2024.10.18

広告・メディアとジェンダーギャップのリアルな話。~広告のDEI化に向けた、オリコム・講談社の新たなチャレンジ~「Advertising Week Asia 2024」レポート②

世界的にみて、いまだジェンダーギャップの課題に向けた取り組みが遅れている日本。企業と生活者とのコミュニケーションを考える広告・メディア業界では、どのような取り組みが進んでいるのでしょうか。「広告のDEI化」を目指して、オリコム・講談社がそれぞれ取り組んでいる事例から、両社が目指している未来についてディスカッションしました。

(右から)エン・ジャパン株式会社 執行役員 マーケティング本部長 田中奏真さん、
株式会社オリコム 代表取締役社長 中島明美さん、
同 デジタルコミュニケーションプランニング局 ストラテジックプランニング部 部長 栗原雅代さん、
株式会社講談社 ライツ・メディアビジネス本部 メディアプラットフォーム部 副部長/講談社メディア・コミュニティ・ラボ リーダー 丸田健介

丸田 本セッションは「広告・メディアとジェンダーギャップのリアルな話。」をテーマに、みなさまとディスカッションをしていければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

田中 エン・ジャパンの田中と申します。今日はよろしくお願いいたします。

中島 今年、創業103年目となる株式会社オリコムの代表取締役社長 中島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

栗原 オリコムの栗原と申します。今日は「ジェンダーギャップ」がテーマということで、生活者とマーケターの両視点でディスカッションしていきたいと思います。よろしくお願いします。

広告メディア業界のリアル ①組織体制におけるリアル

丸田 早速ですが、「組織体制におけるリアル」についてディスカッションしていきたいと思います。

まずは最新の日本のジェンダーの現状をご覧ください。

2024年の日本のジェンダーギャップ指数

2024年の日本のジェンダーギャップ指数は146ヵ国中118位という低い水準でした。左側のレーダーチャートを見ると、経済と政治におけるジェンダー指数が著しく低いことがわかります。

内閣府は、プライム上場企業において、2025年をめどに女性役員を1名以上選任し、2030年までに女性役員比率を30%とすることを努力目標に掲げています。

しかし、現実はどうでしょうか。疑問に思ったので、実際に日本の主要な広告会社・メディア企業74社の女性役員比率を、一社ずつホームページを見ながら調べてみました。

日本の主要な高屋外車・メディア起業74社の女性役員比率

調べたところ、1社当たり平均の役員人数は大体16.1人。その中で平均の女性役員比率は10%であることがわかりました。さらには、「調べた企業の中で、35.1%の企業が女性役員ゼロ」という衝撃的な結果も見えてきました。

中島さん、この現状を経営者としてどう思われますか?

中島 私は雇用機会均等法の3期目で社会人になりました。バブル期だったにもかかわらず、「女性は採用しない」と門前払いをされたこともあったので、この結果には「まあ、そうだろうな」という感想を持ちました。

ただ、弊社ではそこに男も女もない、という現状です。弊社の規模では、多様な人材が多彩な力を発揮していかないと、新しいことや面白いことはできないと思っています。広告業界としても、性別でくくるということ自体を見直していかないと、5年後10年後が心配だなという思いはあります。

「多様な人材が多彩な力を発揮していかないと、広告業界の持続的な成長は望めない」と語る中島さん

丸田 確かに、これらの数字は、人口比率的に考えたらおかしな話ですよね。数字で見るという状況をいかになくすかということも、これからは重要になってくると思うので、この独自調査は数年おきに継続して行っていきたいと思います。

中島 その時はぜひ弊社にお手伝いさせてください(笑)。

丸田 よろしくお願いします(笑)。

広告メディア業界のリアル ②仕事のリアル

丸田 続いて、2つめ。仕事のリアルについてお聞きしていきます。
僕は2007年入社で、前職は広告業界にいたのですが、男女の性差別を感じたことはあまりありませんでした。

組織的にはフラットな気がしていて、みんな仲良くやれているので問題ないと思っていましたが、当時は「働き方改革」という概念もなく、深夜残業はあたりまえ。徹夜で仕事を頑張る人が評価されるような風潮すらありました。

でもいま、あらためて考えると、誰もがそういう働き方ができるわけではありません。そういう文化や風潮があたりまえだと思われていることについては、改善していかなければいけないと感じています。

