2024.10.10
ミライへの共創の可能性を見つける。講談社メディアアワード2024 審査会レポート
講談社と広告主の共創で生まれた広告企画を対象に、未来志向の優れた企画を選出する「講談社メディアアワード」。2024年8月には、受賞企画を選出する審査会が行われました。各審査員が持つ視点が交わり、議論を深めた審査会の模様をお届けします。
今年のテーマは「物語の力がミライを創る」。講談社メディアカンファレンス2024
40年間続いた「講談社広告賞」から2019年に名前を変え、5回目の開催となる「講談社メディアアワード」(2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催見送り)。今年も、10月30日に開催される講談社のビジネスイベント「講談社メディアカンファレンス」にて、受賞企画の贈賞式が行われます。
講談社メディアカンファレンスは、出版ビジネスの新たな価値創造と、講談社の多様なコンテンツを最大限活用していただくことを目的に、「出版広告の再発明」につながるプログラムを用意したイベントです。ブランドとメディアの未来を語る「ミライトーク」、未来の共創に向けて今をつなげる「KMCビジネスハングアウト」、そして過去1年の優れた企画を顕彰する「メディアアワード」の3つの柱で、「過去・現在・未来」を俯瞰する内容となっています。
今年の講談社メディアカンファレンスのテーマは、「Inspire Impossible Stories 〜物語の力がミライを創る〜」。長年にわたりさまざまな物語を紡いできた講談社と参加者が共に「物語の力がミライを創る」ことを体感できる場になるようにと願って、このテーマが設けられました。
詳しくは、講談社メディアカンファレンス2024 特設サイトをご覧ください。
5つの審査基準を軸に、12企画のなかから受賞企画を選定!
今回のアワードのエントリー数は、のべ49企画。2024年7月に社内選考が行われ、49企画の中からファイナリスト12企画を選定しました。そして翌8月、審査員による審査会を経て受賞企画が決定します。
審査会には、前年から審査員を務める「宣伝会議」編集長 谷口優さん、講談社C-stationチーフエディター 前田亮に加え、新たにアクセンチュア株式会社のマネジング・ディレクター 太田 郁子さん、株式会社電通のクリエイティブ・ディレクター 越智 一仁さん、PIVOT株式会社のプロデューサー 国山ハセンさん、株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長 リュウ シーチャウさんが参加しました。
左から、リュウ シーチャウさん、越智一仁さん、谷口優さん、国山ハセンさん、太田郁子さん、前田亮。
審査の基準となるのは5つのポイント。「課題発見・設定力」「プロジェクトデザイン力」「コンテンツ力」「コミュニティ力」「マーケティング成果」の観点から、多様な議論が行われました。
講談社メディアアワード 5つの審査基準
審査員との対話を通し、新たな共創の可能性が見えた審査会
審査会は、各企画の営業担当が作成した5分間のプレゼンテーション動画を視聴後、審査員との質疑応答を実施。審査員は5つの基準に基づいて採点を行い、合計点数の高い上位6つの企画を暫定的に受賞企画として選定する、という流れで進められました。
その後、上位に入らなかった企画についても「受賞にふさわしいものがないのか」を再度審査員の間で議論。正式にアワード受賞となる6企画を決定しています。
【メディアアワード 2024 受賞企業一覧(五十音順)】
・アシックスジャパン株式会社
・株式会社アダストリア
・FGROW JAPAN 株式会社(海老乃家)
・佐賀県広報広聴課 サガプライズ!
