2024.11.20

トップマーケター・音部大輔さんが語る「戦略」の本質 ── 「クーリエ・ジャポン」特別開催イベントレポート

よく耳にする「戦略」という言葉。業務にしばしば登場しますが、その本質やコアな部分をきちんと理解する機会は、実はさほど多くないのが実情です。そんな状況下、会員制ウェブメディア「クーリエ・ジャポン」にて連載を執筆中の音部大輔さんが、新刊『君は戦略を立てることができるか』の発売を記念して、10月22日に「戦略講座」を特別開催。C-station経由で応募された方を含め、抽選で選ばれた読者約30名が参加し、「戦略の本質」をトップマーケターである音部さんから学びました。当日の模様をレポートします。

音部大輔(おとべ・だいすけ)
クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役。17年間の日米P&Gを経て、ダノンやユニリーバ、資生堂などでマーケティング担当副社長やCMOとしてブランド回復を主導。2018年より独立、現職。国内外の多様なクライアントのマーケティング組織強化やブランド戦略立案を支援。著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)、『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)、『The Art of Marketing マーケティングの技法 - パーセプションフロー・モデル全解説』(宣伝会議、日本マーケティング学会「日本マーケティング本大賞」で2022年の大賞受賞)などがある

「クーリエ・ジャポン」の読者を中心に、ビジネスパーソンが集結

今回、特別講座の会場となったのは講談社内のカフェテリア。平日の開催にもかかわらず、30〜40代のビジネスパーソン約30名が参加。女性読者も多い「クーリエ・ジャポン」主催のイベントとあって、参加者の3分の1が女性となりました。

「クーリエ・ジャポン」の読者は、グローバル視点のあるビジネスリーダー層。中心年齢は34歳で、女性の割合も46%と高いのが特徴。今回の「戦略講座」にも、男女を問わず、多くの応募があった 画像は媒体資料より抜粋

イベントは定刻にスタート。「クーリエ・ジャポン」南浩昭編集長のあいさつに続き、音部さんが会場に姿を現すと、緊張と期待からか会場の空気は一変。しかし、音部さんの「怖い人だと思われるかもしれませんが、見た目だけですので、リラックスして聞いてくださいね」の言葉とともに、会場の雰囲気は一気に和み、穏やかな空気感の中、音部さんの戦略講座は始まりました。

音部大輔さんは本講座で、「超戦略の基本」と題し、基礎から戦略の本質を参加者に伝えた。見た目とギャップのあるソフトな語り口に、参加者はすぐに引き込まれた

新刊の内容を凝縮した「戦略講座」

今回の特別講座は、新刊『君は戦略を立てることができるか』の発売記念ということもあり、著書の内容を要約したダイジェスト版といえるものになりました。

冒頭、音部さんは、「戦略とは目的達成のための資源利用である」と説明。どんな目的であれ、達成するためには、さまざまな資源(ヒト、モノ、カネ、時間など)が必要です。しかし、時間をはじめとする資源には限りがあるため、戦略を組み立ててから実行に移す必要があります。

その戦略を構成する2つの要素が「目的」と「資源」です。続けて、この目的と資源を「再解釈」することが、「戦略」において重要であると音部さんは語ります。再解釈とは、多様な視点で捉え直すことであり、たとえば、20億円の売上拡大という目標を再解釈すると、「●万円の商品を■点売る」という新たな姿が見えてきます。ほかにも、ヒト軸で「●人で■点売る」と、捉え直すとこともできるでしょう。そうした視点を多く持つことは、戦略を立てるうえで非常に有効であると音部さんはいいます。つまり、物事を一面的ではなく、多面的に捉えることが、より精度の高い戦略を立てるために必要なのです。

今回の「戦略講座」の中で、音部さんは、物事を多角的に捉え、"本質"を見つめることの重要性を、参加者に伝えた

この<目的の再解釈>は、「戦略策定のプロセス」におけるステップのひとつ。戦略策定のためには、他にもさまざまなステップを踏む必要があります。

それが以下の6つです。
1.「目的を明示する」
2.「目的を再解釈する」
3.「投下可能な資源を把握する」
4.「資源優勢を得られる選択肢を採用する」
5.「文章化する」
6.「展開する」