栗原 いま丸田さんがおっしゃったように、私もジェンダーギャップをつくってきたのは、社会と文化だと思っています。

私も子供が生まれるまでは男女フラットに働いてきたのですが、出産後は保育園が19時までなので、それ以降の時間帯の仕事がしにくくなりました。

最近は子どもが大きくなってきたので、夜の打ち合わせもやろうと思えばできるようになりました。でも、「がんばらなきゃ」と思う反面、「がんばりすぎなくてもいい」と思う自分もいて、バランスを考えているところです。

ですから、先ほどの広告業界の女性役員比率が10%という数字については、女性の「あまりがんばりすぎなくてもいい」という意識が入っているかもしれないと見ていました。

広告主の立場から見た「多様性とクリエイティブの関係性」

丸田 なるほど。では、広告主の立場からは、現在の広告会社をどのようにご覧になっていますか。田中さん教えてください。

田中 はい。では弊社の体制とからめてお話いたします。私が所属しているマーケティング本部には50名のマーケターがいます。そのうち管理職は4名で、その中の3名が女性。チームリーダーの比率で言うと60%が女性です。以前からダイバーシティを推進しています。

広告代理店やマーケティング支援会社においても、ダイバーシティを意識されている企業が増えている印象があります。そうした会社が提案されるクリエイティブは、多様な観点で考えられているので質が高い。今後も多様性や変化を受け入れていく会社が強くなっていくと思っています。

クリエイティブと多様性について話す、田中さん

丸田 意識の差が、クリエイティブにも表れるというのは、非常に興味深いお話です。

田中 僕が思うに、結局、当事者にならない限り、想像の枠を超えられないのだと思います。

具体的には、組織体制の比率についても、数字で意識するのと、それを「自分ゴト化」するのとでは、納得感が違います。僕の場合は、自分の子供が生まれ、ベビーカーで移動するという体験をしたときにはじめて、「エレベーターがないと不便だ」ということを実感しました。

だからこそ、想像ではなく実態を知るという部分で、本人がどう対応するのかを得られる環境づくりが非常に大事なのではないかと思います。

丸田 確かに、生活者ひとりひとりの環境は異なるので、多様な視点で考えるためには、できるだけ幅広い人たちで組織をつくることは大事ですね。

田中 おっしゃるとおりです。広告主をみていると、日々の業務の中で、生活者のことをデータだけで判断してしまうことがありますが、生活者が100人いたら100人のバックボーンや趣味嗜好があります。

広告主側はそういったところをきちんと見据え、広告会社が出してくる情報のなかから、取捨選択していくことが重要なのではないかと思います。

記号化、アイコン化は過去の手法。現代に合った手法を模索

中島 私が現場にいたときにすごく困ったのは、「女性の感性」と言われたことです。「女性らしさ」「女性ならではの視点」を期待されることが多かったのですが、果たして「私」個人に「女性の感性」というものがあるのかどうかが、そもそもわからない。

「これは女性向けの商品なので、女性の担当でお願いします」と言われると、求められているのは「女性」であって、「中島明美」ではないと思ってしまう。そういうことが非常に多くありました。

かつてはトレンドセットをしていく、記号化する、アイコン化するなど、マスでムーブメントをつくることが業界の中でよしとされてきました。私自身も、その方法論や感覚が染みついています。しかし、いま、一人の生活者をみつめるところから始める時代に、そのやり方のままでいいのかどうか。自分も含めて反省しなければいけないと思っています。

丸田 なるほど。田中さんのお話にもつながりますが、ひとりひとり環境も視点も違うので、それをどこまでちゃんと捉えようとしているか、という姿勢が問われていると。

栗原 そうですね。私が出産した時は、「ハンサムママ」という言葉が流行り、「がんばるママが偉い」という風潮がありました。

一方で、日本には、まだまだ見えないアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)が根づいているのを感じます。先日、10歳の次男から「ママはもっと母親らしくなった方がいい」と言われた時に、子どもにもそんな固定観念があるのだなと驚きました。

自身の経験から、アンコンシャスバイアスについて語る、栗原さん

丸田 「母親らしさ」という言葉を子どもの口から聞くというのは衝撃的ですね。無意識のなかで誰もが持っている固定観念を、ステレオタイプにとらわれないようにしていくことが大事だということがよくわかりました。

広告メディア業界のリアル ③広告表現のリアル

丸田 3つめは「広告表現のリアル」について考えていきたいと思います。ここからは、広告表現という分野において、「ジェンダーギャップ」という問題をどこまでとらえられているのかをディスカッションしていきます。

