2025.03.25

ベストセラー連発のスゴ腕PR・黒田剛さんに聞いたPRメソッドは、マーケター、セールスパーソンにとってのヒット連発メソッドかもしれない。

目次

非効率家/書籍PR 黒田剛氏

本が売れない時代に、次々とベストセラーを生み出している書籍専門PR田剛さん。講談社在籍時に数々のヒット作を手がけた後、2017年PR会社・株式会社QUESTOを設立独立後各出版社からのPR依頼が後を絶ちませんそんな黒田さんが、4月に初の著書『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方発売「営業はしない」「リリースは送らない」など、黒田流の仕事術がぎっしり詰まった一冊が完成しました。

回は、黒田さんと同じ部署で働いていたこともあるC-stationチーフエディターの耕司インタビューを実施PR担当者はもちろんのことマーケターやセールスなど、あらゆるビジネスパーソンに響く非効率なのになぜかうまくいくメソッドを担当編集の下井香織さんを交えながら伺いました。

書籍のPRという狭い業界で培われたメソッドだからこそ、マーケティングのさまざまな場面に通じる縮図として、読者のみなさんの参考になるのではと思います。合計1万字という"非効率"なボリュームのインタビュー、じっくりお楽しみください

書籍『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』書影非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方(講談社・4月10日発売)

18年間で700冊以上の本のPRを手がけ、600人以上の著者や300人以上の編集者と関わってきた黒田さんが見つけた、「非効率なのに成功する」コミュニケーションの法則とは? そのメソッドを一挙公開した、ビジネスパーソン必見の一冊!

非効率は、"超効率的"? 実体験から生まれた非効率思考

川崎田さんとは講談社時代、同じ編集部にいたことがありましたね。当時から、常に現場に足を運んでいる姿が印象的でした

非効率家/書籍PR 黒田剛氏黒田剛 非効率家/書籍PR 株式会社QUESTO代表 

1975年、千葉県で「黒田書店」を営む両親のもとに生まれる。書店外商部を経て、2007年より講談社にてPRを担当。2017年に独立し、PR会社「株式会社QUESTO」を設立。講談社の『妻のトリセツ』(黒川伊保子)は、シリーズ70万部を超えるヒットを記録。『いつでも君のそばにいる』(リト@葉っぱ切り絵)をはじめとする葉っぱ切り絵シリーズは30万部、『続 窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)は、発売2ヵ月で50万部を突破。その他多くの出版社にてPRを担当。非効率ながらも成果を出す独自の仕事術を、セミナーなどを通して伝えている。

黒田懐かしいですね! 僕は今も変わらずずっと現場に足を運ぶことを大事にしいます今回出版する本のPRも同じですね。プルーフ(サンプル本)を出版社の編集者や書店の方々に配る際は、必ず手渡し。一気に発送したほうが効率はよさそうに見えるけど直接会って渡すことでその場の反応を肌で感じられるし、後の返信の有無も含めて、次にどう渡すかのヒントになるです

川崎もうすでに『非効率思考......ですね

黒田れを繰り返しながら対応を磨き上げ一件一件オンリーワンの対応するのが僕のやり方。すでに、成果につながってですよ。たとえば蔦屋書店 代官山店のイベント担当者に本を渡しに行ったら、すごく興味を持ってくれて早速イベント開催が決まりました 人から見たら非効率に感じるかもしれませんが、自分にとっては"超効率的"なんですよね

川崎僕も早速拝読しました。この本にはそうした格言やビジネスパーソンの参考になるメソッドがたくさん書かれているけど、僕が一番印象的だったのはPRとは、「つくる人」(著者や編集者)と「つたえる人」(メディア)をつなぐ役割という言葉です一般的には、本と読者をつなぐのがPRの役割だと思うけど、黒田さんのアプローチはそこが違うだなと

同じように、マーケターの仕事商品と消費者をつなぐではなく商品をつくるひと(or商品のストーリー)と消費者に伝える人をつなぐものと考えてみると面白いですよね。セールスであれば商品とお客さんをつなぐではなく商品をつくるひとorストーリーとお客さんのニーズをつなぐ仕事そう捉え直せば、田さんの『非効率家のPRメソッド』C-stationの読者であるビジネスパーソンに役立つメソッドや視点がたくさんあるはずだと思ったです

