2025.03.04

「文字量」がファン化を測定する効果指標に?ビデオリサーチ吉田氏に聞く、コンテンツメディアが抱える"3つの課題"とその解決策とは<後編>

企業のメディアプランニングにおけるコンテンツメディアの立ち位置と、これからについて、前後編でご紹介する本企画。

前編では、デジタル広告が隆盛し、展開手法も変化する中でのコンテンツメディアの"現在地"、およびSNSや運用型広告とは一線を画す有用性について、C-stationエディターの丸田が、一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)「コンテンツマーケティング研究会」で座長補佐を務める、株式会社ビデオリサーチの吉田正寛氏にお聞きしました。

後編となる今回は、活用を進めるうえでキーとなる"3つの課題"とその解決策、今後の展望について伺いました。

活用推進のカギは、依頼パターンの「定型化」と明確な効果指標

丸田:コンテンツメディア活用を進めるにあたっての課題についてお聞かせください。企業や広告会社のプランナーから見た使いづらさがあるとしたら、どのような点なのでしょうか?

吉田:率直に言うと、依頼時の"お作法"、つまり運用型広告等で見られる「ベタなパターン」が確立されていない点だと思います。具体的にパターンを設ける必要があると感じているのが、以下の3点です。

  1. 依頼ルート
  2. メディアの選択方法とつくり方
  3. 「成功」を表す指標

依頼ルートについては、コンテンツマーケティング研究会の参加者にどうやって広告主を見つけているか聞くと、口をそろえて"機縁"だとおっしゃる。つまり個人の人脈やスキルに依った非常に属人的な世界です。一方の広告主側からは、「以前は雑誌や新聞でタイアップをしていたけれど、今はできるメディアがない」といった話を聞くことがあります。

丸田:「できるメディアがない」ですか?

吉田:はい。コンテンツメディアはデバイスシフトしていて、デジタルで同じことができると知らないんです。そのため、使いたくても依頼先の窓口がわからない。広告会社のプランナーさんも同様に詳しい方が減っているため、「それよりスポットCMで500GRP(※)を狙いましょう」と提案をされたら、そちらに進んでしまう。

※GRP...「Gross Rating Point(グロス・レイティング・ポイント)」の略。一定期間に放送されたTV CMの視聴率を合計した数値を指す。

2つ目についても同様です。デジタルメディアが乱立する中で、広告主の目的やターゲット像と希望する媒体が合っていなくても、別提案の明確な根拠を示せず、やはり個人の感覚で話してしまう。さらにどんな目的にも使えるが故に、つくり方も千差万別。打ち合わせにも時間がかかりますし、事例を見ると多彩なパターンが出てくるため、逆に敷居が高く感じます。

こうなると、人脈や方法を熟知した「プロ」以外は、なかなか手を出せなくなりますよね。そこで、連絡先の窓口や、メディアの選び方、目的別の制作パターンといった"作法"を確立できると、断然使いやすくなります

丸田:2点目は特にわれわれメディアの反省点ですね。コンテンツメディアの場合、つい「何でもできます」と言ってしまいがち。逆に定型を作っておいた方が相談しやすく進めやすいんですね。とにかく「型を作る」ことが大事だと。

吉田:昔、わたしがACR/exの立ち上げ時にブランド担当としてセールスをする際に同じこと言っていたのですが、なかなか契約につながらなくて。とあるクライアントから「何でもできるってことは、何もできないのと一緒だよ」と言われたんです。そこで発想を変えて、本当は何でもできるけれど「これだけできます」とアピールポイントを絞ったら売れ始めました。

コンテンツメディアも何でもできるのですが、逆に「ファン化」の話だけに特化して、他はぐっと抑える形にすると、広告会社さんも企業からファン形成の相談を受けたときに「できると言っていたメディアがあったな」と思い出してもらえます。

吉田 正寛(株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット シニアフェロー)
2008年(株)ビデオリサーチ入社。広告コミュニケーションにおけるプランニングや効果検証に有用なフレームの構築・分析ロジックの研究開発に従事。専門は広告メディア特性、各広告メディア・コンテンツ固有の役割に関する研究を継続中。

丸田:確かに、「ファン化といえば、コンテンツメディア」といった型を構築できたら強いでしょうね。3つ目の明確な指標については、前編のお話にもつながる部分ですが、今時点で吉田さんが指標になり得ると思うものはありますか?

吉田:僕自身は、ブランドや商品、あるいはメディア自体に対する生活者の「熱量」みたいなものを、定量として測定する方法を考えています。例えばコンテンツに対する熱量がどこに表れるかというと、感想や意見がとにかく「長い」という点が一つ考えられます。

かつて新聞広告共通の調査プラットフォーム「J-MONITOR」に関わっていた時、広告記事に対するフリーアンサーを見ていたら、一般的なアンケート調査では「特になし」と書く人が多いところを、4~5行書いている人が結構いました。新聞社の方にそれをお伝えしたら、「僕らは広告記事で企業の"姿勢"を伝えているつもりです。それに対して賛否両論を持つのが読者ですよ」と教えてくださり、熱量がある人は「書く」のだと気づきました。そこで試しにポジ・ネガ関係なく、文字の「量」を数えてみたんです。