まずは、オリコムさんが今年の2月に実施した調査をご覧ください。

ジェンダー表現への配慮は、作り手と受け手でギャップがあるオリコムが実施したジェンダー表現に関する調査。作り手と受け手に大きなギャップがある

栗原 弊社は今年の2月、広告表現に関して調査をしました。左側は広告会社に広告を作る際にジェンダー表現に配慮しているかどうかをマーケターにたずねた結果です。95.3%が「ジェンダー表現に配慮している」という数字が出ました。

ところが、右側の受け手となる生活者に調査してみると、「普段目にする広告は、全体表現に配慮されている」と答えた生活者はわずか34.1%。つまり、作り手と受け手にこれだけ大きなギャップがあるという衝撃的な結果となりました。

丸田 これだけギャップがあるということは、広告制作者の思いが生活者に届いていないということですね。

栗原 そうです。さらに普段目にする広告に関して、どういう点がジェンダー表現に欠けていると思うのかを生活者にたずねたところ、「男の人がわざとらしく家事をしている(40代女性)」「男はこうあるべきという姿で描かれていることが多い(30代男性)」「転職サイトの広告で、男性なら仕事をしようという強要に近い広告が多い(30代男性)」などという回答が寄せられました。

田中 各社が求人サイトのバナー広告に人物を掲載する際に、特定の職種に男性と女性を当て込んでしまうケースがあります。ジェンダー表現に欠けた広告が存在しているのは改善していく必要があると思います。

丸田 先ほど、「ステレオタイプ」というキーワードも出ましたが、生活者に透けて見えているということなのでしょうか。

栗原 そうだと思います。生活者の広告を見る目線が深化しているので、マーケターの私達はもう一段意識を高く上げていく必要があるのではないかと感じました。

さらに、どこがジェンダー表現への配慮に欠けていると感じるかをたずねたところ、「なんとなく」「感覚的に違和感がある」と答えた方が多くいました。生活者は、自分の感覚を言語化することに慣れていないので、広告作りにおいては生活者を理解することがより重要なのではないかと思います。

丸田 確かに、「この広告って、ジェンダー表現的にどうなんだろう」と感じることはあっても、それを言葉にして説明するのは難しいですよね。広告を作る側が理解して歩み寄っていくことが大事だということがよくわかりました。

生活者の反応をジェンダーバイアスの視点から測定する「GEM®」

丸田 続いて、広告の中のジェンダーバイアスにどう向き合うかということについてディスカッションしていきたいと思います。

先ほども、ステレオタイプを防ぐための仕組みづくりが大事だという話をしましたが、まさにその仕組みをオリコムさんで作られたそうですね。ご紹介いただけますか?

栗原 はい。では、弊社のジェンダーバイアス測定基準「GEM®(ジェム)」についてご紹介します。

これは、広告やコンテンツの表現において、ジェンダーバイアスの観点から生活者の反応を測定する世界基準の調査です。もともと、全米広告主協会(ANA)にある「SeeHer(シーハー)」という団体が開発したもので、日本では2023年から本格的にスタートしました。弊社は日本国内の実務担当として実際の調査運営を行っています。

オリコムでは、広告やコンテンツの表現を呈示して生活者の反応を見るGEM®に定性調査をプラスした独自の調査が行われている

栗原 「GEM®」の調査についてご説明します。

弊社では、「GEM®スコア」という定量調査に加え、インタビューによる定性調査を組み合わせています。これは弊社が独自に行っているもので、なぜGEM®スコアが高いのか低いのかの要因検証にまで踏み込んでいます。

丸田 「GEM®スコア」の指標についても教えていただけますか?

栗原 はい。こちらをご覧ください。

GEM®スコアで測定する4つの指標

栗原 「GEM®スコア」定量調査では、ジェンダーバイアスにおける4つの指標をスコア化しています。

1つは「印象」。表現中の男性女性はどのような印象が持たれているのか。2つめは「尊重」。3つめは「特集のされ方」。そして4つめは「ロールモデル」、ありたい姿が描かれているか。この4つの指標を、基準値を100としてスコア化します。

スコアの数字が100を大きく上回った場合にはジェンダーバイアスの視点で今の時代に合っている。逆に下回った場合には改善の余地がある、という判断基準にできます。

定性調査を組み合わせることで、結果を言語化

丸田 御社が独自でやっているという「定性調査」はどのようなものですか?

栗原 聞いていただいてありがとうございます。実はこれが大事なポイントなのです。

弊社ではこのGEM®スコアが出た後に、なぜそのスコアが高いのか、そして低いのかという部分で、定性的にインタビューを重ねています。先ほどお話しましたが、生活者は自分の感情を言語化するのがとても難しいため、弊社のインタビューでそこを深く掘り下げることで、ジェンダーギャップのない高品質な広告を目指しています。

広告主の立場から見た「GEM®」活用のメリット

丸田 これをいち早く取り入れているのがエン・ジャパンさんですね。田中さん、実際に採用してみて、いかがですか?