書籍『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』プルーフ非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』のプルーフ「はじめ200冊用意していたのですが、結局重版して400冊つくりました(笑)。一般的には50冊くらいだと思いますけどね(黒田)

黒田:メソッドに抽出してくれたのも、非効率というキーワードを生み出したのも、編集担当の下井さんです。非効率なのが黒田さんの面白いとこだって僕が6時間話し続けた内容を下井さんがまとめたnote記事があるのですが、今回の本はその記事をきっかけに制作が決まりましたいつもの自分が話しているだけなんだけど、1,000以上の"いいね"ついたり共感しました!多くの人からポジティブな声をいただけたことは、自分のなかでも大きな気付きでした

川崎この本には幼少期のエピソードや書店営業時代の話など、黒田さんの実体験がたくさんつまっていますよね。さん自身が普段からそうした視点を持っていたからこそ、形にったものが多いじゃないかな今回は、そうした黒田さんのエピソードを掘り下げながら、実践的な非効率メソッドじっくりいてみたいと思います

困りごとはありませんか?」からはじまる非効率PR 〜悩みを徹底的に聞いて解決案を提案する

図書館の困りごと図書パンフレットが古い!」。自作ランキングリストで新刊情報を提供し、司書から大絶賛!

川崎まずは、書籍にも書かれている困りごとはありませんか?からはじまるPR術について聞いてみたいと思います。書店で営業をしていた時の経験が、この考え方につながっているそうですね

黒田そう。それが僕のPRの根幹ですね。最初に就職したのは、芳林堂書店という老舗の書店。そこの外商部で、学校図書館の司書さんたちに本の発注をしてもらう仕事をしていました。営業の仕事って、最初はこんなサービスがあります」「この割引率で提供できますよ!と説明して、決まるかどうかの話だと思っていました。

でも、最初の3ヵ月くらいは、ただ名刺を置いて回るだけの日々。全然成果が出ないし、心が折れそうにってたんですそんなときにIBMがなぜ成長したかが書かれたを読んで、困りごとはありませんか?というアプローチを知これだ!と思いましたそれから無謀な飛び込み営業を辞めて困りごとを聞くスタンスで行こうと決めたです

川崎でも、いきなり営業さんが困りごとはありませんか?と聞きに来ても、取り合ってくれないこともあるじゃないですか? どのように司書さんたちを巻き込んでいったのでしょう

C-stationチーフエディター川崎耕司氏川崎耕司 C-stationチーフエディター

FRaU、ViVi、VOCEなどの女性メディア、Hot-Dog PRESS、TOKYO1週間などの男性・情報メディアで長年、編集を担当したのち、2021年よりコミュニケーション事業第二部、2023年よりC-station担当。

黒田まず僕がやったのは相手を知ること当たり前のことですが、学校ホームページなどでとにかく情報を集めました。そして、いくつかの学校を通っているうちに、司書さんが自分の時間を持てるのが、午前と午後、それぞれ2時間くらいだとわかってきたです。そこからは1日2件に絞って訪問し、それ以外の時間をすべてリサーチに当てていましたつまり、1日何十件も訪問するのではなく、一件一件にじっくり時間をかけようと考えたです。

話を聞いてもらうために今は契約していただかなくて大丈夫です!」と正直に伝え、相手の困りごとを聞き出すようにしていました。そうすると不思議なもので、「話題の新刊が入ってこない」「図書パンフレットの情報が古く、生徒向けの本を選びにくい」などの困りごと、話してくれるようになったです

川崎:営業やPRをするときってどうしても自分たちのことを伝えようとしてしまうけど、相手を徹底的に知り、聞く姿勢が大事ということですよね。

黒田:その通りです。「こんなお困りごとないですか?」と、まだ相手が見えていない困りごとを見つけて提案できるようになれば「こいつわかってるな」と信頼してもらえるすよね

でも、「パンフレットが古い」という困りごとの解決は、大変でしたね。各所を探したのですが新刊情報のまとまったものは見つからず......。結果、すでに契約している学校図書館から受注した本をランキング化したパンフレットを自作して配りました。それが司書の方々から大絶賛されまして! 年目には、いきなり20件もの新規契約をすることができました

テレビ局の困りごと「盛り上がるトークテーマがほしい!」『妻のトリセツ』から「妻を絶望させるセリフ」を提案し、多くの番組で特集が組まれるように!

