「SNS型投資詐欺」にも利用されてしまう、日本のデジタル広告の現状
日本のデジタル広告の品質は、アドフラウドやブランドセーフティなどの観点から見ると「世界最低レベル」であるとも評されます。その背景には、運用型広告市場が急拡大したことも影響しています。たとえば昨今、社会的に問題視されている、著名人になりすました「SNS型投資詐欺」にも、運用型広告枠が利用されるケースは多く、詐欺広告に遭遇した経験がある方もいるのではないでしょうか。
なお、警察庁のまとめによれば、SNS型投資詐欺の被害額は、2023年に約278億円(認知件数2271件)を記録。2024年は、1月からの3ヵ月間で、認知件数が1700件、被害額は219億円にものぼっています。このままでは、認知件数、被害額ともに、昨年を大きく上回ることが予想されます。こうした詐欺被害の拡大を抑えるためには、安心・安全なデジタルメディア広告の環境の整備も非常に重要であり、急務と言えます。
クオリティメディアコンソーシアムが賛同「JAAの緊急提言」
このような悪質な違法広告が増加するなか、日本アドバタイザーズ協会(JAA)は5月17日、「社会問題化するデジタルメディア上の詐欺広告に対する緊急提言」を発表。さらに6月6日、出版社、新聞社、テレビ局など国内の有力メディア30社で構成される「クオリティメディアコンソーシアム」が、この提言に賛同する声明を発表しました。
JAAの緊急提言では「詐欺広告・フェイク広告は、デジタルメディアの媒体価値やアドバタイザーと生活者の信頼関係を毀損する重大な問題」と指摘し、「デジタル広告にかかわる関係者の一人一人が、あるべき広告の未来への大きな影響を担っていることを自覚するべき」と、緊急提言に至った経緯を説明しています。そしてこの提言は、デジタル広告に関わるすべてのステークホルダーを対象にしています。その一部を抜粋して、ご紹介します。
■プラットフォーマーへの提言
アドバタイザーが安心して広告を掲出するために、自社サイトのコンテンツや取り扱う広告、および広告掲載先のメディアの品質管理に責任を果たすべきである。
■テクノロジーパートナー、メディアへの提言
MFA(Made For Advertisement)のような広告費を無駄に消費するために作られたメディア群や、品質に問題のあるコンテンツが掲載されるメディア、アドフラウド・ブランドセーフティに問題のあるメディアが存在しないよう注力すべきである。
■アドバタイザーへの提言
自社の広告が、どのメディアに掲出され、どこに費用が使われているか認識し、不適切なメディアへ資金が流れないように最大限の注意を払う。安心・安全なメディアへの広告掲載を実施する。
■エージェンシー、パートナー企業への提言
アドバタイザーの広告が、本来意図していない広告掲出場所に掲載されることのないよう、ブランドを毀損しない適切なサービスを提供する。
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本提言に賛同したクオリティメディアコンソーシアムは、2023年10月に「クオリティメディア宣言」を通じて、信頼性の高いコンテンツの発信と広告の提供を内外に宣言。デジタル広告の取引における品質課題(アドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティなど)の解決に積極的に取り組んでいます。
そのなかで、昨今のデジタル広告の問題は看過できないものであり、このたびメディア企業の垣根を超えて一致団結し、「(JAAの緊急提言)実現に向けて、広告取引先、関係団体、関係省庁と共に、一層努めていく」ことを表明しました。
今回の提言、賛同により、アドバタイザーとメディアは思いをひとつにし、日本のデジタルメディア広告の環境改善に向けて、歩みを進めていくことが期待されます。