2025.03.04

コンテンツメディアは、広告業界の未来を拓く"新たな軸"となりえるか。ビデオリサーチ吉田氏に聞く、その現在地とこれから<前編>

この10年で広告のデジタル化は劇的に進み、メディアプランニングの中心は大手デジタルプラットフォームへと移行、展開手法も大きく変わりつつあります。

これまで主に購買ファネルにおけるミドルファネルへのアプローチを担ってきたコンテンツメディアも、デジタルメディアの整備とデバイスシフトを推進しました。しかし、各種SNSや運用型広告を中心としたプランニングの俎上には上がりにくくなっている状況が見られます。

現在、企業のメディアプランニングにおいてコンテンツメディアはどう捉えられているのか? C-stationのエディター・丸田による、一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)「コンテンツマーケティング研究会」で座長補佐を務める、株式会社ビデオリサーチの吉田正寛氏へのインタビューを前後編でお届け。前編となる本記事では、その"現在地"と有用性についてお聞きします。

コンテンツメディアは、マス広告中心の「パッケージ」から離れた施策に

丸田:まずは企業が現在、コンテンツメディアをどのような生活者とのコミュニケーションプランとして捉えているのか、吉田さんの見解をお聞かせください。

吉田:現在のコンテンツメディアは、運用型広告などのいわゆるデジタル広告とは全く"別軸"の手段と考えられています。各種SNSやプラットフォームでの運用型広告は「即時購買」や「EC送客」の目的で行われ、一つのパッケージとして成り立っています。一方のコンテンツメディアはその中に入るものではなく、「ファン化」や「ロイヤリティ向上」といった別目的で実施される広告だと考えています

10年前であれば、消費財メーカーで広告展開をする場合、雑誌等のタイアップは必ずプランニングの中に入っていました。当時は、リーチも取れ、即時購買につながるマス広告と、ある雑誌の読者にブランド自体や情緒的なイメージを伝えるといった広告施策が同じ「パッケージ」の中にあった。ところが、この10年でその状況は大きく変わりました。

丸田:雑誌や新聞がこれまで担ってきた、ミドルファネルへのアプローチが、現在ではあまり考えられなくなってきているということでしょうか?

吉田:ミドルファネルの価値はもちろんありますが、今は、そこを飛ばして「リーチの次は、購買」といった考え方が強くなっていると感じます。企業の広告出稿が紙媒体やTVからデジタルデバイスへとシフトする中で、デジタル広告はそうした即時的な効果を謳うのが非常に得意でした。そこから運用型広告を中心としたプランニングは、「リーチしたら即購買へ」といった極端にシンプルな話になってしまった。結果、ミドルファネルを担っていたコンテンツメディアは、パッケージの外に出て、別軸になった流れだと認識しています。

吉田 正寛(株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット シニアフェロー)
2008年(株)ビデオリサーチ入社。広告コミュニケーションにおけるプランニングや効果検証に有用なフレームの構築・分析ロジックの研究開発に従事。専門は広告メディア特性、各広告メディア・コンテンツ固有の役割に関する研究を継続中。

吉田:とはいえ、近年では中長期で取り組むべき「ファン化」「ロイヤリティ向上」を経営層の方々が重視し始めています。現場の方々を中心に「すぐ"売れる"広告」「今期の売り上げ」といった点にばかりに注力してきたことで、広告は"すれっからし"状態になってしまいました。ここにきて、やはりブランドを育ていく必要があることを、上層のレイヤーほど意識していると思います。

丸田:確かに、現場はどうしても今期の数字を達成する方に目がいきやすいですよね。

吉田:一定の期間における成果を示したいときに、中長期の取り組みは"証拠"の提示が難しいですからね。数値等で分かりやすい結果を示せないから評価されにくく、なかなかプランには入ってこない。本来は購買を狙う短期的な施策と、生活者との"絆"形成に資する中長期な施策の両軸でブランドが成り立つものですが、分かりやすい購買ばかりに目がいって、横軸の広がりがおろそかになっていると感じます。

丸田:つまり、コンテンツメディアがパッケージから外れた経緯には、2つのポイントがあるのですね。一つは、マス広告やデジタル広告といった短期的即時的な効果が出るものが強く求められた際に中長期的な目的で行うコンテンツメディアは「時間軸」の考え方が異なった。もう一つは、後ほど詳しく伺いますが、明快な「指標」があるかどうか。リーチやコンバージョンのように数字で示せて評価されやすい指標がないと、どうしてもプランから抜け落ちがちになり、別軸に分かれていったと。

丸田健介(講談社C-station エディター・コーディネーター)
広告会社にて企業のデジタルマーケティング戦略立案・実行や、データ基盤構築の支援を行ったのち、2022年1月に講談社に入社。「C-station」や、BtoB向けSDGs情報メディア「講談社SDGs」の運営を担当。また、自社の広告ビジネス・ライツビジネスにおけるサービス開発やマーケティング業務を担務。

生活者が求める"文脈"に寄り添い、情報を伝えられる強みを活かす

丸田:コンテンツメディアの強みを「ファン化・ロイヤリティ向上」への寄与とした場合、それを叶えられるポイントはどこにあるのでしょうか?