田中 まず、第三者による調査によって客観的な情報を得られるのがすごくよかったです。もちろん、何が良くて何が悪かったのかというのを「ログ」として細かく情報提供いただけたのも非常に参考になりました。

たとえば、今日のこのイベントに関して満足度アンケートを取り、「満足」と答える方が多かった場合、その「満足」の中身に関してはわかりません。セッションがよかったのか、イスの座り心地がよかったのか、立地がよかったのか。そこまでは見えないからです。でも実はそうやってさまざまな要素を分解していかないと、次の改善につなげることはできません。

細かく調査していくことは時間も手間もかかりますが、中長期でレバレッジが効くような情報を得られたことは、弊社の中長期的な成長にとって、非常に有効だったと感じています。

丸田 「GEM®」は、細かく要素を分けたログベースレベルで見ることができるのですね。それは画期的ですね。

田中 そうですね。スコア基準値の話がありましたが、そのスコアがどうかということには実は僕はあまり興味がなくて。高くなったらなぜ高かったのか、低かったら何が下がる要因だったのかということを知り、次の広告に活かせるところが魅力と感じています。

丸田 「GEM®」によって実際に広告効果や収益につながるような要素も測ることができますか?

田中 はい、できます。GEMで得られた情報をもとに広告を改善したら成果が上がりました。

栗原 生活者理解のところは、私たちも調査してはじめて気づいたことがたくさんありました。エン・ジャパンさんは本調査を次のクリエイティブに活かすというサイクルを高速で動かしているのですごいなと思います。

オリコムが「GEM®」を通じて取り組みたい問題意識

中島 私からは、弊社の「GEM®」への想いについてもぜひお話させてください。弊社は10月1日から会社のロゴを新しくするので業界紙に広告を出すのですが、そこでこの「GEM®」についての想いを打ち出す広告をつくりました。

オリコムの「GEM®」への思いを表現した広告

広告では「誰かを置いてきぼりにする表現のほとんどが、『そんなつもりじゃない』から生まれている。」というキャッチコピーを使いました。これが、我々が「GEM®」を通じて取り組みたい問題意識です。ひとりひとりを見るということの意味や、それをどうビジネスにしていくのかに、向き合っていきたいと思っています。

送り手と受け手間のコミュニケーションギャップはどうしても生まれてしまいます。けれど、そこをどうやってつないでいくのか。私たちはお客様と一緒にひとつひとつの表現を掘り下げ、スコアの裏側にある人の気持ちや感情の機微、兆しをきちんと捕まえて、生活者とお客様を結び付けるアイデアをお出しします。そして、ちょっとした伝え方、キャラクターの使い方の中に「もっと大事なことがあるのではないか」「こうしたらメッセージの精度があがるのではないか」というところまで、切り込んでいきたいと思います。

丸田 非効率で大変だと感じる企業もいると思いますが、そこに対してはどのようにお考えですか。

中島 確かに大変です。でも、この掘り下げる過程でいろいろな気づきがあるということを我々もクライアントさんも感じ、それが実際次のアクションや収益アップにもつながっています。ですから、長期的に見ると確実に大きな広がりが得られるというのは言えると思います。

丸田 ジェンダーに限ったことではないと思いますが、「生活者ひとりひとりを見て掘り下げていく」ことは、これからの広告において大事ですよね。

田中 こういう考え方を取り入れた会社とそうじゃない会社との差は、今後ますます大きく広がると思います。

いまは生成AIの登場で成長角度が急速にあがっています。そうなると、固定観念による間違ったクリエイティブが生まれやすくなります。作り手のチーム組織における考え方を共通言語化することは、今後重要だと思います。

中島 そういう意味で「GEM®」は、人とツール、人とデータをどういうふうに結びつけると、よりよい解にたどり着くのかということをとらえるヒントになるのではないかと思います。

丸田 結局、使う側がどういう意識をもってそれを扱うかということですよね。アンコンシャスバイアスをいかに排除するように心がけるか、ひとりひとりをどれだけ根気強く見つめ続けることも必要だと感じました。

メディアの読者コミュニティと企業をつなぐ「講談社メディア・コミュニティ・ラボ(MCL)」

丸田 ではここで、生活者のリアルな声を拾い上げてマーケティングに活かす「講談社メディア・コミュニティ・ラボ(MCL)」についてもご紹介させてください。

MCLは講談社のメディアがもつ読者コミュニティを企業のマーケティングに活用できるサービスです。生活者コミュニティの代表として、生活者と企業やブランドをつなぐ架け橋になりたいという思いで、このサービスを立ち上げました。