それぞれの項目はどれも重要であり、たとえば「文章化する」は、自分だけでなく、他者と認識を共有するためのステップです。音部さんはすべての項目を解説しながら、参加者の理解を深めるために、ときに参加者に質問を投げかけながら、講座を展開。どんな回答に対しても否定することなく、深堀りしながら解答へと導いていきます。音部流の進行スタイルに、参加者たちはいつしか傍観者から当事者となり、誰もが前のめりになって、音部さんの言葉に耳を傾けていました。

一方通行ではなく、双方向の講座は、参加者たちにとっても刺激的な時間となった

思考は身体能力のひとつ。習得にはトレーニングが必須

本講座では、「戦略を構成する2つの要素」「戦略のつくり方」に加え、戦略策定に向けての「日々のトレーニング方法」についても解説。常に「目的」と「資源」から世の中を眺めてみることが大切であると語る音部さん。具体的な例として、プライベートではビジネス誌やビジネス書、歴史書を読むこと。ビジネスシーンではビジネスレビューや競合分析をするなどの訓練方法を紹介しました。

音部さんが何度も繰り返していたのが、「思考は身体能力のひとつ。習得にはトレーニングが必須」という言葉。トレーニングを続けていなければ思考は磨かれず、他者と異なる発想も浮かばないということなのでしょう。

「マーケターは、思考のトレーニングが重要」と語る、音部さん

ミニワークショップを通して、学びを実践

講座の後半で、参加者からの「Q&A」コーナーを経て、ミニワークショップを実施。自分が編集者になったつもりで、「クーリエ・ジャポン」で月1回の記事広告を年間で考える展開方法がテーマに設定されました。1社の広告を12回掲載するのか、違う会社で12回を分けるのかなど、それぞれのケースにおける目的や効果について参加者から多くの意見が寄せられ、活気あふれるワークショップとなりました。

ミニワークショップでは、講座で学んだ「戦略策定のプロセス」を使いながら、目的の明示、再解釈を参加者全員で実施。学びを実践する場となった

濃密な内容が凝縮された2時間の講座が終了すると、場所を移してスタンディングでのフランクな懇親会が行われました。音部さんや南編集長に声をかけてアグレッシブに質問をする人もいれば、違うグループの参加者と名刺交換をしてお互いの仕事について語り合う人もいるなど、会場は異業種交流会にも似た雰囲気に。30分という短い時間ではありましたが、参加者にとって有意義な時間になったのではないでしょうか。

多くの発見と刺激に包まれた特別講座──参加者の声

今回の特別講座、参加者たちからは以下のようなコメントが寄せられました。そこから見えるのは、参加者それぞれが「多くの発見と刺激」に包まれたという事実です。

「マーケティングにおける戦略の大切さ、また戦略を構成する2つの要素、さらには戦略策定のプロセスや目的の明確化について知ることができ、視座が少し高くなったように思います。参加できて、とてもうれしく思います」

「講義は、身近な実例での説明が豊富で、大変わかりやすく、音部さんの本の内容をより深く理解する機会となりました。無料で受講させてよいのかと感じるほど有意義な時間でした。新刊も予約させていただきました」

「マーケティング観点としてはもちろん、マインドの部分でも大変参考になりました。参加者に考えさせながら進めていく方法は、理解や納得感が深まってよかったです」

本講座の開催前、音部さんは「本セッションを通して『何か新しい視点が手に入って、少し世界を広く感じる』といった、クーリエらしさを感じてもらえれば成功です」と語っていましたが、まさにその言葉通り、参加者にとって大きな刺激と実りある時間を享受できた"特別"な講座となったのではないでしょうか。

〈2024年12月発売、音部さんの新刊〉
音部大輔さんの新刊『君は戦略を立てることができるか』(宣伝会議:刊)
12月19日発売

〈音部さんの連載〉
「クーリエ・ジャポン」の人気連載 「音部大輔さんに学ぶ 仕事に役立つマーケティングスキル」
https://courrier.jp/news/archives/364194/

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