黒田:困りごとを聞く」というスタイルは、書籍PR際も同じです。僕が講談社に転職し担当した『妻のトリセツ』シリーズも、テレビ局困りごとを聞き出し、解決策を提案できたことが、成功につながった要因だと思っています

書籍『妻のトリセツ』書影妻のトリセツ (講談社+α新書)  著:黒川伊保子

川崎『妻のトリセツ』シリーズは、70万部を超えるベストセラーとなりましたね。「テレビ局の困りごとって、どのようなものだったのですか?

黒田いくつかあったのですが、たとえば『テレビ番組で、視聴率が取れるスタジオトークテーマが欲しい』という困りごと。メディア側は、出演者が意見を交わし合い、盛り上がれるテーマを探していたです。そこで僕は、『妻のトリセツ』の中にある夫が気づかない、妻を絶望させるセリフを、読者の感想と合わせて提案すると、企画会議で盛り上がり、多くの番組で特集が組まれるようになりました。

大事なのは、困りごとを聞いたら、間違っていてもいいから必ず解決案を伝えること。お困りごとの解決に労力を惜しまず提案すれば結果はついてくるはずです

「相手の頭の中で想像させる」提案の中身を相手に妄想させることで、人の心は動く

"ビフォア・サンライズ理論" 相手にストーリーをイメージさせることで現実になる

川崎次に、頭の中で想像させるというメソッドについても、詳しく聞いてみたいと思いますマーケティングの世界では色々なメソッドやフレームワークが語られていますが、いま立ち返るべきは"ストーリー"なんじゃないか考えています田さんの頭の中で想像させるというメソッドも、まさにストーリーがなければ成り立たない。人が想像するには、何かしらの物語が必要なんですよね

ビフォア・サンライズ』(監督リチャード・リンクレイター/1995年製作/101分/アメリカ

黒田:「頭の中で想像させるは、僕のなかでビフォア・サンライズ理論と呼んでいます。これは僕の大好きな映画『ビフォア・サンライズ』から着想を得た考え方です。この映画のストーリーは、アメリカ人の青年フランス人の大学生電車の中で出会い、途中駅のウィーンで降りて朝までの14時間を一緒に過ごすというもの。その映画のなかで、青年は女性と一緒に過ごすために『ここで自分と電車を降りたらどうなるか』を、女性に想像させるセリフがあるです。

メディアに提案するときも同じ。たとえば、著者を番組に売り込もうとするときには、この著者の出演が決まったらどんな番組構成ができると思います?と伝え。そうすると、相手はこんな構成ができるかもと想像し始めるですよね。相手にストーリーを想像させることができれば、おのずと相手から連絡が来るようになる。非常に効果的だと感じています

左からC-stationチーフエディター川崎耕司氏, 非効率家/書籍PR 黒田剛氏, 担当編集者 下井香織氏株式会社QUESTOに集まった、川崎(左)、黒田剛さん(中央)、書籍編集者の下井香織さん(右)。下井さんは、女性誌FRaU編集を20年近く務めたベテラン編集者。現在は書籍編集者として活躍。担当書籍は、シリーズ累計30万部突破『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる』、シリーズ累計6万部突破『英語ぐんぐんニャードリル』他。

リリースは送らず、相手の想像力を掻き立てる"材料"を提案する

川崎相手に想像させて、相手に決めてもらうということですよね。ここは田さんのリリースは送らないという手法にもつながっていると思います。リリースは、自分の伝えたいことだけがてんこ盛りになりがちですから......。

黒田そうですね。リリースは送らずにそれならこんな番組にできると想像してもらえるような"材料"を書いた企画書レシピを送っています本のPRをするとき、どうしても本の魅力だけを伝えてしまいがちですが、著者が稼働できます!」「著者の自宅取材OKといった具体的な材料と調理法を提供することで、相手がイメージを膨らましてくれるですよ