丸田:シンプルに文字の「量」としてカウントする。それは新しい視点ですね。

吉田:ブランドリフト効果の指標で考えた場合、「ファン化」は購入意向の上昇といえます。そう捉えてみると、文字量と購入意向にもやはり相関があるんです。

以前にSNS上の投稿に注目した上司もいたのですが、そちらは流行に影響される傾向があって「ファン」とは少し違ったようです。それよりも、雑誌やメディアへの感想といったデータを基に、もっと個人の趣味や嗜好に対する熱量を定量化できるといいと思っています。とにかくわかりやすい形の指標が必要なので、「初動3日で25万字のご意見達成!」のような話にできたら、達成感も出てくるのではと。

丸田:その形なら達成度が明確になるし、面白いですね!これはどこか1社だけの取り組みではなく、全体の標準として統一できる状況が理想だと思います。そうした動きができるのは、おそらく御社のような立場になるのかなと。

丸田健介(講談社C-station エディター・コーディネーター)
広告会社にて企業のデジタルマーケティング戦略立案・実行や、データ基盤構築の支援を行ったのち、2022年1月に講談社に入社。「C-station」や、BtoB向けSDGs情報メディア「講談社SDGs」の運営を担当。また、自社の広告ビジネス・ライツビジネスにおけるサービス開発やマーケティング業務を担務。

吉田:当社もですが、講談社さんはじめ皆さんと一緒に研究発信していけるといいですよね。「J-MONITOR」の結果だけだと「新聞だからでは」と言われてしまう。もし、デジタルコンテンツでも同様の結果を出せたら、二つの知見をつないで「 "ファン化"された熱量の高い人は、意見をたくさん言いたくなる」説の考察も深められますし、他の企業も研究しはじめてくれるかもしれません。

「別軸」となったコンテンツメディアを育てることで、広告業界の未来が拓ける

丸田:最後にコンテンツメディアの今後の可能性についてお聞きかせください。「ファン化・ロイヤリティ向上」に価値があるとしたとき、活用を伸ばしていくためのポイントがあれば、合わせてお聞きできるとうれしいです。

吉田:僕自身はさらなる活用が期待できるものだと考えています。経営者の課題が「ファン化・ロイヤリティ向上」になる中で、現状そこに応えられる広告手法が見つかっていない。この点をコンテンツメディアが担えるとリマインドできれば、一気に伸びると思います。

そのためには、先ほどの3点を中心とした依頼パターンの確立が必須ですが、2のメディア選択における課題を解消する方法の一つとして、現在「プロフィールマッチング」という分析アプローチを試みています。これは、企業の商品やサービスのターゲットとなる相手の人物像と、メディアやコンテンツの「相性」を一つの数字で出す診断ツールのようなものです。

丸田:「一つの数字」とはどういうことでしょうか?

吉田:例えば私が「自動車」のプロモーションを考えるときに、自動車に関心がある方々の人物像はACR/exの生活者データでみると明確に分かります。その中で、さらに特徴的なプロフィール項目を抽出していくんです。

仮に490個のプロフィール項目の中で、自動車に関心がある人の特徴的な項目が74個あったとします。同じことを今度は特定のメディア・コンテンツの視聴者や読者に対して行う。あるテレビ番組の視聴者のプロフィールにおいて、特徴的な項目が87個抽出された場合、その中で自動車関心層の特徴的な74項目が全て重複していたら、同番組とのマッチ度は100%になりますよね。こんなロジックでプロフィールごとの相性を診断していきます。

吉田:仮に調べたいメディアの読者プロフィールがACR/exの中に入ってなかったとしても、対象メディアの広告ID(広告識別子)等を提供いただければ、ACR/exとデータフュージョンしてプロフィール付けることも可能です。

丸田:その方法であれば、企業のオウンドメディアを訪れた人々との診断もできますか?

吉田:もちろんです。ほかにACR/exに蓄積されたデータを活用すると、商品だけではなくタレントとの相性等も測れます。ある食品に関心がある人々とマッチ度が高いタレントをランキングにしてキャスティングの参考にしてもらったり、各メディアと親和性の高い商品を分析して、コラボ先を提案したりもできます。こうした仕組みがあると、企業もコンテンツメディアを選ぼうと思えますよね。

丸田:おっしゃるとおり、明確な数字として出ることで、プランニング時におけるコンテンツメディア選択の可視化軸になりますね。

吉田:講談社さんはたくさんのメディアを運営されていますが、不慣れな営業さんでも、企業やカテゴリーごとに相性がいいメディアをレコメンドできるようになる。それを広告会社のプランナーにも渡して、コンテンツメディアをやりたいなら、貴社との相性トップはこのメディアですと提示できれば、広告主も「やってみよう」と思えるはずです。

丸田:なるほど。こうした形で従来のメディアプランニングとは「別軸」として、「ファン化・ロイヤリティ向上」を目的としたコンテンツメディアの活用を促進できれば、マス広告などの広告効果が落ちてきたとしても、新たな道を拓いていける可能性がありますね。

吉田:私としてはそうなるべきだという確信があります。コンテンツメディアにはポテンシャルが十分あるので活用のハードルを下げることが、広告業界全体を救うと考えています。当社は広告取引を「横」から見る立場ですが、第三者だからこそもったいないと感じる点も多い。そうした部分を研究したり、発信したりすることで少しでも気づきを届け、良いコミュニケーションにつなげて、広告全体を盛り上げていけたらうれしいですね。

丸田:ありがとうございます。企業、広告会社、メディアそれぞれの状況をよく知ってらっしゃる吉田さんのお話、とても興味深くためになりました。

撮影/村田克己(講談社 写真映像部) 取材・文/渡部彩香 (Playce) 編集・コーディネート/丸田健介(C-station)

丸田健介 エディター・コーディネーター

C-stationグループで、BtoB向けSDGs情報サイト「講談社SDGs」担当。

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