・東海旅客鉄道株式会社
・ヤンマーホールディングス株式会社
受賞企画の詳細は、講談社メディアカンファレンス 2024特設サイトをご覧ください。
約4時間にも及ぶ審査を経て、アワードを受賞した6企画がどのように選ばれたのか......。審査会当日の模様をレポートします。
暑さを肌に感じる、2024年8月某日。審査会は、午後1時から講談社内で開催されました。会場には、各プロジェクトの営業担当者はもちろんのこと、講談社各局の部長や営業担当など30名以上が駆け付けました。
プレゼン動画が再生される5分間。参加者全員が集中して画面に目を向けるなか、会場には適度な緊張感が漂っていました。
大勢が見守るなか、いよいよ審査会がスタート。12企画の営業担当者が順々に登場し、手掛けた企画のアピールをしていきます。営業が用意した5分間のプレゼンテーション動画では、施策内容や成果はもちろん、アイデアが生まれたきっかけや企画実現に至るまでの経緯など、広告主との共創ストーリーが語られました。
興味深そうに、個性豊かなプレゼンテーション動画を見つめる国山ハセンさん。
プレゼン動画はどれもプロジェクトにかける情熱が伝わるものばかり。審査員たちも真剣なまなざしを向け、ときおり頷いたり、ペンを走らせながらメモを取ったりする姿が印象的でした。
LUX BATH GLOWとVOCEサウナ部のコラボプロジェクトについて解説する、営業担当者。限定サウナイベントのために用意したサウナハットをかぶって登場。和やかな笑いが広がりました。
なかには開発した商品や関連グッズを持ち込み、商品の特徴や魅力を熱弁する担当者の姿も。短い時間ではありましたが、担当者の真摯な想いがひしひしと伝わるプレゼンテーションでした。
子どもたちに向けた企画に対して、マーケティングや戦略に関する専門的な視点だけでなく、親としての視点からも質疑応答を投げかける太田郁子さん。子どもを持つ審査員同士が盛り上がる場面も。
プレゼンテーションを経て行われる、審査員からの質疑応答。審査員それぞれの視点から「狙ったターゲット層に届けるための工夫は?」「施策の実現に向けて、どのような課題があったのか?」「なぜそのIP、メディアを選定したのか?」など、様々な疑問点やフィールドバックが投げかけられました。時には営業担当者がハッとさせられるような指摘も......! ミライの新たな共創につながる、学びの多いコミュニケーションの場となっていました。
営業担当者のアピールを受け、笑顔を浮かべるリュウ シーチャウさん、越智一仁さん、谷口優さん。「施策にかかったコストは?」など、率直な質問も多々寄せられていました。
こうして12企画すべてのプレゼンテーションと質疑応答が終了。予定していた審査終了時刻をオーバーする結果となりましたが、それだけに活発な質疑応答が飛び交っていたのが印象的でした。
審査員全員から「異論なし」の声。審査会の総評と感想
その後、各審査員が5つの審査基準を基に付けた点数を集計し、上位6つの企画が出揃いました。出揃った6つの企画を見た審査員全員からは、「自分が選んだ企画と大きな差異はなかった」との声が。アワード受賞の6企画は、それだけ審査員陣にとって共感と発見のある内容だったことを物語っています。
審査を終えた6人の審査員に、今年度の講談社メディアアワードに対する講評と印象に残っている企画について伺いました。
【講評1】⽉刊宣伝会議 編集⻑ ⾕⼝優さん
株式会社宣伝会議 出版・編集取締役 ⽉刊宣伝会議 編集⻑ ⾕⼝優さん
「印象に残っているのは、東海旅客鉄道株式会社と現代新書のコラボレーション企画です。出版社のブランド資源や人脈を活かし、デジタル社会にあえて『現代新書』というブランドを用いて紙の本を制作した点は、大変興味深いなと思いました。
そして、今回のノミネート企画全体を見て感じたのは、出版社の持つ『コンテンツ制作力』と、コンテンツを届ける『発信力』の高さです。IPやメディアの活用によって価値あるコンテンツを生み出し、多様な手段で届けることができる。出版社との共創における未来の可能性を強く実感しました」
【講評2】アクセンチュア株式会社 マネジング・ディレクター 太田郁子さん
アクセンチュア株式会社 マネジング・ディレクター 太田郁子さん
「私自身も参考になるような、面白い座組の事例を数多く見ることができたと思います。一番興味を惹かれたのは、『セレッソヤンマーレディース』の施策です。ゲキサカとViVi という、読者層もターゲットも異なるメディアがコラボレーションする座組は、総合出版社だからこそ可能なもの。メディアの持つ価値を改めて認識しました。