いま、『非効率思考』のプルーフを持って書店訪問をしているところですが、その際も僕は、書店のみなさんに「本を注文していただけませんか?」とお願いすることはありません。ただ、「もし置いていただけるならどんな棚が考えられますか?」と尋ねています。なぜこの質問をするのかというと、相手に想像してもらうためだけでなく、今後この本を紹介する書店さんにおすすめの棚を伝える際の、大変参考になる情報だからです。すると、「ベストセラーになる本は、お店に入ってすぐの棚に1週間ほど置いてみると、動くかどうかがわかるんです。ですので、まずはそこに展開して様子を見ます。一番人通りが多い場所なので、そこでの反応を見ることで本の力が分かるんですよ」といった会話が、自然と生まれてきます。たまたまかもしれませんが、この書店さんからは、プルーフを読んでいただいたうえで、50冊のご注文をいただきました。相手が「この本をどこに置くか」「どんな売り方ができるか」を自分ごとのように想像してくれたことが、いきなり発注につながったというよりも、まず「プルーフを読んでみよう」という行動を引き出すきっかけになったのだと思っています。

ひまわりって漢字で書けますか? 商品の使い方を想像させるひとことを見つける

黒田この想像させるという僕のPR手法ですが、思い返すと母の影響も大きいと思うですよね。僕の実家は『黒田書店』という書店を営んでいました。母もそこで働いていて、百科事典や美術全集の単店売り上げ日本一を何度も取る"伝説のセールスウーマン"だったんです。小さい頃は友人からうちの親、またお前の母親に本売られたらしいと言われたりして、恥ずかしかったですけどね......(笑)。

僕も小さい頃は店番を頼まれることがよくありました。今でも覚えているのは、レジ横に『日本語大辞典』の「向日葵」のページが開いて置いてあった時のこと。店番をするとき、母から「お客さんが来たら『買ってください』ではなく、『ひまわりって漢字で書けますか?とだけ聞いてみて」と、言われていました

すると相手は『どんな漢字だっけ?』と頭の中で思い浮かべるわけですよね。スマートフォンもない時代『これが一冊あれば便利だ』と感じて、次に黒田書店に来た時にはつい『日本語大事典を買ってしまう......。つまり、相手の頭の中に『何それ?』と思わせるような小さな欠片を残しておくことで、その後の行動がどんどん膨らんでいくです

非効率家/書籍PR 黒田剛氏

黒田だから、僕にどうやってこの本を売ればいいですか?と相談に来る人とは、ひまわりって漢字で書けますかみたいなものを一緒につくることを大事にしています多くの人は、ここも、あれもアピールしないと!と考えてしまいがちですが、それでは聞いている人はお腹いっぱい。ひまわりって漢字で書けますか?のようなひとことを見つけて、相手の想像力に任せてみることがポイントだと思います。

エレベータ15秒メソッド〜提案は会議室でなくてもできる

川崎気になるの書籍にも書かれている『エレベーター15秒メソッド』。エレベーターの短い時間をも提案の場所に変えてしまうが、黒田さんですよね思い返せばこのインタビュー企画が決まったのも、たまたま会議室入れ替えの時に田さんから声を掛けられたことがきっかけでした

黒田そうでしたよね! 実際、あの時崎さんと話した時間は、10秒もなかったと思います

川崎今度本出すです!だけ言われて......。でも、僕は黒田さんのそれまでのお仕事を知っているから今C-stationっていうメディアにいるから出る?即答しましたまさに、黒田さんのメソッドに巻き込まれただと思います。無意識に想像していた、ということですかね。

非効率家/書籍PR黒田剛氏, C-stationチーフエディター川崎耕司氏, 担当編集者下井香織氏

黒田エレベーターだけでなく、僕に言わせればどんな瞬間も提案のチャンスなんです。いつの日か、アポイントを取って話すより、エレベーターを待っている時間やエレベーターに乗っている時間に少しでも何か提案したほうが、その後に連絡がくることが多いと気づいたですよね。

一緒に会社をやっている兄と取材に行くことが多いのですが、取材場所に向かうエレベーターでは、兄に軽く非効率思考の話をしてもらうです実はうちの弟が本を出すですよと何気なく話すと、相手は何それ?と気になりますよね。その後、取材が終わり、僕がお疲れ様でした! すごくいいインタビューでしたね下まで送るです。そのタイミングそういえば本のプルーフができたですよと話を振ると、「あの時話していた本のことだ」と思い返してくれる。「ほしい!」という反応がかえってきたら、本を渡す......。