「メディアの読者コミュニティと編集者の力で、生活者と企業やブランドをつなぐ架け橋になりたい」と話す丸田

具体的には、アンケートやインタビュー、座談会やサンプリングなど、さまざまな手法を通して、講談社の持っている読者コミュニティとコミュニケーションし、生活者のリアルな声を拾い上げる仕組みです。

講談社メディア・コミュニティ・ラボ(MCL)の概要

講談社には、さまざまな年齢層、生活層に向けたメディアの読者コミュニティがあります。企業やブランドのお悩み、課題に応じて幅広くお手伝いできると考えています。

多様な読者を抱える、講談社メディアの読者コミュニティ

オリコムさんの「GEM®」は、ひとりひとりを広く見ていくことを意識されていましたが、「MCL」は特定領域に熱量の高いコミュニティの人たちの声を深く聞いていくやり方です。

講談社コミュニティの調査パネル、2つの強み

特定領域に非常に濃いコミュニティメンバーの方々の熱量や声と、その声を拾い上げコミュニケーションの切り口を考えることができる編集者。この2つのスキルセットを組み合わせることができるのが、「MCL」の強みと思っています。

ジェンダーギャップ対応にも活用できるMCL

丸田 具体的に、ジェンダーギャップ対応にどう「MCL」を活用していくかについてご説明します。

たとえば企業やブランドがコミュニケーションプランニングを行うとき、最初に行う市場調査でも「MCL」は活用できます。特定のターゲットとの強いつながりを持っている「MCL」は、特定の分野に限る形で、より濃いアンケートを取ることが可能だからです。

MCLとしてのジェンダーギャップへのアプローチ

さらにMCLはメディアとのエンゲージメントが高く、本音で言いたいことが言えるコミュニティができているので、忌憚のない意見を集めることができます。表現内容については、編集者がトレンドを意識した切り口を考えることができるので、ジェンダーギャップにおいてもお役に立つことが多いのではないかと思います。

広告主の立場から田中さん、このサービスについて感想をお聞かせください。

田中 実は先日まさにMCLの説明を聞いて、発注を決めたところです。

丸田 ええっ? ありがとうございます! リップサービスではなく......?

田中 はい、本当です(笑)。

マーケティングは突き詰めれば、「需要」と「供給」を理解して、その需要に対する提供をする行為です。しかし、需要を本当に理解するなんて、生活者や顧客に直接聞かない限り絶対にわからないと思っています。

ですから、今後はますます、それを伝えてくれるコミュニティやいろいろな方々といかに議論をしていくかがより重要になってくると思います。

「MCL」の場合は、自分たちが提供するものが本当にヒットするのかどうか、テストマーケティングできる場所にもなってくると思います。

ただし、「GEM®スコア」にしても「MCL」にしても、すぐに成果がでるものではないと思っています。半年後、1年後、あるいはそれ以上時間がかかることもあるかもしれません。本日お越しいただいている方で責任者の方がいらっしゃれば、短期的な成果を求めるのではなく、ぜひ中長期のリターンで考えて決断することをおすすめしたいと思います。

栗原 弊社では「GEM®」の活動とともにジェンダーの勉強会やワークショップもやっていますので、ご興味のある方はぜひご連絡いただければと思います。

中島 その活動には私も入っていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

田中 サービスを使っている企業が増えてディスカッションできるようになれば、みんなが得をします。エン・ジャパンの事例は今後も発信していきますので、ぜひみなさんも取り組みのヒントにしていただければと思います。

丸田 みなさま、本日はありがとうございました。

GEMⓇについて詳しく知りたい方はこちら

MCLについて詳しく知りたい方はこちら


開催日時:2024年9月20日(金)12:40〜13:20
セッションタイトル:広告・メディアとジェンダーギャップのリアルな話。~広告のDEI化に向けた、オリコム・講談社の新たなチャレンジ~
登壇者:
田中奏真/エン・ジャパン株式会社 執行役員 マーケティング本部長
中島明美/株式会社オリコム 代表取締役社長
栗原雅代/株式会社オリコム デジタルコミュニケーションプランニング局 ストラテジックプランニング部 部長
モデレーター:
丸田健介/講談社 ライツ・メディアビジネス本部 メディアプラットフォーム部 副部長 講談社メディア・コミュニティ・ラボ リーダー

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