えると思います。でも、狭い世界に限定したところでの事例だからこそ、メソッドが分かりやすいし、考え方に共感していただける部分も多かったのではないかと思っています。黒田さん、今日はありがとうございました。
撮影/森清(講談社写真映像部) 文/室井美優 編集・コーディネート/川崎耕司(C-station)

川崎耕司 チーフエディター・コーディネーター
C-station責任者。C-stationグループの、広告会社・広告主向け情報サイト「AD STATION」担当。