つまり、15秒でも相手の頭の中に余韻を残せるし、そこから次に繋がっていくですよね。もちろんPRは、一発で決まることはなかなかありません。エレベーターの15秒のような小さなことでも繰り返しやっていけばちっとはまる時が来ると信じています

「もっと聞きた」と思えるような、15秒の動画をいつも持っておく

川崎短い時間で相手に興味を持ってもらうコミュニケーションは、PRだけじゃなく、マーケティングやセールスにも応用できそうです。でも、15秒で話すのはなかなか難しいようにも思えます

黒田もちろん、15秒ですべてを伝える必要はありません。逆に、もっと聞きたかったなと思ってもらうような名残惜さがある方がいいですよね

15秒で相手の興味を引き出すためのポイントとして僕はこの本ならこの話をしようという、15秒の短い動画を頭のなかに持っておくように心がけています。わかりやすく言えば、駅のホームで友人とお別れするようなイメージ。「今度僕マラソン出るだよね!」「えなんで!」というタイミングで、電車のドアが閉まる。の後「今度その話聞かせて!」と相手から連絡が来る。そんなエンディングまでを想像しながら話しています(笑)

非効率家/書籍PR 黒田剛氏, 東京マラソン時「東京マラソン2025に出場した黒田さん。初めてPRを担当した書籍『体幹ランニング』の著者・金哲彦先生に勧められてマラソンを始めたそう。 「僕のPRのモットーは『著者に言われたことはやってみる』。メディアの担当者に実体験を元に熱く話をすると、やっぱり話を聞いてもらいやすいですよね!

黒田でも、もし僕が自著の『非効率思考』をエレベーターの中でPRするなら、代官山蔦屋書店でイベントやるですよ!」かな。え、なんで!と思ってもらえたら大成功。前述の相手の頭の中で想像させるにつながるのですが、内容を細かく言わず、相手の頭の中に気になるなという小さな種を残す効果的なんですよね

"ストーリー"で伝えるから、相手の心を動かせる〜情報にすぎない事実やデータではなくストーリーで伝えるということ〜

データや事実は「情報」にすぎない

川崎ナラティブマーケティングというキーワードが話題なったり、講談社メディアカンファレンスの昨年のテーマが「物語の力がミライを創る」だったりと多くのマーケター、セールスパーソンは"ストーリー"に注目していると思うです。田さんが話してくれた『エレベーター15秒メソッド』も、続編やエンディングを想像しながら話をするのも、ストーリーですよね

黒田たしかに、"ストーリー"というワードは『非効率思考』の中に何度も出てきます。僕は、相手の心に響かせるには、ストーリーで伝えることが大切だと考えています単なるデータや事実は情報として伝わるだけで印象に残りづらいものですから

メディアに本をPRする際も、ストーリーを軸に伝えるようにしています。たとえば、以前PRを担当したのが、『温めれば、何度だってやり直せる』という、久遠チョコレートの創業者・夏目浩次さんの著書でした。久遠チョコレートは年間売上18億円を達成し、全国で働くスタッフの7割が障がい者という企業です。ただ、こうした事実を並べるだけでは、単なる説明にすぎません

書籍『温めれば、何度だってやり直せる』書影温めれば、何度だってやり直せる チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来(講談社)  夏目浩次

黒田そこで僕がメディアに伝えたのは、夏目さん自身のストーリーでした。夏目さんのストーリーをひとことで言うならば全国平均賃金16000円という障がい者雇用の世界に、チョコレートで革命を起こした男の物語」です障がい者雇用を促進しようと始めたパン工房事業で失敗し1000万円の借金を抱えたこと温めて溶かせば、何度でもやり直せるチョコレートづくりに着目してチョコレート事業を立ち上げたこと結果障がい者の"稼げる場所"を作り出し、彼らの所得を全国平均の10倍にしたこと──こうした成功までのストーリー紹介したところ、多くのメディアに取り上げられるようになったです。