ViViの営業担当者の方に『施策は難しかったのでは?』と率直に聞いてみたのですが、『難しくなかったです』と回答をいただいたことも、印象に残っています。読者との真摯なコミュニケーションを通じて得たデータやノウハウがあるからこそ、自信を持ってターゲットに響くコンテンツを作ることができたのだと感じましたね」
【講評3】電通 zero/Dentsu Lab Tokyo クリエイティブ・ディレクター 越智⼀仁さん
株式会社電通 zero/Dentsu Lab Tokyo クリエイティブ・ディレクター 越智⼀仁さん
「私が高得点を付けたのは、『コアアイデアを生み出す力』と『実施力』の高い企画です。なかでもwith classと海老乃家の『揚げない海老フライ』のプロジェクトは、印象に残っています。現役ママたちの声を拾い上げながらプロジェクトを進めていく姿勢が高評価です。また、インフルエンサーとアフィリエイト契約を結ぶなど、新しいビジネスの創出につながっている点は素晴らしいなと思いました。
他の企画もアイデアの創意工夫や、関わる人々を巻き込みながらプロジェクトを広げていく様子が見て取れました。今回のアワード受賞した企画は、『単なるメディアコラボレーションに留まらないアイデアのショーケース』になっていると思います」
【講評4】株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長 リュウ シーチャウさん
株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長 リュウ シーチャウさん
「私の評価の指標は、メディアのアセットを巧みに活用するだけでなく、売上に貢献する要素を持ち合わせているかどうかです。とりわけアダストリアとmi-mollet編集部による施策は響きましたね。アパレルショップに『こうした着こなし方がある』等の日常に寄り添った情報があるのは、服選びに悩む消費者にとって非常に参考になるものです。雑誌編集のノウハウを活かし、ユーザーから見ても『いいな』と思えるツールを上手く作れているなと思いました。
なかには、もうひと工夫でより大きな成果につながると感じる企画もありましたが、それだけに今後もさらに面白いコンテンツが生まれるのではないかと期待しています」
【講評5】PIVOT株式会社 MC ・プロデューサー 国山ハセンさん
PIVOT株式会社 MC ・プロデューサー 国山ハセンさん
「私は『コンテンツとしての魅力』の高さを重視して審査に臨みました。他社とのコラボレーションでは講談社との共創だからこそできたターゲットに響く施策の数々には、どれも興味を惹かれましたね。
特にアシックスとゲキサカの企画は、高評価をつけています。プレゼンテーションの内容から、地道な調査・分析を重ねて生まれたのだと知り驚いただけでなく、動画コンテンツも『学生時代にこうしたコンテンツがあったらよかった』と思うものばかりで興味深かったです。他の企画も、関わる全てのステークホルダーの高い熱意を感じるものが多く、非常に参考になりました」
【講評6】講談社 C-station チーフエディター 前⽥亮
講談社 C-station チーフエディター 前⽥亮
「サガプライズ!と島耕作のプロジェクトは、さまざまな仕掛けを通して"リアリティ"を追求している点が興味深かったです。施策を進めるうちに、県内のスポーツチームから依頼が来たことも好印象。IP活用の可能性の拡張を感じる事例でした。
また、『現代新書』のようにデジタル時代にあえて新書を活用した広告企画など、これまでにありそうでなかったアイデアが多く見受けられた審査会だったと思います。前例のないものを生み出すことは難しいですが、今回の受賞企画は、新たな『着眼点』を示してくれたと感じています」
新たなアイデアや着眼点、そして新たなプロジェクト誕生の可能性が見えた今回の審査会。会場に足を運んだ参加者全員にとって、良いコミュニケーションの場となったに違いありません。これからも、講談社とステークホルダーの共創から生まれる"ミライ"に期待が高まります。
撮影/大坪尚人 文/室井美優(Plyace) 編集・コーディネート/川崎耕司(C-station)
川崎耕司 シニアエディター・コーディネーター
C-stationコンテンツ責任者。C-stationグループの、広告会社・広告主向け情報サイト「AD STATION」担当。