吉田:読者に訴求したいメッセージをしっかり「読ませられる」点ですね。今生活者はなかなか広告を見てくれず、マス広告や運用型広告が効きにくくなっている。一方で、実は「情報感度上がっているという調査結果があります。

吉田:ビデオリサーチ生活者データベースACR/ex(※)で2019年と2024年を比較すると、コロナを経た5年の間に広告への反応は約8ptも下がっています。広告を出してもどこか反応が薄いという実感は、関係者の方々にもあるはずです。だから「もう広告は厳しい」「情報過多で見てもらえない」といったご意見も耳にしますが、例えば趣味や興味関心領域への「情報感度」は上がっていて、自ら積極的に情報収集を行う人は約10ptも増えています。

※ACR/exとは...生活者を「意識」と「利用・購入者」の両側面で捉えるビデオリサーチ提供のマーケティングデータ。生活者属性、商品関与、メディア接触等15,000項目を網羅的に調査している。

つまり、情報があふれているからと遮断していて、広告が目に入らないわけではないんです。好きなものの情報を選択的に知りたいと収集している中で、その"文脈"に関係ないものを見せられるのを嫌がっている。これは、短期的な効果ばかりを狙い続けた結果、生活者が広告を忌避してしまった状況だといえます。

そう考えたとき、コンテンツメディアには生活者が知りたいことの"文脈"に入り込んで情報を伝えられる利点があります。例えタイアップ記事でも、届け方によっては生活者にとって意味のあるものになりえるわけです。

丸田:コンテンツメディアであれば、ターゲットの定め方や見せ方次第で、生活者が求めてる文脈に沿って、受け入れやすくなるプランニングが可能ということですね。

吉田:そのとおりです。生活者側からすると情報感度は高まっていて、知りたい情報なら読む気があるのに、関係のない広告を一方的に見せられたら避けたくなる。ではその「読みたい」思いにフィットする手法は?と考えると、コンテンツメディアになります。特に、ロイヤリティのあるメディアの情報であれば、きちんと刺さるんです。

下図は74の商品カテゴリーに対して、新情報の認知元や、購買欲求・詳細検索意向の喚起につながる情報・媒体を、各経路との接点で計った結果です。この調査でも、コンテンツメディアは非常に伸びてきています。

吉田:特徴的な点は、今でもテレビは強いということ。さらに、22番の「SNS」はいわゆるインフルエンサーマーケティングになりますが、どの接点でも高いポイントを獲得しています。インフルエンサーだから購入欲求に影響するといった話ではなく、新情報認知も詳細検索喚起も全て担っている状況です。

丸田:全てが高スコアなのは驚きです。メディアや施策によって役割が分かれているものかと思っていました。

吉田:そして、詳しい情報を検索するきっかけとなる「詳細検索喚起」が大きく上がっている27番は、商品やサービスを提供している企業の公式サイト、つまりコンテンツメディアです。旧来、こうしたオウンドメディアは、生活者が商品について検索してきた際の受け皿として捉える広告主が多かったのですが、実は検索のきっかけになっている

丸田:検索した「先」のオウンドメディアではなく、企業のオフィシャル情報をチェックした上で、クチコミやタイアップ情報を調べる流れだと。言われてみると、私自身もそうかもしれません。

吉田:企業・ブランドサイトも高い数値ですし、講談社さんが運営されているような企業のオウンドメディア以外のサイトも、読み物系は「詳細検索喚起」や「購入利用時影響」が強い傾向にあります。

吉田:また、購買したいきっかけになる「欲求喚起」のスコアを時系列で見てみると、「テレビCM」が下がる中、「テレビ番組」は上がっている。これは一つの発見でした。テレビはマスメディアですが、「番組」と捉えるとコンテンツメディアとも言えます。例えば番組の幕間でPRと示して商品を紹介したり、ドラマの演者が役柄のまま登場したりする短いCMは視聴されている。テレビでさえも、「コンテンツ」というキーワードが重要になっており、生活者側からも重視されているため、活用しないのはもったいないですよね。

丸田:テレビ番組をコンテンツメディアとして捉えると、視聴率に左右されず狙いたいターゲットが視聴しているニッチな番組や高クオリティの番組を活用できれば、効果が高そうです。

吉田:現在のタイムCMは視聴率が高い番組の枠が人気です。しかしそこではなく、あくまでターゲットと合った番組やコンテンツメディアを全てフラットに見て選んでいけると、別のコミュニケーションができるようになるはずです。

丸田:なるほど、それはリーチ数だけを考えていたら気づけない観点ですね。

後編では、コンテンツメディアの活用を広げるうえで課題となっている点と、今後の展望についてお聞きします。

<後編に続く>

撮影/村田克己(講談社 写真映像部) 取材・文/渡部彩香 (Playce) 編集・コーディネート/丸田健介(C-station)

丸田健介 エディター・コーディネーター

C-stationグループで、BtoB向けSDGs情報サイト「講談社SDGs」担当。

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