情報ではなくストーリーで伝えることで、相手の心を動かし『読んでみたい!』と思ってもらうことができると思います。

ストーリーで聞くから、ストーリーで伝えられる

黒田もう一つ大事なのが、ストーリーで聞くということ。本にも書いたですけど、僕が得意なのは、どちらかといえば『ストーリーを聞くことなんです誰かと二人で食事に行く時には、その人が生まれてから現在までのストーリーを聞き出すことが多いです。未来のことを聞かれると戸惑うけど、過去のことは絶対に話せるです。自分のルーツに興味を持ってもらえるのって、嬉しいですからね。

でもこれは、著者のインタビューをするときにもすごく活きるですよ。つまり、僕がストーリーで伝えることができるのは、ストーリーで話を聞いているから。そこから自然と相手の心に響く伝え方ができるだと思います。

思い返せば、これも子どもの頃からのクセなんですよね。黒田家で修学旅行から帰ってくると2泊3日すべての行動を1日目の朝から、順番に話していくのが定番でした。両親が「それで?」「それで?」と面白がって聞いてくれるのが嬉しくて、僕もついついストーリー仕立ていつまでも話してしまってたんです「ストーリーで聞く」「ストーリーで伝える」ことは、そんな両親のもとで育つ中で、自然と身についた習慣なのだと思います。

番外編:黒田さんが、「C-station」をPRするとしたら?

川崎最後におまけで、C-stationについて聞いてみてもいいですか。黒田さんがC-stationをPRするとしたら、どうします?

非効率家/書籍PR 黒田剛氏

黒田C-stationの読者層である、広告業界や広告主のマーケターって、ある程度限られてますよねtoCのメディアと違って。であれば、僕なまずキーとなる人たちに直接『困りごと』を聞きに行くところから始めると思います(笑)。自分らしく。『あなたの課題はC-stationを通して解決できますよ』という提案をしていくだろうな。一方で、PRとして「ネット広告」には、すごく注目しています。いま、出版業界でも、新聞宣伝に加えてネット広告の強化が求められています。これまで、読者から非効率に集めたストーリーを新聞宣伝に掲載していたように、これからは同様にネット広告でも伝えていく。そんな時代になると思います。

川崎:ネット広告とは、非効率家らしくない(笑)

黒田はい(苦笑)。なので、狭く深くマーケターの人たちに刺さるように原始的に非効率思考で行くのと同時にネット広告を掛け算するということですかね。

それと、C-stationには"編集者の視点"をもう少し期待したいです。たとえば、僕が本を書くとき、編集者の下井さんが原稿を読んでは『黒田さん、この話入れる必要あります?』とか『これ分かりづらいんでもっと具体的に書けませんか?』ってズバズバ言ってくれたんですよ。それが、めちゃくちゃ痛いですけど(笑)、でも必要なんです。そういう取捨選択の視点が欲しいかな。

たとえば、旬な人物をしっかり捉えたコンテンツがトップに出ていて、その人が講談社と絡んでるとか。そういう構成になっていたら、僕が営業に行っても、説得力が増すと思うですよね。まさに、『ひまわりって、漢字で書けますか?』みたいな、直感的に惹きつける仕掛けが欲しい。そういうフックを作れると、C-stationはもっと強くなるじゃないかなと思いますね

川崎最後は、それこそ痛いアドバイスもいただけましたが(笑)、とても参考になります。黒田さんが、超多忙じゃなければどんどんPRしてもらいたいくらいです。

ビジネスパーソン、マーケターの読者のみなさんには、書籍のPRって狭い世界の話に見えると思います。でも、狭い世界に限定したところでの事例だからこそ、メソッドが分かりやすいし、考え方に共感していただける部分も多かったのではないかと思っています。黒田さん、今日はありがとうございました

左から担当編集者下井香織氏、黒田剛氏、黒田信吾氏

左から、担当編集者の下井香織さん、黒田剛さん、
黒田さんの兄であり、株式会社QUESTOを支える取締役の黒田信吾さんと共に。
*なお記事中で話題となった黒田剛さんの蔦屋書店代官山店でのトークイベントは4月15日に開催。詳細、お申し込みはこちらから。

撮影/森清(講談社写真映像部) 文/室井美優 編集・コーディネート/川崎耕司(C-station

川崎耕司 チーフエディター・コーディネーター

C-station責任者。C-stationグループの、広告会社・広告主向け情報サイト「AD STATION」担当。

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